なにをとち狂ったか酒に酔った私は勢いで投稿しました。だが後悔はしていない。
そういえばイツキの細かい容姿と服装が分からないので絵を書いてみせてくれとメッセージを受け取りました。
オラにそんな画力は無ぇっ!!!(クソデカボイス)
メリニの町はずれにある海岸線。カーカブルード方面ではなくただただ広い海が続いており、漁師曰くこちらは魚が取り辛いとのこと。
そんなこともあって人気が無いので、知る人ぞ知る隠れスポットになっていた。
その海岸線に、一人の少年の姿が。彼は持っている愛用の魔剣に魔力を込め炎を形成。両手で剣を空に掲げ魔力を更に注入。
炎の熱で剣の周りには陽炎が生まれ、少年は一気に剣を砂浜に打ち付ける。
とてつもない爆音と共に地面が抉れる。直接その剣を見なくともその破壊痕で威力を察せられる程だ。
そして、少年は息を切らしながらぺたりと座り込んだ。
「はぁ…はぁ…」
少年、イツキは誰にも告げずこの場所にやってきていた。この砂浜には何度か訪れていた。
一つ目は剣の威力の検証のため。二つ目は悩み事があるときに。
今回は後者だった。
なにかと悩み事が多い年頃ではあるが、今回は特に難問だった。
それは、昨日の夜。イヅツミとの夜の会話。
結局あの時イヅツミはイツキの胸で泣き腫らし、疲れたのかそのまま就寝した。イツキは混乱しきった頭でどうにかイヅツミを慰めようと頭を撫で続け、疲れていたのもあり気付かない内に就寝。
そして目が覚め瞼を開くと、そこにはイツキの胸に顎を乗せてイツキの顔をじーっと見ているイヅツミがいた。
「…なにしてんの?」
「マヌケ顔を見てた」
イヅツミはスルッと体勢を変え、ソファに座る。
「……昨日の夜のことは、忘れろ」
「イツキ」
「…なに?」
「私たちは、まだ、友達、か?」
イヅツミはイツキの方を見ずに言う。その声は微かに震えていた。
「うん。友達だよ」
「……そうか」
イヅツミは露骨に安心しきった声で返事する。そしてイヅツミは立ち上がり、イツキの前に立った。
「…なに?」
イヅツミはクイッとイツキの顎を自分の方へ引く。その表情は真剣ではあるものの、どこか揶揄う様な、そんな笑った顔だった。
「まだ、な」
そう言い残し、イヅツミは部屋の窓を開けてそこから出ていった。
「……へ?」
ただ一人取り残されたイツキだった。
そして今に至る。
「なんだったんだァーーーっ!!!」
再度、炎の剣を砂浜に打ち付ける。心做しか先程より衝撃が強い。
前回のイマジナリーライオスの説明通り、イヅツミは獣の欲求と人の欲求が混ざりあい初夜一歩手前までいったのだが、最後に人の心が勝り、元々そんなに意識していなかった初めての異性の友達であるイツキがそういう風に見えた事に「果たしてそれは自分の欲求なのか?」と思い至り訳が分からなくなって感情が爆発して泣き出した。
というのが昨日の夜の出来事なのだが、イツキからすればちょっと異性として意識し始めた相手がお風呂上がりに自分の部屋で寝泊まりして泣かれた挙句に最後の最後で意味深なことを言って立ち去ったのだ。
「おらぁーーーっ!!」
三度目の全開攻撃。砂浜は瞬く間にその面影を残さなくなった。
「……帰ろ」
悩み多き少年少女達だった。
一方その頃イヅツミはというと。
「ア、アセビちゃん?どうしたの?」
「ダマッテロ……」
「は、はいっ」
イヌタデにうつ伏せで膝枕されていた。正確にはさせていた。ヒエンとベニチドリは怪訝な目でイヅツミを見ていた
「…アセビのやつ、どうしたんだ?」
「さあ…」
「恋患い、だな」
「マイヅル様っ!?」
ヒエンとベニチドリの背後にいきなりマイヅルが現れた。気配を消しながら近付いてきたのだろう。
「あの感じ、私も覚えがある。そう…あれは御館様と初めて出会った夜のこと」
「あ、それ長いですか?」
ヒエンがバッサリと話を断ち切る。ベニチドリがマイヅルにこそっと話しかける。
「てか恋って…相手は?」
「そんなの、一人しかおらんだろう」
その言葉に、ヒエンとベニチドリは「あー…」となった。確かに、イヅツミの交友関係はとても狭い。該当者は一人しかいなかった。
ヒエンが腕を組み唸る。
「うぅん…勝てますかね、あの人に」
「どうであろうな…かなりの強敵だ」
「なんの話だ?」
「坊ちゃん!?」
シュローはマイヅルに気付かれることなく接近していた。いや、ただ考え込んでただけだが。面倒になりそうな気配を察知したヒエンがなんとか誤魔化す。
「あー、なんでもないよ。アセビが拾い食いして腹壊しただけだ」
「そうか…控えさせろよ」
シュローはそのまま外出していった。マイヅルも慌てて追いかける。
「はあっ……こりゃ、一波乱ありそうだな」
「一つで済めばいいけど」
ところ戻ってイツキへ。
ストレス発散から戻ってきたイツキはそれでもボーッと考え込みながらメリニを歩いていた。
「あれ、イツキ?」
そこを、キキとカカに見つかった。買い物中だったのか、二人共ラフな格好だった。
「あぁ…キキさん、おはようございます」
「もう昼だぞ」
カカに頭を撫でられる。何故頭を?撫でやすい位置にあったから…と会話をしていると、キキとカカの背後からタンス夫妻と大の大人が直ぐにへばってしまうような大荷物を片手で抱えたナマリがやってくる。
「ん?イツキか?」
「なんだ、坊主。お前も買い物か?」
「こんにちは、イツキちゃん」
「あれ、ナマリさんも付き添いですか?」
「まあ、そんなところだ」
話を聞くにどうやら戦士志望のカカにナマリが色々と教えてやっているらしく、流れでキキとその親であるタンス夫妻とも仲が良くなったらしい。
「なんだ、イツキらしくもない顔だな。なにか悩みか?」
流石の戦士の鋭さだ。イツキは「うっ」と声を出してしまう。
「まあ…そんなところです」
「ふうん…お前でも悩むことあるんだな」
「どういう意味ですかそれ」
「はははっ!悪い意味じゃないよ。ただ、ちゃんと年相応なんだなと思っただけさ」
ナマリはイツキの背中をバンバン叩く。優しく、前に出してやるような強さだ。
「存分に悩めばいいさ。それは絶対今後お前の役に立つからさ」
「ナマリ、先生みたい」
「まあ今はカカの先生だしな?」
そんじゃな!とナマリ達は立ち去っていく。イツキは手を振って見送った。
「……おれも買い物してくか」
イツキはとぼとぼ町を歩き、目に付いた初めて入る雑貨屋に入る。
そこは台所用品や調味料などが揃っているタイプの店だった。種類は様々で、スパイスだけでも数十種類はくだらなかった。
「カレーでも作ろうかな」
スパイスが入った小瓶をいくつか持って棚周りをうろうろする。すると入口からは見えなかった棚の間に、一人のドワーフが背伸びしていた。
「ぬっ…く…と、届かん…」
どうやら身長が足りず棚の上の方にある商品が取れないらしい。
「取りますよ」
「ん?おお、助かる」
イツキは男性が取ろうとしていた商品を手渡す。かなり特徴的な格好だ。角がある鉄兜に大きなリュックサック。髭もかなり立派なドワーフの象徴の様な男だった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう、少年よ」
男性はイツキから商品を受け取り、イツキの顔と腰にある剣を見て一瞬何か考えたが直ぐに、ではな。と言って商品を買って立ち去った。
「これ、お願いします」
「あいよ」
イツキも商品を買い帰路に着く。とぼとぼ歩いていると、後ろの方から何やら声が聞こえる。
「おーい!少年ー!」
「え、おれ?」
先程のドワーフの男性だ。どったどったと走りイツキの元へ。
「どうかしましたか?」
「いやあ、すまんすまん。お主ひょっとしてイツキという名前ではないか?」
「はい、おれはイツキですけど…」
「そうか、やはりお主がイツキか!握手してくれぃ」
イツキは男性の言う通り握手する。未だイツキの頭にはハテナが浮かんでいた。
「おっと、自己紹介がまだだったの。わしは『センシ』という名でな。基本的に迷宮で暮らしておるしがないドワーフだ」
迷宮で暮らしている。その一言でイツキは少し警戒する。それもそのはず、迷宮に住み着いて地上に出ない人間は基本的にスネに傷を持つ人間ばかり。しかしここ地上だな?と思い更に困惑した。
「お主達のパーティ、噂では一級と呼ばれ特殊個体に溢れた迷宮を調査しておるのだろう?」
「え、えぇ。はい」
「それだ!」
「?」
「実は特殊個体のせいでわしが普段荷物を置いたりしている二階付近がグールで溢れてな。しかしお主らがグールどころか特殊個体を一掃したと聞いた」
センシはイツキに頭を下げる。
「ありがとう。お陰で元々の生活に近い環境に戻れた」
「い、いえ。とんでもない!」
「会えるか分からんので、お主らのパーティにも礼を言っておいてくれぬか」
「は、はい……そう、ですね」
パーティ。友達。イヅツミと連想してしまったイツキは思わず暗い顔になる。それを見たセンシはイツキに提案する。
「ふむ。先程から何か悩み事でもある様子。どれ、わしに聞かせてみぬか?」
「え?いや、でも…」
「全く無関係の人間に話すというのも悩み事を解決するには良好な手段。ただ話すだけでも結構違うぞ?迷宮を一掃してくれた礼だ。わしを助けると思って聞かせてくれ」
「では……立ち話もなんですので、そこのベンチでいいですか?」
センシはニコッと笑って肯定する。ベンチで二人座り、イツキはぽつりぽつり話し出す。
イヅツミのこと。初めて意識する異性のこと。名前など個人情報は伏せたまま話せるところまで話した。それを聞いたセンシはうんうんと唸り続ける。
「思うに……その娘はまだ分からぬのだ」
「分からない?」
「そう。特殊な環境で異性と関わらず過ごし人生で初めての異性の友達。娘にとって初めての連続。あまりにも続く出来事に心が追いつかず混乱してしまい泣いてしまった……のかもしれん」
似たケースを見たことがある。とセンシは続ける。
「その男は生涯を戦いに費やしその功績を認められ族長となった。しかし戦う事しか知らぬ男は嫁を娶るのにかなり苦労したのだ。なにせ相手は初めて相手する未知の生命体だからな。接し方も、己の人生で培ってきたあらゆる経験が通用しないどころか意味を成さない相手」
その男にも相談され間に入ったことが何度かあった。とセンシは笑う。
「その人は、どうなったんですか?」
「今では嫁が三人いる立派な族長になった。ここ最近は会っていないが、きっと元気にやっているだろう」
「少年よ、歳は幾つだ?」
「先日十五歳になりました」
「十五か、ならば分からないことだらけだろう」
センシはイツキの背中に手を添える。大きくて、無骨で、岩のような手のひら。岩と違うのは、それは温かみを帯びていることだ。
「大人を頼りなさい。それは子供であるお主の特権だ」
その瞳はとても純粋で真っ直ぐであり、センシの言葉はイツキの心にストンと入り込んだ。
「ありがとうございます。なんだか楽になった気がします」
「そうか。それは良かった」
慣れないことをした甲斐が有るな。とセンシは笑った。
「そういえば…おれも聞いていいですか?」
「なんだ?」
「センシさんは、どうして迷宮に住んでいるんですか?」
「わしか?わしはだな…」
センシはベンチから降りて、その拳を天に掲げる。
「全ての魔物食を極めん為!」
「……えっ!?」
「魔物を食い、血肉とし、かつ美味い調理法を見つけるためだな」
「ま、魔物って…食べられるんですか?」
かつてイツキは歩き茸を食べようと思ったが、ライオスに止められた。そこから魔物は食べることは無い動物とは違う生き物と思っていた。
「もちろん食える!見た目から忌避感を覚えるものもおるし扱いを間違えて腹を壊す者も後を絶たんが、食える!」
「た、例えばどんな?」
「む、興味があるのか?よろしい、ではまず歩き茸の…」
魔物食談義は五時間近く続き、イツキは時間も忘れて聞き入っていた。
そして辺りがすっかり暗くなったので、センシとはそこで別れた。
迷宮に潜っていれば、また会える。そういってセンシは去っていった。
イツキは上機嫌にスキップしながら帰路に着いた。悩みなどすっかり忘れてしまったかのようだ。
そして、宿屋に着き自分の部屋に入るためライオス達の部屋の前を通った時、ライオス達の部屋の扉が勢い良く開く。
「「イツキっ!?」」
「うわあぁっ!?ラ、ライオスさんファリンさん!?」
「どこ行ってたんだよ心配したぞ!」
「イツキ、怪我ない?お腹は空いてない?」
とても心配そうにイツキを囲む二人。それを見て、イツキはセンシの言葉を思い出す。
『大人を頼りなさい』
思わず、イツキはプフっと吹き出した。ライオスは困惑気味に話しかける。
「イ、イツキ?」
「すみません。ご心配おかけしました……もう、大丈夫です」
どこかスッキリしたような顔のイツキ。それを見て二人は安心したのか、イツキの頭を撫でる。
「なにかあったら、言ってくれよ」
「はい」
「……そういえば、イツキ」
「はい?」
「昨日マルシルから聞いたんだけど……女の子背負ってたって、ホント?」
「えっ」
その表情は、どこか薄暗かった。
因みにセンシがイツキのことに気付いたのは他の冒険者の噂である「小さい黒髪の魔法剣士」という特徴を聞いていたからだったりする。
そういえば遅れてしまったのですが、感想が100件を超えました。本当にありがとうございます。
毎回定期的にサイトを読み込みなおして通知来てないかなぁとニヤニヤしながら待ってます。