異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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嫌なことの連続でストレスがマッハでブチ切れそうになったので突貫工事で書きました後悔はしていません


第十七話『ネコとヒト』

 

迷宮調査二日目。キキとカカを除いた一行は再び迷宮へ潜り調査を開始。三階を集中して探索するとの事で今回は日帰りではなく何日か泊まり込んでの調査となった。

 

初日は上々。魔法陣を幾つか発見し破壊。イツキがゴーレムのコアを興味本位でくすねようとしたのをマルシルとタンスにバレこっぴどく叱られた以外は大したことはなかった。なお、ゴーレムの個人制作は違法である。

 

迷宮調査三日目。魔法陣を破壊しても狂乱の魔術師は現れず、タンスの予想では「何十箇所も設置しているから探知しきれないのだろう」という事で調査続行。長い探索の末やっと魔法陣を発見したものの物理的に高い場所にありどうしたものかと考えたところ、マルシルの爆発魔法の風圧で一番軽いチルチャックを飛ばして破壊という案がライオスから出たが却下。マルシルの爆発魔法を直接何度もぶつけ十四回でようやく壊れた。マルシルの魔力が枯渇したため三日目の調査は終了。

 

迷宮調査四日目。貧血気味のマルシルをナマリが担ぎつつ探索へ。半日掛けて発見出来たのは一つのみで、しかもグールの群れが守っていた。段々面倒になってきたのでイツキの全力の炎剣で一掃。魔法陣ごと木っ端微塵となり解決。イツキは倒れた。

 

流石に前線メインアタッカーと後方メインアタッカーがまともに戦えない状態なので撤退という形になった。今回で調査出来たことは以下の通りである。

 

①魔法陣の破壊は狂乱の魔術師には気付かれない。

 

②魔法陣は発見困難な場所にあるか、なにかが必ず守っている。

 

③魔法陣自体に防御プロテクトが張り巡らされているパターンもあり、熟達の魔法使いが魔力切れを起こすまで攻撃しないと破壊出来ない可能性がある。

 

以上の事を島主に報告。島主はタンスに相談し、特殊個体及び魔法陣の破壊に懸賞金を設けることに。特殊個体の討伐をした場合肉体の一部を持ち帰る事が絶対条件であり、魔法陣の破壊は魔法陣の正確な模写をしてから破壊が絶対条件だった。

 

かなり難易度は高いが、一階の特殊個体の討伐には十万ゴールド。二階ならば二十万ゴールド。三階ならば四十万ゴールドとかなりの高額懸賞金であり、再び一攫千金を目論む冒険者で迷宮は溢れかえった。

 

因みに四階は六十万。五階は百万ゴールドである。

 

タンスの提案により迷宮調査は一時中断。理由は魔法陣の解読だ。

 

「恐らく、早くても一ヶ月は掛かるだろうな」

 

調査が中断されても迷宮は攻略しようとライオスは提案したが、チルチャックがそれを拒否。ここ最近の迷宮調査はかなりハイペースであり主に前線組は疲労困憊。ついでにいうと報酬で懐が潤ったため無理せず身体を休めるべきだと反論。

 

意外にもナマリがそれに賛同。ハイペースではあったものの報酬がかなり多かったというのもあって余裕が出来たらしい。

 

結局、一行は長い休みを満喫することになった。

 

ほとんどのメンバーは日常を謳歌し、平穏に過ごした。イツキはシュローに身のこなしや体術を教わりに出向き、イヅツミとイヌタデと共に修行に明け暮れた。

 

休みが続いたある日。マルシルは部屋の掃除をしていてあることに気付く。

 

「あ、あの髪留め壊れちゃったんだ…買いに行こ」

 

マルシルは外出の支度を済ませ町へ繰り出す。暖かくなってきたというのもあり、いつもの魔術師ローブではなく白のワンピースだった。

 

鼻歌交じりにマルシルは雑貨屋の扉を開ける。

 

「!?」

 

そしてすぐさま閉めた。理由は一つ。

 

「ん…今誰か入ってこなかったか?」

「気の所為じゃない?」

 

イツキとイヅツミがいたのだ。それだけなら隠れる必要は無い、しかし問題は二人の状態にあった。

 

イツキは普段通りの立ち振る舞いだが、イヅツミがイツキにベッタリとおんぶに近い形で張り付いていた。両手をイツキの胸あたりに回し入れて掴み、足をイツキの腹辺りで組み付いていた。さらにイツキの肩にイヅツミは顔を置いているため顔もかなり近い。

 

何故こんなことになっているのか。それはイツキの視点で今日の朝まで戻らなければならない。

 

「ん…ふあぁ……あ?」

 

何時もの様に起床するイツキ。しかし様子がおかしい。

 

自分がいるベッドの毛布がやけに盛り上がっている。

 

「え…?」

 

恐る恐る布団を捲ると、そこにいたのは一匹の猫。いや正確には一人の猫だった。

 

「イ、イヅツミさん…?なにしていらっしゃりやがるので?」

「ん…なんだ、もう朝か」

 

「いや、なんだもう朝か(キメ顔)じゃなくて。なんで俺のベッドに?」

「なんでだ?」

「いやおれのセリフだが?てかどうやってこの部屋入ったのさ。鍵は閉めたよ?」

「窓から」

「道理で風通し良いわけだよ…」

 

窓は開け放たれており、カーテンがそよ風に揺れている。因みにここは宿屋三階である。

 

「と、とりあえず離れてくれる?色々大変だから…」

「やだ」

「もうこの猫ちゃんめ……」

 

イヅツミはイツキにしがみつき離れようとしない。

 

どうにかこうにか離そうするも、一向に離れる気配が無い。仕方ないので強硬手段に出る。イツキはイヅツミをくっつけながら立ち上がる。

 

「イヅツミ、おれ着替えるけど」

「そうか」

「……着替えますけど」

「ふあぁ……」

「欠伸かましてる場合ちゃうぞコラ」

 

脱ぐぞ、いいんだな?脱ぐぞ?とイツキは脅しをかける。しかし今のイヅツミに効果は無かった。

 

「お前の貧相な身体を見てもなにも思わん」

「言ったな?最近筋肉付いて逆に身長伸びないんじゃないかと心配しているレベルで筋肉付いた俺に言ったな?後悔すんなよ」

 

イツキは着替え始める。上を着替えようとした時イヅツミは器用にイツキの下半身に引っ付いた。

 

下を着替える際は逆に背中の方へモゾモゾと動いて回避。

 

「着替えれちゃったよ…」

「ふあぁ……」

「相変わらず眠そうですねこの猫様は」

 

イツキは顔を洗うため共同の井戸へ向かう。顔を洗っている最中にライオスと出会した。

 

「おはようイツ……キ?新しい遊びか?」

「それが俺にもさっぱりでございます」

 

なんだかんだイヅツミを見慣れたライオスは生物学的欲求を満たすために興奮はしなくなった。大部分はイツキの鉄拳による制裁が影響しているのだが。

 

「うーん猫獣人特有のなにかなのか…?それとも獣人の影響が…」

 

ブツブツと何かを呟きながら朝の身支度を済ませていくライオス。面倒になったイツキはライオスを放置して朝食を食べに食堂へ向かった。

 

「あ、発情期?でも獣人と動物には差があるし…」

 

ライオスのノンデリにも程がある発言は幸いながら二人に聞かれることは無かった。聞かれていたらさすがのイツキも緋炎衝・開(物理)を炸裂していただろう。

 

朝食の時は何故か普通に席に着いたイヅツミ。食べ終わると速攻でぬるっとまとわりつく。周りから暖かい目で見られるもイヅツミは何処吹く風といった態度だった。イツキは羞恥で死んだ。

 

しかし半日もすれば慣れたもので、日用品を買いに雑貨屋へ行ったところをマルシルに発見されたのだった。

 

「(もしかして、あの子がシュローの言ってたイツキの友達のイヌタデちゃんかアセビちゃん!?ど、どういう関係なの!?)」

 

今の状態のことをイツキに聞けば「こっちが聞きたいです」と返されるのがオチだが、さすがに聞きに行けなかった。マルシルは何故かファリンに報告するためファリンがいるであろう場所へ巡っていった。

 

一方、イツキはそんなことはつゆ知らず買い物に勤しんでいた。

 

「なあイヅツミ。そろそろ疲れてきたんだけど、いい加減降りるか理由を教えてくれない?」

「ニャムニャム…」

「え、もしかして寝てる?」

 

イヅツミは器用にも寝ながらイツキに張り付いていた。あまりの自由っぷりにさすがにびっくりした。

 

仕方が無いのでイヅツミを背負った状態で買い物すべき場所を巡っていく。武器屋で換えの鞘と砥石。防具屋で換えの革ベルト。魔導具店で魔導書を購入。いずれの店主にもからかわれたりしたが、愛想笑いをするしかなかった。

 

せっかくなので公園で魔導書を読もうと公園へ。ベンチに座り魔導書をペラペラと捲っていくうちに、イツキもうつらうつらし始めた。

 

「おれもちょっと寝るか…」

 

魔導書を鞄に仕舞いベンチの背もたれに体重を預け就寝。迷宮で警戒しながらの睡眠した経験をここで活かした。

 

太陽が沈みかけた時に目が覚める。辺りはすっかり夕方で人影は少ない。ふとイヅツミの方を見ると、イヅツミはイツキのことをジィっと見ていた。

 

「びっ……くりした。なにしてんの」

「マヌケ顔を見てた」

「さいですか…」

 

イツキは立ち上がり、買ったものを宿屋に置いてきてから夕食を食べに食堂へ。食堂に着いたころにはすっかり夜は更けていた。

 

食堂へ入ったイツキを見かけた女性店員(巨乳)がイツキに声を掛ける。

 

「いらっしゃいイツキ!……背中のはなんだい?」

 

「ネコです」

「ネコかぁ…で、なに食べる?」

 

女性店員(トールマン31歳独身)は意外にもこれをスルー。

 

「イカめし下さい」

「あいよ。お嬢さんは?」

「肉の美味いやつ」

「オススメね、じゃあ席ついときな!」

 

イツキはのたのた歩いて席を探す。いつもならイツキに声を掛ける冒険者達も、イヅツミを見て引っ込んだ。

 

そんなイツキに声を掛ける人間が一人。

 

「あ、イツキさん。こんばんは」

「あぁ、カブルーさん。こんばんは」

 

カブルーだった。カブルーは内心「(まだやってんだこの人…)」と思いながらも疲れたイツキの顔を見てスルーした。出来る男である。

 

「席、空いてますよ」

「じゃあ失礼して」

 

イツキが椅子を引いた瞬間その椅子にイヅツミがぬるっと移動して座る。こうなることを予想していたイツキはもう一つの椅子を引いて座る。

 

「珍しいですね、カブルーさん一人なんて」

「俺にも一人になりたい時ぐらいありますよ」

 

「(いっつも知らん人と話してるのに…?)」

 

「イツキさん。最近は修行に勤しんでるそうですね、今日は休日ですか?」

「そうですね。昨日もめいいっぱい扱かれましたよ…」

 

主にシュローに身のこなしと体術。マイヅルに魔力流れの効率化を教わっている。因みに魔力流れとは効率化すればするほど低魔力で魔法が使える様になるものの総称だ。

 

「イカめし大盛りと照り焼きチキンとライス大盛りお待ち!」

 

女性店員(先月フラれて実は傷心中)によってテーブルに料理が並べられる。イカはカーカブルード方面で捕れた新鮮なものを使用。チキンもタレがテカテカに光っていて食欲を唆る。

 

「いただきます!」

「ます」

 

二人が食事しているのを尻目に、カブルーはドリンクを飲むフリをしながら二人を観察する。観察スキル(自力)はあれからかなり研ぎ澄まされ、バレない様に洗練された。

 

「(今の声からして以前俺の首に刃物を突きつけたのはこの子だな。凄いメンタルだな、殺そうとした相手と同じテーブルに座るなんて)」

 

食い方汚いなともついでに思ったカブルー。

 

「(聞いた情報によればこの子は今日の朝からずっとくっついているらしい。何故だろう。獣人特有の独占欲?それとも発情期か?)」

 

ライオスに負けず劣らずのノンデリぶりをかますも、表情にも発言にも出ていないのでライオスは見習うべきである。

 

「ご馳走でした」

「した」

 

「お粗末さまでした」

 

「それじゃあカブルーさん、おれ達はこれで」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「さい」

 

立ち上がったイツキにイヅツミは再びぬるっとまとわりついた。女性店員(彼氏募集中)にお金を手渡し食堂を出たイツキ。

 

そして難関にぶち当たる。

 

「イヅツミ、おれ今日汗かいたから風呂入りたいんだけど」

「ふぅん」

「いい加減降りよう?」

「んー」

「精霊風呂だから普通に他に男性客いるから。お金は払うからイヅツミは女風呂行ってね」

「んー」

「ホントに分かってんのかワレ」

 

風呂屋に到着し、案外すんなり離れたイヅツミ。お金を受け取り女風呂へ。やっとこさ解放されたイツキは思い切り背を伸ばしてから風呂へ。

 

一通り身体を洗って風呂に浸かる。全身の魔力層に精霊が通っていくなんとも言えない感覚。思わずボヤっとしてしまい長風呂になった。

 

身体を吹いてから風呂屋を出たイツキ。そこには風呂の熱で頬が紅潮したイヅツミが立っていた。

 

「遅い」

「ごめんて」

 

イヅツミは再びイツキの傍へ。「(またか…)」そう思ったイツキだったが、その予想は裏切られる。

 

イヅツミはイツキの腕に抱き着いた。思わず某空島編のラスボスのびっくり顔になったイツキ。

 

「なんて顔してるんだよ」

 

イヅツミはケラケラと笑う。

 

「(あれ、イヅツミってこんな可愛かったっけ?)」

 

実際のところイツキはイヅツミを異性として見ていなかった。しかし、頬が紅潮したイヅツミを見た時、心拍数が増加したのは事実だった。

 

今まで異性として意識していなかったのでくっつくのをなんとも思っていなかったが、今となっては話が違う。

 

イツキはギクシャクしながら宿屋へ戻った。そして部屋の前に辿り着く。

 

「えっと…じゃあ、この辺で」

 

イツキはイヅツミから離れようとするも、イヅツミは再びイツキにくっついた。

 

「眠い」

「はい」

 

イツキが扉を開けると、イヅツミはスルッと中に入りベッドへ潜り込み、すやすやと寝息を立て始めた。

 

「(いやほんとに眠いだけかい!!!!)」

 

思わず大声を出しそうになったが、まあイヅツミだしな……と納得した。

 

仕方ないので買ったばかりの本を読む用のソファに横になるイツキ。一日中イヅツミを運んだまま歩き続け疲労困憊になったイツキは直ぐ眠った。

 

「んん………ん?」

 

しばらくして、なにか重みを感じて目を覚ます。

 

「イヅ……ツミ?」

 

瞳孔を開きっぱなしのイヅツミが、イツキに馬乗りになっていた。イヅツミの顔が月明かりに照らされている。

 

「分からないんだ……」

「え?」

「この前、お前が金髪の女と出歩いてるのを見た」

「(ファリンさんのことか…?)」

「その後も、迷宮から出てきたお前は金髪の女といた」

「(あの時はライオスさんもいたけど)」

 

ポタ、ポタとイツキの頬に涙が落ちる。月明かりに反射した涙は、とても綺麗だった。

 

「今日も一日中お前を見たけど、結局分からなかった。これはなんだ?私はなんで、こんなに苦しいんだ?」

 

イヅツミは胸のあたりを強く握る。

 

「教えてくれ。これは、なんなんだ?」

 

 





ライオス「説明しよう!今のイヅツミは発情期に入っていてイツキをそういう目で見ているぞ!今までの発情期は身近の対象が御館様かシュローしかいなかったのでテキトーに誤魔化していたが友達とも男とも意識してしまうイツキへの恋にも近い感情が発情期と重なって情緒と感情がぐちゃぐちゃになっているんだ!!つまり今のイヅツミは人としての恋感情と獣としての子孫を残す種族的感情に両方から押しつぶされているんだ!!人から猫になったイヅツミ特有の現象とも言えるな!!正確には主人格は猫の方らしいがその程度は誤差ともいえるな!!」

※このライオスは本編のライオスでは無いです

フゥー…ッ スっとしたぜ。
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