異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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戦闘描写分かり辛くね…?


第十六話『迷宮調査一日目』

「では、本日はよろしくお願いします」

「うむ、頼んだぞ」

「お願いね、皆さん」

 

タンスとの迷宮調査一日目。一行は迷宮入口に集まっていた。タンスの隣にはタンスの妻、ヤーン・フロッカがいた。タンスはライオスに近寄り話し掛ける。

 

「それと、無茶は承知なのだが頼みたいことがある」

「なんですか?」

「同行者を増やしたいのだ」

 

おいで。とタンスが言うと、近くにいた男女2人のトールマンがやってくる。2人とも高身長で褐色肌であり、よく見ると所々似た顔立ちをしている。

 

「キキです」

「……カカです」

 

「見ての通りだ。2人は迷宮初心者でな。今日は深入りはせんだろう?」

「はい。2階と、精々3階の入り口辺りまで」

 

「報酬は1万ゴールド上乗せする。この者達に色々教えてやってくれ。迷宮探索はそっちの方がプロだからな」

 

「俺はいいですけど…皆はどうする?」

 

ライオスはパーティに問いかける。いの一番に反応したのはイツキだった。

 

「俺は大丈夫です。しっかり守りますよ」

「まあ上乗せされるなら俺は文句ないぜ」

「私も、大丈夫」

「俺もだ」

「うん、いいよ……ナマリ?」

「……あ、私?お、おう。大丈夫だ」

 

上からイツキ。チルチャック。ファリン。シュロー。マルシルと、少し様子がおかしいナマリ。

 

「そうか。では布陣はそちらに任せる」

「はい。じゃあ皆、いつもの並びで…」

 

結果として、並びは一番前がライオス。後ろにシュローとイツキが横並びに、その後ろにキキとカカ。そしてタンス夫妻、その後ろをファリンとマルシル。殿をナマリとチルチャックという形となった。

 

一行は迷宮に入っていく。沢山の歩く音。装備が擦れる音。話す声が聞こえる。ハーフフットであるチルチャックにはそこそこ鬱陶しかった。

 

チルチャックは呆れ気味にナマリに話し掛ける。

 

「随分と大所帯だな」

「……」

「…ナマリ?」

「へっ!?お、おう…だな」

 

チルチャックはキキとカカを見てから様子のおかしいナマリを見て何かを察した様にナマリの肩に手を置いた。

 

「手ぇ出したら夫妻に殺されるぞ」

「出すかっ!!」

 

ホントかよ。とでも言いたげな顔で見るのでナマリは必死に弁解した。そんなナマリ達はさておきイツキはキキとカカに話しかけていた。

 

「自分はイツキって言います。お二人はタンス夫妻とはどういう関係なんですか?」

 

その言葉には、キキのみが反応する。

 

「養子なの」

「そうなんですか…どうして迷宮に?」

 

「いずれ、2人の仕事を手伝いたいから、その特訓」

「へぇ…それにしても、お二人共背が高いですね」

 

その言葉に、カカは顔を顰めた。イツキはそれを見逃さなかった。

 

「すみません。不躾でした」

「いいの。カカはあまり長い足が好きじゃないだけだから」

「キキ…!」

 

カカがキキの発言を止めさせようとするも、キキに軽くあしらわれてしまう。そんな2人を見てイツキはにこりと笑った。

 

「仲が良いんですね」

「ありがとう」

「俺は羨ましいですよ、長い足。身長そんなに高くないもので」

 

実際、イツキはファリンより下の158cmだ。

 

「イツキ、何歳?」

「おれは15です」

「15歳、凄いね。その歳で迷宮入れるなんて」

「パーティメンバーのお陰ですよ」

「ふふ、そっか。でも15歳ならまだまだ伸びるんじゃない?」

 

キキはイツキの頭の上辺りに手を置く。

 

「ふふふ、実は最近成長痛が酷くてですね。まだまだ伸びますよ。とても痛いというのに目を瞑れば歓迎な痛みです」

「分かるよ。凄い痛いよね。ね?カカ」

「……ああ」

 

突然話しかけられるも、表情は普通だ。どうやらカカは寡黙な人の様だ。決して不機嫌なのではない。

 

それが分かったイツキはカカにもどんどん話し掛けていく。カカはも最初は引く様なリアクションだったが、だんだん慣れてきたのか至って普通に話せるようになった。

 

「では2階におります」

 

ここまでの接敵はゼロ。迷宮に深入り出来なくなった冒険者達が1階をうろつきすぎているのが原因だ。

 

一行は2階へ降りていく。カカとキキは初めての迷宮の異様な光景に目を奪われる。タンス夫妻はここ以外の迷宮に足を運んだことがあるので、驚きつつも慣れた表情だった。

 

ライオスはタンス夫妻達へおっかなびっくりに質問する。

 

「じゃあ…森の部分は調査します?」

「そうだな。植生と、精霊たちの様子を見たい」

「おれも手伝います!」

「使えるのか?」

「はい」

「ほう…では頼む」

 

精霊。万物に宿るもの達の総称。空気中にすら漂っている彼らを調査するには、精霊を神聖化しているノーム式では『呼びかけ』といい、精霊を自然現象のひとつとしてとらえているエルフ式ならば『水鏡の魔法』を使用し精霊の様子を見る。

 

この2つに共通して言えるのは、どちらも精度はマチマチといったところである。

 

上記に、ノームは精霊を神聖化しエルフは自然現象と捉えているといった様に、精霊の全てを理解している生物はこの世に存在しない。

 

彼らは気まぐれであり働き者であり公平な存在だからだ。

 

かつてノームとエルフの精霊による解釈違いで戦争が起きた。結果、精霊は両者の尽くを滅ぼし、平穏が訪れた。

 

そのような事例があるため、精霊の扱いには清く優しい心と細心の注意が必要である。

 

タンス夫妻とイツキは精霊に対し『呼びかけ』を使う。

 

「ふむ…精霊たちの様子はとくにこれといって変わったことは無いな」

「そうみたいですね」

「あのー…私エルフ式使えますけど、やります?」

 

マルシルはそ〜っと後ろから控えめに手を上げつつ提案する。

 

「いらん。結果は見えている」

「むう……」

 

タンスとマルシルの様子を見ていたライオスはイツキに小声で話し掛ける

 

「エルフ式って?」

「精霊の様子を見る魔法にはノーム式とエルフ式がありまして、どちらも魔法を使います」

 

イツキは精霊魔法についてライオスと寄ってきたキキとカカに説明する。

 

「精霊か…あんまり興味なかったけど、なんか面白そうだ」

「ライオスさんも魔法勉強してみます?」

「うぅん…考えておくよ」

 

「おい、終わったぞ。次へ行こう」

 

全員は森から塔内部へ向かう。魔物との接敵は少ない。こんな大所帯では魔物も警戒しているのだろう。襲ってくるのは感情的に動かない自立式の植物系の魔物くらいだった。

 

暫く歩き続け、動く鎧が集中的に分布している城内への扉に辿り着いた。

 

「よし、開けるぞ」

 

重苦しい動きで扉は軋んだ音を立てながら開いていく。

 

「えっ?」

 

ライオスが間の抜けた声を上げる。いつもなら中央のレッドカーペットに向かって動く鎧が配置されているが、様子がおかしい。

 

全員が扉の方へ向いており、武器を構えている。飾り鎧に擬態するハズの動く鎧が既に臨戦態勢に入っているのだ。

 

そして、最奥に見える大扉の前には、金色の獅子の頭の鎧。くわえてこれは。

 

「特殊個体…!」

 

金色の鎧は下半身が馬の様になっていた。全てが鎧に覆われているが、姿かたちはケンタウロスのそれだった。

 

「いかにも、ここは通さんと言っておるな」

「通常個体が計8体。特殊個体が1体……ファリン、イツキ、マルシル。今日は日帰りだ。魔力のセーブはしなくていい」

「うん」「分かりました」「了解」

 

ファリンは前線戦闘組、イツキ、シュロー、ライオスに身体強化の魔法を付与。

 

身体強化の魔法は平たく言えばその対象の全体的の身体能力を向上及び保護をする魔法である。万能に聞こえるが、対象の元の身体能力を底上げするものなので、一般人が急に超一流の騎士になったりはしない上に、加減を間違えると肉体が損傷してしまう。

 

ファリンはいつでもすぐさま治癒魔法を発動出来る様に構える。

 

「よし、作戦はこうだ。まず今回爆発魔法は禁止ということ。調査するための魔法陣が損傷しない様にだ。なのでまずマルシルは集団に向かって氷結の弾丸を飛ばす魔法で攻撃。怯んだ隙に俺たちが突撃。まずは通常個体から片付ける。いいな?」

「はい」「分かった」「うん」

 

「よし、やれ!」

 

マルシルは杖先に魔力を集中、呪文を練り上げ氷結した弾丸を形成し発射。動く鎧達はそれぞれ防御や回避に専念する。そしてライオス達が突撃。

 

「燃え尽きろ!」

 

イツキは剣に魔力集中。炎の剣を形成し横振りで攻撃。動く鎧が防御した剣ごと鉄鎧は強力な炎によって溶け斬られた。圧倒的破壊力に計4体の動く鎧が両断される。

 

続いてシュローの速攻。走ったまま上半身を捻り居合の体勢へ。間合いに入った瞬間鞘から銀色の光が走ったと思ったら目の前の動く鎧は鉄鎧の隙間である上半身と下半身が分かれた。

 

その隣にいた動く鎧に対しシュローは刀を抜いた右向きに回転しながらしゃがみ、遠心力を利用し動く鎧を切断。防御が間に合う事の無い神速だった。

 

そしてライオス。持っている盾で防御しつつ攻撃。動く鎧はその衝撃力にバランスを崩し倒れた。そこをライオスは動く鎧に盾を正面からではなく横っ腹を使って動く鎧に向かって振り下ろす。

 

動けなくなった動く鎧を助けようともう1体がやってくるもマルシルの氷結の弾丸によって兜が吹き飛ぶ。そこを盾で攻撃し倒れた動く鎧はバラバラになった。

 

そして、金色の動く鎧。ヤツは微動だにせず大槍と大盾を構えたまま仁王立ちしていた。

 

「せー…のっ!」

 

ライオスの合図でマルシルが攻撃。金色の鎧はそれを分厚い大盾で防ぐ。盾を持っていない右側に盾を構えたライオスが突撃。金色の鎧は大槍でライオスに向かって攻撃。ライオスはそれを盾を両手で持って防御。シュローは正面から大槍が伸びたのを見てから速攻。

 

金色の鎧の股下を潜り太もも部分である鎖帷子を切断。バランスを崩した金色の鎧は膝を付く。そこを飛び上がったイツキが降下と共に炎の剣で両断。

 

金色の動く鎧は悲鳴の代わりに鋼が熱によって溶けたけたたましい破壊音を鳴らし地に伏せた。

 

3人は動く鎧が全滅するも警戒。しかし新手は来なかった。ライオスは後方組に声を掛ける。

 

「よし、皆もう来ていいよ!」

 

その合図で後方組が入城。タンスは冷や汗をかきながらイツキへ問いかける。

 

「末恐ろしいな、小僧。あれほどの火力をたたき出すとは」

「ありがとうございます」

 

イツキはライオスとシュローに向けて拳を突き出す。2人はそれに応え拳同士を突き合わせる。

 

「ライオスの盾、凄い」

「まるで見えなかった…」

 

キキとカカはライオスとシュローを賞賛。照れくさそうに笑う2人。タンス夫妻はチルチャックに大扉への罠感知を頼みチルチャックはそれを承諾。大扉に細工はされていないものの、鍵が掛かっていた。

 

「あ?ここに鍵なんて掛かってたか?」

「いや、前来た時には無かった」

 

どうします?とイツキはライオスに相談。ライオスは何か閃いた。

 

「イツキ、大扉を炎剣で斬っちゃおう。こう…扉と扉の間を通す感じで」

「それは出来ますけど…」

 

イツキはチルチャックをチラリと見る。チルチャックは肩を竦める。

 

「罠の類いは無い。中を傷付けないようにやれよ」

「わかりました」

 

イツキは大扉の隙間に剣を差し込み、炎剣を形成。けたたましい鉄が軋む音と共に大扉の鍵は破壊される。

 

「よし、開けよう」

 

ライオスとイツキで大扉を開ける。中は荒れており所々に家具がちらばっている。

 

そして、入って正面の壁に赤く光る魔法陣が書かれていた。

 

「ふむ、十中八九これだな」

 

タンス夫妻は魔法陣に近付く。イツキもそれに続いた。

 

「小僧、この魔法陣どう見る?」

「えっと…書き加えられたのは魔力残滓的に恐らく60時間以内、解析によるカウンターは無いです」

 

「正解だ、おいエルフの」

「えっ、私?」

 

「エルフ式から見てこれはどう思う」

「えっと…癖字が酷い。元々の癖か、そうとう焦ってたか。でもこれ…前見た迷宮に施されたエルフ文字の癖字にそっくり」

 

「わしも同意見だ。つまりこれは、狂乱の魔術師によって作られた魔法陣だ」

 

タンスの言葉に空気がピリつく。キキがタンスに聞く。

 

「この迷宮を作った人が新たに魔法陣を作った…なら、狂乱の魔術師は、警戒している?」

「だろうな。話を聞くにどこかの一級冒険者達が破竹の勢いで迷宮を攻略した。焦った狂乱の魔術師は新たに魔法陣を作った……のが、まあわしの予想だ」

 

「つまり、おれ達のせい…ってことですか?」

「4割くらいな。しかしどの道誰かが迷宮を攻略する。遅いか早いかの差でしか無かろう」

 

「この魔法陣、どうするんですか?」

「破壊する。また作られるだろうが時間は稼げるだろうさ」

 

「なら、おれの出番ですね」

 

イツキは炎剣を魔法陣に向かって振り下ろす。魔法陣は硝子が割れた様な音と共に砕け散る。

 

タンスは壊れた魔法陣に魔力による妨害工作を仕掛ける。これでしばらくの間魔法陣は生成出来ない。

 

「よし、今日は切り上げるぞ。狂乱の魔術師がこれに気付いてやってくるだろうからな」

 

タンスの指示で一行は迷宮を離脱。帰還魔法にて島主の館へ直接到着した。

 

酔ったナマリをファリンが介抱しつつ、タンス夫妻は島主へ報告へ。

 

「タンス、どうだった?」

「やはり狂乱の魔術師による妨害ですな」

「魔術師め…全く忌々しい」

 

「詳しいことはまた調査します。わしは彼らの元へ戻りますぞ」

「ああ、ご苦労だった」

 

タンスはメイドからライオス達の報酬を受け取りライオス達の元へ。

 

「おい坊主共、金だぞ」

「ありがとうございます」

 

「また頼むだろう、その時は協力を頼む」

「はい、喜んで」

 

ライオスはチルチャックに金を渡し分配の作業に入る。一方イツキはキキとカカに詰められていた。

 

「ね、イツキ。どうやってあの炎だしてるの?」

「大部分は精霊のお陰ですよ。ノーム式なので」

「今度、剣術を教わってもいいか?」

「俺よりライオスさんの方がいいと思いますよ、俺の剣の師匠はライオスさんですから」

 

その様子を、マルシルとファリンが見ていた。

 

「もう仲良さそうだね」

「ね」

 

少しして分け前が配られ一行は島主の館から撤収。それぞれ自分の住処に帰っていった。

 

トーデン兄妹とイツキと共に帰路を歩く。

 

「ねぇ、イツキ」

「はい?」

「狂乱の魔術師って…強いのかな?」

「な、実際のところどうなんだろう」

「どうでしょう…でもあの精度の魔法陣を迷宮中に張り巡らしているなら、魔力の保有量は…」

 

雑談しながら3人は宿へ帰っていった。それを、ひとつの小さな影が見ていた事に気が付かず。

 




迷宮調査はダイジェスト気味に進めますぞ〜
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