異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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あとがきにアンケートがあるので、よければご協力お願いします


第二十一話『動く人馬鎧メシ』

本格的に迷宮探査を開始した一行。以前と違うのは魔法陣の封印の依頼があるというところだが、これが想像以上に困難を極めるものだった。

 

まず第一に、シンプルに数が多いという点。封印にはもちろん魔力を消費する上に、今のところ古代魔法に精通しているマルシルにしか扱えない。イツキとファリンが封印魔法を習得しようと日々努力はしているものの、ただ炎を放つ魔法や傷を癒す魔法とでは勝手があまりにも違い過ぎるため苦戦の毎日であった。

 

次に、配置されている魔法陣の周りの魔物が露骨に増え、強力になっていること。基本の魔物の群れに加えリーダーのように特殊個体が居座っているケースが殆どであり、更にマルシルでも封印には時間が掛かるため魔物を無視するというのも出来ず、前回の様にさっと壊して次に向かうということが難しくなった。

 

結果、第二階層の魔法陣全ての封印に丸々一ヶ月を消費した。

 

「二階だけでこれじゃ、悪いけど私の身がもたない…」

 

エルフ特有の膨大な魔力量を保有するマルシルでさえこの有様だ。イツキとファリンは早急に封印魔法を習得しなければならない。

 

食料は全て魔物で補い荷物全てをポーションにして魔力はポーションがぶ飲みで回復するのは?という意見がライオスから出たが、却下。残念ながらポーションは万能ではない。

 

あれらは魔力を回復すると同時に魔力の最大値を消費する。平均的トールマンで一日の摂取量は大体二本。エルフならば五本が限度。因みに一瓶に含まれるポーションの量は355mlである。*1

 

精霊で魔力を補うのはどうですか?と、イツキからも提案されたがこれも却下。毎回毎回魔力回復にウンディーネなどを捕獲するのはシンプルに手間である。それで怪我をしたり魔力を消費したりしては元も子もない。

 

結局、地道な努力と毎日の健康的な生活による魔力回復しかないようだ。

 

イツキとファリンによる封印魔法習得に集中するため、またしても迷宮攻略は中断することとなった。

 

「つまり、ここの術式は魔法陣を成形する円を囲って魔力による供給を遮断する様にして…」

「イツキ、ヒマ」

「おれは暇じゃないんだよ…」

 

途中イヅツミの妨害がありつつマルシルを教師として勉強の毎日。イツキにいたってはシュローとそのお付き達との鍛錬もある。

 

「イツキ、お前身体が硬すぎる。それじゃこれには着いて来れない」

「イヅツミが柔らかすぎるんだよ…!」

 

身のこなしを鍛えるための森での訓練も困難を極めた。パルクールの様に木と木を跳んで移動し一度も地面に着くこと無く森を横断するというものだった。

 

結果として、封印魔法習得には実に三ヶ月を消費した。

 

改めて迷宮攻略を開始する一行。

 

「他の冒険者から聞いたんですけど、封印には綻びの兆候は無いそうです」

「よし、それじゃあ二階は極力戦闘回避。迅速に三階に向かおう」

 

ライオス、ファリン、イツキ、マルシル、ナマリ、シュロー、チルチャック、センシ。計八人による迷宮攻略は、意外にも苦戦を強いられる。

 

まず第一に連携。毎回戦闘時に魔力を消費するわけにもいかないので前線戦闘組には相手の魔物次第だが身体強化魔法やイツキの炎無しで戦闘。

 

後方からの支援はターゲット変更を目的としたチルチャックの弓による援護のみ。

 

戦闘中身体が仲間同士ぶつかってしまったり、標的が被って武器がぶつかってしまったり。結果としてライオスが前線から一歩引き全体に指示を出す流れとなった。

 

それでも正直言ってメンバー数は過剰だった。仲間全員の足音の影響でチルチャックの罠感知機能が低下してしまったりもした。なので罠感知をシュローとナマリにも手伝ってもらうことに。

 

壁や床などの変わった部分を見極める程度しか出来ないものの、チルチャックの負担はかなり減った。

 

そして、センシはというと。

 

「今日はマンドラゴラのかき揚げと焼き大コウモリのスープだ!」

「コウモリは嫌ーっ!!」

「安心せい。この体毛の大コウモリは通常の大コウモリと違い草食性の証。雑味も無くさっぱりとした白身だ。雑菌などもイツキに念入りに炙ってもらったから死んだはずだ」

「はずってなによ!」

「あ、ホントだ。意外と淡白な味ですね」

 

このように魔物食をふんだんに振舞っていた。センシはもりもり食べるイツキやライオス達を見て気分は上々だった。

 

封印魔法要因が三人に増えたというのもあって、二階の攻略は比較的スムーズに進んだ。そして、前回倒したものと似た個体の動く金の人馬鎧を倒したライオスは鎧を持ち上げて叫び出す。

 

「なあセンシ!動く鎧はどうやって調理するんだ!?」

「は?鎧は食えんぞ」

「動く鎧は魔法で動いてるだけだよ」

 

「そうなのか……」

 

かなり落ち込んだライオスを尻目に、イツキは鎧の内側を観察する。それを見たファリンがイツキに近寄る。

 

「どうしたの?」

「いや、マルシルさんの言う通り魔法で動いてるならどこかに魔法の術式か残滓が残ってると思ったんですけど…無さそうですね?」

「え、嘘。どこかにあるはずだよ」

 

マルシルも鎧を観察しだす。しかしどこにもそれらしきものは見当たらなかった。

 

「あれー?このタイプの操り人形でコアが無いならどこかに絶対術式が書いてある筈なんだけど…」

 

「マルシル!!ファリン!!イツキ!!ちょっとこれ見てくれ!!」

 

ライオスも鎧を物色していたのか、大声を出して三人を呼ぶ。

 

「なによもーうるさいなぁどうしたの?」

「これだよ、これ!」

 

ライオスは金の甲冑の内側の層を捲る。二重構造となっていたそれには、白いうねうねした物体が入っていた。

 

「なにこれキモチわるっっっ!?」

「ライオスさん、これって一体?」

 

「貝だよ!鎧は殻で、中身は貝の魔物だったんだ!おかしいと思ってたんだ、魔法で動く物体なら落ちた甲冑をわざわざ拾ってかぶり直さないだろうしスライムの様な不定形な魔物が入っているにしては人間みたいな規則的な行動ばかり。群体の魔物が入っているという可能性も考えたけど倒した時にそれらが散っていく様を見たことがない!!動く鎧は魔物で、食える!!」

「兄さんすごい!」

 

「アイツ、魔物の話になると早口になるの気持ち悪いよな」

「しっ、よしなよ」

「それ以上いけない」

 

チルチャックのあまりにも鋭すぎるツッコミに流石に不憫に思ったマルシルと必殺技考えてるときに自分も割と脳内でああなっているイツキはチルチャックを止めた。

 

「ふむ。貝か……見たことない食材なので自信は無いが、これなら調理できるだろう」

「マジかよ…」

 

ナマリは天を仰いだ。しかし見えるのは天井のみ。

 

「センシさん。パン粉と油、ありますよ」

「でかした!」

 

センシはイツキから材料を受け取り調理を開始。

 

まずは鎧から貝を取り出し良く洗う。これは魔物の貝だからという訳では無く貝全般に言える事であり、特に牡蠣などは加熱用でも生食用でも表面には雑菌や汚れが付着している。念入りに洗った方が安心だ。

 

今回はイツキが片栗粉を待ってきていたので、ボウルに貝を入れ片栗粉で洗う。貝によっては脆いものもあり、流水でゴシゴシ洗うと身が崩れてしまうものもある。その点、片栗粉ならやさしく洗うだけで汚れやヌメリが取れるのだ。

 

最後にボウルに貝が浸るくらい水を入れすすぐ。それを何回か繰り返し水が濁らなくなったら完了だ。

 

内臓を取り出すのを忘れてはいけない。今回の動く鎧に毒は無いが、毒があるものももちろん存在する。

 

貝を食べてお腹を下す大体の理由は雑菌や汚れを十分に落としきれなかったり、何を食べているか分からない貝の内臓を食べたことによる食中毒だ。

 

毒に関しては簡単な上に身近な例として、牡蠣。牡蠣に毒は無い。しかし牡蠣の食性はプランクトンであり海水を大量に吸引しながらプランクトンを摂取する。そのときにウイルスも一緒に取り込んでしまい、それが内臓に大量に溜まっていく。

 

日本はとても厳しい基準の元、生牡蠣を販売しているがそれでも中る時は中る。運が悪かったと思うしかない。もちろん、その時の体調によっても変化するので元気な時に食べよう。

 

話がズレたが、牡蠣に限らず貝の内臓はあまり食べない方が良い。加熱すれば大体大丈夫だが。大体。大体というところがミソだ。

 

持ってきたドライ野菜の大根やサツマイモを水が張ってある鍋に入れ火にかける。沸騰してきたらそこに貝を入れ弱火でじっくり火を通す。

 

これで貝のスープは完成。センシがスープの下ごしらえを行っている最中に、イツキとトーデン兄妹は鎧を器用に楕円状態を半分に切り、まるで牡蠣の殻を開けた様な状態にする。

 

鎧部分をしっかり洗い、内臓を取り出して良く洗った貝をセット。加熱式魔法陣の上に網を置き貝が入った鎧を置く。

 

「ライオスさん。焼きにはこれですよ、これ」

 

イツキは鞄から小瓶を取り出す。中に入っているのは黒い液体。まあ醤油だ。

 

熱が行き渡り鎧の色が変色する。そこに醤油を少し垂らす。一気に辺り一面に香ばしい良い匂いが広がった。

 

見張りをしているナマリの「これで酒があれば完璧なんだがなぁ」という意見に同じく見張りのチルチャックは力強く頷いた。

 

揚げはシュローとマルシルが担当することに。下処理を済ませた貝に小麦粉を表面に薄く付け、センシが持っていたバジリスクの卵の溶き卵に付けたあとに最後にパン粉をまぶす。

 

そこで、おもむろにセンシが熱い油が入った鍋に指を突っ込んだ。

 

「なにをやっているんだセンシ!?」

 

思わずセンシの腕を引っ張ろうとしたシュローだったが、センシはへっちゃらな顔をしていた。

 

「ふむ。大体170℃くらいか?これで貝を二、三分揚げてみてくれ」

「あ、平気なのか…さすがドワーフだな」

 

ナマリあんな風に測る?いや?バカじゃねぇの。という会話が見張り組の方から聞こえた気がするが、恐らく気の所為だ。

 

言われた通り貝を揚げ、箸で取り出す。カリカリに揚がったフライが出来上がった。

 

「よし。では完成したぞ」

 

動く鎧貝のスープ。動く鎧貝の焼き。動く鎧貝フライが出来上がった。

 

「味はどうなんだろなあ。人馬鎧だったし、馬肉に近かったりするのかな?」

「あくまで鎧ですから、そこは関係ないんじゃないですか⋯?」

「そうかなあ」

 

全員それぞれ手を合わせ、礼をした。

 

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

 

ライオスとファリンはいの一番に焼き貝を食べる。

 

「うん。美味い!!貝の食感に醤油がベストマッチだ…!」

「おいひい…!」

 

「じゃあ、おれも」

 

イツキは貝フライを一口。サクッとした香ばしい衣に包まれた芳醇な香りが口の中一杯に広がる。

 

「うまっ!……でもさすがに馬肉っぽい味ではないような?」

「イツキ、馬肉食べたことあるのか?」

「小さいころの話なんで確証はないんですけど…」

 

メンバーそれぞれもライオスとイツキが食べたし食うか…。と言った風に食べ始める。ナマリはフライを一口。

 

「うわフライ美味いな!酒くれイツキ!」

「ここ迷宮ですよ」

 

「スープは⋯薄味だが、確かに風味があるな。食感もキノコに近い」

「結構涼しい顔して食うねお前」

 

ワイワイと賑やかに食事が進んでいく。センシはその光景を脳裏に焼き付けていた。かつて見られなかった風景が、今確かにここにあるのだ。

 

 

*1
原作にこの設定は無い。ポーションがぶ飲みによるパワー攻略をメタ的に防いだ結果です。




この『異世界ダンジョン飯』の投稿時間なんですが、今までは出来上がったら投稿。というカタチだったんですけど、アクセス時間が一番多いのはお昼なんですよね。次点で朝。

予約投稿というものがせっかくあるので、投稿時間は固定にした方が良いですか?それとも今まで通りランダムな時間帯の方が良いでしょうか?

アンケートのご協力を、どうかお願いします

あ、投稿自体は今のところほぼ毎日投稿してますけどぶっちゃけ気分なのアテにはしないでください。

『異世界ダンジョン飯』の投稿時間について。

  • 今まで通りランダム
  • お昼。12時固定
  • ファリンのメイド姿って見たい?
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