TALES OF MILLEWYNN~テイルズオブミレウィン~   作:瑠璃。

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第五話「時間に厳しい男」

ファラド市、発足した自警団だけが街の守りを固めている。

到着する寸前で列車は急停車する。慣性の法則。進行方向へ身体が

引っ張られるような形になった。

 

「何かある…飛び降りるぞ!」

 

窓を開き、外へ飛び出した。直後、列車が大爆発。中にいた運転士、他に乗客は

いたのだろうか。

 

「只事じゃないんですけど…!!」

 

轟々と燃え上がる赤い炎が列車から。黒い煙も上がっている。いやいや、それだけ

では無かった。ファラド市でも騒ぎが起こっている。盗まれた火の宝珠の力の一部。

雨が降っているにも関わらず、炎の勢いは弱まる素振りを見せない。

水溜まりの水がひしゃげる。何者かが凄い速度で駆けて来る。男はゼインとの

間合いを詰め、拳を突き出す。続けざまに一歩前へ踏み込み、脚を振り上げた。

 

「怪しい人間がいれば警戒するのは当然だろ。時間の無駄だ。さっさと

炎を消して貰おうか」

「ち、ちょっと待った!団長、アクセル・ロングハースト。私たちは犯人では

ありません。ルーチェ・アヴァロンとゼイン・アーガイル、忘れちゃった?」

 

桃色の髪に緑眼。アクセル・ロングハースト、自警団の団長を務める男。

二人をそれぞれ一瞥して、臨戦態勢を解いた。彼は拳を下げる。

 

「お前たちだったか。様変わりし過ぎて分からなかった。ゼインならばゼインと

名乗れ」

「名乗る前に、問答無用で襲い掛かって来たんだろうが」

 

三人は幼馴染だ。アクセルが一番年長で、ルーチェが年下。アクセルは変わらず

時間管理に厳しい。時間の無駄、その口癖も変わらない。

 

「何か知ってるような目だな、ルーチェ。お前は昔から予知能力でも

持っているかのようだ」

「そんな正確では無いけど、焔の丘に何かあるのは間違いない」

 

街の西にある焔の丘。確信では無いが、犯人がいるかもしれない。総帥を出し抜く為

宝珠を何としても取り返したい。アクセルはこの火災を何としても収めたい。

利害が一致している。ならば向かうのみ。

 

「こうやって三人が揃ったのも久々だな」

「自警団の団長に、大陸軍少尉、ただの探偵、みんなバラバラの道を辿ってるけど」

「案外、集まれるもんだな。別々になっても」

 

火事で騒ぎが起こる街。自警団の団員たちがアクセルに指示を仰ぐ。

 

「消火活動を続けていろ。俺は彼女たちと原因を探しに行く」

 

団員たちは素直に彼の指示に従った。彼らは特に依存しているわけでは無い。

だが強い信頼をアクセルに寄せているのだ。丘の頂上まで続く道を進むが、

後半に差し掛かりルーチェには疲労が見え隠れしている。先を進むゼイン達と

間が空いてしまっている。

 

「少し休もう。お前の力が頼りなんだ。お前に先に倒れられては折角掛けた

時間が無駄になる」

 

アクセルは小休憩を告げた。

 

「ごめんなさい」

「構わない。ここは勾配な道が続くことでも有名だ。敵とて簡単に上り下りが

出来る場所じゃない。逃げれば無論、相手の足が遅くなるが向こうも疲労が

溜まる」

 

ゼインは軍人。日頃から鍛えており、体力がある。アクセルもまた日々、

自警団の団長として多くの仕事を捌いている。ルーチェは自分が情けなくなる。

今も街には消えない炎が轟々と燃え上がっているのに。

 

「気にしなくて良い。早く行きたいなら、こうすれば良いしな」

「あ、ちょっ!?」

「行くぞ、アクセル」

 

ゼインはルーチェをおんぶして、勾配な坂道を走り出した。人一人背負っているとは

思えない走りだ。数分で頂上に到着し、ルーチェは着地する。汗は掻いているが

ゼインは全く息切れもしていない。

 

「ルーチェは軽いからな」

「…!?」

「お前…そんな台詞をよく吐けるな」

 

顔を真っ赤にするルーチェと呆れるアクセル。対してゼインは何故二人がこのような

反応をしたか分からない様子。さて、丘の頂上は眺めが良い。遮るものも無い。

数人の武装した人間が三人を取り囲む。彼らの奥に火の宝珠を行使している

人間がいるようだ。

 

「ルーチェ、少し話がある」

「何?」

「こいつらを蹴散らしてからな!」

 

一斉に飛び掛かって来る武装した人間、盗人たちに応戦する。ルーチェは後方からの

援護射撃をメインにしている。ゼインの剣技、やはり強い。洗練されている。

誰も殺していない。アクセルは徒手空拳を操る。自警団に属している団員たちの

ほとんどが彼から技術を教わっているらしい。時間にシビアなアクセルは可能な限り

一撃必殺を狙う。殺しはしない。一撃で昏倒させるのだ。

 

「お前、分かるか。これは宝珠を装った精巧な偽物だ」

「そうなの?実物を知らないから、分からない」

 

倒し損ねた盗賊の顎に掌底を喰らわせ気絶に追い込む。

 

()()()から聞いた。お前たち二人が総帥ジルド・クウェインによって

宝珠の捜索をしていること、ゼインがジルドによってルーチェの監視役を

任されている事」

 

基地にいた人間だろうか。事情を全て把握しているアクセルは更に言葉を

続けた。

 

「場合によってはお前たちに協力する」

「良いの?自警団を放置できないでしょ?」

「奴らだって馬鹿の集まりじゃない。ノウハウは全て叩き込んでいる。俺が

いなくても組織は回るさ」

 

 

 

 

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