異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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なんか書いてて意味わかんなくなっちゃった。あれだ、ベッドの中で死んだらどうなるんだろうと考え始めて寝れなくなるやつ。

上手く書けなかった気がする……ぬぐぐごお


第三十二話『生きること』

『イツキ殿、おはようございます』

「ふぁい……」

『入りますね』

 

エルフ中央国に来た翌朝。ではなくお昼。イツキはパッタドルの声で起きる。

 

「もうお昼ですよ」

「んー…久々にこんなに寝た……寝ましたよ」

「長い船旅からすぐに女王様のところへ行かれましたからね。お疲れだったのでしょう」

 

パッタドルは部屋のカーテンを開ける。眩しい太陽の光が部屋を照らす。

 

「女王様からの言伝です。昨日は無茶をさせた、今日はゆっくり休め。だそうです」

「そうですか…散歩でもしよっかな」

「お供しますよ」

「他の皆はどうしたんですか?」

「イツキ殿を起こすのは忍びないと、それぞれおでかけしましたよ」

「……大丈夫かな、主にライオスさん」

「ライオス殿はマルシル殿とファリン殿が連れていきましたよ?」

「なら大丈夫かな…」

 

支度と昼食を済ませ、昨日の謁見用の服に近い普段よりお高めの服で外に出る。

 

例のショールは部屋に、ネックレスはパッタドルがいるから良いかと思い上着で隠す。

 

門を出た辺りで大きく伸びをする。背骨が鳴った。

 

「ふ……く……はぁっ……昨日は気付かなかったんですけど、なんか空気美味しいですね」

「中央は他大陸に比べて大気中の魔力が多いですからね。エルフや魔法使いには過ごしやすい環境なんです」

「へえー…」

 

イツキは適当に歩き出す。そして落ちている枝を拾い地面に立てた。

 

「何なさってるんですか?」

「倒れた方へ進もうかと」

 

倒れた枝は軽い音を鳴らし、指す方向は右。

 

「こっちに行きましょう」

「なんか楽しくなってきました」

 

イツキとパッタドルは二人並んで歩き出す。

 

太陽は真上にあるもカラッとした空気のお陰で鬱陶しさは無い。穏やかな風が吹き、遠くの方から鳥の鳴き声が聞こえる。

 

イツキは、昨日のマルシルとの会話を思い出していた。

 

全ての種族の寿命差の撤廃。イツキ自身、ヒトしかいない世界からやってきたため、何百年も生きているというノームやエルフの心情は測りかねない。

 

そもそも一個人がこの世全ての人間の寿命を弄るというのはどうなのだろうか。解消すべき問題はかなり出てくる。

 

受け入れる人間。受け入れられない人間。

 

マルシルがハーフエルフだから、ではない。

 

考えられる組み合わせとして、トールマンとエルフ。ハーフフットとノーム。ドワーフとオーク。オーガとコボルト。

 

きっとまだイツキが知らない人種も居るだろう。知っている人種だけでもこれだけ組み合わせが浮かんでくる。しかもまだまだある。

 

彼ら彼女らも寿命差に苦しんだことだろう。だが、それは人間如きが変えて良いものなのか?

 

それはもはや神の所業では?

 

しかし、昨晩のマルシルの顔を思い出す。

 

後悔と哀しみ。愛しさと渇望に染まった顔。

 

きっとそれは理屈ではなく感情なのだろう。

 

感情で動くのは愚行だが、感情で動くからこそ人間だ。

 

自分がマルシルと同じ立場だったら?

 

先に老いていくライオスにファリン。自分は若いまま、どんどん距離を離されていく不安と孤独感。

 

「(ああ、たしかにそれは……嫌だな)」

 

大事な人と同じ時を歩めない孤独感。その孤独感を消しされる手段が存在するというのなら、自分は迷いなくその手段を実行する。

 

「……イツキ殿?」

 

気付くと、パッタドルが伏せたイツキの顔を覗き込んでいた。

 

金の髪。整った容姿。長い耳。碧色の瞳。

 

イツキは立ち止まりパッタドルの正面に立つ。

 

「パッタドルさん」

「はい?」

「パッタドルさんは、家族って全員エルフなんですか?」

「はい。両親に姉妹もいますが、全員エルフですよ?」

「もし、自分が他種族を受け入れるってことになったら、どう思いますか?」

「受け入れる……とは?」

「カタチはきっと様々だと思いますが、例えば結婚相手」

「けっ……!?」

 

パッタドルは頬を赤く染め目を見開く。

 

「例えば、パッタドルさんがトールマンと結婚したとして、トールマンの平均寿命は六十年。怪我や病気などの外的要因で亡くなることを除いても、死に別れることが確定した未来」

「は、はいっ」

 

「苦しいとか、悲しいとか、そう思いますか?」

「……私は、その…」

 

「カナリアとして、色々な迷宮に行きました。そこの迷宮の主とも、何度かお話したことがあります」

 

戦ったことはないんですけどね?と付け足す。

 

「恋人を生き返らせたい。恋人と迷宮で過ごしていたい。そういう風に、愛が理由で迷宮の主となった者も少なくありません」

 

「私は、理解できるつもりです。そこには確かに愛があった、と」

 

「だから……その……大丈夫、ですっ!」

 

 

……………………………………?

 

「え、なにがですか?」

「へ?」

 

妙な間が生まれる。パッタドルは頬どころか耳まで真っ赤だが、イツキは至って素面だ。

 

「………………あぁーーー!!そうですね!種族的寿命差がある結婚相手が先に亡くなってしまうという問題ですね!!はい!!」

「は、はい」

 

パッタドルはぬがー!と髪を掻きむしりながら頭をぶん回す。何を勘違いしたのかは不明だが、少しして落ち着きを取り戻した。

 

「…はぁ…はぁ…私の考えで、よろしいですか?」

「はい」

 

「愛とは時間ではなく、実感と密度だと思います」

「実感と密度…」

 

「前に犬を飼ってたことがあるんですが、三十年前に亡くなったんです」

 

「最初は、もっと遊んであげればよかったとか、もっと撫でてあげればよかったとか凄い後悔したんです。ずっと泣いて…泣き続けて」

 

「でも、あの子が亡くなっても、あの子がいたという事実は消えません」

 

「そしてある日。ああ、私はあの子のことを心から愛せたんだ…って思えたんです」

 

「私はこの先恋人を作るかもしれません。それがエルフなのかトールマンなのかは分かりませんが、もしエルフ以外の種族で、自分より先に死ぬことが分かっていても、私はその人のことを心から愛して、愛し続けます」

 

「そしてその人を見送って、ひとりぼっちになったとしても。私とその人が幸せだったという事実は消えません」

 

「それがその人を愛していたという実感。その人と過ごした時間の密度。寿命が尽きるまでその人のことを愛せたなら…」

 

「もう、それ以上いらないんじゃないかなっ……て。これは私個人の意見ですがね?」

 

パッタドルは少しだけ歩き、空を見る。

 

「ー……なる、ほど」

 

イツキはパッタドルの清々しい横顔を見た。綺麗だ、と心から思った。

 

それは容姿の話ではなく、彼女の人間性そのものの話だ。

 

「ところで、なぜこんな話を?」

「おれの友達に種族の寿命差で悩んでいる人がいて、相談されたんですが…上手く返せなくて」

「そうですね。おそらく一生の課題でしょう。私もこんな偉そうなこと言っておいて実際そういう立場になったら意見は変わるかもしれません」

 

「それでも、愛は実感と密度というのは変わりません。せっかくの人生なんですから、長く太く行きたいじゃないですか」

 

にかっと笑うパッタドルにイツキも笑う。

 

もしエルフが倫理観を完全に無視し子孫を増やすのに注力したらきっと世界中はエルフの混血で溢れているだろう。

 

そうしないのは技術的に出来ないのか、エルフこそ愛を重要視する生き物だからなのか。絶滅の危機に瀕しているのに関わらず子孫を残さないのはどちらの理由なのかは今のところ分からない。

 

「少しは参考になったでしょうか?」

「はい。ありがとうございます」

 

パッタドルの意見は正しいものかもしれない。間違っているかもしれない。

マルシルの意見は正しいものかもしれない。間違っているかもしれない。

 

死を憂う事は生者の特権であり、死者の特権とは生者の独占なのかもしれない。

 

「なんか難しい話してたら甘いものが食べたくなってきました」

「でしたら、良いお店を知ってますよ」

「いいですね。行きましょう!」

 

二人は歩き続け、町にあるアイスクリームの屋台にたどり着く。種類は豊富で、バニラやストロベリーという王道のものもあれば変わり種としてマンドレイク味があったりする。

 

「意外と美味しかったですね、マンドレイク味」

「それ頼んでる人初めて見ましたよ…」

 

食べ終わった二人は再び散策へ。そこで、あっ、とパッタドルは何かを思い出した。

 

「私一回基地に戻らなきゃいけないんですよ」

「基地って…カナリア隊の?」

「はい。基地といっても小規模ですが」

「カナリア隊……それ、おれも行って良いですか?」

「ええ、もちろ…あー…」

 

承諾しかけたパッタドルは急に言い淀む。

 

「あのですね、カナリア隊は迷宮を攻略する時にツーマンセルもしくはスリーマンセルで別れて探索するんですが…その時、監視役と囚人がいるんです」

「囚人?」

 

「はい。彼らは犯罪者なのですが、その技術を買われ囚人であり隊員なのです。基本は基地から出ないんですが…」

「へぇー……」

 

イツキは前世界にいた時海外でハッカーが軍にスカウトされ活動しているという話を思い出し、『カッケェ…』と思った。

 

「行きたいです!カナリア隊の基地!」

「そ、そうですか?では行きましょう。大丈夫、私が守りますよ」

 

頼もしげなパッタドルの後に着いていくイツキ。暫く歩き続け綺麗な外観の建物にたどり着く。

 

「入りましょう」

「はい」

 

パッタドルは入ってすぐの階段を上がり二階へ。そして、二階の廊下の一番奥の部屋の扉の前に立つ。

 

『誰?』

「パッタドルだ。それとお客人が」

『今開けるわ』

 

内側から扉が開かれる。そこには五人のエルフがいた。

 

「…なにその子」

「どこの若いツバメ攫ってきたんだよ」

「違う!そんなんじゃない!」

 

入口一番近くにいたのは褐色で銀髪のエルフ。そしてもう一人がボサボサの金髪のエルフだった。

 

「パッタドルそういうのがタイプ?まあイメージ通りっちゃあイメージ通りかな?」

「だから違うといってるだろう!」

「その割に顔赤くない?」

 

上半身裸に魔術式の刺青が入った銀髪の美青年。そして金色のベリーショートヘアのエルフ。

 

そして一番奥の椅子。背もたれが大きく窓の方を向いているので姿は分からないが、若干肩が見えていた。

 

「初めまして、イツキです。今日はパッタドルさんにお願いしてカナリア隊の見学に来ました」

「へえ、変わったトールマンもいたもんだね」

 

濁った目のボサボサ髪のエルフがイツキの肩に組んでくる。

 

「私は『フレキ』。カナリアの偵察役だよ」

「『シスヒス』。交渉役よ」

「は、はじめまして」

 

シスヒスはイツキの傍に立って上から「ん〜?」と顔を覗いてくる。興味半分、警戒半分といったところだ。

 

「あんま子供イジメんなよー。あ、俺は『リシオン』ね」

「その刺青…なにかの魔術式ですか?」

「お、分かる感じ?まあ趣味だよ趣味」

「ただの露出狂でしょ…あ、『オッタ』だよ、よろしく」

「失礼な」

 

「あれ、隊長は?」

 

「そこにいるだろ」

 

リシオンが隊長とやらが座っている椅子をクルッと回し正面へ向ける。

 

そこには、銀髪のエルフの男性。片目は義眼なのだろうか、焦点が合っていない。

 

彼と目が合い、そしてその視線にイツキは背筋がぞくりとなる。

 

確信があった。迷宮で何度も戦闘を重ねたからこそ得ることが出来た確信。

 

「(この人……凄く強い)」

 

「我らが隊長『ミスルン』でーす。わ〜」

 

拍手をするリシオン。敬意を払え!と怒るパッタドル。

 

「……」

 

ミスルンと紹介された人物はイツキと目を合わせたかと思えばすぐに興味を無くした様に目線を外す。というより、最初からいなかったかのように振る舞う。

 

「あーごめんね。隊長昔色々あって欲が無くなっちゃってさ。まあ悪い人ではないから」

「欲を…?」

 

「まあ、その話はおいおいで良いんじゃないかしら」

 

それより。とシスヒスはイツキの後ろに周り両肩に手を置く。

 

「私は貴方の話が聞きたいわ」

 

シスヒスは妖しくくすりと笑った。

 

イツキは言いようの無い気持ちになった。

 





今のうちに言っておきたいのですが自分は原作カブルーがミスルンに介護(誇張無し)するシーン好きなのでミスルンに色々教えるのは原作通りカブルーです(鋼の意思)
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