異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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やはりファンタジーもの定番言うたら彼らですよ


第三十九話『ゴブリンアーミー』

 

メリニ迷宮地下二階。今までは森の木々に橋が架かっているところをメインルートにしていた階層でどこか風が通っていた雰囲気の場所だったが、今では鬱蒼とした森へ姿を変えている。

 

チルチャックは耳を研ぎ澄ませ辺りを警戒する。

 

「離れるなよ、なにかあったらすぐ大声を出すんだ」

「ライオスさん。地下二階での変化は森以外にあったりするんですか?」

「ああ…俺はまだ見てないが、どうやら森ゴブリンが活発らしい」

「発情期か、はたまた彼らの信仰によるものかは分からぬがの」

 

そこで、ファリンがマルシルの異常に気付く。

 

「マルシル、汗凄いよ。大丈夫?」

「ううん…蒸し暑いのもあるけど、なんか…漂ってる魔力が気持ち悪いっていうか…」

「おれやファリンさんはなんとも無いですけど…エルフにしか分からない微細な変化なんでしょうか」

 

手を貸しますよ。ありがとう…。と、イツキはマルシルと手を繋ぐ。

 

そこで、チルチャックが後方からの異音を察知。

 

「後ろから俺達以外の足音複数!警戒しろ!」

 

一番後方にいるナマリは斧を構え警戒態勢に、続く様に他のメンバーも武器を手に取る。

 

そして、ナマリの目の前にある草むらから四体の森ゴブリンが現れ、ナマリに襲いかかる。彼らの武器は棍棒やナイフ、槍と多種多様だ。

 

「しゃらくせぇ!」

 

ナマリは斧でまず一体の森ゴブリンを横振りで仕留め、森ゴブリンが斧に付いたまま斧を振り続ける。棍棒とナイフ持ちを仕留め、槍持ちが突っ込んでくるも接近される前に投げ斧で仕留めた。

 

「他には!」

「……マルシル!お前の近くとシュローの近くから!」

 

マルシルの傍にあった草むらから森ゴブリンが飛びかかってくる。それを近くにいたイツキは抜剣、一体目の森ゴブリンの首を落とした。

 

二体目、ナイフを低い態勢で構えながら突進してくるのを、イツキは投げナイフで牽制。回避行動を取った森ゴブリンの回避後にどうしても発生する硬直を狙い、素早く首を落す。

 

シュローの傍から出てきた二体の森ゴブリンは、既に得物ごと一刀両断されている。

 

そこで、ライオスは違和感を覚える。

 

「森ゴブリンが弓矢を用いず得意では無いはずの接近戦のみで…?」

 

森ゴブリンはその低い身体能力を補う様に、遠距離戦を好む魔物である。

 

「おそらくこれらは囮だ!全員警戒態勢を解くな!」

「!ファリン上だ!」

「キャアッ!?」

 

ファリンは木の上からロープを繋げたまま飛び降りてきた森ゴブリンに掴まれる。そのまま木の上にいた複数体の森ゴブリンがロープを回収。ファリンを引き上げようとする。

 

「させるか!」

 

イツキは木を台にして跳躍。ロープを切り落としファリンは自由落下。それをセンシが優しくキャッチする。

 

「あ、ありがとう!」

「礼には!」

「及ばんよ!」

 

センシはファリンを降ろし、持っていた斧の峰で森ゴブリンが土台にしている木々をぶっ叩く。バランスを崩した森ゴブリン達は地面に落下。

 

跳躍し木の上に着地していたイツキもそのまま木から降りる。そしてそのまま森ゴブリンの背中に剣を突き立てる。

 

落ちてきた森ゴブリン達にシュロー、ナマリ、ライオスが剣や斧でトドメを刺す。

 

『ギェギャギャギャアアアアアア!!!』

 

トドメを刺されそうになった一体の森ゴブリンが奇声を上げ、聴覚が鋭いチルチャックは思わず耳を塞いだ。

 

そして、遠くの方から轟音と共に木々がなぎ倒されていき、一体の巨体な森ゴブリンが姿を現した。

 

『ゴアアアアアア!!!』

「なんだコイツ!?オーク…にしちゃ豚っぽくないな!?デケェし!!」

「瞳が赤い!おそらく森ゴブリンの特殊個体です!」

 

イツキの言う通り通常の森ゴブリンはくすんだ黄色の瞳に対し、巨大な森ゴブリンの瞳は赤。これまで発生した特殊個体の特徴と合致する点がある。

 

森ゴブリンの特殊個体。以下ゴブリンロードと呼称する。彼はライオスに向かって持っている巨大な棍棒を振り下ろす。

 

「こなくそっ!」

 

鎧を着込み大盾を持ったライオスは回避行動を得意としない。大盾を斜めに構え棍棒の振り下ろしをなんとか受け流した。

 

イツキとシュローはゴブリンロードの足首を狙って切断。態勢を崩したゴブリンロードは膝をつくも、舌を鳴らす。

 

舌打ち音(タンギング)!?ブレスだ!」

 

ゴブリンロードは足首にいたイツキに向かって炎ブレスを吐く。しかし相手が悪かった。

 

イツキはゴブリンロードの炎ブレスを属性付与した剣で受け、そのまま流すように炎ブレスをゴブリンロードに撃ち返した。

 

『ゴガアアア!?』

 

顔面にモロに炎を受けたゴブリンロードはのたうち回る。イツキは剣に炎を纏わせたまま首に剣を振り下ろす。

 

ゴブリンロードはそのまま絶命。動くことは無くなった。

 

ライオスは炎の剣を連続使用したイツキを危惧し近寄る。

 

「イツキ、魔力は大丈夫なのか?」

「はい。ライオスさん気付きませんか?炎の剣の変化に」

「え?」

 

ライオスはイツキが持っている炎の剣を見る。今までの炎の剣は剣から轟々と炎が舞い上がっていたが、今の剣には最小限の炎しか纏っていない。

 

「隊長に口酸っぱく言われたんです。お前の炎は無駄遣いが多すぎるって。だから魔力を抑えて必要最低限の威力で仕留めたんですよ」

 

ドヤァと胸を張るイツキ。ライオスは思わず頭を撫でた。

 

「他にも色々ありますけど…今はそんなこと言ってられませんね。森ゴブリンが来た方向へ行ってみましょう。もしかしたら巣穴に魔法陣があるかも」

 

今までの傾向から巣穴などに魔法陣があったパターンは幾つか存在した。ライオス達はゴブリンロードが薙ぎ払って来た木々を進んでいく。

 

「この巣穴ですかね」

「おそらくな」

 

森の中腹にあった地下に続く洞穴を見付けた。

 

「よし。後衛組は待機。五分経って出てこなかったら洞穴に入ってきてくれ」

「了解」

 

前衛組であるライオス、イツキ、マルシル、チルチャックで洞穴の中へ。

 

「なんか、儀式で使う装飾が多いですね」

「ああ。本来なら魔物の骨が散らばってるだけだが…なんだかこれには規則性を感じる」

「魔法的作用を森ゴブリンの巣から見たことない程感じる。もしかしたら…魔法を使う森ゴブリンがいるのかも」

「なんにせよ、警戒は怠るなよ」

 

四人は暫く進み続け、そして不思議な声を耳にする。

 

「待てお前ら、なんか聞こえる………なんだこれ、詠唱?」

「え?……ほんとだ、これ詠唱だよ!うーん…多分森ゴブリンの言語なんだろうけど、なんだろこれ…多分、精神系…?」

「森ゴブリンが魔法を使うなんて聞いたことが無い。おそらく例の特殊個体だろう」

 

そして、四人は洞穴の最奥へ。中には森ゴブリンが数十体、そして一番奥にやたらめったら骨や装飾品を付けた細長い森ゴブリンが踊りながら詠唱を唱え続けていた。

 

以降、特殊個体森ゴブリンをゴブリンシャーマンと呼称する。

 

「あの森ゴブリンも瞳が赤い。特殊個体で間違いなさそうですね」

「この量を相手するのは流石に骨が折れるぞ……」

「森ゴブリンの後ろに魔法陣あるじゃん!」

「んじゃあ結局コイツらどうにかしないとだな…」

 

「任せてください。一気に片付けます」

 

危ないので下がってて下さいね。そうイツキは言い残し最奥へ。

 

抜剣と同時に属性付与。そして剣を振るい、炎を波の様に走らせる。一部の森ゴブリンが炎に気付くも、炎の波を防ぐ手立てを彼らは持っていなかった。苦しむ事なく即死したのがせめてもの情けだろう。

 

一気に数十体の森ゴブリンが焼却され、生き残ったのは洞穴最奥に居たため射程外だったゴブリンシャーマンのみだ。

 

「うわえっぐ……」

「ひでぇ匂いだな…」

「こ、これが一番手っ取り早いんですからしょうがないでしょ!」

「ああ、イツキの言う通りコイツら全部を相手にするのは無理だ。そして…あとはアイツだけだな!」

 

怒り狂ったゴブリンシャーマンは四人に対し魔法を使用。

 

『ギゲゲギャギャーギャー!!』

 

森ゴブリンは人間種や亜人種などが使う共通語を使用しない。これは彼らの言語で『氷結魔法』を意味していた。

 

ゴブリンシャーマンの目の前の地面から次々と氷柱が生成され、四人に襲いかかる。それをイツキは炎の熱を地面に展開し続ける事で防いだ。

 

「『ᛏᚺᚢᚾᛞᛖᚱᛒᛟᛚᛏ(雷撃魔法)』!」

 

マルシルの魔法はゴブリンシャーマンに直撃。電撃の熱でゴブリンシャーマンは悶え苦しむも、決死の魔法を解き放つ。

 

『ゴギャラギャギャ!!』

 

それは彼らの言語で『爆発魔法』を意味していた。しかし、既にライオスが接近していた。ライオスは盾でゴブリンシャーマンを押し潰し、身動きを取れなくする。

 

「うおおっ!」

 

そのまま横っ腹に剣を突き刺す。ゴブリンシャーマンは暫く暴れた後、動かなくなった。

 

「ふうっ…これで全部か?」

「多分な」

「……」

「イツキくん、どうかしたの?」

 

「ああ、いえ……これら森ゴブリン達を、仮にゴブリンアーミーと呼称するとして、これが一斉に襲いかかってきたら…って考えちゃって」

「そりゃ…あんまり考えたくねぇな。普通の森ゴブリン達ならともかく魔法使いとデカブツ相手はウザそうだ」

「念入りに魔法陣封印しないとねっ」

 

洞穴にある魔法陣にマルシルとイツキは封印作業を施す。その間チルチャックは洞穴の外にいる後衛組に戦闘終了を告げる。それぞれが武器を収めた。

 

「今回は一体だけでしたけど、これが数十体いたらと思うとゾッとしますね」

「ね…あ、イツキくん右下にある術式お願いしていい?」

「分かりました」

 

そして封印作業は終了。前衛組全員洞穴の外へ。シュローが出迎えた。

 

「終わったのか?」

「はい。バッチリです」

 

「特殊個体もただ強くなってるだけじゃなく小細工を使ってくる様になったな…これまで以上に警戒が必要そうだ」

 

ライオス一行は再び警戒心を強め、迷宮へと潜って行った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オマケ。魔法訓練の様子。

 

カナリア隊宿舎でイツキとミスルン、そしてシスヒスが同じ部屋にいた。

 

「という訳で、今日は精神作用魔法への耐性…『抵抗(レジスト)』の訓練を始める。これは精神作用魔法以外にも使われる事がある。やり方としては…身体全体にある魔力で膜を作るイメージとして……」

 

暫くミスルンによる魔法講義は続き、イツキは全て真剣に覚えた。

 

「覚えたか?」

「はい」

「では、シスヒス」

「はい♡」

 

シスヒスは持っている鈴が付いた小さい杖でイツキに精神作用魔法を掛ける。一口に精神作用といっても、種類は様々であり、今回は心を惑わす幻覚術だ。

 

「『イツキさん、跪いてくれる?』」

「い………いやです」

「上出来だ。シスヒス、次は強めに」

 

シスヒスはイツキの目の前にある鈴を強めに鳴らす。イツキは冷や汗をかきながら耐える。

 

「『イツキさん、私に襲いかかってくれる?』」

「いっ………いや、です……てかなんですかその命令」

「楽しいかなって♡」

 

シスヒスはコロコロ笑う。イツキは抵抗を解いた。そして、部屋の扉をノックする人物が一人。

 

「ミスルン隊長。ご報告したいことが」

「入れ」

 

入ってきたのは書類を抱えたパッタドルだった。

 

「お取り込み中失礼します」

「『イツキさんパッタドルの事抱きしめて』」

「えっ、ちょ!?」

 

不意打ちの幻覚術に抵抗の隙を突かれイツキは命令通りにパッタドルのことを抱きしめた。

 

「ひゃああ!?イツキ殿なにを!?」

「シスヒスさん不意打ちは卑怯でしょ!」

 

「いや、抵抗を解いたお前が悪い」

「うふふふふ、ですって」

 

「だ、だからってパッタドルさんを巻き込まなくても……パッタドルさん?」

 

パッタドルはイツキの胸に顔を埋めたまま動かなくなっていた。

 

「ちょ、パッタドルさん?パッタドルさーん!?」

 

その後、熱を出したパッタドルを看病し続けたイツキだった。

 

 

「シスヒス貴様……!」

「良かったでしょ?」

「…………まぁ」

「いや納得しないでよ…」




パッタドル書き易すぎるのが悪い。もっと他のエルフ組書きたいのに、おのれパッタドルめ……!(冤罪)

あとコメントが400件を超えました。すげー…

コメントお待ちしております!!

あ、ごめんなさい明日明後日は更新無いかも。なんでって……エルデンリングがね(^ω^)
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