この小説は未成年飲酒を助長するようなものではござんせん。
「イツキ、おはよう」
「…おは、よう」
イツキは目覚める。今日は初めて中学校へ登校する。
朝の身支度を済ませ、食卓へつく。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
父親の号令から続く様に、母、弟、イツキが返事をする。
「にーちゃ、きょうがっこ?」
弟は今年で六歳になる。たどたどしい言葉でイツキに問いかけてくる。
「うん、帰ってくるのは夕方だから、■■■もしっかり保育園行くんだぞ」
「うん!」
「イツキも中学生か…早いものだな」
「そうね」
朝食を食べ終え、歯を磨き、学ランに着替えて玄関に立つ。玄関にはイツキとその家族が揃っていた。
「本当に送らなくて大丈夫?」
母親が、心配そうに声を掛ける。
「大丈夫だよ、そんな距離無いし。事故にだって気を付けるよ」
「本当に?」
「本当だって」
「本当に?」
「え?」
瞬間、燃える家。燃える家族。そうだ、ぼくはあの日家族を置いてあの日そうぼくは家族を、ころ、家族。燃えてぼくはころしもえてあのひおいて
「うわあああああああああ!!!」
「「「お前が殺した」」」
「イツキ、イツキ?」
「うぅん……ファリン、どうかしたのか?」
「イツキが苦しそうなの」
「なんか、急に悪夢でも見始めたのか…それにしちゃあ苦しみすぎだが」
現在、地下五階のとある休憩所。オークの集落から離れた魔法陣を破壊するために、ライオス達は訪れていた。
そして、ファリンとチルチャックが見張り他のメンバーが寝ている時に、急にイツキの容態が変化した。
イツキ以外のメンバー全員も起き、マルシルはイツキのおでこに手を置く。
「魔力磁場が発生してる…魔法か、呪いかなにかで悪夢を見せられてるのかも」
「悪夢を見せる……夢魔か!」
夢魔。枕の中に忍び込み睡眠中に悪夢を見せ、衰弱させ殺す魔物。
「え、じゃあとりあえずイツキの枕どかして…」
ナマリが枕をどかそうとするも、マルシルに止められる。
「いやダメ!魔法的に悪夢を見せられてるなら急に動かしたら精神に傷が付いちゃう」
「じゃあどうしろって…!」
「私、知ってる」
ファリンが手を挙げる。ファリンにしては珍しく自信に溢れた顔だ。
「私がイツキの夢の中に行って、起こしてくる」
「精神と心の同調…出来なくはないかもだけど、危険だよ、そんなの!」
「私これ以外に精神に干渉するの知らない、マルシル知ってる?」
「……知らない、魔導書をひっくり返せばあるかもだけど」
「でも時間が足りない。兄さん、夢魔はどれくらいの時間でその対象を殺すの?」
「人による、としか。心が強ければ猶予は長いだろうし…」
ファリンはイツキの胸当たりに頭を乗せる。
「マルシル、私も唸りだしたら魔法でもなんでも良いから起こしてね」
「〜〜〜っ!とりあえず魔導書ひっくり返して対策を探す!ファリンは時間稼ぎ、いいね!?」
「うん、ありがとう」
そして、ファリンは眠りにつく。
「……ここが、イツキの夢の中?」
そこは学校。その廊下。しかしファリンは見たこともない景色に動揺する。
近代化された校舎。もはや建物そのものが未知で構成されていた。
「もしかして、イツキの世界の建物?」
ファリンは何気無しに近くの部屋に入る。そこは教室であり、沢山の机が並べられていた。
「…学び舎、なのかな」
雰囲気でなんとなく察したファリンは、ふと窓を見る。
「え…?」
外は夕方、故に赤い。しかし赤の原因は他にもある。ファリンは急いで窓に近付き外を見る。そこから見えるのは校庭である。しかし異常な光景だった。
とてつもなく強力な炎が校庭を囲み、そこに一人の少年が走っていた。
黒髪の少年であり、ファリンが知っている姿より更に小さいが、それは紛れもなく彼だった。
「イツキ…!」
ファリンは教室を出て階段を探す。なんとか見つけた階段を降りて玄関から外へ出る。
目の前には炎の壁。イツキはこの向こう側だろう。
「これは、夢。これは夢……これは夢!!」
ファリンはその炎に飛び込んだ。全身を炎が包み焼き爛れる感触があったが、ファリンは無傷だった。
「イツキ!!」
「え……誰、お姉さん」
走っていたイツキは足を止める。ポカンとした顔でファリンを見る。
「イツキ、私だよ、ファリン。覚えてない?」
「……ごめん、分かんない」
イツキは急にファリンに興味を無くしたかのように目を逸らし再び走り続ける。
ファリンは慌てて追いかける。そして冷静にイツキに問いかける。
「イツキ、なんで走るの?」
「なんでって……走らなきゃ」
「走って、走って、走って、報いなきゃ」
「報いるって、なにに?」
「………………わかんない」
「イツキ」
ファリンはイツキの前に立ち、膝を付いてイツキを抱き締める。
「もう走らなくていいの、帰ろ?皆待ってるよ。兄さんも、マルシルも、チルチャックも、ナマリも、シュローも、センシも」
「…………だ、れ?」
イツキの瞳から光が消える。
「(精神干渉が強くなってる…なにか、なにかイツキの目を覚まさせるような強いショックを与えないと…)」
ファリンは必死なあまり気付いていないが、校庭を囲む炎の壁は段々と小さく、二人を囲む様に縮んでいく。
「イツキ、イツキ……!お願い、目を覚まして!」
「報いなきゃ、だって、ぼくは、ぼくは」
イツキの目から、涙が零れる。
「殺したんだから、みんなを」
ファリンはイツキの小さい唇に自分の唇を重ねた。
長い、長い時間のような。それでいて短いような。無限にも感じることが出来る時間を過ごしたような。
唇を離し、イツキの顔を見る。段々と意識がハッキリとしていく。
「………………ファリン、さん?」
「イツキ!」
イツキの瞳に光が戻る。そして顔を真っ赤にしてファリンから離れた。
「えっいや、えっ?ファリンさん!?今なにして」
「イツキ、時間が無いの。ここは貴方の夢の中。目を覚ますには貴方が自力で目を覚ますしかないの」
イツキは周りを見渡す。
「学校の校庭…!え、てかおれちっちゃ!?」
「ごめんイツキ、それはあとにして。時間が無いの」
周りの炎は勢いを増していく。二人を焼き殺さんばかりだ。
「覚ますったって、どうやって!?」
「なにかイツキがこの悪夢を克服するような、強い衝撃とか」
イツキは唸りながら悩む。そして、先程の出来事を思い出す。
が、顔が赤くなってファリンのことをマトモに見られなくなった。
「イツキ、なにか思いついたの?」
「へぇぁっ!?いや、別に!?何も思いついて無いですよ!」
「ウソ、イツキ前から思ってたけどウソ本当に下手。目が泳ぎまくってるよ」
図星だった。イツキは顔を真っ赤にしてポツリポツリと呟く。
「〜〜〜……………さ、さっき、の」
「さっきの……あ、分かった」
ファリンは間髪入れずにイツキにキスをする。瞬間、周りの景色がガラスの様に割れ、二人は上か下かも分からないところに落下し始める。
そして、ファリンは目を覚ました。
「う〜ん…おはよう」
「ファリン!」
マルシルはファリンに抱きついた。そして、イツキも目を覚ます。
「……ふあぁ。おはようございます………なんで皆しておれを見てるんですか」
「お前、夢魔に悪夢見せられてたんだよ。覚えてないのか?」
「えー?悪夢なんて見てないですよ。むしろ楽しい夢でしたもん」
ライオスがイツキの近くに座り、暖かいお茶を差し出した。
「楽しい夢って、どんな?」
「あ、ありがとうございます……えーっと、確か…あれ?なんだっけ」
ライオスはイツキの枕を持ち、その中身を鍋に落としていく。
それは二枚貝の貝で、大量にガラガラと落ちてきた。
「うわっ、なんですかこれ」
「これが夢魔さ、これのせいでイツキは悪夢を見てたんだ」
ファリンがなんとかしてくれたんだよ?と、ライオスは続ける
「ファリンさんが」
イツキはファリンの顔を見ると、急に顔が熱くなってくる。イツキはファリンから目を逸らした。
「……ふふ」
そんな二人をさておき、センシは貝を手に持って観察する。
「ふむ、至って普通の貝に見えるな。調理してみるか?」
「いいな!」
「いやいやいや、とりあえずイツキくんに聞きなよ」
「いいですよ?」
「だと思ったけどさ」
センシはまず貝にゴミを吐かせるため鍋に水を入れていく。
そして、貝からへろ〜っと中の魔物が出てきた。
「夢魔は別名シンといって竜の仲間なんだ」
「竜!?こんなちっちゃな竜もいるんですか」
こんなのがおれの枕に…とイツキは魔物をツンツン突っつく。
「ああ、そういえばマイヅルが味噌を持たしてくれたぞ」
「貝の味噌汁!それにしましょうよ!」
「うむ、ではそうしよう」
貝が入っている別の鍋に水を入れ沸かす。そこに持ってきていた干し茸を入れて水で戻し沸騰してきたところで味噌を投入。貝も入れて蓋をし、少し待つ。
そしてセンシが蓋を開けると、そこには立派な貝の味噌汁が出来上がっていた。
そして、その味噌汁の湯気から不思議な光景が見える。
「わ、なんですかこれ」
「シンが食べた夢が蜃気楼になったんだろう」
「なんか、段々思い出してきました。とても楽しい夢……おれと皆が学校に通って、勉強して、部活をして…」
「……ん?なんだ、この建物?見たことない建築式だが」
「学び舎なのか?」
「す、すげぇ…なんだあの建物。あれ建築したやつえげつない技術を持った大工だぞ!?高すぎだろ何階建てだ!?」
チルチャック達が見たのは近代化した校舎、その周りの民家や遠くに見えるビル。すなわちイツキの世界の光景だった。
イツキ、ライオス、ファリンが揃って「あっ」と言う。それを聞き逃すメンバー達では無かった。
「おい、なにか俺たちに話してない事があるんじゃないか?」
「イツキくん、私達仲間だと思ってたのに…」
チルチャックは怪訝な目で、マルシルは嘘泣きでイツキを責める。
「あ〜〜〜えっとぉ……隠してた訳じゃなくて、説明が面倒というか信じてもらえないだろうなぁ〜とか、別に皆を蔑ろにしてた訳じゃあ」
「じゃああれなんだよ」
「……えっと、話すと長くなるのですが」
そして、イツキは己の出生。そしてこの世界にやってきた別世界の住人ということを話した。
「……………はぁ?」
チルチャックの声が一際目立つ。シュローは皺がよった眉間に手を当てる。
「我々とは、別の世界。イツキはそこで生まれて……極彩色のなにかに飲み込まれ、こちらに来た?」
「はい、途方に暮れていたのをファリンさんが見つけてくれて…今に至るって感じですね」
「………帰ってから考えていいか?」
チルチャックはあまりにも多い情報量に思考を放棄した。
一方、マルシルはなにかブツブツと呟きながら明後日の方向を見ていた。
「別の世界…極彩色…もしかして、イツキくんは…いやでもそんな…」
「マルシル?」
「へぇあっ!?な、なにファリン?」
「ごめんね、黙ってて」
「ファリンさんが謝る事じゃ…!」
「む?蜃気楼が…」
センシの発言に全員が蜃気楼を見る。そして、そこに映っていたのは。
「え、えぇぇーーーっ!!??」
「あ、これも映るんだ」
ファリンがイツキにキスをしている最中の光景だった。しかし厳密にはそれは夢の中で子供状態のイツキとキスをしてるシーンではなく、イツキが見た夢。
お互い学生服を着て青春を過ごし、ファリンと恋仲になっている時の夢の内容だった。
「おいおい、なんだよ夢の中とはいえ随分と美味しい思いしたみたいじゃないかイツ………し、しんでる……」
ナマリはイツキをからかおうとするも、イツキは大口を開けて真っ白になっていた。マルシルはそんなイツキの肩を掴みぐわんぐわん揺らす。
「イツキくん!ちょっとイツキくん!!なに、なんでファリンと、あああ、あんな…チ、チューとかしてんの!?」
「チューて、ガキか。……夢なんだろ?」
「夢なら私だってファリンとチューしたいけど!?」
「する?」
「待って!?」
「味噌汁が美味いの」
「だな」
センシは微笑ましいものを見る目でイツキとファリンを見ていた。ライオスは味噌汁に夢中だった。
なにはともあれ ダンジョン飯 ああ ダンジョン飯
今回のお話はイツキのちょっとした過去話と、ファリンイケメン回です。正直ヒロインしてるファリンも好きだけどこっちの方も好き。
あ、あとキャラメイク出来るサイトでイツキを自分も作ってみました。
【挿絵表示】
特徴としては、中性的な顔立ち、三つ編み(マルシル産)、ほくろ、かな?
異世界系主人公にいそうな顔立ちにしとけば大体それです。あと服装はテキトーです。
https://picrew.me/ja/search?s=5&page=2
↑ このサイトにアクセスして『いろんなタイプの男の子』って検索すれば出ます。いろんなキャラメイクがあるのでやってみると案外楽しいですよ。