異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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書いてて楽しかった繋ぎ回。

え、毎回繋ぎ回みたいなもんだろだって?

(´•ω•`)


第三十八話『把握と確認』

メリニ迷宮。地下一階。

 

特殊個体に溢れたメリニの迷宮は、過去にライオス一行により元の状態へと戻りつつあった。しかし一年という月日はイツキ達を成長させたと同時に、迷宮もまた複雑に育った。

 

「え、地形すら変わったんですか?」

「ああ、丁度アンタらが中央に飛ばされてから…一ヶ月くらいだったかな?迷宮に地響きが起きてやたらめったらに地形が変化したんだ。性質は変わってないんだけどな」

 

イツキは近くにいた冒険者に事情を聞いていた。そこにライオスが近付いてくる。

 

「ああ、その人の言う通りだ。植生や性質そのものに変化は無いが、足場や建物など至る所まで変化してる」

「ライオスさん達はどこまで行ったんですか?」

「地下三階までだよ」

 

「三階というと城主体の構造で、魔物は動く鎧とかミミックとかですよね」

「ああ、四階は水上歩行が無かったからあんまり探索が進んでないんだ」

 

途中まではチルチャックの案内でスムーズに進むと思うよ。そうライオスは続け、その言葉にチルチャックが反応する。

 

「城に入ると見たこと無いような罠がひしめいてた。殺意も高い。今まで以上に慎重に行くぞ」

「はい。お願いします」

 

ここで、メンバー全員の役割を整理しよう。

 

まずはライオス、パーティリーダーとしての迷宮内での役割。

 

①パーティ全員への的確な指示及び先導。

②前線へ立ち大盾による防御及び魔物の誘導。

③常に周りの状況の把握。

 

イツキ、魔法剣士として迷宮内での主な役割。

 

①剣もしくは魔法による敵対生物の撃退。

②魔法で組まれた罠や扉の解錠及び探知。

③特殊個体関係の魔法陣の封印。

 

ファリン、治癒師として迷宮内での主な役割。

 

①魔法による治癒及び結界や身体の強化。

②魔法で組まれた罠や扉の解錠及び探知。

③特殊個体関係の魔法陣の封印。

 

マルシル、魔法使いとして迷宮内での主な役割。

 

①魔法による治癒、結界生成や敵対生物の撃退。

②魔法で組まれた罠や扉の解錠及び探知。

③特殊個体関係の魔法陣の封印。

 

チルチャック、鍵師として迷宮内での主な役割。

 

①罠、扉や宝箱の解錠。敵対生物の観察と感知。

②弓矢や投げナイフによる魔物の誘導。

 

シュロー、戦士(侍)として迷宮内での主な役割。

 

①刀による敵対生物の撃退。

②罠の感知、及び解除。

 

ナマリ、戦士として迷宮内での主な役割。

 

①斧や大斧での敵対生物の撃退。

②ドワーフ式の扉や罠の解除。

 

センシ、給仕及び戦士として迷宮内での主な役割。

 

①斧による敵対生物の撃退。

②魔物の観察及び察知。

③普通のもしくは魔物を使った料理と健康管理。

 

計八人による主な役割は以上。

 

基本、前衛をライオス。イツキ。マルシル。チルチャックが担当。後衛はファリン。シュロー。ナマリ。センシに分け、必要に応じて位置を変える。

 

もちろんそれは疲労や魔力欠乏症などを含めたものであり、迷宮後半に備えてイツキに代わりシュローが前衛に立つ場合もある。

 

「なぜチルチャックが前衛なのだ?」

「俺が前衛にいないで誰がいの一番に罠感知をするんだよ」

「俺も教わったが、やはり精度はチルチャックに劣るな」

「こちとらそれで食ってるもんでね」

 

魔法使いを含めたパーティにとって、魔力総量の確認も必須だ。

 

魔力総量の順番としては。

 

一位マルシル。二位ファリン。三位イツキ。四位ライオス。五位シュロー。六位チルチャック。七位ナマリ。八位センシだ。

 

なお、チルチャック、ナマリ、センシは種族的都合が大きい。ナマリとセンシに至っては魔力総量は誤差程度しか無い。

 

「攻撃魔法の最打点はマルシルさんで、治癒魔法はファリンさんがトップですね」

「私はいっぺんにイツキほど火力は出せないよ?」

「いっぺんに出すより継続的に出し続ける方が強くないですか?」

「なんだ、シモの話か?」

「「チルチャック(さん)?」」

「ヒッ…わ、悪かったって、悪かったから杖と剣を下ろせって!?」

 

トールマンの中ではファリンがイツキと僅差で上。イツキもあれから魔力総量が増え、そう簡単には魔力切れになることは無くなった。しかしそれでも使い過ぎには注意が必要だ。

 

ライオスとシュローは魔法を使わない為、肉体的接触による魔力譲渡の役割が一応ある。これは使用の度に魔力総量上限が下がるポーションと違いスムーズな譲渡を可能とする。

 

しかしそれでライオスとシュローが魔力欠乏症になっては元も子も無いので、これはいざという時の切り札である。

 

「じゃあライオス、魔力譲渡の練習ね。手を出して?」

「あ、ああ……マルシル、あまり手を動かさないでくれ。擽ったい」

「え?ああ、ごめんごめん!……ライオスも、あんま動かさないでよ」

「……すまん」

 

「あの二人、割と怪しいですよね」

「お前が言えた口か?」

「え?」

 

主な役割とはまた別に、それぞれに仕事がある。

 

例えば、ライオスはパーティリーダーとしてメンバーの人間関係の把握、及び相談相手を務めたり。

 

イツキの場合その性格でムードメーカーの役割。

ファリンはメンバーのメンタル管理。

ナマリはパーティ内での武器防具の管理及び新調の相談。

 

と言った風に、戦闘や探索以外の役割も存在する。上記に挙げたメンバー以外にも役割はある。

 

「センシ、前買い出しに付き合ってやった時の斧ちゃんと整備してるだろうな?」

「う、うむ。きちんと研いだり留め具をチェックしておる」

 

「…ライオスさん。センシさん、随分しおらしいですけどなにかあったんですか?」

「武器の扱いについてナマリに半日くらい説教食らったらしい…」

「おお…」

 

そして、荷物の管理。

 

迷宮探索では数多の種類の道具を活用する。

 

寝袋。ランタン。飲料水。食料。薬。着替えetc。メンバーが増えれば増えるほど必要な物は増え、つまり荷物とそれを入れる鞄の量が増える。

 

それを誰が運搬するのかという話。これはメンバーの筋力と持久力に関係してくる。

 

例えば、ライオスは筋力と持久力は並以上あるため荷物が一番多い。とすると荷物持ちにはドワーフであるナマリやセンシが適任と思うかも知れないが、ドワーフはその卓越された筋力が注目されがちだが持久力は乏しい。

 

もちろん性別と種族的にハーフエルフであるマルシルと比べると荷物は多い。

 

筋力の順番としては、

 

一位センシ。二位ナマリ。三位ライオス。四位シュロー。五位イツキ。六位ファリン。七位チルチャック。八位マルシル。

 

持久力は

 

一位ライオス。二位イツキ。三位シュロー。四位ファリン。五位センシ。六位ナマリ。七位チルチャック。八位マルシル。

 

となる。そうすると、荷物持ちに適任な順番は。

 

一位ライオス。二位センシ。三位ナマリ。四位シュロー。五位ファリン。六位イツキ。七位チルチャック。八位マルシル。

 

となる。男性であるイツキが女性であるファリンに比べると荷物持ちに適さないのは、単純に意外とパワフルなファリンと、身長と年齢による差が大きい。

 

ファリンは身長約170cm。BMI24。

 

対してイツキは身長16×cm。(一部何故か燃えていて読めない)BMI21。去年に比べると身長は伸びたが、それでも元の体格が細めな為ファリンには若干筋力が劣る。そもそもヒトとトールマンは正確には違うのだが、ほぼ誤差の範囲だ。

 

「まあ、こんなところかな」

 

ライオスは纏めたメモを冊子に仕舞う。

 

「そういえばイツキ、お前得物増えたんだな」

 

ナマリはイツキが腰から下げている二本の剣を見た。前話で描写した通り、イツキは元々ファリンとライオスから贈られた魔法発動補助機能付きのロングソード一本のスタイルだったが、この一年で変化した。

 

「はい。こっちは元々持ってた奴で、左手に持つ方は新調した物で…」

 

イツキは腰から下げている柄が植物の蔓で出来た剣を取り出す。

 

「なんだこりゃ、柄が…蔓か?これ」

「はい。マルシルさんの杖を参考に育てた魔力で育つ植物を元に作ってるんです」

「なになに、呼んだ?」

 

魔法使いの杖。種類は様々であり、イツキが持っている様な魔術式が書き込まれた補助機能付きの物。マルシルが持っている杖、アンブロシアの様な長い年月をかけて魔力で育つ植物で杖を育てるタイプなど。

 

後者の場合、植物に水や栄養を与える様に良質な魔力を定期的に与えるなど管理が大変で手間が掛かるが、その分発動する魔法の質に影響するので長い目で見ればアンブロシアの様な育てる杖の方が魔法使いには都合が良い。

 

「でもこれ握りにくくないか?」

「案外そんな事無いですよ?持ってみます?」

「ん。……おお、ほんとだ。しっくりくるな」

「防具もカナリア式にしちゃって、耳を隠したらパッと見エルフだよ?」

 

イツキの防具。カナリア隊の基本隊服。ミスルンやパッタドルのタイプを着込み、外套はいつぞやファリンにプレゼントされたもので、あの時は身長が足りず外套を引き摺ってしまうため着用を断念していたが、身長が伸びたお陰で無事着用出来た。

 

「ふふふ、まだまだ伸びますよ」

「そら良かったな」

「その篭手もカナリアのなの?」

「ああ、これですか?」

 

イツキは両手を前に出し革製の篭手を強調する。

 

「これはタデちゃんに貰ったんですよ。カナリアには篭手防具が無いのでなにか良いのないかなぁって探してたら誕生日プレゼントって」

「ああそうだ、お前もう成人じゃん」

「そうですよ?なんならあと半年で17です」

「まだまだガキンチョだと思ってたよ」

 

ナマリはイツキを肘で小突く。二人は笑いながら小突き合う。

 

「おーい三人共、そろそろ行くぞー」

「はーい!」

 

ライオスに急かされ合流する。

 

「よし、フルメンバーでの探索は久々だから、ゆっくり確実に行こう」

「はい!」

 

イツキは外套を翻して前に出る。その様子を後ろの大人組は微笑ましく見守っていた。

 

 

「イツキ、あんまかっこつけると失敗した時増しで恥ずかしいぞ」

「別にカッコつけてませんけど!?」

 

チルチャックを除いて。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オマケ。オッタの復讐。

 

時はイツキ女風呂誤進入事件から数日。オッタは一人怒りを抑えられず考え事をしていた。

 

「パッタドルのやつ…!私の裸はレディ限定だぞ!それを……女の子っぽい顔してるとは言え野郎なんぞに…!」

 

オッタは復讐心を燃やしながらある結論に辿り着く。

 

「そうだよ、パッタドルも私と同じ目にあえばいい…!」

 

そうと決まれば善は急げ。オッタはイツキの入浴する時間を入念に調べ上げ、パッタドルを風呂場へ誘導。近くにいたフラメラもパッタドルに誘われ風呂場へ、無関係の人間が巻き込まれるのもお構い無しだ。

 

風呂場の戸にかけてある『男湯』と書かれた看板をひっくり返し『女湯』に切り替える。そしてすぐさま退散。そしてパッタドルとついでにフラメラが風呂場に入ったのを確認し、撤退。

 

「ざまぁないなパッタドル!!」

 

そして男湯へ視点を移す。

 

イツキは髪と身体を洗った後、お気に入りのポジションである景色が良い岩の裏に腰を降ろした。

 

疲労は昼間の訓練でかなり溜まっており、イツキはそのまま目を閉じて眠ってしまった。

 

イツキが眠った辺りで、パッタドルとフラメラが露天風呂に入ってくる。

 

「おお!今日は星空が綺麗ですね副隊長!」

「ははは、そうだな、あまりはしゃぎすぎるなよ」

 

持っているタオルを巻くこともなく生まれたままの姿で風呂場へ訪れた二人。フラメラは身体を洗うため風呂椅子に座り、湯をかける。

 

「お背中お流しします、副隊長」

「そうか?では、頼むよ」

 

パッタドルは石鹸を手に馴染ませてからフラメラの黒曜石の様な肌に触れる。

 

「副隊長の肌、とても綺麗ですね」

「……そう思うか?」

「はい。陰謀や策略など全て無視して、とても綺麗だと思います」

「……そうか」

 

フラメラは女王ヘイメアの遠縁であり、フラメラには姉がいた。フラメラと同じく黒曜石の肌を持つエルフであった彼女は、ヘイメアが子を残さず王族の血が絶える事を危惧した貴族連中に連れ去られ、文字通りの帰らぬ人となった。

 

自分もやがてその標的となる。そう思ったフラメラは兵士となった。自分は王族として相応しく無いと振る舞い続けた。

 

以来、フラメラは貴族や王族に対し憎悪と憤怒を抱えている。

 

パッタドルはそれらを知っていた。知っていた上で、フラメラの肌を褒めたのだ。

 

「ありがとう、パッタドル。代わろう、座りたまえ」

「いえ、そんな恐れ多い!」

「私がやりたくなったんだ」

 

パッタドルは大人しく風呂椅子に座り、フラメラに湯をかけて貰う。

 

「ぴゃっ」

「あ、すまん。熱かったか?」

「い、いえ。大丈夫です」

「そうか…?」

 

お互い髪や身体を洗い終わり、風呂に入る。

 

「ふぁ〜…温かいです…」

「パッタドル。ここもいいが、あの岩の裏からは町が見える。そっちに行こう」

「はい!」

 

二人はザブザブとお湯を掻き分けながら歩いていく。そして、岩の裏へ辿り着いた。

 

「やはり何度見ても綺麗ですねぇ〜!」

「ああ、壮観だな」

「…………ん?」

 

フラメラとパッタドルは気付かなかった。視線が景色に誘導されていたために、岩を背に寝ていたイツキの存在に。

 

「ん、誰かいるの………………か……?」

「副隊長?どうかされ…………まし……?」

 

パッタドルとフラメラとイツキは目が合った。静寂。リアルタイム5秒の沈黙。5秒の筈が那由多の彼方の様に感じ、そしてその沈黙は破られた。

 

「「キャアアア〜〜〜〜ッ!!??」」

「うわあああああああああ!!??」

 

三人は同時に悲鳴を上げ、パッタドルとフラメラは急いで湯に浸かり身を隠す。

 

「イイイ、イイ、イツキ殿!!何故女湯に!?」

「いやいやいや!!絶対男湯でしたって!!」

 

「そ、そんな筈…いや、待て。そういえばこの時間は男湯のハズ、なのに看板は女湯だった…パッタドル!」

「は、はい!」

「誰に言われて風呂場に赴き、私を誘った!?それとも自分でか!?」

 

「え…………っ!!オッタに『今誰もいないから風呂入ってくれば?』って言われました!」

「オッタァァッッ!!!!!」

 

その後、修練場ど真ん中で何故か土左衛門で発見されたオッタが適当に回収されたとか、されなかったとか。

 

「「「あ」」」

 

その後、出くわす度に気まずくなり目をそらす日々が続いたという。

 

「で、実際パッタドルとフラメラはどうだったよ?」

「そりゃ、二人ともとても綺麗で…………リシオンさん!!」

 

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