異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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スピード感欲しくて地の文少なめになったけど薄味になっちゃったかな…?


第二十話『ダンジョン飯』

 

紆余曲折あった一ヶ月。約束の日にパーティを代表してライオスが、魔法使いということでファリンとイツキとマルシルが島主の館に訪れていた。

 

「おお、来たか。まあ座れ」

 

ここは島主からタンスへ与えられた執務室であり、カーカブルードの調度品や魔術蔵書で埋め尽くされていた。

 

四人はソファに座り、タンスは上座のソファへと座った。

 

「とりあえず分かったことは二つ」

 

①この魔法陣は遠隔で再起動出来ること。破壊したとしても持ち主が魔力を注げば復活する。

 

②魔法陣はその陣同士で魔力パスの役割をもっており、一つの魔法陣を破壊しても近くに魔法陣があれば自動で再起動する。

 

この情報に一番驚いたのはマルシルだった。

 

「そんな…魔法陣を使って魔法陣同士繋がった魔力の線を作る?そんなの、無い糸であやとりをするようなもの…それに遠隔再起動に自動再起動?古代魔法の最高峰の技術の結晶じゃない…!」

 

「そうだ。そしてさらに厄介なことが一つ。このパスは…元の素材など知りたくもないが、命が使われているということだ」

「命…ですか?」

「そうだ。古代魔法には往々にしてそういう倫理を度外視したような物が存在する」

 

タンスは敢えて言わなかった。この命には魔物のものはもちろん。人間のものも使われているということを。タンスはあとでこの情報はマルシルにだけ共有した。

 

「そこで、島主からお前たちに依頼だ。迷宮を攻略し、魔法陣の封印を施してくれ。だそうだ」

 

島主からの意向は、迷宮の危険クラスを下げ通常の冒険者が探索出来る様にすること。でなければ、今まで出来ていた迷宮を通じての商売や島への斡旋が不可能になるから。つまり経済的に大打撃を受けることになる。

 

「つまり…今まで通り迷宮を攻略して、ついでに魔法陣を封印するだけって事ですよね?」

「そういうことだ。報酬などの詳細はこの紙に書いてある。よろしく頼むぞ」

 

ライオスはタンスから羊皮紙を受け取り懐にしまう。四人は館を出てあらかじめ集合場所としていた酒場へ向かい、残りのメンバーと合流する。

 

「ふうん…分かっちゃいたが、かなりの大仕事だな。それ相応の報酬もあるが……」

「私はやる。こんだけ貰えるなら文句はない」

「俺も、乗り掛かった船だ。同行しよう」

 

チルチャック、ナマリ、シュローもこれを受諾。全会一致となった。しかし問題はある。ライオスは腕を組んで悩む。

 

「問題は、荷物だなぁ…」

「だな」

 

「荷物ですか?」

 

「ああ、イツキにも最初に説明したろう?迷宮に挑むにあたっての大体の日数でその分の荷物を決める。しかし、依頼内容の魔法陣捜索と迷宮攻略を並行して行うとなると…主に食料が大量に必要になる」

 

全員にそれぞれ大荷物を抱えさせる訳にもいかないからな。とライオスは続ける。荷物は重さはもちろん嵩張りもするので、イツキやチルチャック、女性メンバーなどには咄嗟の行動に支障も出やすい。

 

「迷宮に長期間籠るとなると…まあ大体一週間か?結構キツいな」

「都合よく迷宮に食い物が転がってる訳でもないしな…」

 

「……あ。おれ、食料問題に関して詳しい人知ってます」

 

全員が声をした方を向くと、イツキが手を上げていた。

 

「誰だ?」

 

「センシさんです」

 

誰?と全員がなった。詳しいことはその人を連れてきてからにしますね。とイツキは言いその日は解散。翌日、再びイツキを除いたメンバーが迷宮前に集合する。

 

「食料、軽くは持ってきたけどよ。イツキのやつ随分自信満々だったが大丈夫か?」

「結局私にも教えてくれなかった。お楽しみにって…」

 

そして、暫く待っていると迷宮内から一人のドワーフを連れたイツキがやってきた。

 

「お待たせしました!センシさんです!」

「センシだ。よろしく頼む」

 

センシはリーダーであるライオスと握手を交わす。

 

「ライオスです。なんでも食料問題に詳しいとか?」

「うむ」

 

着いてまいれ。とセンシに言われメンバーはそれぞれ疑心暗鬼のまま迷宮内へ。チルチャックがイツキの後ろから声を掛ける。

 

「おい、イツキ。本当に大丈夫なんだろうな?」

「大丈夫です、おれもう食べたんで」

 

食べた?とチルチャックは思ったが、イツキのあまりにも自信に満ち溢れた表情を見て何も言えなくなった。

 

「ここらで良いだろう」

 

場所は、迷宮地下一階の噴水広場。まわりには数多くの冒険者がいた。全員近くに腰を降ろし円を作った。

 

「今日は、これを調理する」

 

そう言って、センシが鞄から取り出したるは…

 

「「「……歩き茸!!??」」」

 

大きめな歩き茸だった。イツキとライオス、そしてファリン以外のメンバーは思わず立ち上がり後ずさる。

 

「おいイツキ!!なにやべぇ奴連れてきてんだよ!!」

「え?」

「え?じゃない!魔物を食べるだって!?冗談じゃない!!」

「すまんが、俺は無理だ」

「やだやだやだ絶対やだーっ!!」

 

他のメンバーは阿鼻叫喚である。しかし、ライオスとファリンの様子がおかしかった。

 

「ま、魔物を食べるんですか!!??」

「うむ」

「食べていいんですか!!??」

「うむ。良いぞ」

「何言ってんのファリン!?」

 

センシはにっこりと笑う。イツキは加熱式の魔法陣を地面に書いて魔力を注ぎ水が張ってある鍋を置いた。それをチルチャックが止めようとする

 

「いや何普通に支度してんだ!?」

「まあまあ、チルさん。まずは食べてみましょうよ。結構イケますから」

「教え方間違えたか……!?」

 

シュローは最近イツキの鍛錬に付き合っていた。しかしそれは全く関係無いのでシュローは安心していい。

 

「実はですね。ちょっと前にセンシさんと偶然町で出会いまして、そこで魔物食の講義を聞いてからいても立ってもいられなくって一人で迷宮に行ってセンシさんを探したんですよね。あ、中には入ってないですよ?入口辺りで待ってたんです」

 

「そこでセンシさんに実際食べさせてもらって、全然イけることが判明しました」

「お前にはあとで説教しなきゃならんことが山ほどあるからな」

「なんで黙ってたんだイツキ!狡いぞ!!」

 

「歩き茸だけではちと寂しいな。イツキ、大サソリをとってきてくれ」

「はーい」

 

「なんで慣れ親しんだ親友みたいなやり取りしてんだ…」

 

ナマリは頭を抱えた。チルチャックは胃が痛くなってきた。

 

「まず…歩き茸の下処理からだな」

 

センシは歩き茸に切れ込みを入れる。そこでイツキが仕留めた大サソリを持ってきた。

 

「持ってきました」

「うむ、前教えた下処理は出来るか?」

「やります」

 

「イツキ、イツキ!俺も手伝っていいか!?」

「私も!」

「良いですよ」

 

「なんで過去一でテンション高いんだアイツら…」

 

イツキも大サソリの下処理に入る。買ってきたちょっとお高めの包丁だ。

 

「センシさん。皆初心者ですしスパイス多めに入れてカレー風味にしませんか?」

「そうだな。出来れば素材の味を楽しんで欲しいが…」

「「そのまま食べたいです!」」

 

「おお、そうかそうか。では二人分は出汁をとったスープにしよう」

 

「ああ〜…ファリン〜…?どうしちゃったの〜……?」

「マルシルが脳を破壊されているぞ。どうする?」

「寝かしとけ……」

「んでもってなんでイツキは上級者ぶってんだ…」

 

センシはメンバーそれぞれが持っていた鍋を見る。

 

「小さい鍋では心許ないな…わしのを使おう」

 

センシは自分が普段使っている大鍋を取り出した。それを見たナマリの様子が急変する。

 

「お、おい。あんた、それちょっと見せてくれるか?」

「構わんが?」

 

ナマリはぺたぺたと鍋に触り手触りと見た目を確認する。

 

「は……はぁーっ!?こ、これアダマントじゃねーか!嘘だろ勿体ねぇー!?」

「ナマリさん、アダマントって?」

「武器ならば竜の骨を砕き防具ならば竜の牙すら通さない、全鍛冶屋が夢見る幻の金属のひとつ!それがアダマントだ!なんで鍋に使った!?」

「元は盾だったが、使い道が無くてな」

「私に見つかってよかったな…並のドワーフだったら八つ裂きにされてたぞ」

 

一悶着あったが、無事料理は完成した。

 

「良し、こんなもので良いだろう」

 

大サソリと歩き茸の水炊き。そしてそれのカレー風味のものが出来上がった。

 

「「いただきます!」」

 

一番手はライオスとファリンだった。二人はスプーンで器用に大サソリの肉と歩きキノコの肉を均等に掬って食べる。そして、固まった二人。

 

「お、おい。ライオス…?」

「ファリン!ぺっ、しなさい、ぺっ!!」

 

「「美味しい!」」

 

ライオスとファリンはこれまで見たこと無いような満面の笑みで喜んだ。

 

「はい、皆さんの分もありますよ」

 

そういい、イツキはチルチャック。ナマリ。マルシル。シュローの分をよそって渡す。

 

「…こうなると普通に飯だな」

「ま、まあ…確かに」

 

意外と好感触のチルチャックとマルシル。対してナマリとシュローは受け取った状態で固まっていた。

 

まずチルチャックが食べる。

 

「む、結構イけるな」

 

ファリンがマルシルに「あーん♡」と言って差し出す。親友の想いを踏みにじれなかったマルシルは覚悟を決めて食べる。

 

「美味しいよこれ…」

 

マルシルは認めたくないように呟く。相変わらず固まっている二人に、イツキが椀を持って二人に近付く。

 

「はい、ナマリさんアーン」

「いっ……うぐぐ……ほ、本当に食うのか?」

「食べられますって、ほら」

 

イツキは掬った大サソリの肉をパクリと食べる。ね?食べられるでしょ?とイツキは言い、再びスプーンで掬ってナマリに近付ける。

 

「はい、アーン」

「…えぇい!あむっ」

 

ナマリは何度か咀嚼したあとに、ふっと表情を和らげる。

 

「イけるな…」

「嘘だろう……?」

 

味方がいなくなったシュロー。そんなシュローにジリジリとイツキが近寄っていく。

 

「ほ〜らシュローさん?お口を開けて〜?」

「あ、あああああ……」

 

にっこりと笑うイツキが修羅悪鬼のそれに見えたシュローは思わず尻もちをついた。

 

「早く食べないとシュローさんの性癖女性陣にバラしますよ」

「脅しじゃないか…!?」

 

アーン♡とイツキが差し出し、覚悟を決めざるを得なかったシュローは一口食べる。苦悶の表情を浮かべたのち、それは無くなった。

 

「確かに、イける、な?」

「よっしゃ!」

 

その様子を見たセンシは嬉しそうに語り出す。

 

「わしは十年以上この迷宮で魔物食を研究してきたが、今日以上に喜ばしいことは無い。こんなにも沢山の人に魔物食を理解してもらえるとは……」

 

センシは感慨深そうに頷く。その目元には涙すらあった。

 

「…ここの迷宮ってそんな前からあったっけ?」

「さあ…?」

 

「と、言うわけでライオスさん。是非センシさんをパーティに入れましょう!迷宮下層に同行してくれる数少ない冒険者の一人でもありますよ!」

「うん!いいよ!」

 

「…いいのか?チルチャック」

「リーダーであるライオスが決めた以上はな…ま、まあ…美味かったし」

 

やった。やった。とライオスとファリンがセンシの手を掴んで小躍りをする。

 

これからこのパーティで迷宮はその姿をあらわにされる。メンバーは揃った。戦力も整えた。食料問題も解決した。しかし心に留めておくべきだ。

 

ダンジョン飯。それは食うか食われるか。そこには上も下も無く、ただひたすらに食は生の特権である。

 

 

ダンジョン飯 ああ ダンジョン飯。

 





原作との違う点

迷宮攻略に時間制限がないのでゆっくり進められ、メンバーも多いので通常の食料+迷宮の魔物を食べる感じ。現時点では。


↓思ったより不評だったメタ表現のやつを供養。ナミアミダブツ
ここからは原作第一話、アニメ第一話のままなので是非見て欲しい。コミックスは全巻絶賛発売中。アニメはニコ○コ動画で無料で第一話と最新話が。プレミアム会員ならば全話視聴可能だ(2024年6月1日現在)
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