今回センシの過去を書くんですが、主軸であるオリ主のイツキがいないこと。カナリア隊がいるとはいえほぼ原作通りの流れなのでやむを得ず殆どカットしました。
センシの過去は原作の中でも一二を争うくらい好きなんですが、どうしてもこの二次小説に収められず、自分の力量不足を痛感しています。
丸ごとカットは流石にしたくなかったのでオリジナルを入れつつどうにか入れましたが、蛇足感が否めません。
予めご了承ください。今回は完全にこれ書いてる奴の力量不足の結果です。
『炎の剣携えた者、狂乱の魔術師を打ち倒し竜の背に乗り、世界を滅ぼす者と戦いこの国の新しい王となるであろう』
ライオスはヤアドから言われた翼獅子なる者の予言を思い出しながら、装飾が派手な大きい扉を見つめていた。
「結局、開け方は分からないな」
「最奥の扉、扉というのなら開け方があるはずだが…」
「センシ殿、お怪我は?」
「大丈夫だ。ありがとう」
パッタドルのエルフ式魔術による治療を受けるセンシ。
迷宮最奥の扉と伝わっている巨大な扉。その前で石で出来た飛行型の魔物であるガーゴイルの襲撃を受けたメンバーは迅速に撃破したものの、その数に押されてしまいセンシが負傷してしまった。
まじない、特にエルフ式魔法を毛嫌いしていたセンシが大人しくパッタドルの治療を受けるのには理由があった。
それは、つい先刻の出来事。
ヤアドがいた異空間から脱出した一行は、ドワーフの貯水庫と呼ばれる巨大な空間に出た。
そこで、グリフィンと呼ばれる魔物と接敵した。
冷静に対処すれば今のメンバーで勝てない道理は無い相手。しかし、急に錯乱し背を向けて逃走するセンシ。
「センシ!?」
逃げるセンシを追うグリフィン。しかしフレキの精霊での撹乱や、シスヒスの幻覚術。リシオンの獣化してからの挟撃によりグリフィンを討伐。
あまりにセンシが今まで通りではないことをライオスは勿論、付き合いが短いハズのパッタドルなども理解するほど、この時のセンシは冷静ではなかった。
「センシ、一体どうしたんだ?」
「勝手な行動は控えて欲しいのだけれど」
「シスヒス!センシ殿は明らかに普通では無かったろう!なにか事情が…」
「すまん。パッタドル殿。……わしが、わしが悪いのだ」
事情を聞くと、センシは少年時代にこの迷宮を訪れ、迷宮に仲間共々閉じ込められ食料も物資も枯渇した極限状態の中グリフィンに出会したという。
そして、次々に仲間が殺され、最後に残ったセンシ以外の二人も、言い争いをしている最中に片方がグリフィンに殺され、もう片方のリーダーであるギリンというドワーフはグリフィンの肉を調理しセンシに与えた。
センシはこの頃、今のセンシから見たらイツキと同じである『飯を与えるべき子供』だった。
問題は、言い争いの結果リーダーが持ってきた肉で作ったスープ。
水で煮ただけのそれは獣臭や肉の硬さで酷い味であったが、センシは夢中で咀嚼し飲み込んだという。
自分とリーダー以外全員が死亡し、帰る手立ても物資も食料も底を尽いた状況での肉のスープ。マズイ筈がない。
そして、リーダーであるギリンは小便をすると言って肉に手を付けずにセンシの元を去った。
部屋の外で死亡し、兜だけを残したギリンをセンシが見つけたのは、肉を食べきって脱出法である地図の解読が終わった後だった。
結局、あれはグリフィンの肉だったのか。それとも…
以上が、センシがグリフィンにトラウマを持つ理由。
「それは……は……」
絶句するパッタドルやカナリア隊の面々。シスヒスは座り込んだセンシの前に出て、頭を下げた。
「……ごめんなさい。センシさん。軽率な発言だったわ」
「いや良いのだ。事情を知らなくては先の行動はあまりにも稚拙。シスヒス殿に非は無い」
グリフィンをどうするかという事になったところで、ライオスはトラウマを克服するにはグリフィンを食べるのが一番だと提案。
「それは……」
「いや、やってみよう。……やらせてくれ」
そしてグリフィンを調理し、水で煮込んだだけのグリフィンを一口食べるも、あの時の味とは似てもにつかない。
落ち込む一行に、ライオスは近くに生えているキノコがチェンジリングと呼ばれるキノコだと言う。
チェンジリングは、輪の中に入った物体を変化させるキノコ。
人、例えばトールマンが入ったらドワーフに。ドワーフが入ったらエルフに。エルフが入ったらハーフフットに…といった感じで変化させる胞子を放つキノコだ。それは生きている者以外、物体にすら影響する。
そしてセンシの兜に残された鈍器の様な痕は、グリフィンでは無くチェンジリングで変化した下半身が馬のヒポグリフの蹄の痕だったのでは?と言いヒポグリフの味を確かめることを提案。
「なにいってんのライオス!そんな事…」
「あまりにも酷というものです!」
上半身が鷹で下半身が別の動物は、世界広くともグリフィンとヒポグリフのみ。これで違えば、センシがあの時食べた肉は別の肉だと確定する。
マルシルとパッタドルに詰められタジタジになるライオスに、センシは賛同する。
「いや、ライオス。……やってくれ」
「センシ殿…」
「この先にもグリフィンが現れる可能性はある。例えば、イツキと接敵中などだ。その時冷静でいられる自信が無い」
「……分かった。調理しよう。できる限りその時を再現したやり方で」
水で煮込んだだけのヒポグリフの肉。センシはそれは一口食べる。
そして、ポロポロと涙を流してしまう。
「センシ…!?」
「ほらぁ!やっぱりこんな事しない方が…!」
「いや、違う。違うんだマルシル」
「ずっと、この肉を、食べたかったんだ」
涙を流すセンシに、ライオス達は抱きついて慰める。
シスヒスですら、その瞳は潤んでいた。それを見たのはフレキ。
「お前でも泣くんだな」
「悪い?」
「いいや、笑わない」
思わずびっくりしたシスヒスだったが、フレキは珍しく真面目な表情だった。
その後、パッタドルの提案で自分のことを話す機会を設けた。
そこでセンシはエルフに対する警戒心がほぼ無くなったお陰で、こうして嫌悪感を抱く事無くパッタドルの治療を受けているという訳だ。
「んで、結局どうする?この扉」
「うーん……ヤアドー!どうやって開けるのー!?」
「開けてー!有翼の獅子ー!!」
お手上げとなったライオスとマルシルは扉に向かって叫び続ける。
すると、ライオスが持っているイツキの炎の剣がカタカタと揺れだした。
「え?……気の所為か?」
ライオスは炎の剣を掲げると、その剣から勢い良く炎が発生し扉を覆い始める。
「わーっ!?」
「ライオスなにしたの!?どっか触っちゃった!?」
「なにもしてない!剣が急に揺れたから持ってみたらなんか出た!」
そして、扉があった場所には扉が無くなり、炎の痕跡のみが残った。
「な、なんで?」
「有翼の獅子がなにかしたのかな…?」
「明らかに誘われてますね。深奥に」
「警戒は怠らない方がいいわね。悪魔に食べられるわよ」
一方その頃。
強力な神経毒のブレスを持つワームの群れを全滅させ、その死骸の中心でワームの肉を貪り食っているイツキ。
生肉より焼いた肉を好むのは人間の頃の名残なのか、ワームの肉を掴んでは手のひらで炎を発生させ火が通ってから食べていく。
調味料も下ごしらえもしていない肉は控えめに言って美味しくは無いが、腹を満たすには十分であった。
しかし、やはり記憶のどこかにあるものと比べると見劣りしてしまう。黒竜はボーッとしながら惰性に肉を貪るしか無かった。
「随分と暴れたな、黒竜」
そんなイツキの前に狂乱の魔術師、ヤアド曰くシスルという男性が現れる。
「あまり食い散らかすな。餌は有限だぞ」
その言葉を理解しているのかしていないのか、イツキは食う手を止めない。いくら無限の魔力を操る黒竜でも、腹は減るものだ。
「行くぞ。もっと深い魔力が濃い場所で奴らを待ち構える。奴らが仲間にした連中は優秀だ、確実に殺さなければ」
シスルは黒竜に背を向け歩き出す。一方、黒竜は動く気配が無い。まだ肉を食っている。
「おい、どうした。来い」
「……聞いているのか!おい!」
シスルは黒竜が持っていた肉を手で弾く。ボタッと落ちる肉。
そんなシスルを、光の無い赤眼で視る黒竜。その瞳には明らかに敵意が滲み出ていた。思わずビクッと怯んだシスル。しかし、彼は迷宮の主。迷宮の魔物が彼を害する事は無い、筈。
「な、なんだ…その目は!」
ゆっくりと立ち上がる黒竜。周りのワームの死骸が黒竜の魔力に反応して揺れだした。
「どうやら躾が必要らしいな…!」
シスルは本を片手に黒竜に手を突き出す。しかし、シスルが反応する余裕も無く一瞬で近付きシスルの腕を掴んでいた黒竜。
「なっ…!?」
腕がちぎれる。そう覚悟したシスルだったが、黒竜はシスルが持っていた本を弾き落とし、睨み続ける。
「な、なにをしてるんだお前…」
まるで番犬が縄張りに入った外敵に向けて吠える様に、黒竜は本に向かって唸り続ける。
「…そうか、お前は召喚したてだから、悪魔の持つ気配に慣れていないのか」
シスルは黒竜の頭を撫でて落ち着かせる。その手に黒竜は擦り寄った。
「安心しろ。あれは封印している」
「私達を害する事は無い」
すると、黒竜は胡座をかいてシスルを膝を上に乗せる。
「なんだ?」
黒竜は手に持つ落としたものとは別の焼いたワームの肉をシスルに差し出した。喉を鳴らし、その瞳には情愛に近い感情が浮かんでいた。
「食えと言っているのか?」
迷宮の主。狂乱の魔術師と謳われている彼に食事は必要無い。全て魔力で補う術を心得ている。
しかし、何千年ぶりかの施しに思わずすんなり受け取ってしまう。
「かたっ…」
黒竜はワームの肉を更に細かくちぎり、爪で幾つも穴を開けて柔らかくしていく。
「あぐ……むぐ……うん、悪くない、か?」
その言葉に黒竜は安心したのか、細かくちぎったワームの肉をさらに手渡した。
「待て待て、落ち着け。そんなに沢山食べられないよ」
笑い合う二人。形こそ歪でも、そこには友愛とも言えるものがあった。
果たしてその愛は、彼が受け取るべきものなのか。
それはこの場にいる二人には、思いもよらないことだった。
まだまだ本調子じゃないでやんす。
え、本調子でもそんなに今とクオリティ変わらないって?
わはは、泣くぞ。