異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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ちょっと短くてすみません。よくよく考えたら自分デートなんてした事ないからデート描写わかんねーや!わはは!

キレそう


第十五話『不変の日常』

「ねぇイツキ、これカッコよくない?」

「確かに、かなりカッコいいです」

 

「ねぇイツキ、これ美味しいよ?」

「どれどれ…おぉ、美味いですね」

 

ハーピーも思わず昼寝してしまいそうな程平和な昼下がり。メリニの商店街に2人の男女が歩いている。

 

1人はファリン・トーデン。高名な治癒術士であるとともにそのビジュアルとルックスから彼女に想いを寄せている男性は少なくない。

 

もう1人は真島イツキ。熟達の魔法剣士であり、その見た目の幼さからは想像もつかない大胆不敵な戦い方で密かに年上の女性ファンが多い様だ。

 

しかし今は両者その両方の片思い中の男性や女性ファンから殺意を向けられている。なお2人とも殺気に気付いてはいるものの理由は分かっていない。

 

そして、2人を見る数多の視線の中に混ざっている2つの視線の正体。

 

「普通にデートしてるね…」

「あ、ああ…」

 

学園始まって以来の才女マルシル・ドナトーと東方の侍ナカモト・トシローことシュローだった。

 

「…ていうか、私がファリンの様子が気になるのは分かるんだけど、シュローはなんで?」

「実は…」

 

シュローはマルシルに自身の配下であるイヌタデとアセビを紹介し、友人としてあてがったことを説明した。

 

「それがどうしたの?」

「いや…余計な世話だったのは承知している。しかし、実はファリンと恋仲だったのなら、本当に余計な世話だったな…と。恋仲の女性がいる男子に子供とはいえ女子を紹介するなど…」

「こっ…恋仲」

 

マルシルは顔を真っ赤に染め、対してシュローは真っ青だ。

 

「そ、それで気になったんだ…」

「ああ…むっ、2人がいない」

「えっ!?」

 

急いで様子を伺うと、先程までいた場所に2人がいない。

 

「ウッソ、見失った!?」

「……待て、あそこだ!」

 

少し離れた場所に移動している2人を見つける。しかしその2人の様子に絶句してしまう。

 

「ふふふ、アーン」

「あむ……ん、これ美味しいですよ!」

 

「……これはもう、恋仲なのでは?」

「いや…!ファリンは結構友達との距離が近い!それが弟分となると更に縮まるのかも……!」

 

どれだけ認めたくないんだ…。とシュローは思ったが、口に出す勇気は無かった。

 

「ん…?」

 

そこで、イツキがマルシル達の方へ視線を合わせる。慌てて隠れる2人。

 

「イ、イツキくん勘鋭くない…!?周りに人いっぱいいるのに!」

「伊達に迷宮に潜っている訳でも無し。見事な索敵だ」

「褒めとる場合か!」

 

「イツキ、どうしたの?」

「……いや、なんでもないですよ。次行きましょう?」

 

イツキは目をファリンに戻し、再び歩き始める。

 

「ほら、移動するぞ」

「う、うん…」

 

次にイツキ達が来たのは、露店のアクセサリーショップだった。

 

「へぇ…宝石によって含まれる魔力に差があるんですね」

「うん。定番所だとスピネルとか…あとラピスラズリかな」

 

イツキは露店の店員から許可を貰いラピスラズリのブレスレットを手に取る。

 

「おー…綺麗ですね。ちなみにお幾らなんですか?」

「2600ゴールドだ」

「値段もそれ相応って感じで…あ、ファリンさん。腕出してもらっていいですか?」

「腕?」

 

ファリンは袖を捲り白い腕をイツキに向ける。イツキはファリンの細腕を万が一にも傷付けないよう慎重に触れる。そしてラピスラズリのブレスレットをファリンの腕に着けた。

 

「やっぱり。ファリンさんには青が似合いますね。これください」

「あいよ〜」

「そ、そんな…悪いよ」

「おれがファリンさんに似合うと思ったから買ったんです。なにも悪いことなんて無いですよ」

 

ファリンはいつも赤い顔を更に赤くする。その様子を見てた2人。

 

「イツキくんすご…あんなやりとり小説でしか見たこと無いよ」

「やはり恋仲なのだろう……ぐっ」

 

胃のあたりが痛くなってきたシュロー。ぐぬぬ…と悔しがるマルシル。

 

そこから暫く尾行は続き、2人がとある雑貨店に入ったところでマルシル達はその外で待機する。

 

「ところで、君は何故ファリンの後を?……あ、すまない。恋愛は自由だ、そこに種族も性別も無いのは理解しているつもりだ」

「いや違うけど!?」

「そうなのか?」

「………当たらずも遠からずって感じ」

 

マルシルは壁によりかかり俯き気味にポツリポツリと呟きはじめる。

 

「淋しいんだろうな、私。これでファリンがイツキくんのになって…私のことなんて、すっかり忘れちゃってさ。アハハ…」

 

「……彼女とはそこまで長い付き合いでは無いが、そんなことをするような女性か?」

「違う!……ごめん。大声出しちゃった」

 

「それが答えじゃないか。わざわざ尾けなくとも、分かっていたことだ」

「……うん」

「そうですよ、大体ファリンさんがマルシルさんのこと忘れるとかナイナイ!天地がひっくり返って悪魔が神になってもありえないですよ」

「マルシル。淋しかったんだね」

 

「そうだよね…ん?」「ん?」

 

マルシルはシュローの背後を見る。そこには雑貨屋に入ったハズのイツキと虫捕り網を2つ持ってるファリンが立っていた。

 

「ファリン!?イツキくん!?な、なんで?雑貨屋に入ったハズじゃ…!?」

「途中から視線に気づいたんですけど、殺気も悪意も感じなかったんで念の為雑貨屋の人に裏口を通してもらったんですよ」

「で、視線を感じた方向へ来たらマルシル達がいたの」

 

「そ、そうでございますか…」

「(全く気づかなかった…というか何故虫捕り網を?)」

 

ファリンはマルシルを優しく抱き締め、頭を撫でる。

 

「ちょ、ファリン…?」

「ごめんね、マルシル。私も淋しかったんだ。イツキ最近他の女の子とばっかり遊ぶから」

「他の女……!?」

「ファリンさん人聞き悪いにも程がありません!?」

 

というか、マルシルにはさっき説明しただろう。とシュローは思った。

 

「ごめんね、マルシル」

「…ううん、私こそごめん。信じられなくて」

 

マルシルはファリンのことを抱きしめ返す。その2人を見て、シュローとイツキは少し離れた場所に移動した。

 

「すまない、イツキ」

「なにがですか?」

「ファリン殿との事だ。イヌタデとアセビを紹介したのは余計な世話だったろうに」

「……?」

 

なんのこっちゃという顔のイツキ。シュローは心の内をイツキへ明かす。

 

「おれがファリンさんと恋仲?恋仲って要はカップルですよね」

「そ、そうとも言う」

「はははは!ナイナイ!おれがファリンさんと釣り合うわけないじゃないですか!」

 

なにを言うてはりますかこん御人は!と笑いながらシュローの肩あたりを軽めに引っぱたくイツキ。

 

シュローは「(こいつマジか…!?)」と驚愕していた。

 

「ははは…はー…ファリンさんからしたら弟分みたいなもんですよ?そりゃあ…たまにおいしい思いさせてもらってますけど、それだけですよ」

「そ、そうか……良かった……?いや良くはないか…」

 

「なになに、なんの話?」

「うぐぶぁっ!?」

「シュローさん!?見たことない顔と聞いたこと無い声出てますよ!?」

 

シュローは自分の心臓辺りをドンドン叩き無理やり落ち着かせる。

 

「大丈夫だ、問題ない」

「そ、そう…?」

「そのセリフ大丈夫じゃないやつじゃないです?」

 

いつの間にかマルシルとファリンはこちら側へ合流していた。ファリンは集まった3人を見てにこやかに笑う。

 

「それじゃあ、2人には帰ってもらうよ!私とイツキはこのあと2人だけでいかなければいけない場所があるの」

 

「ふ、ふたりだけ……!?」

 

「ふふふ、そう……」

 

ファリンは背後からイツキの両肩を掴み、キメ顔を作った。

 

「『虫取り』をします」

 

「だから気に入った」

 

マルシルとシュローは「あ、この2人なら大丈夫か」と、同時に思った。

 

そして場所は変わりとある森の中。ファリンは動きやすい格好に着替え虫捕り網を構える。イツキも同様だった。

 

「実はね、最近モルフォ蝶が沢山見かけるようになったって聞いてたの」

「なるほど、それでさっき雑貨屋で虫捕り網買ったんですね」

 

2人は並んで森中を歩いていく。辺りからは鳥のさえずりや動物の鳴き声が聞こえる。

 

「よーし、捕るぞー!」

「おー!」

 

そして戦いが始まった。

 

「イツキ!そっちに行ったよ!」

「任され……た!?意外とすばしっこい!」

 

「ファリンさんそっちに行った!」

「捕まえたー!」

「さすが!」

 

「ファリンさんそれ蝶じゃない熊!!」

「よーしよしよし、良い子だね」

「マジかよ」

 

暫く捕り続け、観察し、逃がした辺りで湖に辿り着く。2人は湖の岸に並んで座る。

 

「おー綺麗なとこですね……あれ?なんか見覚えあるような」

「ふふ、だってここ私とイツキが初めて会った場所だもん」

「……あー!忘れてた!そういえばここじゃないですか!」

 

「もうあれから結構経つもんね……」

「早いですね……あ」

 

近くの森から、大量のモルフォ蝶が湖上を飛び回る。

 

「綺麗だ…」

「うん、とっても綺麗……ね、イツキ」

「はい?」

 

「また、来ようね?」

 

太陽の光を湖が反射し、ファリンの顔が鮮明に分かる。頬は赤く染まり、薄らと笑みを浮かべ、目を細めている。

 

「……綺麗、ですね」

「え?」

「あぁいや!蝶々が、ね!?」

 

「ふふふ……そうだね」

 

いつもの風景。何事にも何者にも崩される事の無い不変の光景。

 

そうだ。この時、この一瞬、全てが愛おしいのだ。

 

そして同時に、絶対に覆らない法則がある。

 

 

 

 

 

「ファリンさん!使って!」

 

「でも、でもイツキ……!」

 

「早くやれぇっ!!」

 

 

カタチあるものは、いずれ無くなる運命である事だ。





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