異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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第三十一話『古代魔法』

 

「お待たせしました。フラメラさん」

「随分と長かったですね。てっきり食われでもしたかとぉ゛っ!!??」

「えっなに怖い」

 

女王ヘイメアとの謁見が終わったイツキはフラメラと合流。言われた通り宿を案内してもらおうと思ったのだが…?

 

奇声を上げたフラメラはイツキが首からかけているネックレスとショールから目を離さず固まっている。

 

「フ、フラメラさん?」

 

フラメラはイツキに声を掛けられハッと意識を取り戻す。そして、イツキに近付きヒソヒソと話しかける。

 

「ら、来訪者殿?そのネックレスとショールはどうされたので?」

「ヘイメアさんに貰ったんですが…」

「女王を付けんか…!」

「本人がいらないって…」

 

フラメラは顔を両手で覆いながら天を仰ぐ。どうやら相当貴重なものを貰ったらしいと思ったイツキは震え始める。

 

「そ、そんなに高価なものなんですか?」

「……高価なんてものじゃありません。それは…」

 

フラメラは盛大にため息をついた後、ボソボソと呟く。

 

「銀は永劫を意味するもの。赤の宝石は魔力。黒い宝石は彼女達王族の証。女王が職人に作らせた王家の象徴です。身に付けているのは女王本人。そしてそれを受け取ったと正式に判明しているのは一人のみ」

「えっ」

「南中央大陸を治める女王です。彼女の国とは同盟国ですし、幼なじみですからね。最近の仲はあまりよろしくありませんが…」

「あ、あの、じゃあこのショールは?」

「我が国の刻印が刻まれている銀のショール。女王しか着用は許されていません」

 

イツキはくるっと後ろを振り向き大扉に手を付ける。

 

「返してきます」

「待て!逆に失礼だ女王のご機嫌を損ねる!」

「だってそんな色々ヤバい物だって知らなかったんですもん!!お菓子くれるみたいなノリでしたよ!?」

「そういうところがあるんだあの人は!」

「はやく言ってくれません!?」

 

ぎゃーぎゃー騒ぎ出す二人を周りの兵士や貴族は遠巻きに見ていた。

 

女王本人も扉の隙間から笑いながら見ていた。

 

「と、とにかく…それはこの国では隠さず常に身につけることを勧めます」

「えっ今すぐにでも外したいんですけど」

「逆に考えろ。そのネックレスとショールがあればこの国での自由は決定された様なもの。それに賊もわざわざ女王の友とかいうこの国ぶっちぎりでヤバい奴なんて狙いはせん」

「フラメラさん結構言いますね?」

 

はぁーっとまた溜息をつくフラメラ。

 

「…ひとまず、今日の宿へご案内します。それをどうするかはそれからお考え下さい」

「はい…」

 

二人は夜の王宮を歩いていく。すれ違う貴族達は信じられないものを見た様な顔をした後そそくさと早歩きで去っていく。

 

見張りや見回りの兵士も同様、中には固まって動かなくなった者もいた。

 

「……とんだ扱いですよ、ホント」

「運が悪かったと諦めろ。まあ、同情はするよ」

 

フラメラはイツキの肩に手でポンポンと優しくたたく。

 

そして王宮の入り口まで辿り着くと、走ってきた馬車がイツキ達の前に止まる。

 

「フラメラ様、おまたせしまじっ……!?」

 

馬車の御者はイツキを見て舌を噛んだ。慣れ始めたイツキは遠い目をしていた。

 

「宿へ向かってくれ」

 

フラメラは馬車の扉を開けてイツキを中に入れる。そして自分も乗り込み、御者に合図を送る。

 

暫く馬車に揺られながら、イツキはボーッと街を見ていた。

 

街、といってもここは王宮がある貴族層。行き交う誰もが高そうな服や靴を履き、ふんぞり返って歩いている。

 

「なにか飲まれますか?」

「……なんか、スッキリするやつください」

 

イツキ的にはレモンや梅などのドリンクを想像して言ったのだが、フラメラは酒を注ぎ出す。それに気付かないイツキは受け取った酒をクイッと呑む。

 

「ん?……凄い美味しいですね、これ」

「良い酒ですからね」

「え、お酒なんですかこれ」

 

「ええ、なにか?」

「……まあ、一杯なら大丈夫、かな?」

 

そのまま喉も乾いていたイツキはごくごく呑み、あっという間に空になった。

 

「良い呑みっぷりですね。もう一杯いかれますか?」

「いえ、前に酷い目に遭ったのでやめときます…」

 

ほんわか良い気分になったイツキは、ネックレスのことは今考えてもしょうがないし明日起きたら考えようと楽観的過ぎることを考えていた。

 

そして、見るからに豪華な大きい館の前に馬車が止まる。

 

フラメラは降りて手を差し出してイツキの降車の補助をする。

 

「ありがとうございます」

「いえ」

 

それじゃあ。とイツキは館に入ろうとするも、それをフラメラが止める。

 

「来訪者殿」

「はい?」

「女王がそのネックレスを貴方に差し出した理由は分かりません。ですが、親愛の証であることに変わりはないでしょう」

 

フラメラはイツキの耳元に顔を近づけ、小声で話す。

 

「煩わしいだろうが、女王を頼む」

「はい。それはもちろん」

「はぁ…やれやれ、暫く君が相手をしてくれると思うと肩の荷が軽くなるよ」

「フラメラさんホント結構いいますね?」

 

気の所為です。とフラメラは離れる。

 

「おやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

 

そして、イツキは館の中へ。

 

扉を開けると、そこはエントランスであり、そこに備え付けてあるソファにメンバー全員が座っていた。

 

それぞれもこの場所に合ったドレスやスーツを着用しており、なんだか新鮮な光景だ。

 

「イツキ!」

「遅いぞ」

 

ドレスを着たファリンとひらひらしたのを嫌ってスーツを着たイヅツミが迎え入れる。他のメンバーもぞろぞろ集まってきた。

 

何故かイツキの前で硬直したファリンとイヅツミに代わって、チルチャックとシュローが話しかけるも、イツキの様子を見て二人も固まる。

 

赤くなった頬(酒)着替えている服(謁見用)見たこともないネックレス(言い逃れ無し)どこからみても女物のショール(アウト)

 

チルチャックは優しい顔でイツキに問いかける。

 

「ヤッたな?」

「ナニが!!??」

 

「イヅツミ、GO」

「シャーッ!」

「ぐわーっ!?」

 

ファリンの的確な指示により即座にイツキを襲撃。頭に齧りつかれ苦悶の表情を浮かべるイツキ。

 

「で、どうしたんだ?」

 

ライオスが呑気に聞いてくる。イツキは顔を逸らしながら嘘をつく。

 

「べ、別になにもありませんでしたよ?このネックレスだってなんかお菓子くれるノリでくれたのでそんな大したものじゃ」

 

「みなさーん。お夕飯の支度出来ましたよお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛!!??」

「パッタドルさーん!?」

 

階段の上からひょこっと出てきたパッタドルが拘束されたイツキが身に付けている例の物を見た瞬間足を滑らせお尻を何度も強打しながら階段から落ちてくる。

 

マルシルは回復魔法を唱えながらパッタドルを起こした。

 

「イ、イ、イツキ殿!?なんでそれ持ってるんですか!?」

「あっはっはっ!拾ったんですよねぇ実は!」

「拾ってたまりますかそんなものっ!!」

 

「イヅツミ、どう?」

「濃い女の匂いがする」

「ギルティ」

「ファリンさん!?」

 

あっちやこっちで問題発生。シュローは遠い目をしながらお茶を啜っていた。

 

一通り暴れて疲れた一行は満足したのか落ち着きを取り戻した。

 

「…で、なにがあったの?」

「ヘイメアさんにおれの世界の話をしたらこのネックレスとショールをくれましたそれ以上のことはございません」

「イヅツミ」

「ウソはついてない」

 

膝をついているイツキの頬に爪でツンツンするイヅツミ。

 

「…ファリンとあの獣人娘いつのまにあんなに仲良くなったんだ?」

「さあ…?」

「お前兄貴だろうが…」

 

「パッタドルさん。大丈夫?」

「は、はい。すみません。取り乱して」

「そんなにヤバいやつなんですか?アレ」

「カクカクシカジカこういうことです」

 

パッタドルによる高速説明魔法(そんなものはない)で詳細を把握する一行。チルチャックとシュローは天を仰いだ。

 

「随分気に入られたんだね、イツキ」

「ファリンさん?顔が恐ろしいです普段の優しくて可愛くて穏やかなファリンさんに戻っ痛ぁ!?」

「お前そういうとこだぞ」

 

顔が赤くなったファリンの代わりに重い蹴りを入れるイヅツミ。

 

「ま、まあ…貰ったものは仕方ありません。女王陛下はわりとそういう人ですから…」

「そういう人なんだ…」

 

会ってもいないのに株がどんどん下がっていくヘイメア。

 

「ま、何事も無かったみたいだしいいか。飯なんだろ?行こうぜ」

「チルさん…!」

 

トラブル回避に定評のあるチルチャック。話を纏め全員で食堂へ。

 

食堂には料理を並べているマイヅル達の姿が。パッタドルは慌てて止める。

 

「マ、マイヅル殿!お座りになられてて下さい!」

「いや、座りっぱなしは性にあわない。手伝わせてくれ」

 

ドレスではなくスーツを着たマイヅルはニコッとクールに笑う。キュンとしたパッタドルと後ろのメイド達。

 

「さ、みんな座ってくれ。大体並べ終わったからさ」

「はやくして。冷めるから」

 

ヒエンとベニチドリも手伝っていた様だ。二人ともスーツを着ていて周りのメイド達は顔を赤くしていた。

 

「…あれ?タデちゃんは?」

「呼びました?」

 

イツキの後ろの廊下から現れたイヌタデ。その姿は普段とはまるで違う。

 

体格にあったドレスはイヌタデの魅力を底上げし、髪も普段と違いふんわりとカールがかかっている。いつもと違い全体的に可愛らしい格好になっている。

 

「可愛いね、タデちゃん」

「えへへ……」

「馬子にも衣装」

「こらっ、ダメだよイヅツミ」

 

トラブルは起きたものの無事夕飯を済ませた一行は、それぞれに宛てがわれた部屋に行く。船の時とは違い一人部屋だ。

 

イツキは寝る格好に着替えてベッドに横になる。そして、貰ったネックレスをボーッと見ていた。

 

そして、遅い時間にイツキの部屋の扉が叩かれる。

 

「イツキくん。起きてる?」

「マルシルさん?」

 

イツキはネックレスをベッド横のサイドテーブルに置いて扉を開ける。

 

「どうかしたんですか?」

「ごめんね。大事な話があるの…中に入れてくれる?」

「はい。どうぞ」

 

マルシルを部屋に入れ扉を閉め、ソファに二人は座る。

 

「大事な話、とは?」

「あのね、イツキくん女王様にネックレスもらったでしょ?」

「ああ、はい」

 

イツキは死んだ目をするも、マルシルは話を続ける。

 

「私が研究しているもの、言う機会が無くて言ってなかったんだけど…」

 

マルシルが個人的に研究している魔法。それは世間一般では禁術とされている古代魔法。イツキは魔法陣とそれの封印で古代魔法について多少心得があった。

 

「私の夢の為に、どうしても古代魔法は必要不可欠なの。でも、古代魔法は閲覧が制限されてて私みたいなのじゃ見せてくれないし、たとえ許可が下りても何十年先になるか分からない」

「マルシルさんの夢って、なんなんですか?」

 

「…全ての種族の寿命差の撤廃だよ。イツキくんには分かるんじゃないかな。トールマン。ヒトしかいない世界から来た貴方なら。この世界の人達は同じ人なのにそれぞれの種族を同じ人間だと思ってないって」

 

実際、イツキはこの国に来てエルフ達を見た。そしてトールマンがどういう扱いを受けているのかも話には聞いた。

 

マルシルは自分の種族であるハーフエルフの話をする。

 

トールマンの父。エルフの母から生まれたマルシルはハーフエルフと呼ばれる希少存在。その寿命はエルフやノームを遥かに凌ぐ千年と言われている。

 

マルシルが魔法を習える様になる歳の頃には、既に父は年老いていた。そもそもマルシルが生まれた時点で既に良い歳だった父。

 

「お父さんね、凄い食べる人だったの。小さいころ、お父さんの大きいお腹を見て子供がお父さんのお腹に入ってるって勘違いして笑われたっけ…」

 

エルフの母はとても明るい人で、家族の中のムードメーカーだった。

 

「いっつもニコニコしてなんとかなるよーって楽観的だったお母さんが、お父さんの食が細くなって好きだったローストポークを食べられなくなった時、すごい取り乱したの。大泣きしちゃって…………あんなお母さん見たの初めてだった」

 

「……」

 

イツキは黙って話を聞き続ける。

 

「私は、世界中の人に同じ速度で歩んで欲しい。それは私如きが抱くには大きすぎる夢。だけど古代魔法ならなんとかなるの」

「そんなに凄いものなんですか?」

 

「うん。無限の次元から魔力を使う……無限なんてものがあれば、あとは術式を組むだけ。回復や蘇生魔法と一緒。肉体組織を作り変えればいい」

 

「お願い、イツキくん。女王様に頼んでそのネックレスを使って古代魔法の魔導書がある図書館に私を入れて。貴方に助け……ううん。貴方を利用させてほしいの」

 

わざと悪い言い方をしたマルシルはイツキの両手を掴む。その表情は真剣そのものであり、今までの発言に嘘偽りは無いと感じる。

 

「……分かりました。頼んでみます」

「ありがとう…っ!」

 

マルシルは感極まってイツキに抱きつく。そこで、扉がノックされる。

 

「イツキー、マルシルがいないんだけど、しらなーい?」

 

それはファリンの声だった。一瞬にして固まり小声で話す二人。

 

「そ、そういえば一緒に寝る約束してた…っ!」

「なんでそんな大事な話忘れるんですか…!」

「だ、だって…!イ、イツキくん、鍵閉めた…!?」

「女性の友人が深夜部屋に来て鍵を閉めると思いますか…!?」

 

そして、扉がゆっくり、ゆっくりと開かれる。

 

そこには、ファリンの顔が。

 

マルシル…?イツキ…?

 

「「ギャーーッ!?」」

 

楳図○ずお作品並の悲鳴を上げた後、拗ねたファリンを慰めて三人で仲良く一緒に眠ったのであった。

 

 




なんか似たようなノリばっかで申し訳ない。書いてて面白いんだ。
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