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中央へ到着したライオス一行とお付き達は船から降りる。港も貴族王族専用のもので周りに人は少ないが、迎えの人間が立っていた。
「ようこそおいでくださいました、来訪者殿。私はフラメラ。来訪者殿を無事王宮までお連れするのが私の役目であります」
エルフでも珍しい黒曜石を思わせる黒い肌。銀色の髪。深紅の瞳。加えて冷徹さを感じる態度にイツキは『なんかカッコイイ人だ…!』という感想が浮かんだ。もっとあるだろうに。
「フラメラ副隊長。後をお任せします」
「任された。……船の事は聞いている。後で話があるぞ、パッタドル」
「ひん……」
これから来るであろう最悪の未来にパッタドルは涙目になるも、イツキはそれを庇う。
「ま、待ってくださいフラメラさん。船を壊したのはおれです。パッタドルさんは悪くないですよ」
「パッタドルは貴方の護衛役として任を受けた存在。そんな貴方に魔法を繰り出させたという時点で護衛役として失格なのです」
「う……」
さ、こちらへ。とフラメラはイツキを案内する。
イツキは『女王様にフォローしておこう…』と思った。イツキのあとをライオス達も着いていく。が、それはフラメラに止められる。
「申し訳ありませんが、ここから先は王宮。招待されていない者の立ち入りは許されておりません」
「すみません皆さん、イツキ殿が女王陛下に謁見している間は私が案内する館でお休みなさっててください」
「(イツキ、殿?……パッタドルめ、絆されたか)」
ライオスはイツキを一瞥する。イツキは微かに頷いた。
「よし、みんな。パッタドルさんに着いていこう」
全員が渋々パッタドルの後に着いていく。
「では来訪者殿はこちらへ」
「は、はい」
イツキはフラメラに鴨の子の様に着いていくしかなかった。
フラメラが通ったのは王宮にある噴水庭園。イツキは見たこともない鳥に興味津々なのか、あちこち目移りしている。
「(どこから見てもただの子供だな)」
フラメラは失望しつつも安心していた。
「(女王がいきなり部外者を王宮に招くと仰った時はついにボケたかと思ったが…)」
そして、イツキの視界にあるものが入る。
「あ、フラメラさん。アレって?」
「アレ?…ああ、庭を整備するゴーレムを導入しようと調整中なのでしょう」
イツキが指さした先には小さめの、それでも3mはあるだろうゴーレム。その周りにエルフ達が集まっていた。
「そっか…ゴーレム自体は魔物ではないんですもんね」
「迷宮などに存在するゴーレムは所謂『はぐれ』。正規の手順で作られたものとは別物です」
かつてエルフ式魔法とノーム式魔法ゴーレムの規格違いで技術者達が大泣きした事件以来ゴーレムの使用が控え気味になった悲しき経緯もある。
「…ところで、来訪者殿」
「なんですか?」
「その格好は……少々女王に会うには分不相応かと」
イツキの今の格好はいつもメリニで着ている私服。確かに他のエルフ達が着ている服と比べると普通にみすぼらしい。
「と、いうわけで」
フラメラがパチッと指を鳴らすとどこからともなくエルフのメイド達がやってきてイツキを囲む。
「えっ、なに、なんですか!?」
「お客人を相応しい格好に着替えさせろ」
「「「「かしこまりました」」」」
「うわぁああああっ!?」
瞬く間にメイドに拉致されるイツキ。フラメラはヒラヒラと手を振って見送った。
そのまま噴水庭園で待っていると、フラフラとイツキが帰ってくる。
「お、お待たせしました……」
「おや、中々様になっているではありませんか」
「ありがとう……ございます?」
今の格好は所謂貴族式コート。黒をメインにした刺繍入りのゴシックな服装になった。髪も髪油で整えられてピシッとオールバックになっている。
「結構キツいですね、これ」
「我慢ですよ、来訪者殿」
「…その来訪者っての、やめません?イツキでいいですよ」
「いえ、任務ですので」
こちらへ。とフラメラは案内を続ける。落ち着かないなぁ…とイツキは再び思った。
そして歩き続けていると、チラチラヒソヒソと他の貴族達がイツキを見ては遠巻きに噂している。
「随分と注目の的ですね、おれ」
「女王直々に招待したお客人などここ二百年いないと言われています。それに貴方はトールマン。嫌でも注目されますよ」
「うぇー…」
ますます落ち着かなくなったイツキ。そして、フラメラは王宮にある大きな扉の前で止まる。
「ここから先が女王の私室に繋がる一本道の廊下です。私はここから先への立ち入りは許可されていませんので、ここまでです」
「えっ、一人で行くんですか?」
「はい」
「フラメラさん、行きましょうよ…」
まるで捨てられた子犬の様な表情になるイツキにフラメラは少しグラつくも、グッと堪える。
「なりません」
「はい…」
扉の横で待機している番兵が扉を開け、イツキを通す。
「来訪者殿」
「はい?」
「……ご武運を」
フラメラが頭を下げ、大きな音と共に大扉は閉じる。
瞬間。冷たい空気がイツキを包む。
壁と扉ひとつ遮っているだけなのに、まるで別世界に迷い込んだ様な錯覚を覚える。
「いや、別世界なんだけどさ…」
誰に聞かせる訳でもない呟きをしたのち、イツキは歩きだす。
物音ひとつすらしない。聞こえるのは自分の呼吸音と歩く音のみ。
カツン。カツン。と、履きなれていない靴で長い廊下を歩き続ける。
イツキは廊下の壁などに飾られている調度品に目がいった。なにかの動物の剥製。装飾が施された剣や盾。そして。
「なんだ、これ…」
不思議と惹かれるのは、ひとつのネックレス。
銀で構成され、赤い宝石で彩られている中心に黒い宝石が
「それが気になるのかい?坊や」
「ーっ!?」
地上とはいえ、警戒していない訳では無かった。勿論、迷宮に潜ってる時ほどの緊張感ではなかった。しかし、物音ひとつ、気配の欠片も感じられなかった。
イツキの首に、細く、長い黒い指がかかっている。
「貴女が、おれを呼んだ…」
「そう、私が、ヘイメアさ」
イツキはゆっくりと後ろを振り返る。そこには、一人の女性。
先程のフラメラを彷彿とさせる黒曜石の様な肌。深紅の瞳。銀の髪。長い耳。皺こそあれど全く年齢を感じさせない整いすぎている容姿。
そして、彼女は全裸だった。
「わーっ!!??」
「おや?」
慌てて両手で顔を覆うイツキ。それを見たヘイメアはニヤニヤする。
女王ヘイメアを擁護する訳ではないが、彼女が全裸…正確には薄い透けてるショールのみの格好なのには一応理由がある。
彼女が持つ銀色の髪と深紅の瞳、そして黒曜石の様な黒い肌は、エルフの中でも極めて遺伝性が低く、数が少ない。
故に、この色のエルフは王族である証なのだ。…という風説がある。
実際には遺伝性が低いというだけで王族以外の血筋からもこの様な姿に隔世遺伝で現れることはあるにはある。
実際、遠縁であるフラメラとその姉は両親は普通の肌なのに黒い肌を持って産まれた。
とにかく、ヘイメアが全裸なのは王族の証である黒曜石の肌を見せつけるためという名目がある。実際は自分より遥かに年下のイツキの初心な反応が見たかっただけで、流石の彼女も初対面の人間に全裸は晒さない、筈である。
「と、とにかくこれで隠してください!!」
と、イツキは自分が着ていたコートを渡す。
「おや、ありがとう」
不服気味にコートで前を隠すヘイメア。やはりこの女故意犯である。
「えと、この度はご招待してもら…して頂いて?ありがとうございます。真島イツキです」
「言葉遣いに遠慮はいらないよ。君とは仲良くしたいからね」
「は、はい」
「ふふ……」
こちらへおいで。とヘイメアは前を歩く。結果尻が丸出しなのでイツキは目を逸らした。
少し歩いてひとつの扉へ。ヘイメアは触れる事無く扉を開け、中にイツキを通す。
「おぉー…!す、凄い…!」
女王の私室からは中央の街並みが一望出来る。全体的には中世建築なのにどこか魔法都市を連想させる圧巻な光景。イツキは小さい頃映画で見た魔法使いの学校を思い出していた。
「私の国は気に入ってもらえたかな?」
「はい!凄いですね!」
「ふふ、ありがとう」
ヘイメアはイツキのコートをソファにかけ、座る。そして手招きでイツキを誘う。
「こちらへ、座って?」
「は、はい」
イツキは少し離れてヘイメアの隣に座る。しかしヘイメアはグイッと近付きイツキの膝上に両足を、そして腕をイツキの肩に回し急接近する。
イツキは天井を見上げるも、ヘイメアに顎を指三本で掴まれヘイメアの方へ視界が戻される。
「あ、あの?」
「ふふ…言ったろう?君とは仲良くしたい、と」
「な、何故?」
「そうした方が良いと、私の勘が言っているのさ。伊達に三百年近く女王はやってないからね」
「さあ、君の世界の話を聞かせておくれ」
「は、はい。…でもどんな話を?」
「なんでもいいさ。食べ物。街並み。人。何を学び、何を思って生きてきたのか」
「じゃあ…」
イツキはまず学校の話をした。小学生から、中学生まで。高校や大学、専門学校の話など。
「それじゃあ君は、中学生にあたるんだね?」
「はい、そろそろ高校生ですが」
次に食べ物。正直食べ物の種類は向こうと大差無いため、前にライオス達に話したインスタントやレトルト、携行食糧などの話。
「三分で食事にありつけるのかい?」
「五分の物もあったりしますよ」
「へぇ…興味深いね」
イツキは日本の話をする。日本の総人口が一億二千万ほどだと告げると、ヘイメアは目を僅かに開いて驚いた。
「日本だけでそれだけ……?君の世界には、トールマン以外はいるのかい?」
「いえ、トールマン…あっちの世界だと正確にはホモ・サピエンスっていう学名で、ヒトっていう名前です」
「ヒト……なるほど」
そして、日本以外の外国の話。
「日本、こっちでいうなら東方群島が一番近いんですけど、それ以外にも大陸と国があって、えっと……確か総人口は……」
イツキはうーんと悩む。ヘイメアは静かにそれを見守っていた。
「あ、思い出した。八十億人ですね」
「…………ほう」
長命種ではなく、短命種のみで作られた世界。
「それは、争いが絶えないだろうね」
「……そうですね。おれがいた日本は世界的に見るとかなり平和な方ですが、ニュースでも度々他の国での紛争やミサイル開発の様子が流れていました」
「そのニュースというのは?」
「えっと、テレビってのがありまして……」
その後も、イツキはヘイメアの質問に答え続けた。ヘイメアが聞き上手なのもあってかなり長い時間話し続けた。
「へぇ、君の国では随分とエンタメに力を入れていたんだね」
「はい!特にアニメや漫画、小説に映画!とてもじゃないけど語りきれないほど山ほどありますよ!」
イツキは笑顔で語る。イツキの瞳。それを見たヘイメアはゆっくりとイツキの頬に手を添えた。
「……ヘイメアさん?」
「そういえば、報告は聞いたよ。派手にぶっ壊したそうじゃないか」
イツキは、あっ。と表情を変えた。
「そうなんです!あれ、おれが壊したんですよ!パッタドルさんは悪くないんです!」
「ふふふふ、君は随分面白い男だね。…分かっているよ。特にパッタドルに罰は無いさ」
それじゃなく。とヘイメアはイツキの胸辺りに人差し指を添える。
「あれはこの王都にも使われている魔法防護が組まれているとは聞いたね?」
「はい」
「つまり、君は」
「私の首をいつでも狙えるということさ」
「しませんよ?」
溜めて言った言葉に速攻で返されたヘイメアは少し驚いた。
「いやいや、なんでおれがヘイメアさんの首を狙うんですか」
「ふ、ふふ、ふっふっふ。あっはっはっは!」
ヘイメアは急に大声で笑い出す。困惑しかないイツキだった。
「はぁー…久々に大笑いしたよ、何百年振りか…ふふ」
「それは、良かったですね?」
「ふふふ、それにしても、あの防護魔法を突破する魔力か…イツキ。少し胸元を開いてくれるかい?」
「あ、はい」
言われるがままイツキはシャツのボタンを開いて下着の首元を下げる。
ヘイメアは冷たい手をイツキの胸に添え、目を閉じる。少しして手を離し、自分の手を見つめた後、語り出す。
「炎の精霊が気に入る訳だ。君の魂には炎がこびりついている」
「炎、が?」
「理由は分からないがね。その熱に引き寄せられる様に精霊が集まってる。君、炎以外の属性魔法苦手なんじゃないか?」
「あ、そうなんですよ。どうにもイメージし辛くて…」
「もはやそれはイメージや術式どうこうの問題ではない。炎の精霊が集まって縄張りの様なものを作って他属性の精霊が近寄らないのさ」
「そうなんですか!?」
「随分と居心地が良いみたいだね。大昔似た様なものを見たことあるが、ここまでのは中々ないよ?」
そんな理由だったんだ…と、イツキは自分の胸に手を当てる。
「さて、今日はもう暗い。コートを着て表にいるフラメラの案内に従って宿へ向かうと良い」
「え?…うわっ、本当だもうこんな暗い」
「また明日聞かせておくれ」
「はい、是非」
外は完全に夜になって、星空の絨毯が空に敷かれていた。
「街はあんなに光があるのに星が見えるんですね」
「君の方は夜中に星が見えなかったのか?」
「はい、こんなに綺麗なのはこっちに来てからですよ」
「ふむ、街にある街灯の光や建物の光が影響してるのか……おっと、話が進んでしまうね」
これを持っていくと良い。とヘイメアは先程イツキが魅入られたネックレスをかける。そして、自分が着ている透明に近い銀のショールもイツキにかける。イツキは全力で目を逸らし続ける。
「これは?」
「私の客人という証さ。大事にしておくれ?」
大事にしなくても失くしたところで持ち主の元へ帰ってくる魔法が仕掛けられているのをイツキは知らない。
「こんな凄い高そうな…」
「私たちの仲は金如きで揺らがないだろう?」
「それは…そうですね」
ニコッと笑うイツキ。それに微笑みで返すヘイメア。
「じゃあ、おやすみ。イツキ」
「はい、おやすみなさい。ヘイメアさん」
イツキは部屋から出ていく。残ったヘイメアはソファに座り直し、街を見る。
「あんなに悲しい炎。私も初めて見たよ」
その言葉は、誰にも聞こえなかった。
祝!三十話突破!感想300件オーバー!UA16万オーバー!しおり900件オーバー!!お気に入り2600件オーバー!!!
総合評価5500オーバー!!!!
なんですか俺に土下座しろって?はい。“〇| ̄|_
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