「と、いうわけで。新たに加入した…」
「マルシルです。宜しくお願いしまシュッ………します」
「「「「(噛んだ…)」」」」
マルシルが正式にライオス一行に加入した次の日。一行は迷宮の前に集ってマルシルと顔合わせしていた。
チルチャックは一瞬噛んだことを弄ろうと思ったが、流石に初対面なので遠慮した。スルーして話しかける。
「あー…チルチャックだ。鍵師を担当してる」
「ナマリだ。戦士やってる」
ナマリは自分の武器である斧を担いで挨拶する。
「んで、私の隣にいる仏頂面が、シュローだ」
「…シュローだ。以後よろしく頼む」
「(シュローさんいい機会なんだから本名名乗れば良かったのに…)」
「あ、じゃあおれも改めて。イツキです。魔法剣士やってます」
「基本的に、イツキとシュローで前衛。ファリンが援護。そのファリンを中心に壁役をするのが俺とナマリだ。俺は指示も出すから後方気味だけど」
「えと、ごめんなさい。この中での役割をもうちょっと詳しく知りたい、です」
「そうだな…よし、折角の機会だし俺達も振り返ろう」
そう言ってライオスが取り出したのはノートとペン。そこにそれぞれの名前と簡単な各人の得手不得手を書き込んでいく。
「とりあえず俺の主観で書いて、皆に渡すからそれぞれで修正してくれ」
ライオスは自分の分を書き終わりファリンへ。ファリンから他のメンバーへといった感じで全員書き込んで渡し続ける。
「ほらよ、これで全員だ」
「あ、ありがとうございます」
「敬語なんていらねぇよ。まだるっこい。そんなに歳変わらんだろ」
「おれは一番年下なので…」
そういえば失礼ですけどナマリさんお幾つなんですか? 59だけど。という会話の横でマルシルはノートに書き込まれたメモを読み進めていく。
ライオス・トーデン
ライオスのメモ
【主に盾主体で戦う剣士だ。得意なことは魔物の特徴を素早く観察し弱点や行動パターンを見極めることだ。主に後衛の前に出て援護及び指示を出すぞ】
イツキのメモ
【ライオスさんは観察力や決断力に優れた良いリーダーです。ですが何となくわかると思うんですが、少々人間性に問題、というより要改善すべき所があったりします。あまり偉そうには言えませんが】
チルチャックのメモ【ちょいちょい変なことは言うが基本は良いリーダーだ】
「ふむふむ…次がファリンね」
ファリン・トーデン
ライオスのメモ
【ファリンのことはひょっとしたら俺よりマルシルの方が知ってるかもしれないが、得意なことは回復魔法や身体能力を向上させる魔法。防御や援護に秀でた魔法を行使する事だ。帰還魔法や、生まれつきの霊感でアンデッドの魔物にはかなり強く出られる。持ってるメイスでの近接行動も得意だが、それは基本前衛の仕事なのでファリンがメイスを振るうのはよっぽど切羽詰まった状況だ】
ファリンのメモ
【ほとんど兄さんに書かれちゃったから、私が書くことないや】
イツキのメモ
【マルシルさんが来る前はメンバーで一番魔力を保有していて、多種多様な魔法に秀でた魔法使いです。おれの魔法の師匠もファリンさんです】
「うんうん、ファリンは凄いんだから。えっと、次がナマリ」
ナマリ(本名はカーカブルードのナマリだが、ここには記載されていない)
ライオスのメモ
【彼女は戦士であり優秀な職人だ。俺と同じで後衛を守る近接要員で、ナマリの一撃一撃はかなり重く、生半可な魔物なら耐えることはできないだろう。武器や防具で困ったらナマリに聞くのが最善だ】
ナマリのメモ
【一応言っとくが、守られているからといって周りの警戒を怠るなよ】
イツキのメモ
【ナマリさんはぶっきらぼうな人の様に見えますが、そんなことはありません。かなり人情家な人です。女性メンバー同士だからこそ出来る相談事もきっとあると思います】
「(へぇ…意外。ちょっと怖い人かと思ってた)」
チルチャック・ティムズ
ライオスのメモ
【チルはとても優秀な鍵師だ。持ち前の聴力は勿論、罠検知や気配察知で魔物を事前に察知するぞ。弓矢も得意で敵の陽動をしたりするが、元の力は低いのでそこまでダメージは出せない。あくまで陽動だな。個人的に俺はチルのことをサブリーダーだと思ってる】
チルチャックのメモ
【技能技術については書かれていることが殆どだ。だけどサブリーダーってのはゴメンだね。めんどうなのは嫌いなんだ】
イツキのメモ
【本人はこう言ってますがライオスさんの次にこのパーティで冷静かつ視野が広い人です。口調で誤解されがちですが、とても良い人です。あと奥さんとお子さんが3人いるそうです】
「(えっ結婚してるの?)」
シュロー(本名はもちろん違う)
ライオスのメモ
【シュローは近接特化の凄腕の剣士だ。侍だっけ?東方に伝わる伝統ある職務らしい。まさに斬れぬものなどなにも無しと言った風に、持ってる刀であらゆる物を切断出来るぞ】
シュローのメモ
【大体のことはライオスに書かれたが、俺にも一応斬れないものはある】
イツキのメモ
【シュローさんの剣の腕前は本当に目を見張るものがあります。撫でる様に、糸を通す様な繊細な剣技はまさに神業です】
「(サムライ…!ダルチアンの一族に出てた超強かった剣士!戦闘だけなら主人公より強かったのよね。えーっと最後が)」
真島イツキ
ライオスのメモ
【イツキの主な役割はこのパーティでのメインアタッカーだな。炎の魔法が得意でそれを剣に纏わせて攻撃したり炎を飛ばしたり出来る。さらに回復魔法や蘇生魔法などの援護魔法。帰還魔法まで使える万能型だ。パーティでの立ち位置も緩衝材の様に皆のフォローに入り常に周りへ気を配ってくれる。とても助かってるよ】
イツキのメモ
【なんだか照れくさいですが大体はライオスさんが書いてくれた役割をこなしています。ですが俺はファリンさんやマルシルさんほど魔力総量が多くないので連続戦闘は不得手です。炎以外の攻撃魔法も得意じゃありません。回復魔法もファリンさんには劣ります。器用貧乏にならないよう頑張ります】
ファリンのメモ
【イツキの炎剣術は凄いよ!それにとても優しい子なの。皆一人一人に気を使って細かいことにも気付くし、私や兄さんと違って町の人や他の冒険者にも知り合いが多いみたい。なにか困ったことがあったらイツキに相談すれば大体解決するよ!】
チルチャックのメモ
【コイツは戦闘こそ得意で周りに気を配りがちだが、自分のことを疎かにする傾向がある。俺も度々注意はしてるが一向に治る気配が無い。出来れば良く見てやって欲しい】
ナマリのメモ
【大体書かれちまってるけど、コイツは今の世の中から生まれたにしちゃ色んな意味で良いヤツすぎる。変なやつが寄り付かない様に見てはいるが限界もある。アンタにも手伝って欲しい。本人は気付いちゃいないが、近頃ストーカーっぽいやつも彷徨いてんだ】←それホント?(ファリンのメモ)
シュローのメモ
【彼はとても戦闘に秀でていてとても優しい少年だ。しかし彼はまだ15歳。子供であることに変わりは無い。我々大人が道を示さなければならない。君にも是非協力して欲しい】
一通り読み終わったマルシル。その後ろで危ないオーラを出しているファリンをどうにか宥めるナマリがいた。
「(とても信頼されてるんだ…15歳……15歳!?)」
「えっイツキくん15歳なの!?」
「そうですよ。この前なったばかりですけど」
「まだハイハイから立ったばっかじゃん!!」
「おれを赤子かなにかだと思いで?」
彼女はエルフ。正確にはハーフエルフであり、その寿命は常人のそれを遥かに凌駕する。現在48歳のマルシル。
「やっぱりエルフって凄いんですね。耳とか……耳とか」
「そんなに見られても困るんだけど」
マルシルは赤くなった耳を隠す。すみませんと謝るイツキ。
「よし、確認も出来たことだし。行くか、迷宮へ!」
ライオスの指示で全員迷宮へ入っていく。このメンバーで、迷宮はどんどんその実態を露わにされていく。
しかし、忘れてはならない。
迷宮の生物に上も下もなく。ただひたすらに特権である食が渦巻いている。
それは、人間も同じである。