「イツキ…イツキなの?ねぇ!」
竜の少年は微笑むだけでなにも言わない。近くにいるハーピー達は頭を垂れて服従している。生物としての格が違うことを野生の勘で理解していた。
が、竜の少年(以下イツキと呼称する)は尻尾をハーピーに突き刺し業火で炙る。他のハーピー達は慌てて飛び去って行った。
尻尾に串刺しにしたまま焼きハーピーを首から齧る。その時、人間では有り得ない程の鋭い牙が見えた。
ハーピーの首をゴキリと噛んでへし折り、そのまま食べ進める。
ファリンはあれをイツキの顔をした全く別の化物だと思いたかった。しかし、ハーピーを食べた時の満足そうな笑顔は、どうみてもあの子の笑顔そのものだった。
イツキは屋根から飛び降りる。大きな衝撃音と共に地面がへこみ、イツキはゆっくりと立ち上がる。
オーク達はただイツキを震えながら見ているだけだった。他の人間種より野生の勘が鋭い彼らもハーピー達と同じ様に、鼠が猫に睨まれるように、この生物には手を出してはいけないと危険信号が鳴り響いている。
イツキはゆっくり、ゆっくりとファリンの元へ歩いていく。
「イツ」
再びイツキに問いかけようとするファリン。その前にナマリが出てきてファリンを庇うように立ち塞がる。
「下がってろファリン!あれがイツキなら、あれは呪いかなんかだ!少なくとも正常じゃない!」
「で、でも、」
ナマリは顔だけ後ろに向けてファリンを説得する。
「でももへったくれもねぇ!いいから下がっ」
しかし、最後まで話すことは叶わなかった。
「……あ、あ?」
ナマリの背中から、イツキの鋭い尻尾が飛び出している。鋭い尾先だ。人体など容易く貫く事が出来るだろう。
イツキは尻尾を強引に引き抜いた。ナマリはあまりのショックに倒れる。
ファリンはただ目の前のイツキの顔を見ることしか出来なかった。黒竜の脚の分、ファリンの身長を超えている。今はライオスより大きい。背後で誰かが叫んでいる様な気がするが、ファリンの耳には入らない。
イツキはゆっくり、ファリンの喉笛に爪を突き立てる。
「させるか馬鹿野郎!」
イヅツミの重い飛び蹴りがイツキの顔面に突き刺さる。その衝撃でファリンは意識を取り戻し、後ろに下がった。イヅツミもすぐさま離れる。
「ごめん!ナマリ、少し我慢して!すぐ治すから!」
ナマリは倒れながらも親指を立てる。
イツキはというと、ダメージを受けた様子は無い。ただ先程より少し不機嫌そうな顔つきをしている。
「ライオス!ありゃなんだ!魔物化か!?それとも呪いか!?」
「分からない!どっちも有り得る!」
わざと大声を出して話し出す。イツキの後ろには既にヒエンとベニチドリが待機していた。
「拘束すればどんな症状か分かるかもしれない!!」
マルシルの大声を合図に二人は鎖鎌を持ってイツキに突撃する。が、その時既にイツキは二人の方へ視線を合わせていた。
「な…っ」
そして、ギラリとイツキの瞳が赤い閃光を放ったと思ったら、ヒエンが爆炎を受けて吹き飛んだ。なんとか防御が間に合ったものの、両腕が爛れて骨が剥き出しになっている。
「ぐっ……うううう!!」
「ヒエン……!」
「睨んだだけで……!?」
ベニチドリは素早くヒエンを回収。ファリンの元へ運び出す。
回復の時間を稼ぐためライオスは盾を持って突撃する。剣を構えていないのは、相手がイツキだからだ。
が、イツキの片足を軸にした回し蹴りで盾ごと吹き飛ばされてしまう。とてつもない膂力だ。
「ふ、ふふふ。足癖の悪さは変わらないな……!」
「言ってる場合かバカ!」
チルチャックが倒れたライオスをなんとか支えて起こす。
シュローが前に出て中段の構えをとる。どんな攻撃にも対応出来るシュローの専売特許だ。
そんなシュローを見てイツキは右腕の指に力を入れる。竜鱗の隙間から炎が漏れ出し、みるみるうちに右腕を覆った。
そして、右腕を突き出して突撃。シュローはそれを間一髪で見切り、峰打ちながらもイツキの顔面に斬撃を浴びせた。
しかし、イツキは刀に噛み付いて防いでいた。そのまま刀を噛み砕き、シュローを蹴飛ばした。吹き飛ばされたシュローの胸には炎が燻っている四本線の爪痕が残っていた。
「ぐぁっ!?」
「坊っちゃま!?おのれ、許せイツキ!」
マイヅルは自身の最強の式神である土蜘蛛を召喚。土蜘蛛は巨躯に似合わぬ素早い動きでイツキに突っ込み、そのまま建物へ押し込んだ。
建物は大きな音を立てながら崩れ落ちる。
「シュロー、大丈夫!?」
ナマリとヒエンの治療を終えたファリンがシュローに駆け寄り傷を癒す。
「あ、ああ…なんとかな」
そして、土蜘蛛が突っ込んだ建物から業火の柱が立ち上がる。火柱が収まると、土蜘蛛の姿が確認出来たが、土蜘蛛はボロボロに崩れ去っていった。
「マイヅル様の土蜘蛛が一撃…!?」
崩れた建物からイツキが肩を回しながら怠そうに出てくる。そして一度溜息を吐くと、ボロボロの翼膜から炎が溢れ出し、それで羽ばたいて空高く飛翔した。
「ま、まさか…!」
ライオスが想像したのは黒竜のあの火炎ブレス。しかしイツキは火炎袋を持ち合わせてはいない。イツキが取った行動は、構え。
後ろ手に構えた両手から一瞬光が溢れ出したと思ったら、とんでもなく巨大な火炎球が出現した。
竜人と化したイツキは、記憶を覗きとある技を再現した。
『極ノ番【隕】』*1
本来であるならそれは大地の力を込めた巨大な溶岩熱を帯びた岩石による超質量攻撃なのだが、イツキはそれの威力だけを再現。
イツキは度々これの構想を練ってはいたが、魔力不足及びかなりの破壊力となると味方への被害を考え、没となったこの必殺技。威力だけならば本家に引けを取らない大火球による絨毯爆撃。
まるで迷宮内に太陽が出現した様に辺りを照らし、もはや逃げる事も叶わない。
「これ、は…無理だ…」
思わず諦めてしまうライオス。それでもファリンは防御結界を展開した。
「みんな、集まって!」
あの時と同じ様にファリン、マルシル、マイヅルによる火炎対策の陣を取るも、上空にある考えただけで目眩がしそうな威力の大火球を前に足が竦んでしまう。
そして、大火球は地上を呑み込んだ。
地下五階の一部が消し飛び、後には焦土のみが残った。
イツキは地上へ着地。生き残りがいないか確認するも、そこには塵一つ残ってはいない。
死んだ。そう判断したイツキは主がいる地下への階段を降りようとする。
「あ、あれ?」
間の抜けたマルシルの声が遠くの方から聞こえ、イツキは声がした方へ顔を向ける。
そこには、無傷の人間達と見覚えのない人間達が立っていた。
耳の長い種族。同じ様な格好の連中。
このイツキは知らない。彼らはカナリア隊。迷宮調査のエキスパート。
パッタドルは尻もちをついたマルシルに手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい!」
フレキは自身の周りに使い魔を展開。いつでも交戦出来る状態にしている。リシオンもまた既に獣化しており、万全の状態だ。
「おいおい…私らイツキを助けに来たんだよな?」
「良いセンスしてんね、あれ自分でやったの?…な訳ないか」
額に青筋を浮かべているも普段通りの表情のシスヒス。そんなシスヒスに少し引きながらも明らかに怒りを顕にしているオッタ。
「ならアレをやった奴をとっ捕まえないと。生まれてきたことを後悔させてあげるわ」
「うお、ブチ切れてる。まあ気持ちは分かるけどさ」
「イツキ、そこにいろ。今行く」
相変わらずの無表情だが、どこか怒りを感じる雰囲気のミスルン。
「遅れてすみません、思ったより迷宮に手こずっちゃって…」
「カ、カブルー?なんで君がここに…」
カブルーはライオスに手を貸し起こすのを手伝う。ウィンクして無事を伝える。
「詳しい話は後で。今は……彼のことをなんとかしましょう」
イツキは警戒して近付かない。その真紅の瞳はただ一人の男を見据えていた。
「女王陛下の命令だ。イツキを拘束、あるいは排除する」
「ミスルンさん…!」
「ファリン。心中察するところはあるが、あれを相手に私もどれほど持つか分からない」
「そ、それ…は…」
「一応女王陛下の命令だ。拘束を優先するが…」
イツキは既に臨戦態勢に入っている。人の頃のイツキの記憶。竜としてのイツキはミスルンという男に対して警戒を緩めない。
「まずは四肢の切断。それで止まる相手なら良いが」
ミスルンは走りながら手を落ちている瓦礫に触れ魔法を発動。転移を繰り返し瓦礫をイツキへ直接転移させる。転移した物体は元々あったなにかを押しのけて出現する。例えば人間の頭に岩を転移させれば、元々あった頭は吹き飛んで岩が出現する。
防御結界無視、回避不可能のミスルンが誇る最強の転移術。
しかし、両手両足に転移させたハズの瓦礫はイツキの傍にゴロリと落ちた。
「やはり、『抵抗』するか。お前ぐらいだよ、そこまで器用な奴は」
『
『転移術は座標を決めた後に物体を転移させる物質攻撃術なんですから、座標決定の時点で抵抗すれば防げるんじゃないですかね』
と、立案。ものの試しに何回か検証したところ成功した為イツキの仮説は立証された。……が、転移術に対する抵抗を成功させた人間は今のところイツキのみ。
炎の精霊に取り憑かれ他の人間より精霊に対する抵抗力が元々強いイツキだから出来た技法である。
「なら、直接ぶつけてやるさ」
しかしその方法もミスルンには対抗手段がある。それは転移させる物体と転移先の物体に直接触れた状態で術を展開する方法。
転移術はその性質上物体の質量と距離に強く影響する。転移させる物体が軽かったり小さかったり、距離は近ければ近い程、術は容易になり安定感も発動する力も増す。
ミスルンは転移でイツキへ急接近。転移後の座標の揺れを察知したイツキはミスルンが転移した先に炎の鉤爪を振るう。
しかしミスルンはそれを読んで攻撃が来る前に別の場所に転移。イツキの腕に触れ、瓦礫を転移させる。
結果、イツキの左腕は弾き飛んだ。
「グゥッ…!?」
初めて声を上げるイツキ。竜の喉から出た声はいつもの雰囲気とはかなり違う。
「このまま続けるぞ」
そして、その戦いを見ることしか出来ず待機しているメンバー達はというと。
「やっぱ隊長の転移術無法だなー」
「だね。あれ相手にするのは嫌だよ」
フレキとリシオンがかなり呑気に話していた。ライオス一行はどんどん傷付いていくイツキに複雑な感情を抱いていた。
そんなイツキ本人はミスルンを見定めていた。
どうすればこの男を殺せるか。どうすれば厄介な転移術に対抗出来るか。
そして、イツキは最適解の手段を取る。
自身の竜鱗の隙間から業火を溢れ出す。あっという間に火達磨になったイツキ。本人はノーダメージだ。
「なるほど、そもそも触れさせない気か」
イツキは翼を展開。とてつもない速さでミスルンへ接近。炎の鉤爪や尻尾攻撃を繰り返すも、ミスルンは転移術を駆使して回避し続ける。
「だが、その程度の覚悟が私に無いとでも?」
ミスルンは瓦礫を持った腕を業火溢れるイツキの右腕に直接ぶつける。ミスルンの腕は焼かれ、イツキの右腕は吹き飛んだ。
「流石に…痛いな」
水分が飛んで肉が焼ける音がミスルンの左腕から立ち上る。遠方からパッタドルが魔法を展開。飛ばした水球がミスルンの左腕を包み込み、みるみるうちに傷を治していく。
「助かる」
「隊長!油断なきよう!」
パッタドルは苦悶に満ちた表情だ。仕事として、カナリア隊としてこの場に立っているが、目の前の想い人がどんどんボロボロになっていく様を直視出来ないでいた。
そして、イツキは炎の展開を止めた。諦めたか?そう思ったミスルンだったが、とんでもない方法を持ち出したイツキに驚愕する。
なんと、イツキの両腕が再生していた。竜鱗もピカピカの新品状態だ。
「確かに…お前は治癒魔法も得意だったな」
しかし両腕を再生させるなど膨大な魔力を消費する筈。そう思ったミスルンは持久戦に持ち込む事にした。
魔力総量はエルフであるミスルンの方が圧倒的に上だからだ。
しかし、この方法は現状考えうる手段の中で一番の悪手である事に、ミスルン含めメンバー全員も気付くことは無かった。
戦闘開始から実に三十分が経過。イツキは小技を出すもミスルンには避けられ、全員纏めて焼きつくそうと大技を出そうとするも妨害されるため、両者の集中力が先に切れた方の負けの状態が続く。
その間ゾン族長とリドは念の為、非戦闘員含むオーク達を避難させに上層へ。ライオス達はカブルーと情報を共有。
まず第一に、こんなに早くカナリアが中央から来れた理由。それは
「ひ、ひこうき?」
「はい。どうやらイツキと女王陛下の提案で作った空を飛ぶ乗り物を乗ってここまで来たとか…」
実際はまだまだ試作機で結構な大冒険だったらしいが、ミスルンの転移術の繰り返しでなんとか沈没は防いでいた。
「ま、まあそれはいいとして、なんでお前までここにいるんだよ。ライオスに足手まといってハッキリ言われたろ?」
「い、いや俺はそこまでは…」
「分かってます。それは…なんというか、最初こそカナリアの人達を納得させるのにかなり苦労したんですけど…」
時間を少し遡り、島主の館の前でカナリア隊と出会したカブルー一行。
どうやら飛行機による強制着陸もとい不時着でメリニに強引に上陸したため、タンスとかなり揉めている様子だ。
「大体貴様らエルフというのは……!」
「タンスさん!俺です、カブルーです!」
「ん?……おお、カブルーか。今は見ての通り忙しい、用事なら後で」
「いえすみません時間が無いんです。緊急でお耳に入れたいことが」
「…お前がそこまで急かすとは珍しいな。なんの要件だ」
「実は…」
カブルーはイツキが迷宮内で死亡したことを報告する。
「なんだと!?ええいあのお調子者め…!仲間を庇うとはなんともあの子らしいが……全く!!」
「そこで、救助隊の要請を…」
「待て、今イツキの話をしたか?」
「え?」
ミスルンがカブルーとタンスの前に出る。
「私達は女王陛下の命令で中央からイツキ救出の為に来た」
「なっ…!?」
「中央でエルフ達と仲良くなったとは聞いていたが…カナリア隊の事だったとは。というか、女王の命令だと?」
「時間が無いのはそちらも同じ事だ。説明は後でする。今はイツキ救出の為に我々を迷宮に入れる許可をくれ。そうすればイツキを助けてくる」
「ぬ、ぬぅ……」
タンスはチラリと窓から覗いている島主を見る。島主は慌てて窓から身を隠した。
「上の人間があのザマなら、決めるのは立場上貴方になる」
「〜〜〜〜……!……分かった、責任はわしが取る。あの子を助けてくれ」
「分かった。あと責任云々は女王陛下が全面的に受け入れるそうだ。心配はいらないだろう」
どんだけ気に入られたんだイツキ…。と思った二人。カナリア隊は迷宮へ向かう。そこをカブルーが止めた。
「今は貴方の話を聞いている暇は…!」
見るからに焦っているパッタドルがカブルーを押しのけようとする。しかし、カブルーは至って冷静に事を進める。
今は迷宮が極めて不安定ということ。内部構造が変化したこと。
そして、自分が『ウタヤ』の生き残りであるということ。
カナリア隊の面々はウタヤという町を知っていた。十五年前迷宮から魔物が溢れ、死者が魔物と化し生者を食らう地獄絵図となった町。
「俺は今回の件で協力してくれそうな伝手を知ってます、お願いします。俺を連れてって下さい!」
「友達を……助けたいんです!!」
カブルーはめいいっぱい頭を下げる。カブルーの心からの言葉に、感情の無いミスルンはカブルーの頭に手を置いた。
「そこまで言うなら連れていこう。しかし、お前の為に足を止めたりはしないぞ」
「あ、ありがとうございます!!」
カナリア隊とカブルー一行は迷宮へ訪れた。そこは大勢の冒険者や商人、挙句の果て子供までおり、カブルーはウタヤの光景を思い出していた。
「みなさん!俺の話を聞いてください!」
カブルーは大声でイツキが迷宮で死亡した事を告げ、救出の為カナリア隊を迷宮に入れる事、今迷宮はかなり危険で避難が必要ということ。
「イツキが?」
「マジかよ…」
「どんな強い魔物に襲われたんだ?」
「イツキってだれ?」
「エルフと関わったら殺されるんじゃ…」
「今結構稼げてるのに…」
反応は様々だが、注目を集める事は出来た。
「お願いします、今だけどうか…!」
「おいおい、勝手な事言ってんじゃねぇよ!」
一人の大柄の男がカブルーの前に出る。その手には斧を持っていた。
「特殊個体を殺せば大金が手に入る。テメェにそれを止める権利があるってのか!?」
「ですから!今迷宮は不安定で」
「そもそもそんな話信用出来るか!さてはテメェらで金を独占しようってんだな!?」
カブルーは考える。今この男を殺す事は容易だが、それでは余計な混乱を招く。なにか、この男、ひいてはこの騒ぎに便乗しようとする後ろの連中を止める手立ては…!
「おい、その辺にしとけ」
「あぁ!?あっ……す、すいやせん」
大柄の男の後ろから坊主頭の男が現れる。その男は、かつてライオスから金をせびろうと迫り、イツキに追い返された金剥ぎの冒険者だった。
「あの野郎、死んだのか?」
「は、はい」
「ふぅー…おいテメェら!今日は店仕舞いだ!とりあえずメリニに戻れ!」
金剥ぎの冒険者の言葉に意見を出そうとする者もいたが、大柄の冒険者が分かりやすく格上の相手をした事、金剥ぎの冒険者があまりにも堂々としている点から彼の事をかなりの冒険者と錯覚。
渋々と冒険者や商人は迷宮を後にした。
「なんかアイツら勘違いしてんな…まあ好都合か」
「あ、あの…」
「あ?」
「なんで俺達に協力を…」
「協力だぁ?ペッ、俺は借りを返したいだけだ。アイツに死なれちゃ返す先がねぇだろうが」
ったく…。と金剥ぎの冒険者も迷宮を後にした。
「はは…ほんと、敵わないな…」
カブルーは自分のパーティに迷宮の入口を封鎖する様に指示、そしてカブルーの伝手である裏島主との交渉だが、残念ながら原作通り失敗に終わってしまう。彼は既に迷宮に魅入られていた。
「当てが外れたわね?」
「うぅ…」
「まあ良い、それよりパッタドル。イツキ、ファリン、マルシルのどれかの魔力の残滓は追えるか?」
「はい、任せてください」
「……ということで、俺達はライオスさん達が通ってきたルートをそのまま通ってきたので、魔物とも殆ど接敵せず罠も無かったのでここまで早くこれたんです」
「なるほどな…」
「お前らそろそろ覚悟してけよ。逃げるにせよ、イツキを拘束するにせよ」
チルチャックの弱気な発言は無理もない。なにせ戦いはかなり激化している。イツキは機関銃の様に炎弾を連射したり大雑把に大火球をぶつけたり、何度も何度も攻撃を繰り返し空中戦に持ち込んでも、ミスルンは転移で回避し続ける。
文字通りレベルが違うも、状況はミスルンが圧倒的に優勢。この戦いを見ていた誰もがそれを確信していた。
しかし、三十分。三十分だ。流石のミスルンも魔力切れが見える様になって来たにも関わず、イツキは平然としている。
「どういう事だよ!イツキの弱点は魔力容量の少なさだ。相手の魔力容量を見極められない程隊長は頭悪くねぇ。なのになんであんなにピンピンしてんだ…?」
フレキの焦り声が周囲に響く。マルシルが幾つか仮説を考えるも、どれもこれも空想論に過ぎない。
そこで、フレキが連れていた使い魔の内の一体が急に喋り出す。
『回復しているな、魔力が』
「うおっ女王!?回線繋がったんすか!?」
「魔力が回復してるって…なんで!?」
『そのままの意味だ。魔力は本来時間経過や飲食物やポーション、外部からの干渉でしか回復しない』
『しかし今のあの子はそれをしている様子は無い』
『娘、お前なら知っているんじゃないか?あの子があの有様になった原因を』
女王の使い魔は鋭い目でマルシルを見る。マルシルはぽつりぽつりと説明していく。
「わ、私…あの子を蘇生するのに黒魔術を使ったんです。一時的にイツキの魂を迷宮のものにして…って感じで、すぐに元に戻したんですけど」
「黒魔術ってお前…」
オッタが女王の使い魔をチラリと見る。
『構わん。私もそこにいたら同じ事をしていた。マルシルの黒魔術の使用については女王の名のもとに不問とする』
マジかよ。とチルチャックは思った。下手をしたら死罪に値する黒魔術の使用が不問に出来るのは、全世界探してもヘイメアくらいだろう。
「で、魔力が回復してるってのは?」
『あくまで仮説だが、マルシルの黒魔術の使用によりイツキは無限の次元界と
ヘイメアはイツキが別の世界から無限の次元界を通ってこちら側に来たという仮説を説明する。
『なにせ色々な意味で我々とイツキは異なる。種族は勿論、おそらく魂の規格も違う。なにか不具合が起き、それを狂乱の魔術師がイツキを竜人キメラにし、無限の次元界から魔力を無制限に補給しているというのも考えうる』
「そんなの…勝てっこないじゃねーか!?」
瞬間、とてつもない爆発音が鳴り響く。煙の中からミスルンが体勢を崩しながら飛び出してくる。なんとか着地するも、息も絶え絶えだ。
『あれもそろそろ限界が近い。今は撤退を…』
女王ヘイメアは驚愕した。上空にいるイツキは再び極ノ番【隕】を構えていた。
『とめろ!迷宮が吹き飛ぶぞ!!』
遠距離魔法を持っているメンバーは一斉攻撃。しかし、【隕】の軌道を逸らす事に精一杯だった。
ファリンの防御結界、パッタドルの防御結界。そしてシスヒスの幻覚術によりなんとか難を逃れるも、迷宮がみるみるうちに崩落していく。
その崩落に、魔力が尽きかけてまともに動けないミスルンが巻き込まれた。
「隊長!?」
「くそっ……!!」
「カブルー!?」
カブルーはミスルンを追いかけ崩落に飲み込まれ地下へ落ちていく。イツキもそれを追いかける。既に女王は魔力探知を防ぐ術を張っていたので見られることはなかった。
「ど、どうするよ…」
「どうするもなにも、追いかけるしかない」
『フラメラの別部隊もそろそろメリニに到着するだろう。カナリア隊もライオス一行と共に下層へ向かうのだ』
「はっ」
『ライオス・トーデン殿』
「は、はい」
『あの子を、お願いします』
ヘイメアの使い魔はぺこりと頭を下げる。それに、ライオスは壮快に答える。
「もちろんです。俺達の家族だ」
『…ああ、本当に、ありがとう』
フレキは、女王が頭を下げることがあるのか…と驚愕していた。
ライオス一行、そして隊長不在のカナリア隊は地下六階への階段前にやってきた。
「…よし、行こう」
「うん。イツキ…絶対助けるからね」
ライオス一行は、混沌渦巻く地下へ再び潜っていった。
ああああ登場人物が多すぎるうううう
あと書きたいこと多すぎて文字数が多すぎる。なんなら描写し切れてない所も多々ある。おのれ……おのれ……みんなどうやって円滑にストーリー進めてるんじゃ……あと飯要素がねぇ…うごごっごごっごごご
くっっそ分かりづらい所が多々あったと思います。そういう所をどしどしコメントで指摘して頂けると幸いです。
あ、感想が500件を突破しました!!!
500件って事は……500件ってことなんですよ?(大混乱)
あと五十話突破です。早いですねぇ…もうそんなに書いたんだ自分
実は原作通りファリンがレッドドラゴンに食べられたifルートみたいなの薄らぼんやり考えてるんだけど、需要あります?
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ある
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ない
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学園if書け