異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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第四十五話『王命発令』

 

イツキ救出作戦開始から三時間経過。ライオス一行は迷宮地下二階深部に到達していた。

 

普段なら警戒しながらも雑談が出来る程度の余裕があったが、今は誰も口を開いていない。

 

先頭にいるライオスは時折後ろの様子を伺うも、誰も彼もその表情には影があった。

 

こんな時、イツキがいれば話の一つや二つ出して場を和ませるだろうな。とライオスは思い、自分が如何にリーダーとしての役割をイツキに任せていたかを痛感する。

 

そして、それは他のメンバーも思っていた。

 

チームのメイン火力として、なによりムードメーカーとしてイツキがどれほどこのパーティに貢献していたか。

 

無くして初めて気付くものがあるとは、良く言ったものである。

 

そこで初めて、チルチャックが口を開く。

 

「実際よ、あの黒竜を倒すプランはあるのか?」

 

レッドドラゴンの特殊個体。名称を黒竜とし、情報はあの場にいなかったくノ一組にも共有している。

 

「それなんだが、思い出してくれ。あの黒竜には翼があっただろ?」

「まあな」

「それなのに、あの黒竜は殆ど空に飛ばなかった。十分翼を広げて飛べるスペースがあったのにも関わらずにだ」

「…確かに、炎を吐く時くらいしか飛ばなかったな」

 

「思うに、身体に物理的に後付けされてる個体は『なりたて』なんじゃないかな」

「なりたて?」

「ああ、俺達に急に翼が生えたり、足が四足になったりしたらきっと混乱するし、普段使いとして無意識下の選択肢に入らないと思うんだ。現に動く人馬鎧。あれは四足歩行の癖に全然走り回らなかった」

「でも、他の特殊個体はわりと適応してなかったか?」

「それらは、例えばシーサーペントの特殊個体は毒が更に強化されたもの。人魚姫は歌声が強化されたもの。あとはデカくなったり…」

 

「つまり、肉体に後付けされたものじゃない連中」

 

デカくなるのは十分肉体的後付けじゃないか?と思ったチルチャック。そこで、ファリンが会話に参加する。

 

「海坊主は強力だったけど、あれは全身水でなおかつ霊をエネルギー源にしてたから、肉体的後付けが無かった…」

 

おそるおそる、マルシルも会話に参加する。

 

「あの羽を飛ばす魔法を使ってきたハーピーは?」

「逆にあのハーピーは羽を飛ばすだけで空も飛ばなかったし鉤爪の攻撃もしなかったろ?頭の容量をそれに回しすぎてるんだ」

「車輪持った骸骨は?」

「スケルトンは元々冒険者の死体に霊が宿った成れの果てだ。まぁ多分生前死体の方か霊の方が転がるのが好きだったんじゃないか?」

「急に考察雑になったなオイ」

「あんまり思い出したくなくて……」

 

とにかく。とライオスは一度咳払いをする。

 

「ここまで人員が揃ってて人数的アドバンテージがとれてる以上、それを使わない手は無い。策はそれを中心に考えておくよ」

「まあ、分かった」

 

そこで、イヌタデのお腹からぐ〜っと可愛い音が鳴った。

 

「タデ……」

「ご、ごめん…難しい話ばっかで…」

「急に呼び出したからな。もう少し歩いたら食事にしよう」

 

その後、魔物食事では無い普通のバランスのとれた食事を摂った一行であった。

 

そこで、イツキ救出の為に親睦を深めようと己に関する事を話し出す。イツキならばそうした、とライオスはみんなを説得する。

 

ライオスは自分の好きなもの。ファリンも自分が好きなもの。

 

マルシルは故郷の食べ物。ナマリは好きな武具。

チルチャックは酒の好み。シュローは好きな味付け。

センシは料理の話。イヅツミは自分の目的。

イヌタデは好きな食べ物。マイヅルは好きな仕事。

ヒエンは好きな訓練方法。ベニチドリは化粧の話。

 

それぞれがそれぞれの好きなものについて語り、そして、イツキならどういう反応をするか予想し合った。

 

「まあアイツなら否定は絶対しないな。ライオスとファリンの魔物趣味ですら受け入れたやつだぞ?」

 

チルチャックはそう言って水を呑み、センシが口を挟む。

 

「あの子はわしと初対面の時も魔物食について熱心に聞いてくれた。あれは本当に楽しかったな」

「いいなぁ、俺もその場にいたかった」

「私も!」

 

シュローは刀を手入れしながら話し出す。マイヅルはそんなシュローの肩を揉んでいた。

 

「イツキは俺と随分食の好みが合った。醤油や味噌のものだな。イツキ曰く、こちらの世界でいう東方群島に限りなく近い文化圏に住んでいたらしい」

「あの子は私の作った料理に感動してくれてな。メリニでは東方の飯に近いものはあったものの再現度が低かったらしい。故郷の味というものだろう」

 

マルシルが魔導書を閉じて語り出す。

 

「イツキくん魔法も凄かったよね。私も結構自信あるけど、炎に関しては全然だったもん」

「うん。私が教えた回復魔法もすぐ使える様になったもん」

 

ファリンが教えた…?とマルシルは疑問に思った。

 

イヌタデの膝の上にいるイヅツミが口を開く。

 

「アイツ、風呂にめちゃくちゃ拘るよな。女以上だった」

「綺麗好きだったもんね」

「そうだ。だから、今日もアイツに髪油とか、石鹸とか、香水と、か……」

 

話していくウチに、どんどんイヅツミの目から涙が溢れてくる。イヌタデはそっとイヅツミを抱き締めた。

 

シュロー含む東方組と、イヅツミと一緒にイツキと中央へ残ったファリンとマルシルは驚いた。イヅツミが涙を見せるのは初めてだからだ。

 

ライオスは持っていたコップを強く握りしめ、再び覚悟を締め直す。

 

「必ず、助けよう」

「……うん」

 

 

同日同時刻。中央にて女王ヘイメアはカナリア隊の宿舎に直々に訪れていた。

 

突然の帰還命令。女王直々の来訪。度重なる異常事態にミスルンを除くカナリア隊には緊張が走っていた。

 

「別の任務に赴いていたお前達を呼び戻したのは他でもない。今すぐにでもメリニに赴き、迷宮を攻略してもらう」

 

女王の突然の言葉に、フレキが首を傾げる。なぜ急に?と。口に出していないにも関わらず女王はそれに反応する。

 

「これを、知っているな?」

 

女王は粉々に砕けたペンダントを取り出す。それは、いつぞやにイツキへ送ったペンダントと瓜二つであった。

 

「これは正式名称を『共鳴りのペンダント』。対となるペンダントの持ち主に異常が発生した場合、何かしらの反応を示すものだ」

 

「これを持っているのは、南の方の女王と、お前らも知っているあの少年のみが持ち合わせている。そして、南の方の女王は現在中央にて視察中だ」

 

そこで、パッタドルが狼狽える。

 

「は、発言をお許しください!イツキ殿に、なにかあったのですか?」

「ああ、彼にはペンダントは如何なる時も身に付けておくように念入りに釘を刺している。そして、このペンダントが壊れたという事は…」

 

「恐らく、彼は死んだ」

 

女王の言葉に、パッタドルは過呼吸を起こしてしまう。シスヒスはパッタドルの背中を摩る。そんなシスヒスにパッタドルは思わず抱きついた。シスヒスはパッタドルの頭を撫でつつ抱きしめ続ける。

 

「……問題は、どこで死んだか、ですか」

 

ミスルンは至って冷静に発言する。

 

「そうだ。そして、既に見当は付いている」

 

女王は指を鳴らし、控えさせていた側近に地図を持ってこさせる。

 

「これ…魔力探知の地図に似てますね」

 

リシオンは後頭部に両手を回しながら発言する。

 

「似ているが別物だ。この地図は黒魔術による無限次元からの干渉に反応する優れ物だ」

「…最近ヤケに黒魔術関係の仕事が多いと思ったら、そんなのが開発されてたんですか」

「色々と条件はあるがな。初めて彼を見付けるのにも大いに役に立った」

 

「これは黒魔術が応用されたペンダントでな。正確には黒魔術では無いが、それに限りなく近いものだ」

 

「壊れた時に生じた黒魔術の魔力の反応は、やはりメリニであり更に詳しく調べさせた結果。これもやはり迷宮で観測された」

「では、イツキは迷宮内で死亡し蘇生の可能性がある」

「そうだ」

 

そこで、シスヒスが疑問を口にする。

 

「あの、女王様。ひとつ宜しいですか?」

「なんだ」

「初めて彼を見つけた時、無限次元の干渉に反応する地図にイツキさんが反応した、という事をさっき仰りましたよね?」

「……ああ」

 

「つまり…彼は黒魔術を通して、もしくは自然的に無限次元からやってきた、ということですか?」

 

その言葉に押し黙る女王。流石のミスルンも目を見開いた。

 

「恐らくな。そして彼曰く気付いたら森に身を投げ出されていたと言っていたので、黒魔術ではなく、彼は彼の現実から無限次元を挟んでこの世界にやってきている」

 

「あくまで推測だが、彼はこの世界で一番『悪魔』もしくはそれに近いナニカに干渉された人間だ」

 

その言葉に、ミスルンは久方ぶりに感情が顔に出る。それは怒り、憎しみ、憎悪、殺意。

 

「だから、彼を中央に呼んだのですか?」

「そうだ。彼ならば『なんでも望みを叶える魔法』について調べれば分かる事があるかも知れない、とな」

 

『なんでも望みを叶える魔法』

 

それは、かつて悪魔が人間にしてやった様に文字通りなんでも望みを叶えることができるというものである。

 

歴史の中に埋もれてしまった伝説の魔法。それを見つけ出すのが女王ヘイメアの野望だった。

 

「しかし……ふふっ、蓋を開けてみれば、なんてことは無いただ普通の少年だったな。そう、ただ普通の……」

 

ヘイメアは拳を握り締める。思い出すのはあの子の笑顔。打算もへったくれも無い心からの笑顔。

 

僅かばかり、その黒曜石の肌から真紅の血が滴った。

 

「私のかわいいカナリア達、今すぐ迷宮へ赴きイツキを蘇生、救出せよ!!これは王命である!全ての責任は女王ヘイメアがとろう!」

 

「私の元へまたあの子を連れ戻すのだ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

カナリアは飛び立つ。彼の地へ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オマケ。

ちょいちょいメッセージで要望されてたイツキのプロフィール。といっても簡易的なものでまた作り直します。

 

本名

[マジマ・イツキ(真島樹)]

 

誕生日/年齢

[11月23日・16歳](あと二日で17)

 

人種/性別

[トールマン・男]

(厳密にはトールマンではなくヒト)

 

出身地

[現代日本]

 

家族構成

[■■■■■]

 

体格

[身長170cm前後・BMI17]

 

好物

[お米・味噌汁]

 

苦手

[酸味の強いもの、油っこすぎるもの]

 

初死因

[特殊個体赤竜による捕食]

 

武器・戦闘スタイル

[ロングソード(魔法細工済み)]

炎の剣による叩きつけや切り上げ。基本となる動作を中心に行動。

 

ノームが使う魔術はその性質上現代日本での信仰である[八百万の神々]に近しいものがあり、エルフ魔術とは相性が悪かった。

 

酒の強さ

★★★★★(結構呑まないと酔えない)

初めて呑んで以来その美味しさと酩酊感に虜になった。オフの時は隙あらば呑む。

 

異世界転移者。現代日本で生まれ育ったごく一般的な少年。

 




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