「フン、フフん、フフフン……♪」
イツキは鼻歌まじりに剣の手入れをする。天気は快晴であり、絶好の鍛錬日和。今日は冒険者仲間を集めるためにライオスが宿屋や酒場などに初心者冒険者募集を申請しにいっているため鍛錬の日となった。
「(それにしても、魔物って食べないんだな…なんでだろ?ライオスさんに魔物図鑑見せてもらったけど割とイケそうじゃなかったか?)」
思い出すのは昨日の出来事。迷宮攻略時にイツキが言ったあの一言。
『毒があるから食べられない』
逆に言えば、毒が無ければ食べるということである。
そもそも魔物という概念が無いイツキにとって、魔物は動物の延長にしか見えなかったのだ。
『イ、イツキ。魔物はな、普通食べないんだ……そうだよな、忘れてたけどイツキは魔物がいない世界から来たもんな……うん、そうだよな』
イツキは知る由もないが、魔物好きでしかないライオスが何故この時魔物食を推奨もしくは提案しなかったのか。
それはイツキという存在。迷宮初心者でありそもそもこの世界での常識や倫理に詳しくないイツキに間違ったことを教えるのはマズイというライオスなりの精一杯の譲歩であった。
なお語りたくて食べたくて仕方がないのはファリンには筒抜けである。なにせ彼女もライオス側だからだ。
なにはともあれ無事迷宮攻略を終えた3人はその場から撤退。翌日には再び鍛錬の日々が待っていた。
「イツキ〜」
「ファリンさん?」
遠くの方からファリンが手を振りながらイツキの元へ歩いてくる。
「冒険者募集、集まったって」
「もう集まったんですか?」
なにせ冒険者募集を申請したのは今日の朝方であり、現在はお昼。あまりにも集まるのが早かった。
移動して場所はとある大衆食堂。そこには2人の仲間が揃っていた。
「イツキ。この人は前の金剥ぎの時に世話になってた鍵師のダンダンだ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
ダンダン。ハーフフットである鍵師の冒険者。
鍵師とはダンジョンにおいて重要な役割である。罠の発見、魔物の察知。そして宝箱の解錠。ハーフフットは戦闘面においてはあまり期待は出来ないが、それでも迷宮において重宝されるのはその耳の良さのお陰でもある。
ダンダンは頭を下げて挨拶をするイツキにちょっと好感度が上がった。ちょっとだけ。
「そしてこっちがナマリ、戦士として入ってくれた」
「……よろしく」
「よろしくお願いします」
ナマリ。ドワーフの冒険者。
戦士は鍵師のようにはっきりとした役職では無いが、前線に出て魔物のヘイト稼ぎや魔物討伐。必然的に力仕事や危険なことが多いため、攻撃にも環境にも頑丈なドワーフは戦士としても重宝される。
「んじゃ俺色々準備すっから、潜るのは明日でいいな?」
「うん、明日からよろしく」
ダンダンは食堂を後にする。
「……なぁアンタらさ」
「「「?」」」
残ったナマリはイツキ達へ問う。
「本当にいいんだな?冒険者募集で聞いたろうけど、私の父親は…」
ナマリ曰く。自分の父親はドワーフ達の大切な金を盗み失踪。それを返すために冒険者になったという。
「だから私はほかのドワーフから恨まれてる。私を入れたらほかのドワーフはこのパーティに入らないだろうし、なんなら武具だって売ってくれないかもしれない」
「でもそれナマリさん悪くなくないですか?」
「え?」
キョトンとした顔でイツキが言う。ライオス達もそれに続く。
「うん。俺も話には聞いたけど、聞けば聞くほどそれはナマリが原因じゃないし」
「ナマリ、私達のお金盗るの?」
「まさか!そんな訳ないだろ!」
「じゃあいいじゃないですか」
「いや、いやいや!ドワーフってのはだな……!」
そこから何故かナマリによる自分を仲間に入れた場合のデメリットについて語られるが、三人の反応は依然として変わらなかった。
「ぜぇ……ぜぇ……わ、分かったよ。入る。いや、入らせてくれ…」
結局折れたのはナマリだった。
「これからよろしくお願いします、ナマリさん」
イツキは手を差し伸べる。ナマリからしたらあまりにも小さく、そして柔らかい手。しかしそれが今はとても頼もしく見えた。
「…あぁ、よろしく」
「はい。……あっ、これリーダーのライオスさんの役目じゃ!?」
「え?そうなの?」
ナマリは大丈夫かこのパーティ。と思ったが、頭の隅に追いやった。
「じゃあこのままお昼ご飯食べようよ、ね?」
「賛成!もうお腹ぺこぺこです」
「そういえば午前中の鍛練終わったのか?」
「なんだ、ライオスが見てるのか?」
他愛のない話が始まり、いつの間にかナマリの顔には笑顔が浮かんでいた。
「ところでイツキ、そのレッグポーチ良いやつだな。どこで買ったんだ?」
「え?あぁこれ広場近くの…」
「へー……」
「……ナマリさん?」
「えっ!?ど、どうした!?」
ちょっとした事案も発生しかけたが、幸いイツキは気付かなかった。
そしてその晩。寝床に着いたイツキはなにやらゴソゴソとした音で目が覚める。
「ん〜〜…?ファリンさん?」
「あ、ごめんねイツキ。起こしちゃった?」
ファリンはどうやら手紙を書いているらしい。イツキは身体を伸ばして近くにある水瓶からコップへ飲み水を注いで飲む。そして小声で話し出した。
「いえ、最近寝付き悪くて…誰かへの手紙ですか?」
「うん、私の友達に」
どうぞ。ありがとう。…イツキはファリンにもう一つの飲水が入ったコップを手渡す。
「どんな人なんですか?」
「凄い人だよ。私なんかよりよっぽど魔法に詳しくて…私が魔法学校に通ってたって話はしたっけ?」
「魔法学校…!いや、初耳です」
残念ながらイツキが想像しているようなホグのワーツでは無いが、それでも立派な魔法学校である。
「そこで友達になってね。…マルシルって人なんだ。今日新しい人達と会ったでしょ?それでなんか手紙書きたくなっちゃって…」
「なるほど…」
「あ、そういえばエルフだよ」
「エルフ!やっぱりいるんですね!…あっ」
少し声を大きめに出してしまったイツキ。慌てて口を手で塞ぎそ〜っとライオスの方を見る。
「うぅん…やっぱりキメラは二種類の方が……むにゃむにゃ」
謎の寝言を発しているようで、どうやら起きた訳では無いようだ。
「ふぅ…」
「ふふ、いつか会えるといいね」
「そうですね」
その後少しだけ深夜の穏やかな時間が過ぎ、ファリンは眠りについた。
イツキは、主に宿屋の洗濯物を干すために用いられる屋上にいた。
「友達か…」
思い出すのは前の世界でのこと。そこでの友達とはもう会えないのだろうか。
「…まぁ、なんとかなる、かな」
少し寂しい気持ちをどうにか押し殺し、イツキは部屋に戻っていった。その袖は、わずかに濡れていた。
そして翌日。ついに本格的に迷宮攻略が始まる。
「よし、じゃあ隊列を決めよう。俺が先頭、次にダンダン。その後ろにイツキ、ファリン。殿をナマリに頼みたい」
「あいよ」
「わかった」
「冒険者募集にも書いたが、イツキは迷宮初心者だ。戦闘面においては俺が保証するが、罠の有無や魔物の扱いには乏しい。ゆっくり確実に進むぞ」
「足を引っ張らないよう、頑張ります」
ダンダンはイツキの背中を叩き鼓舞する。死ぬなよ、善処します。と。
「よし、行こう!」
「「おー!」」
ダンジョン飯の原作読んでも設定集見ても魔法の詳細があんまし載ってなくて名前とかが分からなかったので、この小説上で主人公などが使う『魔法』の名前だけを他原作のゲームやアニメから流用する?しない?名前だけなので急にかめはめ波撃ったりはしないです。
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する(名前だけそれっぽいの)
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しない(なんかそれっぽい記号)
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オリジナル(どうあがいてもチープになる)