『ほら、ファリンさんこれ。綺麗な花ですよ』
『不思議ですよね…世界が違うだけなのに、ここまで植生も何もかも違うなんて』
『え?敬語を外してほしい?』
『これは……おれの戒めみたいなものなので』
『それに、もう必要ないじゃないですか』
『おれはもう死んだんですから』
『さようなら、ファリンさん』
「イツキ!?」
「ファリン!目が覚めた?」
「…え?」
ファリンは目覚める。どうやらマルシルに膝枕されていたようだ。周りには心配そうに顔を覗き込む仲間達がいた。
「あれ、私…」
「…イツキの頭蓋骨を直視して気を失ったんだよ。と言っても数分程度だが」
チルチャックは水が入った革袋をファリンに手渡す。ファリンはお礼を言ったあと飲み込んだ。
「……イツキは?」
「とりあえず、あそこに綺麗に並べたぞ」
センシが指さす方へ視線を向けると、魔法陣が描かれた床に安置されている白骨死体があった。
「カルシウムがよく採れていたのだな。イツキは牛乳が好きだった」
「(理由は別のところにあると思うが…)」
「早く、蘇生しなきゃ…」
ファリンはゆっくりと立ち上がる。そしてイツキの白骨死体の傍にぺたりと座り込む。
「蘇生するっつっても、どうするよ…白骨死体から生き返ったやつは前例がないことは無いが……」
「足りない肉は他の動物を使ったりして補う。でも、ここじゃそんなものはない」
「ゾン族長、一応聞いておきたいんだが、家畜の蓄えがあったりは…」
「ある訳ないだろう。魔狼やバロメッツはいるが、普通の牛豚鳥は無い」
「だよな…」
「じゃあイツキを迷宮の入口まで持ってって…」
「ダメ、魂と肉体の繋がりが脆くなってる。動かすのは危険」
ナマリの案にマルシルが否定する。
「じゃあどうしろって…!」
「蘇生は私がやる。それに、そこにあるよ。お肉なら沢山」
マルシルは倒れた黒竜を指さす。それを見たチルチャックが即座に否定する。
「竜の肉を使った蘇生!?そんなの聞いたことないぞ、第一魔物じゃねーか!」
「これまで散々食べてきたじゃん。それとなにが違うの?」
「てか、蘇生ならファリンが…!」
「チルチャック。白骨死体を補填するお肉無しで蘇生するなんて、私でも無理だよ」
「それは…!」
「マルシル」
ファリンはマルシルを見据える。その瞳は真実のみを求めていた。
「これは、私とファリン、そしてイツキくんしか知らないんだけど」
「私が迷宮を探索する理由」
「今そんな話…!」
シュローが言いかけるも、ライオスがそれを止める。
「私の専門は、現代では禁忌とされる古代魔術の研究。一般向けに言うなら『黒魔術』ね。今は、それを使った蘇生しかないと思う」
マルシルの真の目的。それを知った他メンバーの反応は様々だ。
「ろくでもないものを研究しておるな」
「金に困ってなさそうなエルフが何故迷宮を探索するかとは思っていたが……」
「魔術に善悪は無い。それは人間だけが求めるもの」
「みんな、どうする?」
押し黙ってしまう面々。オーク達は魔術が分からないので、一歩下がって待機している。
「……頼む。イツキを生き返らせてくれ」
ライオスが前に出る。それをチルチャックが止めようとする。
「ライオス、分かってんのか!?お前の仲間から黒魔術を使ったやつが出るって事だぞ!」
「そんなのここにいるみんなが黙っていればいいだけの話だ」
「おま……!?」
「俺は、罪を犯してでもイツキを救いたい。みんなは違うか?」
ライオスは自分達の仲間を見る。それぞれ全員違う表情だ。
困惑と忌避感に満ちた表情。しかしライオスの次に前に出たのはイヅツミ、そしてイヌタデだった。
「頼む、マルシル。罪なら私も背負う」
「はい。タデも同じです」
覚悟を決めた女の顔。それを見たシュローも前に出る。続くように従者であるマイヅル、ヒエン、ベニチドリも。
「従者に先を越されるとはな…俺も、まだまだ覚悟が足りないか」
「私は坊っちゃまの行く道を行くのみ」
「まぁ、それは私達も一緒だ」
「うん」
そして、ナマリ、チルチャックもため息をつきながら前に出る。
「ここまで来たら引き返す訳にもいかないか…」
「イツキを蘇生して迷宮から出たら、お前らには聞かなきゃならん事がたっくさんあるからな!」
そして、残るはセンシのみ。センシは腕を組んで考えていた。
そもそも自然に反する蘇生術に反対なセンシ。しかし、なにか理屈を考える前に脳裏に過ぎるのはあの子の笑顔。そして、かつての仲間達。
センシは腕を解いて、前に出た。
「頼む、マルシル。わしにもう一度あの子の笑顔を見せてくれ」
「……うん。じゃあ、やるね」
マルシルはナイフで手のひらを傷付け、血を杖に吸わせる。
そうして白骨死体の周りに血で魔法陣を黒竜に繋げる様に描いていく。素人目から見ても分かるような、異質な魔法陣だ。
「危ないから、さがってて」
全員が魔法陣から下がる。そしてマルシルは白骨死体がある魔法陣に繋がっている別の魔法陣の上に立ち、杖を立てて詠唱を始める。
始めた途端。周りに異常が発生する。
とてつもない悪寒がする面々。イヅツミはイヌタデによじ登り背中の毛を逆立てて落ち着かない様子だ。
ワイバーンを解体する時に用いたナイフや包丁がカタカタと揺れる。
そして、詠唱が半分を過ぎた辺りで更に異常が発生する。
魔法陣の上に更に別の魔法陣が展開され、黒い稲妻が迸る。稲妻が当たったところには黒い炎が発生し、白骨死体を囲み辺りを妖しく照らし出す。
「(これは…!?いや、今はやりきるしか!)」
当の本人であるマルシルにすら予測していなかった現象。しかし黒魔術を使った蘇生術は本人も使用するのは初めてであり、こういうこともあると思い込んだ。
マルシル達の遥か上空。迷宮の天井に大きな亀裂が発生していたのは、ここいる全員が気付かなかった。
そして最後の詠唱を終わらせ、マルシルは倒れた。同時に辺りに発生していた異常事態も収まった。
「マルシル!」
ライオスが駆け寄り、マルシルを起こす。
「イツキ、くんは……?」
ファリン、イヅツミ、イヌタデがイツキの白骨死体があった場所へ駆け寄る。そこには血まみれの人型が出来上がっていた。
髪の毛もあり、よく見ると人の様だ。人型の物体はピクリとも動かない。
「イツキ、イツキ!!」
「おい!起きろよ!起きないと蹴るからな!!」
「イツキくん、起きて!!」
三人は必死に呼び掛ける。そして
その人型の瞼が大きく開かれた。
「ぐ…ごぽっ!?ごぼっ、ごほっ!?」
突然、血を吐きながら咳き込む。ファリンはそれを横倒しにして背中を摩る。
「イツキ!?」
「気道に血が溜まっちゃってるんだ!イツキ、落ち着いて吐き出して。もう大丈夫だから」
しばらく血の涙が出続け、そして透明の涙になった辺りでそれはファリンの方を見る。目の焦点は合っている。ファリンを視認している様だ。
「ファリン……さん……?」
「イツキ……!!」
ファリンはイツキのことを抱きしめる。服が血まみれになるが、お構い無しだ。
「イツキ!遅いんだよこの野郎!!」
「イ゛ツ゛キ゛く゛ん゛だぁあ゛あ゛あ゛!!!」
続く様に涙目のイヅツミと号泣しているイヌタデがファリンごと抱き締める。
「……?…………。」
イツキは状況を把握しきれていない様だ。ボーッとしている。
「……ふぅ。おーいお前ら。素っ裸の野郎に抱きついてることを忘れてないかー?」
安心して息を吐いたチルチャックが毛布を持ってくる。その後ろならライオス達も走ってきた。
「イツキ、俺のことが分かるか?」
「……ライオス、さん?」
毛布に包まれたイツキは呆然としながらも答える。遅れてやってきたマルシルがイツキに抱き着いた。
「良かったぁ……!ほんとに、良かった……」
「マルシルさん……」
何かを察知したイヅツミはマルシルをジト目で見る。しかしマルシルは気付かない。
「とりあえず、これ以上ここに留まる理由も無い。我々の集落に戻ろう。風呂もある」
「お前ら!黒竜を運び出せ!今日の晩餐会のメインディッシュだ!」
「「「オオー!」」」
未だ呆然としているイツキは、ふと天井を見上げた。
そこには、ただの天井のみがあった。
毛布に包まれたイツキをイヌタデが丁寧に運び、地下五階に戻ってきた。
オーク達は黒竜を運び出すため時間がかかるし、イツキも血まみれなので風呂に入ることに。
「まだボーッとしてるな。一人で風呂に入れるのは危険か」
シュローはイツキの頭を撫でる。そこに、ファリンが着替えとタオルを持ってやってくる。
「じゃあ、私がイツキをお風呂に入れるよ」
その言葉にイヅツミは振り返らず耳をピンッと立て、イヌタデはあわわと顔を赤くする。マルシルが慌てて止める。
「いやいやいや!ライオスに任せればいいじゃん!?」
「兄さんなら黒竜を見にオーク達に着いてったよ?」
あの野郎…。とマルシルは思った。
「じゃ、じゃあセンシとか、チル……は小さいからイツキを支えられないか。それこそシュローとか!」
「というか私、服は脱がないよ?これでも病院の患者さんとかの身体拭いたことあるから慣れてるし」
「あ、そうなの……」
急にスン。と落ち着いたマルシル。
「じゃ、行こっかイツキ」
ファリンは手を繋いで風呂場へイツキを連れていく。
そして、脱衣場に着くなりファリンは衣服を脱ぎ出した。
「濡れちゃうと、乾かすのが大変だから…ね」
風呂場にイツキを入れ、風呂椅子にイツキを座らせる。
「熱いかな……うん、大丈夫そう」
ファリンは慎重にお湯を掛けていく。イツキの身体がピクっと反応するが、気持ち良いのか甘んじて受け入れた。
「さて、血が固まる前に……」
ファリンは石鹸を泡立てイツキの身体を洗っていく。行動はアレだが丁寧に洗っていく。顔、首、肩、腕、背中、胸、腹……。
「あ…………ふふっ。ま、いっか」
気にせず続けるファリン。そして全身身体を洗い終わり次は髪の毛を洗う。
「うわ、血がべっちょり……」
こりゃ大変だー。と思いながらも丹念に洗っていく。
そうこうしていると、風呂場の戸が開かれた。
「ファリン!お前やっぱ服脱いでるだろ!!」
「あ、バレた」
「あわわわわわ」
入ってきたのはタオルを巻いたイヅツミとイヌタデだった。
「丁度いいや、イツキの髪の毛洗うの手伝ってくれる?」
「お前よくそんな冷静で……まあ、いいや」
幸いな事にタオルで隠れていたのでイツキは武器を晒すことは無かった。イヅツミはイツキの髪の毛を持ち上げ指で擦る。血が滲み出てイヅツミの指を濡らした。
「うーわ、こりゃヒドイな」
「た、大変です」
髪の毛を一本一本丁寧に洗っていく三人。しばらく洗い続け、一度お湯を掛けることに。
「お、あともう少しかな」
更に時間を掛けて洗っていく。そして完璧に血の除去に成功した三人。
「やった!」
「じゃあ、あとはお風呂に浸かってゆっくり身体を温めよっか」
ファリンはイツキが滑って溺れないようにイツキの背中に回り込み後ろから支えて浴槽に浸かる。あんまりな光景にイヌタデは顔を真っ赤にしている。
イヅツミは気にせずイツキの顔をつついていた。
「こいつ、まだ意識はっきりしないんだな」
「私も最初蘇生された時は半日くらいボーっとしてたって兄さんが言ってたから……個人差はあれど同じくらいかかるかも」
イヌタデは観念したようにイツキへ近付いてお湯へ浸かる。そして、イツキのお湯から出ている肩などに手で掛け湯をする。
少しして、徐々にイツキの瞳に光が戻り始める。
「…あれ、ここは?」
「あ、目が覚めた?」
「え?」
イツキは声がした方へ振り向くと、お湯の熱で頬が紅潮し微笑んでいるファリンの目が合った。そして、周りにイヅツミとイヌタデがいる事にも気付く。
イツキは状況を見て、苦笑する。
「……ハハッ、やれやれ。おれもこんな煩悩丸出しの夢見るとは…しょうがない奴だな。そう思わない?」
ファリンに対しての砕けた口調。それは初めてのことだった。
「うん。夢だよ。夢なんだから好き放題しなきゃ」
ニタリと笑い悪ノリするファリンはイツキを後ろから抱きしめる。
「随分とリアルな夢だな……感触まであるなんて。てか二人もいるのか。おれってそこまで欲張りな人間だったか?」
おいで。とイツキは手を広げる。イヅツミはイツキの前に背中を向けて座った。
「よしよし。イヅツミは良い子だな」
頬とあごを撫でられるイヅツミ。満更でもなさそうな顔だ。
「ず、ずるい……!」
イヌタデはイツキの横に座り、頭を向ける。
「タデの事も撫でてください!」
「ああ、いいよ。おいで」
イツキはイヌタデの頭も撫でる。イヌタデは満足そうにイツキの手に頬擦りする。
そこで、風呂場の戸が開かれた。
「ファリンー?私もてつだ………………なにしてんの!!??」
袖と裾を捲った薄着のマルシルが風呂場に入ってきた。
「マルシルさんまで?どんだけ欲に忠実なんだよおれ……」
「ななななな何言ってんの!?てかなにしてんの!?え!?」
「あちゃー」
「ふあーあ…」
「あわわわ」
「………………え?」
そこで、遂に完全に意識がはっきりするイツキ。そして周りを見て一言。
「………殺してくれ」
バシャン!と顔を風呂に沈めて気絶したイツキ。慌ててイツキを起こすファリン。すったもんだの末なんとかイツキを風呂場から連れ出して着替えさせる事に成功。
「ハッ!?三途の川で爆笑しながら手を振るライオン!?」
「お、起きたか」
ベッドから勢いよく飛び起きたイツキ。見張っていたチルチャックはイツキに水を手渡した。
「おかえり、イツキ」
「ただいま、です?」
イツキは起き上がり、水をゴクリと呑んで首を傾げる。
「その様子じゃ覚えてなさそうだな。死んでたんだよ、お前」
「えっ!?マジですか!?……ううん、全然思い出せない。なんか凄い光景を見てとんでもないこと口走った様な気もするんですけど……」
「それは忘れとけ。俺あいつら呼んでくるから、大人しくしとけよ?」
チルチャックが部屋を出ていき扉を閉める。少ししてドタドタと扉の向こうからなにか近付いてくる音が聞こえ始める。
そして、思い切り扉が開かれた。
「イツキ!」
「ライオスさんに、ファリンさん……みんなまで」
「イツキ」
ファリンはイツキのことを抱きしめる。優しく、丁寧に。
「ファリンさん…」
「もう安心だからな」
「大丈夫だよ、イツキくん」
ライオスとマルシルはイツキの頭を撫でる。
「ライオスさん、マルシルさん」
下がった二人の後ろからナマリが出てきてイツキの髪の毛をくしゃくしゃにしながら撫で回す。
「コイツ!心配させやがって!」
「ナマリさん、ちょ、力強……」
「ああ、わりぃ」
ナマリはパッと手を離す。シュローがベッドに座っているイツキへ目線を合わせるため膝を突く。
「痛むところはないか?どこか違和感があったりは…」
「シュローさん。いいえ、大丈夫です。ご心配おかけしました」
イツキはにっこりと笑う。それを見たシュローは安心して一歩下がる。そしてセンシが前に出た。
「飯の支度が出来ておるぞ、たんと食べなさい」
「センシさん。ホントですか?もうお腹空いちゃって…」
ぐぅ~~と鳴り響くイツキの腹。メンバー全員が笑った。
全員で部屋を出ると、くノ一組が出迎える。
「よっ。あの世はどうだった?」
「なんにも覚えてないよ、イヅツミも助けに来てくれたんだ」
「ふん。また死んだらもう面倒見ないからな」
そう言って、イヅツミは廊下を歩いて行った。そんなイヅツミにイツキはクスッと笑う。変わらないことに安心感すら覚えた。
「もう痛むところはないのだな?」
マイヅルがイツキの頭を撫でてくる。
「はい。もう大丈夫です」
ヒエンとベニチドリも頭を撫でてくる。ぶっきらぼうだが優しい手つきだ。
「タデちゃん」
「はい」
「ただいま」
「…おかえり、イツキくん」
しゃがんだイヌタデの頭を撫でるイツキ。
全員でオーク達の集落へ出る。中心に黒竜が置かれており、その周りにあるテーブルには様々な料理が所狭しと並んでいた。
「おぉ…!倒したんですね、黒竜!」
「うん。あ、それで聞きたいことがあったんだ。イツキ、あの黒竜になにか致命傷を与えたか?」
「え、どうでしょ……なにせ黒竜戦のこと殆ど覚えてないんですよ」
「まあまあ!積もる話は後にして!ご飯食べよ!」
全員でテーブルに着き、センシがイツキの前にスープが入った皿を置く。
「まずは軽いものをお腹に入れなさい。正真正銘、胃が空っぽなのだからな」
「はい。いただきます」
イツキはスープを一口。透き通る様な爽快感があるスープだと感じた。
「美味しいです!なんのスープなんですかこれ」
「ドライアドの葉をすり潰したものをダシに使っておる。他にもバロメッツの骨や……」
センシの料理講座を聞いているイツキ。そんな周りの人間、特にライオスとファリンはそわそわしている。
「……ん?」
ライオスとファリンがそわそわしているのに気付いたイツキ。よく見ると他のオーク達もそわそわしている。
「あぁ…ふふっ、おれの事は気にせず食べちゃって下さい。せっかくの黒竜料理なんですから、冷めたら勿体ないですよ?」
「い、いや。そういう訳には……なあ?」
「う、うん」
「どうだイツキ、腹に入りそうか?」
「はい。今なら黒竜丸ごとイケますよ」
「それは良かった。では、存分に食い返してやれ」
笑顔になったセンシはイツキの前にステーキを置く。正真正銘、黒竜100%のステーキだ。
「では、いただきます」
イツキはナイフでステーキを切る。切った断面から肉汁が溢れ出てた。切ったステーキにフォークを突き刺す。そして一口。
もにゅもにゅと味わって食べる。それを凝視する面々。主にトーデン兄妹のオーク達。
ごくん。とイツキは黒竜を飲み込んだ。
「ど、どうだ?イツキ」
「うーん……牛に近い様な……いや、羊肉?筋っぽいかと思ったらそうでもなくて……うーん?」
あ。とイツキは声を出す。そして声高らかに宣言した。
「では!黒竜料理みんなでどうぞー!」
「「「オオー!」」」
「「オー!」」
オーク達の歓声と二人の歓声が街中に響き渡る。そして大宴会が始まった。
「これが黒竜の味……!うん、美味い!」
「ハンバーグなんだ。良いよね」
「こっちはなんだ?肉を吊るして……」
「ケバブだろ。ほら、北の方の……」
「こっちはなにかを黒竜の肉で包んでるんだな」
「これもしかしてマンドレイクか?」
黒竜料理を堪能している面々。ナマリがイツキの隣に座った。
「でな?ライオスはお前の剣でトドメを刺したんだ。あれ炎の剣だったよな?」
「うん。イツキの魔力が残ってたんだな」
「そんなことがあったんですか」
「…あれ、そういえばあの剣どこやったっけ?」
「イツキが寝てた部屋にあったぞ?」
三人で話しているところに、ゾン族長とリドがやってくる。
「やあ、勇者よ。今回は我々の手柄になってしまったな」
「リドさん!ゾンさんも!」
「もう身体は平気か?」
「はい。もう肉をガツガツいけるふらいひはほゆうでふよ」
「食ってから喋れ…」
そうこうしているウチに、料理はあっという間に無くなった。ライオス一行に加えてオーク達も食べ続けたので当然と言えば当然だが。
肉を食えば酒を呑みたくもなる。オーク達の殆どは呑みすぎで寝こけていた。チルチャックもテーブルにうつ伏せで寝ている。
「ふむ。もう良い時間だし続きは明日にしようか」
「もうお腹一杯だ…」
「じゃあ、身支度をして今日は休もう。みんな、改めて礼を言わせてくれ」
「本当に、ありがとうございました」
ライオスはメンバー、くノ一組、オーク達に深々と頭を下げる。
その横にイツキも並び、同じく頭を下げた。
「ご迷惑おかけしました。本当にありがとうございます」
「気にすんな!」
「また明日美味い竜飯を食おう!」
そして、宴会は解散。皿などの片付けはオークの女達が快く引き受けてくれた。
「ほら!シマシマちゃん達!寝るなら寝床に行きな!」
「もう食えね~~」
因みに縞々とは、オークは幼少期猪の様な縞模様を背負って生まれるので、子供扱いのからかい言葉の様なものである。
イツキ達は先程イツキを寝かせていた民家に入る。リビングにシュローと寝こけたチルチャック。そしてナマリとセンシが残った。
ライオスも一人で寝させた方が良いと思いリビングに残った。なおファリンは着いて行く気満々である。
「おやすみ。イツキ」
「おやすみなさい」
くノ一組は既に廊下等を見張るために配置についた。
「あ、あの…イツキくん」
「なに?タデちゃん」
「えと…一緒のお部屋で寝ても、よろしいでひょうか?」
若干噛んだイヌタデだったが、勇気を振り絞った誘いだった。
「うん。いいよ。一緒に寝よう」
パァっと明るくなるイヌタデ。イツキは部屋を戸を開けると、既にイヅツミがベッドの上に寝転がっていた。
「あれ。宴会中いないと思ったらここにいたの?」
「騒がしいのは嫌いだ」
ファリンがそ~っと近付いてイヅツミを包み込む。ナニスンダ!と暴れるも意外と力強いファリンに為す術なく押さえ込まれた。
「じゃあ、寝よ?」
「はい………え、布団一緒なの?」
「当たり前だろ。イヌタデもいるからギリギリだけど」
「そ、そっか……」
「私、寂しかったんだよ?」
ファリン必殺の上目遣い。イツキはたおれた。
大人しく四人川の字で眠ることに。ベッド二つ並べても結構ギリギリなので必然的にイヌタデとイツキがかなり密着している。
「(心臓の音、聞かれてないかな…!?)」
「(なんか安心するなあ)」
「ねぇ、イツキ……あれ?寝ちゃった?」
疲れもあったのだろう。イツキは直ぐに眠ってしまった。
「ふん。女に囲まれて速攻寝るとは良いご身分だな」
「疲れてたろうし…仕方ないよね」
ファリンはイツキの腕を抱きしめて眠る。左右塞がったのでイヅツミはイツキの上に寝っ転がった。
「おやすみ、みんな」
「「おやすみ」」
そうして就寝した四人。
辺りは暗くなり、松明の光だけが地下街を照らしている。
その中で、眠っているハズのイツキの瞳がゆっくりと開き。
その瞳は、血の様な真紅に染まっていた。
【デルガル様を、お探しするのだ】
そして、全てが始まる。
長い長い戦いが。
シリアスが終わると思ったかい!?わはは!
実は原作通りファリンがレッドドラゴンに食べられたifルートみたいなの薄らぼんやり考えてるんだけど、需要あります?
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ある
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ない
-
学園if書け