「え、イツキその格好どうしたの?」
「ふっふっふ。気付きますか気付いてしまわれますか」
「見りゃ分かるわ」
イツキ以外のメンツが館に戻り、エントランスに来るとそこには不思議な格好をしたイツキが手足を組んで座っていた。
困惑したファリンと冷めた目のチルチャックの後ろから、買い物袋を持ったマルシルがひょこっと顔を出す。
「あれ、それパッタドルさんが着てたやつ?」
「そう。カナリアの隊服です」
今のイツキの格好は、カナリア隊の標準服。パッタドルやミスルンが着ているものと同じタイプのものだ。
ライオスも買い物袋を持って現れる。
「カッコいいよなぁそれ。どうしたんだ?」
「実はですね…」
時は遡りシスヒスからカナリアへの入隊を誘われたイツキ。
「え、カナリアってエルフ以外もなれるんですか?」
「エルフでなくてはいけないというルールはないわ。たまたま全員エルフなだけ」
「だ、駄目に決まってるだろう!女王様の賓客だぞ!」
パッタドルが反論するも、シスヒスは至って冷静に返す。
「あら、別にそこまで制限されるいわれはない筈よ?」
それに、とシスヒスは続けて言う。
「貴女的にも、都合が良いんじゃない?」
「んなっ…!?」
確かに…と思ってしまったパッタドル。
「いや思うなよ」
オッタのツッコミも虚しくパッタドルは言い負けてしまう。
「なんの騒ぎだ?」
そこに、出払っていたフラメラが現れる。
「あ、フラメラさんこんにちは」
「来訪者殿?何故ここに」
イツキは軽くここまでの経緯を説明する。
「ははっ、君も男だな。ミスルンに喧嘩ふっかけるとは良い度胸じゃないか」
「ボロ負けでしたけどね」
「ふふ、あまり気にするな。歳が違いすぎる。経験差というものだろう」
「で、シスヒスからカナリアへ誘われたわけか」
「フラメラ副隊長もなにか言ってやってください!」
「別にいいんじゃないか?人手不足なのは確かだしな」
「えぇっ!?」
まさかの裏切りにパッタドルはショックを受ける。
「仮入隊なら正式に雇わなくても平気だろう?」
「というかおれの意思は」
「まあまあ、着替えなら建物にあるから、行きましょ?」
あ〜。とイツキはシスヒスに首根っこ掴まれて運ばれていく。暴れて怪我をさせる訳にもいかないイツキは大人しくそのまま連れ去られていった。
そして更衣室に入り、シスヒスは近くにあった木箱を開ける。
「確かここに余りの制服が…ああ、あった。はいこれ」
カナリア隊隊服。素材は大蜘蛛の糸で作られておりかなり独特のデザイン。服としては重いが鎧としてはかなりの軽量だ。
「…どうやって着るんですか、これ」
「じゃあとりあえず服脱いで♡」
「嫌ですよ!?」
着方だけ教えてください!。ふふふ大人しくしなさい。などと騒いでいると、慌ててパッタドルが部屋に飛び込んでくる。
「シスヒス!未成年淫行でとっ捕まえるぞ!」
「あら紳士の着替えを覗くだなんて淑女あるまじき行為よ?」
「じゃあ貴様はなんなんだ!!」
ほほほ。とお上品に笑うシスヒスに怒るパッタドル。
「とりあえず着替えるんでとっとと出てってください!」
と、部屋から追い出されるシスヒスとパッタドル。
ひとまずパッタドルが扉越しにどうやって着るかを指導。無事着替えられたイツキは更衣室から出てくる。
「結構…重いですね。普段着る鎧よりは軽いですけど」
イツキはパッタドルとミスルンと同じタイプの制服に着替える。場合によってはシスヒスのような下がロングタイプのものもある。
「よくお似合いです、イツキ殿」
「なんか…首とかがチクチクしますね」
「そうですね、最初は慣れませんでした」
イツキはその場で身体を動かして服を馴染ませる。
「でも動きやすいですね」
「そう?重くてしょうがないわ」
イツキは誰もいない方に向かってパンチやキックの素振りをしたりする。
「それで、入隊する?」
「うーん…今やってることが終わったら、考えてみます」
「やってること、ですか?」
「はい、今おれは迷宮攻略をしてるんですけど、そこのリーダーには恩がありまして。迷宮を攻略して…して……」
そこで、イツキは止まった。パッタドルがイツキの顔を下から覗き込む。
「イツキ殿?どうかされましたか?」
「いや……迷宮を攻略した後のこと、なんも考えて無かったなぁ…って」
「ようは定職の話?」
「うーん…定職…出来れば世界中見てみたいんですけど…」
「だったら尚更カナリアが良いじゃない。迷宮を調査するために世界中行くわよ?」
「……ちょっと、考えさせてください」
その後、制服を返そうとしたがフラメラから『どうせ余ってるし持っていって良いぞ』と言われたので、カナリアの面々と別れを告げ今に至る。
そして、現在エントランスにて。
「迷宮を攻略したあとかぁ…私も何も考えてなかったなぁ」
「ファリンは墓守の仕事があったじゃん」
「墓守…」
「遺体の調査とか管理とかの仕事だよ」
墓守って字面カッコイイよな…。とどうでもいいことを思ったイツキ。
ファリンがイツキの隣に座り、裾を掴む。
「イツキ、迷宮終わったら中央に行くの?」
「まあ…カナリアをやる。ってなったら…そうなりますね」
ぼんやりと、未来設計をするイツキ。
仕事の上司にミスルン。パッタドル。フラメラ。
一応形式上部下となるシスヒスやオッタ。リシオンにフレキ。
仕事をして、帰ってきて、家にファリンとイヅツミ………
「ん?」
なぜこの二人が?と思ったイツキの元にイヅツミが後ろから声をかける。
「おい」
「うおわっ!?」
「なんだよ!急にでかい声出しやがって!」
「急に後ろから話しかけるからだろ!」
「あ!?」
「二人ともケンカしないの〜」
和気あいあいとケンカした次の日。
イツキは再び女王に謁見するために王宮にある女王の私室にやってきていた。
「ふむ…携帯。スマートフォン、か。それがあればこの世のありとあらゆるものが調べられいつでもどこでも携帯同士連絡がとれる、と」
「インターネットは個人が情報を出せるから嘘もあるし間違った情報もあって、電波が届かない場所は電話出来ないんですけどね」
「ふむ。善し悪しがあると」
ヘイメアは紅茶を一口。イツキもつられる様に一口飲む。そして、ため息をついた。
「なにか悩み事かい?」
「あ、すみませんため息なんて」
「構わないよ。…私で良ければ相談に乗ろうか?」
イツキはカナリアに勧誘されたこと、そして迷宮を攻略した後のことを何も考えていなかった事を話す。
「ふむ。君の歳はそちらの世界では働かず勉学に励むのだろう?」
「人によりますけど、大体はそうだと思います」
「幾つになったら働く様になるんだい?」
「おれは後一年でアルバイトが出来て…あ、アルバイトっていうのはですね」
イツキはアルバイトと仕事の違いについて説明した。
「なので、アルバイトは出来るんですが、学校に行きながらだと定職には就けないんです」
「つまり、未成年には責任が伴う職務には就けない、と?」
「そうですね」
「となると、君は他の人に比べてかなり早く責任というものに追われることとなった。そしてこれから先の話…」
「世界を回るにしても、迷宮を攻略するにしても、カナリアに就くとしても、君は実力というものを身に付けなければな」
「実力ですか?」
「ああ、この世界は君の世界に比べると残念ながら流れる血が多い。トラブルを回避するのには相応の力量が求められる」
「……ああ、そうだ。どうせヤツは暇だろう」
「ミスルンを師に、力をつけてみてはどうだい?」
今回のオマケみたいなのこれからいる?本編じゃなくて後書きにチョロ書きの方がいいのだろうか
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いる。本編でいい
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いらん
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いる。でも後書きにほしい
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ミスルンを最初女性と勘違いした人