異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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パッタドルVS海老グラタン


第二十九話『花火で船旅を彩ろう』

 

イツキ達がメリニから出発して二日。揺れになれたイツキは船内を探索しようと部屋から出る。

 

「あ、来訪者殿。もう酔いは大丈夫なのですか?」

 

扉の横にはパッタドルがいた。看病兼護衛役兼監視役として常にイツキの傍を離れないのだ。

 

「パッタドルさん。いやぁやっと揺れに慣れてきて船内冒険しよっかなぁって。看病ありがとうございました」

「いえ、大丈夫ですよ。大分酷かったので良かったです」

 

パッタドルはふふふと笑う。実際イツキの船酔いは酷いものだった。一日中唸り続けて基本ベッドか甲板にしかいない上に常に人がいないとろくに移動すらままならなかった。

 

「ファリン殿とマルシル殿に感謝しなければですね」

 

基本看病はパッタドルがおこなっていたが、交代でファリンとマルシルも診ていた。

 

「ホントですよ……二人は今どこに?」

「先程は食堂にいらっしゃいましたよ。そろそろお昼時ですからね」

「ありがとうございます」

 

イツキは食堂へ。パッタドルもそれに着いていく。途中すれ違う掃除をしているメイドや物を運んでいる水夫に至るまで、全てエルフで構成されていた。

 

「やっぱり、エルフって美男美女揃いなんですね」

「そうですか?普通だと思いますが…」

 

エルフはトールマンから見た目の評価は高い。悪評は置いといて、彼ら彼女らのファッションや美容系統は目を見張るものがある。

 

「そうですよ、もちろんパッタドルさんも」

「ふふ、ありがとうございます」

 

食堂へ着いた二人はファリンとマルシルを探す。かなり広い食堂だが、現在はライオス一行と忍者組しか乗っていないためガラガラだ。

 

探す手間など掛かるはずもなく、すぐに二人を見つけることが出来た。正確には三人だが。

 

「おはようございます」

「おはようイツキ」

「イツキくんおはよ〜。もう大丈夫そう?」

「はい、ご迷惑おかけしました」

 

「お〜イツキ〜調子どうだ〜」

「チルさん……この呑んだくれめ。昼間っから呑んでやがる」

 

べろべろになってるチルチャックから酒を取り上げるイツキ。なにすんだよ〜と取り返そうとするも、欠片も敵わなかった。

 

「エルフの酒がここまで美味いとは…さすがの俺も予想してなかったなぁ」

「私チルチャック部屋に送ってくるね」

「お願いします」

 

マルシルはチルチャックに肩を貸して食堂から出ていった。イツキとパッタドルはファリンと同じ席に着く。

 

「なんかお腹空きすぎて今ならどれだけでも食べれそうですよ」

「あれだけ吐けばそうもなりますよ…」

「イツキ。このバジルソースのチキン美味しかったよ」

「じゃあそれにしよっかなぁ…パッタドルさんお昼はもう食べたんですか?」

「いえ、まだです」

「せっかくだから一緒に食べましょうよ」

「そうですね。ではご一緒させていただきます」

 

水を持ってきたウェイトレスにイツキとパッタドルは注文を告げる。イツキはパッタドルに質問する。

 

「あとどれくらいで中央に着くんですか?」

「そうですね……二日特になんの支障も無く航海出来たので、明日の夕方か早ければお昼には着くと思いますよ」

「結構早いんですね」

「我が国が誇る最高傑作の客船ですからね」

 

パッタドルはむふー。と誇らしげだ。そうこうしていると料理が届き、イツキはファリンオススメのバジルソースチキン。パッタドルは海老グラタンだ。

 

「んー!めっちゃ柔らかいですねこのチキン」

「それは良かった。シェフにもあとで伝えときますね」

 

パッタドルは海老グラタンを一口。

 

「はふっはむ。うん。美味しいです」

 

そのまま黙々と食べ続ける二人。ファリンは実家にいる犬達を何故か思い出した。

 

「「ご馳走様でした」」

 

両者同タイミングであった。ウェイトレスが皿などを片し、紅茶を持ってきてくれる。

 

「あ、そういえば来訪者殿には中央国の説明をしていませんでしたね」

「説明ですか?あ、あとおれの事はイツキで良いですよ」

「そうですか?では、イツキ殿に改めて説明を」

 

中央。正式名称を北中央大陸。同じく南中央大陸があるが、これは王都がある北とは違い他種族移民の流入が多く、雑多で不安定な国となっている。北中央とは同盟国ではあるものの、仲は良いとは言えない。

 

故に、この世界の住人が言う中央とは、女王ヘイメアが治める絶対王政の王都がある北中央大陸を意味する。

 

そして北中央大陸。人口の約八割がエルフであり、その他が二割。少ない方をその他と称している時点で、中央での他種族の扱いが知れるだろう。

 

「実際トールマンとかはどういう扱いなんですか?」

「トールマンは嫁や婿に入ったものが大多数ですね。商人もいるにはいますが…」

 

パッタドルは口を濁す。察したイツキはそれ以上は聞かなかった。

 

自他共に種族としての頂点を誇るエルフだが、出生率は他種族に比べると遥かに低い。その影響で、絶滅の一途をたどっている。

 

「やっぱり、魔法とかも凄いんですよね」

「そうですね。魔法学は中央がトップになるでしょう。私の身近にいる人だと、転移術を攻撃や回避に用いる人なんていますよ」

「転移術を?…あれ、使う時にかなり手間と時間が掛かりますよね。それを戦闘時に使うなら術の発動も発動後のインターバルもかなり短いはず…。てことは、詠唱の省略も?」

 

「え、いや…どうでしょう。確かに詠唱してるところは見たこと無いですけど」

「へぇー…凄いなあ、俺は炎魔法ぐらいしか攻撃に使えないから羨ましいですよ」

 

「…イツキ殿は、戦闘魔法にかなりお詳しいのですね?」

「いやいや、せいぜい知識がある程度で実践には程遠いですよ」

「イツキの炎、凄いんですよ?もうなんか…ぶわー!って」

「な、なるほど」

 

パッタドルはんー。と上を向きながら顎辺りに人差し指を付け考える様な仕草をとる。

 

「では、実際見てみたいです。イツキ殿の炎魔法」

「それはいいですけど…客船じゃあダメですよ」

「ふふふ、実はですね。この客船の屋外。甲板から階段を上がった先に大規模な闘技場があるんですよ。とっっっても頑丈な」

「なんで客船にそんなものが…」

「…貴族の道楽じゃないですかね」

「あぁ……そういう」

 

イツキは肩をグルグル回し首を鳴らす。

 

「でも、ここのところ身体全力で動かしてないんで、そういうのがあるのは助かりますね」

「では、行きましょう」

「私も行くよ」

 

三人は食堂を出て甲板へ。そして闘技場へと続く階段を登る。

 

「おお、ほんとにあった。港から見えてたドームこれだったんですね」

「はい。どんな屈強なオーガや熟達の魔法使いですら‪壊すのは容易では無い王都にある王宮や重要施設にも使われている防護結界と素材を用いて作られているエルフ族最強防護と言っても過言ではありません」

 

パッタドルは再びむふー。と誇らしげになる。

 

中に入ると、そこには先客がいた。

 

「あれ、シュローさんにナマリさん。いたんですか」

「お、イツキも来たか。ここ良いぞ、思う存分身体が動かせる」

 

ワッハッハと笑うナマリにつられて笑うイツキ。

 

「イツキも鍛錬か?」

「パッタドルさんが俺の炎魔法が見たいらしくて」

「へぇ、中々見る目あるじゃないか。派手にかましてやりなよ」

 

ナマリはイツキの背中を叩く。気合いが入るイツキ。備え付けの鉄剣を持ってドーム中央へ。

 

他にもエルフ達が剣や槍を持ってイツキの魔法を鑑賞する。

 

「ふふ、あの短命種の子供が魔法をやるんだと」

「どんな幼稚な魔法かな?」

 

完全に上から見るエルフ達。ファリンがモーニングスターを構えるもシュローに止められる。

 

「危ないから下がっててくださいねー」

 

イツキは人がいない方へ剣を構える。

 

「すぅー……ふぅー……」

 

剣に魔力を集中。剣には魔術紋が浮かび上がり、炎が宿る。

 

「おお、属性付与(エンチャント)ですか」

「ここからですよ、ここから」

 

何故かイツキよりテンションが高いファリン。炎の剣は浪漫なのだから仕方がない。

 

「……ぜぇいっ!!」

 

剣を振り下ろすと同時に魔力を解放。

 

剣に炎を宿し、解放又は防御に転用するイツキの十八番。魔力が濃い迷宮では絶大な威力を誇った魔法。

 

イツキの他四人、イツキ自身、ここは迷宮の外だから魔力が薄く大した威力は出ないだろうと高を括っていた。

 

しかし、ここはパッタドルが言った『貴族御用達の闘技場』

 

永い人生を歩むエルフにとって娯楽は最も重要視される。刺激も勿論必要だ。戦いも彼ら彼女らにとっては快楽であり、故にここで戦わせる剣闘士達が存分にその才を発揮出来るように、ここの魔力は迷宮内とほぼ変わらないのを、パッタドルは知らなかった。

 

結果。普段かそれ以上に威力は発揮されることとなる。

 

強烈な破壊音の後、高濃度広範囲の爆炎が広がり、闘技場が半壊するまでの大魔法に至ったのだ。幸い、航海に支障が出るようなところは壊れていない。そもそも闘技場の近くにそんな重要施設がある部屋は無いが。

 

破壊された周りはあまりの熱に焼け爛れ、融けた壁やその残骸が不快な匂いを発していた。

 

後ろで見ていた四人。他エルフ。特にパッタドルは大口を開けて呆けていた。

 

なお、一番驚いたのは撃ったイツキ本人だった。

 

「なにごとだ!?」

 

客船に同乗していたエルフの近衛兵が大慌てで闘技場にやってくる。そこで、パッタドルは意識を取り戻した。

 

「と、闘技場が…!?」

「あああ、案ずるな!今のは敵襲ではない!ただ魔法を撃っただけだ!」

「ただの魔法がこの闘技場を破壊するか!」

「破壊しちゃったんだからしょうがないでしょう!?」

 

「イツキ、とりあえずここはあの姉ちゃんに任せて私らは部屋に行こう」

「アッハイ…………弁償ですかね、これ」

「怖いこと言うなよ…」

 

大慌ての近衛兵とパッタドルを置いてこっそり闘技場を出る四人。

 

廊下を歩いていると、ライオスが剣を持って走ってくる。

 

「今の音、なんだ!?」

「おれです。やらかしました」

「?……とりあえず魔物の襲撃じゃないんだな?」

 

イツキは部屋に戻りベッドにうつ伏せになって落ち込んでいると、同室のイヅツミが帰ってきた。

 

「聞いたぞ、闘技場ぶっ壊したんだって?」

 

イヅツミはニヤニヤしながらイツキの頭を撫でながら揶揄う。

 

「あれ幾らすんだろ……」

「ふん、お前の魔法を舐めたアイツらが悪い」

「え、見てたの?」

「…気にすんな」

 

実はシュローからイツキの護衛役として隠密で警護していたイヅツミ。口を滑らしたが誤魔化した。

 

イヅツミはイツキの隣にぼふっと寝っ転がる。

 

「ぐえ。……自分のベッド行きなよ」

「あのベッド冷たい」

 

実際獣人であるイヅツミにはシルクなどが使われている毛布は最初は冷たい。だんだん暖かくなるが、イヅツミはその待つ時間が嫌いだった。

 

しばらく無心でゴロゴロしていると、イヅツミの耳がピクっと動いた後、部屋の扉がノックされる。

 

「イツキ殿、いらっしゃいますか?」

「あ、はい」

 

イツキはベッドから降りて扉を開き流れるように土下座した。

 

「どうか弁償は勘弁してください」

「護衛役に土下座する護衛対象がいますか。怒ってないので大丈夫ですよ。弁償も必要ありません」

 

パッタドルは土下座しているイツキの肩に手を添え起きる様促す。

 

「ホントですか?」

「はい。なんなら客船に同乗していた魔法使いが『改良の余地が見つかった!』…って喜んでましたよ」

 

「それはそれでどうなんですか」

「あはは…」

 

多少変態性があるので否定し切れなかったパッタドルだった。

 

一悶着起きたが、無事夜は明け船から中央大陸が見える距離まで近付いた。全員で甲板から大陸を見る。

 

「うぇ…ぎぼぢわ゛る゛い゛」

「呑みすぎだ。最初のイツキとまるっきり立場逆転ではないか」

 

二日酔いでダウンしたチルチャックを呆れ顔で介抱するマイヅル。

 

「皆さん。見えましたよ。あれが中央、女王ヘイメアが治める王都です!」

 

船から見える景色は壮観を極めていた。イツキからすればこれぞ異世界といった中世建築を中心とした魔法都市。

 

その規模はあまりにも広大で、見るものを魅了する。

 

まるで迷宮の誘惑の様に。

 




可愛いパッタドルとなろうみたいな展開を書きたかった回。

今回の話いるかと言われたらいる(鋼の意思)

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