異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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第四十九話『黒竜再誕』

 

「う、ううん……いでっ!?」

 

イヅツミは突然の衝撃で目を覚ます。どうやらベッドから落ちたようだ。

 

「なにすん……!……イツキ?」

 

尻もちをついたイヅツミの前に、イツキが立っている。部屋は暗く、外から入る薄明かりしかないため顔がよく見えない。

 

イツキはイヅツミに目もくれず部屋を出ていこうとする。それをイヅツミが片手を掴んで止めた。

 

「おいっ、イツキ!どうしたお前。なんか変だぞ?」

 

しかし返事はない。手を掴まれたままイツキは部屋を出ていこうとする。

 

「お、おい!っ…!ファリン、タデ、起きろ!イツキが変だ!!」

「えっなに!?」

「ふぇあ?」

 

急に大声を出されて驚いたものの、ファリンはすぐにベッドから飛び起きてイツキの前に出る。

 

「イツキ、どうしたの?御手洗なら…いっ、かい、に…」

 

ファリンはイツキの顔を正面から見た。そしてその異変に気付く。

 

表情に感情は無く、その瞳は血の様に真っ赤に煌めいている。元々イツキの瞳の色は黒。そんなことは決してありえない。

 

「(呪い?それにしては魔力を感じない…)っ、兄さん!みんな!イツキが変なの!」

 

ファリンの大声に驚いた下の階に待機していたメンバーは飛び起きて階段を上がる。そこにはファリン、イヅツミ、イヌタデを引きずりながら外へ向かおうと窓から飛び降りようとしているイツキの姿があった。

 

「イツキ!?」

「何してんだ、寝ぼけてんのか!?」

 

ナマリとセンシが止めようとするも、イツキの力は凄まじく振りほどかれてしまう。

 

「なんて力だ…!」

 

そして、イツキは窓から飛び降りる。現在三階。普段のイツキなら重心移動でなんとか着地出来る高さではあるが、今は様子がおかしい。

 

「イツキ!!」

 

そして、窓から飛び降りたイツキは大きな着地音と共に地面に亀裂を作りながら着地した。どうやら無傷らしい。そのまま走り去ってしまう。

 

「な、なにが…?」

「追いかける!」

 

イヅツミも窓から飛び降りてイツキの元へ。猫の様に軽やかな着地の後に素早く追いかける。

 

他のメンバーも念の為武器を手に取り建物から出る。防具類は狂乱の魔術師を警戒していた為そのままで、イヅツミが走っていった方へ同じく走り出す。

 

「どこ行きやがったアイツ…!無駄に速い足しやがって!」

 

イツキを見失ったイヅツミ。地面に鼻を近付け匂いを追う。あまり得意ではない方法だが、ヘタな人間の追い方よりよっぽど追跡能力に優れている。

 

「こっちか!」

 

イヅツミが着いた場所は、大宴会をしていた中心。黒竜が安置されている大きな台の前。そこにイツキが膝を突いてしゃがみこんでいた。

 

「イツ……おい、イツキ!一体どうしたんだ?」

「……さ……を……」

「…はぁ?」

 

 

「デルガル様、を、お探し、しなくては」

「……デルガル?誰だよ、それ」

 

とにかく帰るぞ!とイヅツミはイツキの腕を引っ張る。瞬間、イヅツミはイツキから殺気を感じ取りイツキから遠のいた。

 

「離せ!!」

 

イヅツミがいた場所に炎の剣、実体剣ではない魔力のみの剣が振り抜かれていた。あと一秒遅ければイヅツミは消し炭になっていただろう。

 

「イ、イツキ?」

『この地に存在する建物、金貨、国民、家畜、血、砂……』

「っ!?」

 

イヅツミは黒竜の方へ目を向ける。黒竜の死骸の上に誰かが座っている。

 

「お前が今踏みつけている砂粒一つに至るまで、全てはデルガル国王陛下そのひとの所有物である」

「お、お前…誰だよ!」

 

黒いローブ。褐色の肌。白い髪。そしてエルフ特有の長い耳。

 

「汚らわしい盗賊が…」

 

目の前の彼は、イヅツミに対して溢れんばかりの殺意を向ける。

 

「昏々と屍を晒すがいい」

 

イヅツミに襲いかかる魔法の槍。なんとかそれを回避するイヅツミ。反撃にクナイを投げるも、彼の目の前に展開されている結界に阻まれた。

 

「テメェ…!イツキになにした!!」

「イツキ?誰だそれは」

「そこに座り込んでるやつの事だよ!」

 

彼は目線だけを下に向けイツキを見る。しかし何も感じなかった様にイヅツミの方へ向き直す。

 

「ここには私の竜しかいない。誰のことを言っている」

「おま……なに言って……」

 

「無駄話は趣味ではない」

 

彼は再び魔法の槍を展開する。しかし量が尋常ではない。その数実に二十本。

 

「死ね」

 

大量射出される魔法の槍。ただ真っ直ぐ飛んでくるのでは無く、縦横無尽に操ることが出来るのか、槍は四方八方に飛びまくりランダムに襲いかかってくる。

 

「クソっ……!」

 

イヅツミは持ち前の反射神経で避けていく。一本、二本、三本、四本。そして五本目を避けたところで、避けるルート全てに槍が置かれていることにイヅツミは気付いた。

 

「あっ……」

 

男がニヤリと笑い、イヅツミに槍が直撃する。

 

様に思えた。

 

「イヅツミ!大丈夫!?」

 

ファリンの防御結界によって槍は防がれ、魔法の槍はマルシルの爆発魔法で全て叩き落とされる。

 

ライオス一行、そしてくノ一組が間に合ったのだ。

 

男は憎悪に顔を歪ませ、吐き捨てる様に罵倒する。

 

「簒奪者共が…!」

 

「狂乱の魔術師……!」

 

全員武器を構える。そして戦闘音を聞き付けたゾン族長やリド達が武器を持って駆けつける。

 

「何事だ!」

「敵だ!狂乱の魔術師!」

 

その言葉にオーク達は威嚇の咆哮を上げ始める。しかし、狂乱の魔術師には欠片も効果は無い。

 

「数を揃えれば勝てるとでも?」

「勝てるさ。今までそうしてきた」

 

狂乱の魔術師の言葉にライオスは怯まない。

 

「愚かな」

 

しかし、狂乱の魔術師は手のひらを下に向け、イツキの傍に影を展開する。その影はどんどん大きくなっていき、イツキと黒竜は飲み込まれた。

 

「イツキ!!」

「野郎!!」

 

ナマリが突撃するも、影から出てきた大きなモノに阻まれる。

 

「なっ…んだコイツ!?」

 

首の無い鎧を着た巨大な馬に乗った、これまた首の無い巨大な黒騎士。左手に大盾、右手に斧槍を持っている。武器防具どれもこれもが血で錆びているものの、その存在感は圧倒的だ。

 

「デュラハンだ!首狩り騎士、死を招き寄せる者、死の預言者!!」

「二つ名はいいからなにか対策は!?」

「奴は死霊だ!ファリン!」

「うん!光らせるよ!」

 

ファリンは閃光魔法に自身の霊能力を上乗せする。祓う事は出来なかったものの、デュラハンは大きく怯んでいる。

 

「うぉぉりゃあ!!」

 

ナマリは大斧でデュラハンを攻撃。しかし大盾で防がれてしまう。そのまま盾でナマリを吹き飛ばし、オーク達を巻き込んだ。

 

「コイツ…!」

 

デュラハンは魔力視で優先順位を決める。ファリンを最優先事項とし人馬一体で襲いかかって来る。

 

「させるものか」

 

シュローは恐ろしく低く体勢を取り、抜刀で馬を攻撃。鎧の隙間に刀を通し馬の前足を切断することに成功した。デュラハンは落馬し膝を突いている。

 

「畳み掛けよ!牛頭、馬頭!」

 

マイヅルの式神である牛頭馬頭は金棒と槍で攻撃。しかし、デュラハンは回し切りで反撃、牛頭馬頭は武器ごと切断された。

 

「馬はオマケってか…!」

「オオオオオオ!」

 

ゾン族長が大槍を持って突撃。他のオーク達も続く様に突撃するも、槍はほとんど鎧と盾に防がれ、ゾン族長とオーク達は斧槍の直撃を受けてしまう。

 

「ヌ゙ゥ…ッ!!」

「兄様!」

 

リドは勇ましく突撃。魔狼達も素早い動きでデュラハンに襲いかかるも、ほとんどが蹴散らされてしまう。

 

が、オーク達のお陰で隙が出来たのでイヅツミがデュラハンの背に乗っていた。

 

「デュラハンの弱点は首の中にある魔核だ!」

 

イヅツミはクナイで魔核を攻撃。デュラハンは大きく痙攣した後、馬ごと砂となって消えた。

 

「狂乱の魔術師は!?」

 

全員で辺りを見渡すも、狂乱の魔術師の姿は何処にも無い。チルチャックは近くにあった椅子を蹴る。

 

「逃げたのかよ!あんな仰々しい態度取ったくせに!」

「マルシル、追えるか?」

「今魔力の痕跡を追ってる。ちょっと待って」

 

「兄様、ご無事で?」

「ああ…見た目よりは浅い。問題無い」

「デュラハンは本来もっと下層にいるとされている魔物だ。魔力が薄くて本来の動きが出来なかったんだろう…」

 

「イツキ…」

 

ファリンは青ざめた表情で辺りをキョロキョロと見渡している。その前にイヅツミが立った。

 

「ファリン、落ち着け。まだそんな遠くに行ってない筈だ」

「う、うん…そうだよね」

 

「あった!魔力の残滓!」

 

マルシルの指さした方向へ全員で追いかける。道中魔物に幾度を遭遇しその度に応戦した。

 

 

そして、狂乱の魔術師はというと。

 

「全く…逆賊共め。やはり魔力が薄いところはダメだな。吐き気がする」

 

「おい、竜よ。なんだその姿は。不便だろう?そんな小さい身体では」

 

竜と呼ばれたイツキは狂乱の魔術師に跪いたまま動かない。魔術師はため息をついた後、イツキの頭に触れる。

 

「今一度甦らせてやる」

 

そうして、イツキの身体全体がボコボコと肉と血を蠢きながら姿を変えていく。

 

「あの簒奪者共を根絶やしにするのだ」

 

 

ライオス一行はマルシルの追跡を頼りに移動し続ける。しかし、途中で痕跡が途切れた。

 

「ウソ、なんで…!?」

「イヅツミ、オーク達!なんとか追えないか!?」

 

「ううん…なんとも言えない匂いが漂っててなにも分かんねぇ」

「オレ達も無理ダ。これ多分ハーピーの巣が近くにあル」

 

うぇぇ。とベロを出して気持ち悪がるイヅツミ達。

 

「どうしよ…このままじゃ…」

 

ファリンもキョロキョロと辺りを見渡して探し出す。そして、自分達と少し離れたところに幽霊が佇んでいたのを発見する。

 

『…………』

 

幽霊はなにも言わないが、こっちへ来いと手招きしていた。

 

「貴方が、案内してくれるの?」

『…………』

「あれは…元黄金城の住民だ。彼に着いて行こう!」

 

ファリンとリドを先頭に幽霊を追跡。

 

「大丈夫なのか?」

「地下深くにいる彼らは正気を保っている者が殆どだ。きっと大丈夫だ」

 

そして、暫く幽霊を追いかけ走り続けていると、地下六階への階段前の広場に着いた。しかし大量のハーピー達が行く手を阻む。

 

「お前らを相手してる暇は無いんだよ…!」

 

イヅツミやくノ一組は屋根の上で交戦。下に来たハーピー達はライオス達とオーク達で応戦。

 

「邪魔!しないで!」

 

ファリンのメイスによって一匹のハーピーが叩き落とされる。

 

「逸る気持ちも分かるが、あんまり前に出すぎるなよ!」

「分かってるよ!」

 

トーデン兄妹は背中合わせで戦う。金剥ぎ時代振りのコンビネーションも錆び付いてはいないようだ。次々と襲いかかってくるハーピー達を叩き落としていく。

 

屋根の上にいるくノ一組が嫌になったのか、ハーピー達は低空飛行を繰り返し下にいる人達を襲い始める。

 

くノ一組は地面に降りて交戦。しばらく戦い続け、やっと静かになった。

 

「はあっ…はあっ…まだいるか!?」

「屋根上に何匹か止まっ………て………」

 

チルチャックが屋根上に目を向けて固まった。とんでもないものでも見たのだろうか。

 

「チル…!………?」

 

ライオスも屋根上を見る。そして、ありえないものを見た。

 

全身を黒竜の鱗で覆った二足歩行の人型。黒竜の鋭い爪がある脚部。黒竜の頑強な腕部。そしてなにより巨大な尻尾とボロボロの黒い羽根と翼膜。

 

ライオスは子供のころ魔物図鑑で見た『リザードマン』を思い出していた。しかし、あれらの頭部はトカゲのものであり、『人間のものではない』。

 

頬の部分まで鱗で覆われ、頭部に四本の角を携えた長い黒髪の『少年』。

 

その瞳は結膜は黒に染まり、瞳孔は竜の様な縦長に、虹彩は血の様な赤に染まっている。

 

ただ無慈悲に、無感情に、ライオス達を上から見下ろしていた。

 

「イツ、キ……?」

 

ファリンの喉からやっと出た掠れた声。その声に。

 

返事は無いが、黒竜の少年は微笑み返した。

 

「イツキなの!?ねえ!イツキ!!」

「落ち着けファリン!どうみても様子が可笑しい!」

 

必死に駆け寄ろうとするファリンを止めるチルチャック。

 

一方、ライオスは黒竜との半人半竜の魔物と化したイツキを見て、こう思った。

 

   代 代 か

   わ わ っ

   り れ こ

   た る い

   い の い

     な 

     ら

 

 

あくまでも平常運転が過ぎるこの男。残念ながら我らが主人公である。

 





最後のやつはコメントのパクリです。

実は原作通りファリンがレッドドラゴンに食べられたifルートみたいなの薄らぼんやり考えてるんだけど、需要あります?

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