異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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タイトルに深い意味は無いです

Q.なんでイツキ厨二病なの?
A.年頃なのと、これ書いてるやつがHELLSINGで義務教育終えたからです


第十話『アダルト&チルドレン』

 

「よし……こんなもんかな」

 

シーサーペント討伐から実に1ヶ月が経過し、イツキは『一人部屋』で準備を済ませていた。短いようで長い1ヶ月の間、様々な事があった。

 

ひとつは先程述べた様にイツキは部屋を引っ越したこと。さすがにいつまでも部屋を間借りするわけにはいかないと思ったイツキは部屋を離れることにした。

 

もう部屋は借りたとライオスとファリンの部屋で2人に告げ、なぜ相談しなかったのかとファリンに詰められるもイツキは2人を部屋から出し隣の部屋へ案内する。そこはベッドやクローゼットなどの簡易的な家具しか無い部屋だった。

 

「隣借りちゃいました」

 

へへへと笑うイツキ。ライオスとファリンは思わずイツキの頭をもみくちゃに撫で回した。

 

もうひとつは迷宮5階攻略が停滞気味だということ。なにしろ魔物は今までとは比べものにならないほど強く、また罠も陰湿で強力になってきている。

 

行っては戦い、撤退。行っては罠に掛かり消耗して、撤退。そんなことを繰り返していた。

 

今日はそんな迷宮攻略に関して大事な話があるとのことで、昼にいつもの酒場へ集合となっている。

 

そしてもうひとつは…

 

「遅いぞ、ねぼすけ」

「イヅツミが早いんだろ」

 

迷宮攻略時以外ほぼ必ず食事時にイヅツミが付き合うことだ。なお目的はイツキの人脈によるサービスでの食事量アップらしい。

 

本名での呼びも、ちゃん付けで呼ばないのも「ムズムズするからやめろ」とのことである。

 

服装も随分ラフになっていた。覆面は無く、イヅツミを象徴する猫耳や尻尾は露出していた。

 

イヌタデとの交流ももちろん続いている。しかし何分燃費が悪いオーガ族。毎日イツキと同じ場所での食事は費用が馬鹿にならないので控えよとマイヅルから釘を刺された。

 

それでも買い物や鍛錬など、イヌタデには教わることが多いためほぼ毎日会っている。

 

「今日もいつもので?」

「いや、今日は魚の気分だ」

 

2人は宿から食堂へ。手早く食事を済ませたイツキ達はいつも鍛錬に使っている川辺へ。

 

「あ、イツキくんおはよー!」

「おはようタデちゃん」

「朝っぱらから声デカい」

 

川辺にはイヌタデの姿が。鍛錬の内容としては基本の体力作りに加え、イヌタデとイヅツミ相手の模擬戦がある。今ところイヅツミが勝ち越している。

 

3人はいつもの体力作りを終え、イツキとイヅツミは武器を持って向かい合う。イヌタデは審判だ。

 

「今日こそ当ててやる」

「やれるもんならな」

 

「よーい、始め!」

 

イツキは開幕イヅツミに向かって走り出す。手には模擬戦用の木剣。怪我をしてもイツキは回復魔法が使えるため無問題だ。なんなら回復魔法の練習にもなる。

 

「せいっ!」

 

まずは剣を両手持ちしての横薙ぎ。イヅツミはしゃがんで躱し手に持った木製の短刀でイツキの足を狙う。読めていたと言わんばかりにその短刀を足で踏みつけ剣を振り下ろす。

 

しかしイヅツミは短刀を踏まれた時点で短刀から手を離し素早く横に転がり回避。そのまま足に力を入れイツキにタックルをかます。

 

「っ…!」

 

筋力はイツキの方が上だがイヅツミには獣人特有の足バネがある。イツキは身体が揺らぐもなんとか堪える。イヅツミは素足の指で器用に短刀を拾い左足を軸にそのまま右足で蹴りの勢いで短刀を振るう。

 

カンッ!と木剣同士ぶつかり合う音が鳴り響く。イツキの木剣による防御が間に合ったのだ。

 

イツキは剣を握ったまま柄でイヅツミにぶつかる。防御が間に合うと思わなかったイヅツミはまともに食らってしまいバランスを崩し倒れてしまう。

 

「ぐっ…!」

「もらった!」

 

柄攻撃からの縦振り。入ったと思ったイツキだったが、イヅツミは身体を捻らせ回避。木剣が砂利に突き刺さる。

 

イヅツミはそのまま3回ほど転がって距離をとってから起き上がる。既に手には短刀を構えていた。

 

「シィィ……!」

 

イヅツミの表情が段々と険しくなるにつれ太ももに力が入り続け、どんどん体勢は前かがみになっていく。

 

来る。イヅツミの最速の技が。イツキは受け流す体勢を取る。まともに食らったら回復魔法を使ったとしてもしばらく最悪な気分が続くのを知っているからだ。

 

イヅツミは基本素早い行動を得意とする。その中でも足での初速はピカイチだ。

 

「シャッ!!」

 

地面が爆発したかの様に強烈な破裂音をたたき出し、イヅツミは高速でイツキの腹部目掛けて短刀で斬りつける。

 

再び木剣同士ぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。

 

イツキはイヅツミが腹部を狙うのを理解していた。なにせ猫の様な低い体勢で襲ってくるため必然的に狙ってくるのは腹かその下。

 

ぶつかった短刀を木剣で滑らす様に受け流す。受け流されたイヅツミは顔から地面にぶつかってしまう。

 

「ぶえっ!?」

「今度こそ!」

 

イツキに向かって足を向け倒れ伏したイヅツミに木剣を振り下ろす。

 

しかしイヅツミは地面に手を付き俯いたまま手の力のみで跳び箱を飛ぶ様に跳ねて下半身を畳んで回避。木剣は再び地面に突き刺さる。

 

「嘘だろ!?」

 

飛び上がり地面についたイヅツミは短刀から手を離し身体を仰け反らせ地面に手をつきバク転。そのまま宙にあった短刀を足で掴みイツキの頭目掛けて振り下ろした。

 

「いっでぇっ!?」

 

クリーンヒット。イツキの頭部には大きなタンコブが出来上がった。イツキは地面に膝をつき頭を両手で覆う。

 

「はい、私の勝ちだ」

「クッッッソ……」

 

「2人ともすごーい!」

 

無邪気に拍手を送るイヌタデ。イヅツミは立ち上がり服に付いた砂や草を叩いて落とす。イツキも立ち上がり頭を片手で抑えたままイヅツミの側へ。

 

「イヅツミ」

「ん」

 

イツキは自分の頭に手を置いたまま回復魔法を起動。もう片方の手でイヅツミの頬に手を添え回復魔法を起動。

 

イツキは頭を摩りたんこぶが無いことを確認。イヅツミの顔にも優しく撫でながら無い事を確認した。

 

「うん、擦り傷とたんこぶ程度なら詠唱無しでもやれるな」

「……いつまで触ってんだ」

「ああ、ごめん」

 

「次タデ!タデの番です!」

 

「私は疲れたからイツキやれ」

「タデちゃん1発1発がこえーんだよな…」

 

タデの普段の得物は金棒であり、流石に鍛錬用にその大きさの木製棍棒を使ったら粉砕骨折待ったナシなので子供が鍛錬に使うスポンジに近い素材を使った柔らかい棍棒でやる。

 

なお異世界にスポンジは無いためあくまでそれに近い異世界特有の別素材であるということを念を押してここに記載する。

 

その後、イヅツミがイツキに3勝2敗。イツキがイヌタデに4勝1敗。イヌタデがイヅツミに0勝5敗という形で終わった。

 

「んじゃ」

「また明日!」

「またねー」

 

昼になり約束の時間のためイツキはいつもの酒場へ。酒場には既にライオス達が集まっていた。ファリンが微笑んで迎え、チルチャックが頬杖をついたままイツキに話しかける。

 

「おはよう、イツキ」

「おはようございます」

「おせーぞイツキ」

「すみません、遅くなりました」

 

イツキは全員いる丸テーブルの席につく。ライオスがイツキに鍛錬内容について問いかける。

 

「今日は勝てたのか?」

「何回か…それでもやっぱ強いですね。ニンジャ」

 

「なーに現役の諜報部隊に勝ってるんだ。大したもんだよ」

「ありがとうございます」

 

ナマリはイツキの肩を軽く叩く。そんなイツキにシュローが躊躇い気味に話しかける。

 

「仲は、順調か?」

「はい。大丈夫ですよ」

 

そうか…。とシュローは安堵する。そこでライオスが話を仕切る。

 

「今回集まってもらったのは他でもない。それは、新しい仲間を迎え入れようということだ」

 

すかさずチルチャックはライオスに問う。

 

「一応聞くけど、なんでだ?」

 

「このパーティ、攻撃のレンジが短すぎる。俺は近距離。シュローも近距離。イツキは中距離がいけないこともないが精度は近距離に比べると劣る。ナマリも近距離。ファリンは援護魔法主体…………圧倒的に中・遠距離攻撃が不足している」

 

だよな。と全員頷く。

 

「5階は厄介な飛行型の魔物も多い。そこで!新たに魔法使いを迎え入れる!」

 

またもやチルチャックはライオスに問いかける。

 

「迷宮5階だぞ。そんなの募集にも来ない。宛はあるのか?」

「無い!」

「なんで自信満々なんだよ!」

「無いからな。チルはあるか?」

 

「…前のパーティにも魔法使いはいたが、迷宮5階となると…まず来ないな。ナマリは?」

「私の種族忘れたか?」

「だよな。シュローは?」

 

「……いることはいるが、嫌だ」

 

恐らくマイヅルの事である。しかし身内を出来る限り危険に晒したくないため却下。

 

そこで、ファリンが控えめに手を挙げる。

 

「私、あるよ。宛」

「そうなんですか?」

「うん」

 

「マルシルっていう、私の友達」

 

チルチャックは手元にあるコインを弄りながらファリンに問いかける

 

「名前的に、女か?そいつの種族は?」

「女の子だよ。えっと……エルフ」

「エルフ…!」

 

目を輝かせるイツキとは対照的に、チルチャックとナマリとシュローが同時に呟く。

 

「「「エルフか……」」」

「……ダメなんですか?エルフ」

 

イツキは他種族の知識に乏しい。そんなイツキにチルチャックが答える。

 

「いいかイツキ。エルフってのは長生きだ。長生きってことは意固地で頭が固い」

「はあ…」

「ついでにいうと基本男は眉目秀麗。女は容姿端麗だ」

「…いいことじゃないですか?」

 

「分かってないな。イツキ。パーティが崩壊するもっとも多い要因はなんだと思う?」

 

「………迷宮内での、全滅?」

「違う。パーティ内での恋愛絡みのいざこざだ。俺はそれで解散したパーティを大勢見てきた」

 

「マルシルはそんな人じゃないよ…!」

 

そこでファリンによるフォローが入る。チルチャック達は腕を組みながら再び唸る。ナマリはファリンに言う。

 

「そいつ、戦闘経験は?」

「戦闘経験は分かんない。でも魔法は凄いよ。私なんか比べものにならないくらい!爆発魔法の免許だって持ってるよ」

「あの高いヤツですか!?」

 

イツキは思わず会話を遮った。ファリンはそれに答える。

 

「うん。1回だけ実習授業でね。凄い爆発だったよ」

「魔法専門のファリンのお墨付きか…」

 

でもエルフなんだよなぁ……と再び唸る。

 

そこでライオスが再び話を仕切る。

 

「じゃあひとまず俺とファリン、イツキだけで会って直接話してみるよ。それで問題なければ皆に紹介する。どうだ?」

 

イツキ名指しなのは、ライオスはエルフに会いたがっているイツキの気持ちを酌んだからである。

 

「ま、宛が無いのは事実だし…ひとまずお前らに任せるわ」

「ああ、任せてくれ」

 

「おい、イツキ!」

 

話が纏まった辺りで、酒場の入口からイツキを呼ぶ声が。正体はイヅツミとイヌタデだった。

 

「昼飯行くぞ」

「お昼ご飯、食べよ〜」

 

猫耳に凄まじい速度で反応したライオスの気配を察知したイヅツミはサッとイヌタデの後ろに隠れた。

 

そんなことまるっきり無かったかの様にライオスはイツキに優しく話しだす。

 

「いっておいで、イツキ」

「はい」

 

イツキは席を離れ酒場を後に。残ったのは大人組。チルチャックが口を開いた。

 

「いやぁ〜…年寄りに子供の明るい態度は疲れるもんがあるわ」

「だな」

 

ナマリもそれに同調する。シュローは待機していたヒエンとベニチドリに目配せで合図を送る。実は鍛錬時にも危険なことが起きたらまずいとのことで待機していた2人。再び後を尾けることに。

 

「最近イツキ、なんだか態度がよそよそしい気がするんだよね…」

 

ふう。とファリンは軽くため息を付く。それにチルチャックが反応する。

 

「そりゃ、イツキも年頃だしな。遊ぶなり飯食うなり同い年の方が気楽だろうし……それに」

 

チルチャックはチラリとファリンをみる。主に身体を。ファリンは首を傾げる。

 

「それに?」

「………なんでもね」

 

いうと絶対めんどうくさいことになる。そう思ったチルチャックは再び頬杖をついた。

 

「やだやだ、これだからオッサンは」

「うるせーオバサン」

 

「???」

 

「……俺も分からん。シュローは分かるか?」

「分からん」

 

チルチャックとナマリ以外、チルチャックの言葉の続きを理解出来る者は、残念ながらいなかった。

 





イヅツミに関して懐くのはやくない?という声がちょいちょい届きましたが、俺の宇宙のイヅツミはこうです。

興味本位な上に本編で出る可能性は少ないですが、この中でイツキが再現しそうな遠距離攻撃はどれですか?

  • 呪術廻戦から『開』
  • 幽遊白書から『炎殺黒龍波』
  • ONEPIECEから『火拳』
  • ヒロアカから『赫灼熱拳』
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