TALES OF MILLEWYNN~テイルズオブミレウィン~   作:瑠璃。

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第四話「眠れる人形」

聖堂、よく探せば席の下に紫の水晶が転がっていた。

 

「最初から知っていたような」

「なんとなくね。それを気にしている暇も無く魔獣が出て来て、怒鳴り声が

聞こえたものだから。すぐ近くで良かった」

 

それは普通の鉱石と異なり、非常に純粋なエーテルを宿していた。

余計にルーチェの感知に引っかかっていたのだ。バアルジストと呼ばれる

魔晶石。時価は億単位にもなる代物。だとしてもルーチェたちは下心が湧くはずも

無く、宝石は少女の手に渡った。傍らで見ている一般兵士はうずうずしている。

ようやく彼の本当の狙いが分かった。

 

「なるほど、子どもの持ち物を奪って億万長者になろうって魂胆か。そんな

性根で、良く兵士になんてなれたな」

「な、にを…!兵士が何だ、そんなもので生きてられるかってんだ!」

「では、貴方を逮捕して貰います」

 

ルーチェは素早く携帯を構える。ボタンを連打。素早く別の人間に繋げる。

阻止しようと動く男をゼインが制止した。子どもはルーチェの背後に隠れる、

彼女も子供を庇うように立つ。

 

「職権乱用。悪いが庇うことなどしない。己のしたことには己で

ケリを付けるんだな」

「総帥へのチクり完了!で、リラちゃん。ここまで来たら手を貸すよ。

何も言わなくても視える探偵は分かってますからね。案内してくれる?」

「ッ!うん!!」

 

リラ・ヴァイオレットという少女はある日、一人の女性を看病したらしい。

たまたま家の近くで倒れていた女性の体を見て、リラは驚いた。

近所に住んでいる物知りな老婆から女性の正体が人間では無く人間と瓜二つの

姿形をした魔導人形であると聞いたのだ。動かない理由、壊れている理由は

魔導人形の心臓が無いから。

 

「おばあちゃん、すごぉく大きい家に住んでるんだ。名前はね、えっとね、

マーガレット・アシュレイって言ってた!自分の娘が軍人なんだって自慢してて」

「アシュレイ…あぁ、タチアナ・アシュレイ。確かに彼女はいるな」

 

麗人タチアナ・アシュレイ。彼女の祖母と考えるのが妥当だろう。その大きな

家が見えて来た。魔導人形はマーガレットの提案で匿われている。

リラによってルーチェたちも中に入る事が出来た。貴族の一つとされる

アシュレイ家。女系家族であるが、彼女たちはそんじょそこらの男よりも

紳士的な淑女ばかり。

 

「そこにいるのは有名な探偵さんじゃないのかい」

 

現れた壮年の女性こそがマーガレット。老いているが、凛とした仕草は

年齢を感じさせない。彼女の鋭い目はルーチェの隣に立つゼインに向けられた。

 

「フン、そっちの男は随分穢れているね。本当はそんな奴を敷地内に入れたくないが

仕方ないね。探偵の助手となれば、認めるしかない」

 

ゼインの抱えるものを視破り、嫌悪感を見せるも公私混同しない。マーガレットと

リラに案内されて、魔導人形のもとへやって来た。息を呑むほど美しい見た目。

人間では無く人形だ。胸の部品が破壊されている。長い銀髪がベッドに

広がっており、紫の瞳は開かれたまま。

 

「アリアっていうんだよ。前に言ってたんだ」

「今はもう意識が無いのよ。多分、喋っていた時は心臓が消えてから間もない

頃だったからね。で、どう見える?」

 

ルーチェに全員の視線が向く。彼女は首を横に振った。

 

「これはちゃんと専門家に加工して、嵌めて貰わないとアリアがただの人形に

なっちゃうよ。マーガレットさん、タチアナさんが今、何処にいるか知りませんか」

「何?」

 

突然タチアナの居場所をルーチェは聞いた。彼女の目には見えている。タチアナと

いう女性は魔導人形のからくりに詳しい筈だ。家に長くアリアを匿っている理由が

あるのではないか。

 

「そうだね。あの子は…頭が良いから。貴方たち、火の宝珠を探しているんでしょ。

タチアナも調べているから。さっさと目的に戻るんだね」

「ッ、はい!行こう、ゼイン」

「あ、あぁ」

 

屋敷を飛び出したルーチェの後をゼインは遅れながら追いかける。だが不意に

マーガレットがゼインの名前を呼ぶ。

 

「彼女を手放すんじゃないよ。自分の体の為にも」

「―」

 

返事は無かった。生意気な若造だと思ったと同時に今まで見た誰よりも

苦痛に満ちているように見えた。今の彼にとって(ルーチェ)はあまりに眩しすぎる。

 

「おばあちゃん、ボーっとしてどうしたの?」

「いいえ、何でもないわ。二人が戻って来るまで、ゆっくり待ちましょうか」

「ホントに帰って来るかな…」

 

弱気な発言をするリラに対してマーガレットは挑発する。

 

「あら、自分で頼りになると私に教えておきながら本当は頼れない弱い人と

思ってたのね」

「むっ!違うモン!絶対、ルーチェは約束を忘れないよ。解決してくれるって

言ってくれたし」

「なら、私たちは待ちましょう。ね?」

 

首都で足踏みをしている訳には行かない。二人の故郷に犯人がいる可能性が

あるというのだから。何やら裏で画策する総帥ジルドにぎゃふんと言わせると

決意したのだ。

ファラド市、そこは何故か軍人の派遣が遅れがちな街。危機感を抱いた若者たちで

独自に自警団を作り出し街を守っている。

列車で揺られること一時間。長い列車旅の最中。

 

「最近、ファラドは様子が可笑しいみたいだ」

「可笑しいって?」

「軍部でも話は流れている。誰がどんな理由で禁止しているか分からないが、

その街への軍人の派遣が控えられている。同時に魔獣の騒ぎも増えている」

 

魔獣が増えているのに派遣される戦闘員は減っている。反比例している。

明らかに人為的に感じる。策略に感じた。誰も疑問を感じない。よく考えれば

異常だったとゼインは語った。

 

「ゼイン、ほとんど外を出歩かなかったの?」

 

彼の抱える黒細胞。人体実験を受けていた。

 

「基地の中では自由だが、任務では縛られる。俺はほとんど単独行動ばかりだった」

「意図してゼインを一人に…いや、他の人たちがゼインの事が分からないように

してたのかも」

「どれだけ理由を聞いても総帥は極秘だからと教えてくれなかった。疑問を

抱かなかった自分に違和感しかない。鈍感すぎる」

「それだけ、ジルドの立ち回りが上手かったって事だよ。これからどんどん

崩しちゃおう」

 

 

 

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