真島イツキが異世界からやってきた来訪者であることが判明してから迷宮から即座に帰還したライオス一行。
迷宮の下層を探索してきた歴戦のメンバーも流石の情報量に頭を抱え気になって仕方がないので探索に集中出来ず、迷宮から帰還した。
そして、チルチャックの「とりあえずメシ食って寝てから考えるわ」という発言の元他のメンバーも落ち着く時間が欲しいためそれに同意。
そして翌日。いつもの酒場に集合した面々にシュローが
「人払いを済ませた場所を用意した。そこで話そう」
と言い全員で着いていくと、平たく言うとそこは公民館の様な施設であり入口にはヒエンが立っていた。
「ヒエン。マイヅルは?」
「マイヅル様ならこの辺に防音護符と人払い護符貼りまくって呪力不足で休んでるよ」*1
「そうか。礼を言っておいてくれ」
「あの、シュローさん」
「なんだ?」
「イヅツミとタデちゃんって、近くにいますか?」
「ああ、…話すか?」
「というより、シュローさんのお付きの人全員には話しておきたいです」
「ああ、わかった」
ひとまず入ろうとシュローが続ける。大人しく入っていくとシュローはひとつの扉を開ける。特になんの変哲も無い部屋だ。中央にテーブル。そして用意された人数分のテーブル。
そこで、後ろからイヅツミとイヌタデが現れる。
「見張りのマイヅル達には俺から説明しておくよ」
「ありがとうございます」
「なんだよ、話って」
「イヅツミ、タデちゃん。落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
「は、はいっ」
イツキは事の経緯を全て話した。
両者の反応はこうだ。
「…意味わかんねぇ」
「はぇ……?」
イヅツミは不機嫌そうに壁に寄りかかって考え込む。イヌタデはぼけーっとしながら困惑顔を浮かべていた。
「今まで黙っててごめん」
「……別に、騙してた訳じゃないだろ。謝る必要なんて無い」
「…ありがとう」
「ふんっ」
イヅツミは部屋からイヌタデを引っ張って出ていった。
全員が席に座り、チルチャックが話し始める。
「よし、まあひとまずこれでいいだろ…なにせ事が事だからな」
イツキは少し怯え気味に手を挙げる。
「あの…やっぱり黙ってたのマズかった、ですか?」
場所が場所なだけに緊張してしまったイツキはもしかしてパーティ離脱しろとか言われるのかと思い内心穏やかでは無かった。
しかしチルチャックは鞄から取り出した酒の蓋を開ける。
「え、いや別にお前が気に病む事はねぇよ。異世界から来た…なんて初対面で言われたらそれこそ俺はこのパーティに入らなかったぞ」
ナマリとシュローは頷いて同意する。
「単純に話の内容が頭可笑しいからこんな場所を用意してもらっただけだ。聞きたい事があるってだけだけどな」
「聞きたいことですか?」
チルチャックはライオスとファリンを交互に指さして続ける。
「お前が異世界出身って知ってたのはこの二人だけか?」
「はい」
「良くそんな得体のしれないやつ引き取ってたなお前ら…」
チルチャックはトーデン兄妹の方を見て言う。
「別に異世界出身ってだけでイツキは普通の男の子っぽかったから、かな」
「うん。俺もなにか深い事情でもあるのかと思ってあまり詮索はしなかった」
「ふーん…良かったなイツキ。こんなお人好し共に拾われて」
「はい。とても感謝してます」
ライオスとファリンは照れくさそうに笑う。
「ここからは質問攻めだぞ。普段なら人の過去やら詮索はしないが…まあ、お前は特別だ」
「はい」
「まずひとつ。この世界…でいいのか?この世界にはどうやって来たんだ?」
「来た、というより来てしまったって感じです。変な極彩色の渦に呑まれて気付いたらメリニの近くにある森に突っ立ってたって感じですね」
「私からも。あの建築式の建物はお前の世界じゃ普通なのか?」
「はい。土地の大きさは大体地図で見た東方群島と同じくらいで、あの建物レベルの建物なら至るところにあります」
「かなり高度な文明ということになるな」
シュローが言い、マルシルが続ける。
「私からも質問。極彩色の渦って言ってたけど…こっちの世界に来る時なにか見えたり聞こえたりした?」
「いや……特に何も無かったと思います。困惑しきってたので見逃してたっていう可能性は捨てきれないですけど」
マルシルはそっか。と言い、センシが続ける。
「そちらにはどんな食文化があるのだ?」
「基本的にはこちらとはあまり…あー、インスタントとかレトルトとかはないですよね」
イツキはカップ麺やレトルトカレーについて説明する。原理を一から百までは説明しきれなかったものの、そういう物が存在するというだけでライオス達からすれば目からウロコだった。
「そんな便利なものが…それがあれば迷宮内でも健康を保ったまま探索できるではないか」
「あんまり身体に良いものじゃ無かったらしいですよ?おれはあんまり食べたことが無いんで詳しく説明出来ないですけど…」
お腹はいっぱいになるけど栄養価的には宜しくないのがカップ麺である。あと塩分が凄い。美味しいが食べ過ぎには注意が必要だ。
「あっちの世界には、友達はいたのか?」
シュローは優しく問いかける。
「あー…二人は、いましたよ」
「二人?お前が?愛想振りまくのを体現してる様なお前が?」
「おれにどういうイメージ持ってるんですか…ただ、グレてただけですよ。それっぽい友達も出来たぐらいで」
グレてるイツキが想像出来なかったマルシルは頭がリーゼントになってるイツキを想像して吹き出した。チルチャックはマルシルをスルーして続ける。
「家族は?心配してんじゃないのか?」
「
「…わりぃ。いらんこと聞いた」
「大丈夫です。慣れてるんで」
少し気まずくなった空気をライオスが変える。
「あーえっと、そういえばイツキって会った時から運動神経良かったよな。向こうの世界でも鍛えるのが一般的なのか?」
「おれは部活動…学校に通いながら運動能力を鍛える取り組みをしてたので、それの影響ですかね」
「向こうの世界じゃ戦うことなんて無いですよ。せいぜい子供のケンカくらいで」
「…平和なんだな、イツキの世界は」
「そうですね…国によっては変わるし、結局は人間なので色々あると思いますけど、少なくともおれがいたところは平和でした」
「帰りたいって、思わない?」
ファリンが小さく呟く。
「んー…ぶっちゃけそんなに思い入れないんで、今の方が楽しいし未練は無いですかね」
あはは、と笑うイツキ。
「ところで、おればっかり質問攻めに遭うのもフェアじゃないと思うんですよ」
「え?ああ、まぁそうだな」
「そこで!おれからも皆んな色々聞きたいと思います!まずはチルさん!」
「俺?」
「奥さんと現在どうしてるんですか!?」
「お前それは禁止カードだろ!?」
ガヤガヤと騒ぎ出す一同。マルシルがチルに質問攻めを開始したところで場面は変わる。
島主の館。そこの書斎にはいつものようにタンスが書類の整理に勤しんでいた。
「なになに。地下五階のオークと…仲良くなったぁ?なにやっとるんだアイツらは…」
そこに、一人のメイドが慌ててやってくる。
「フ、フロッカ様!」
「なんだ騒々しい」
「あ、あああの、こ、これを…館の郵便受けにこんな、こんなものが…」
「なんだそんな慌てて……なんだと!?」
タンスは手紙を読まずとも、その手紙の質。装飾。そして押印で全てを察する。
「…メイド、この事は島主以外には他言無用だ。良いな?」
「はっ、はい。失礼しましゅ」
メイドは足早に書斎から出ていった。タンスは椅子にどかっと座る。
「……エルフ、その女王直々に、なにを嗅ぎつけおった?」
手紙に押されていた押印は、中央大陸に住まうエルフの頂点。『女王ヘイメア』のみが使用を許されている特別なもの。
タンスはストレスに弱い島主に渡る前に確認しようと手紙を開き、内容を見る。
「…………なんだ、と?」
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拝啓。島主殿に、カーカブルード領主顧問魔術師殿。
単刀直入に聞こう。そちらに
異世界からの来訪者がいるはずだ。
私はその者と話をしなければいけない。故に、その身柄をこちらに引き渡して頂きたい。
返事次第迎えの者を寄越す。
悪い様にはしないと、約束しよう。
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