異世界ダンジョン飯   作:一般通過炎竜

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アシビア(通称婚活女)の件について、様々な方たちからご意見を頂きまして、元から出す予定はあんまり無かったんですが出さないことにしました。アシビアファンの方たちには大変申し訳ない。

え、男のトールマン?……いたっけ?

あと日間9位本当にありがとうございます。ビビり散らかしました。


第八話『宴もたけなわ』

 

「という訳で今回冒険のMVPである2人に、カンパイ!」

 

「「「カンパーイ!」」」

 

「いえーい!」「ははは…い、いえーい…?」

 

シーサーペント討伐を終え迷宮から帰還したライオス一行。イツキの強い希望により一行全員でイツキとファリンの勤め先だった酒場で宴会を開くこととなった。周りの客も大勢いる。皆が皆自分達の好きな様に酒を呑んでいる。

 

『えぇー…俺一人で呑みたいんだけど、大体俺仕事とプライベートは分けたいタイプでな…』

『なんでですか呑みましょうよ語りましょうよー』

『お前呑まないだろうが!』

 

最後まで渋っていたチルチャックを連れてくるのに大分苦労したが、遂に折れイツキ達と同じ席についている。

チルチャックはイツキの隣に座っており、呑みながら肘でイツキのことを小突いてくる。

 

「ったく…なんで今日に限って強引なんだお前は」

「おっ聞きますか聞いちゃいますか〜?」

「ウザっ」

 

イツキは立ち上がり、腰に左手を添え右手親指でビシッと自分の顔に視線を集中させる。

 

「何を隠そう、おれ今日誕生日なんですよ!昨日まで忘れてましたけど!」

 

「そうなの!?」

 

イツキの突然のカミングアウトに一番驚いたのはファリンだった。ライオスは片手にチキンを持ちながら聞いてくる。

 

「へぇーそうだったのか。あれ?イツキ何歳だっけ?」

「15歳になりました!」

 

「「15!?」」

 

イツキの年齢に一番驚いたのはナマリ、その次は意外にもシュローだった。

 

「まだ立ったばっかじゃねーか!」

「人を幼児だと思いで?」

 

「15歳…」

 

なにやらシュローは考え込んでしまった様だ。そんなシュローには気付かず、イツキは話を続ける。

 

「このせか…ゴホン。地方って、確かトールマンは16歳で成人ですよね?」

「基本的にはな」

「じゃあ今はジュースで我慢ですね。仕方がないので」

「どこからの上から目線だよ」

 

ぐびぐびオレンジジュースを呑むイツキ。それを呆れ気味で見るチルチャックだった。

 

「じゃあ明日、なにか買いに行こうよ。誕生日プレゼント」

「いいんですか!?ありがとうございます!」

 

どんどん上機嫌になっていくイツキ。しかし、そんなイツキ達の前に複数人の男達が現れる。

 

「よう、ライオス。久しぶりだな」

「あぁ!お久しぶりです!」

 

それはかつてライオスが金剥ぎ時代に世話になった男達。男は無作法にライオスの隣に座る。ファリンがよろめいてしまうが、ナマリが優しく支えた。

 

「最近調子良いらしいじゃねぇか。ん?」

「そうですね。仲間もどんどん増えて迷宮も…」

 

「お前、ウチに席置いてるって話したよな?」

 

ライオスはかつて金剥ぎをやめる際、この男はライオスに「席はとっておいとくよ」と、いつでも戻ってきていいぞというニュアンスで伝えていた。

 

「はい。ありがとうございます、その言葉には随分救われました」

「そうかそうか。じゃあ席代寄越しな。締めて1万ゴールドでいいぜ」

 

一瞬にしてピリつく両陣営。チルチャックは最初からわざと座る姿勢を崩したり睨んでいた。ナマリにいたっては拳に力を入れいつでも殴れる姿勢をとっていた。シュローは冷めた表情で酒を呷る。

 

周りの客も、静かに見守っていた。

 

「席代、ですか?」

「あぁ、そうさ。俺たちも慈善事業じゃないからな」

「分かりました。後日お届けします」

「ライオス!?」

 

ライオスのまさかの返事にナマリは驚いた。ナマリは立ち上がり、男を見据える。

 

「おいおい、部外者は黙っててくれよ」

「部外者じゃねぇよ。ここの戦士だ。ウチのリーダーをゆするのはやめてもらおうか」

「ゆする?おいおい人聞き悪いな。俺は正当な金を要求してるだけだぞ?」

「あぁ…?」

「いいよ、ナマリ。すみません、ウチのものが。お金は後日改めてお届けします」

「おいおい…」

 

ライオスは頭を下げる。そんなライオスにナマリは座るしかなかった。

 

「そうだな、それでこそだよ。んじゃ、またな」

「あのーすみません」

「おあっ!?て、てめぇいつからそこに立ってやがった!?」

 

男のすぐ隣に、先程まで席に座っていたはずのイツキがいた。

 

「おい、イツキ!」

 

イツキの表情を見たチルチャックはイツキを止めようとする。無理もない。今のイツキには表情が無かった。明らかに正常ではない。

 

「な、なんだよ…やるってのか?言っとくが冒険者同士の争いは御法度だぜ?」

「1万ゴールドですよね?お支払いしますよ、俺が」

 

その言葉にライオスは立ち上がりイツキを止める。

 

「イツキ!君がそんなことをする必要は…!」

「ありますよ。ライオス一行の魔法剣士ですから」

 

イツキはライオスに笑顔で返答する。ファリンはその笑顔に恐怖しか覚えなかった。なにせ目は一切笑っていないのだから。

 

イツキは鞄から財布代わりに使っていた皮袋を取り出した。

 

「ここにあります。1万ゴールド」

「はっ…なんだよ、あるなら最初から」

 

イツキは金の入った皮袋を、床に放り投げた。

 

「ほら、拾えよ。卑しい剥ぎ職人」

 

あからさますぎる挑発。イツキがそういう様な事をするタイプには見えなかったチルチャックとナマリは思わず吹き出した。

 

安すぎる挑発に、男は物の見事に引っ掛かる。

 

「このっ…クソガキが!」

 

男は大振りの拳をイツキに振るう。イツキはその拳を素手で掴み思い切り握り締めた。

 

「いっでででぇ……!?ア、アチィ…!?」

 

急いで手を振り払い後ずさる。男の手は火傷したかのように赤くなっていた。

 

「若い方に400!」「デカい方に300!」

「やれー坊主!」「張り倒してやれ!」

「イツキ!物壊すなよ!」

 

そんな様子を見ていた他の客は賭け始めたり野次を飛ばし始める。酒場のマスターすら止めやしない。

 

「ク、クソっ……」

 

男達は金も拾わず酒場から逃げるように立ち去っていく。実際逃げだが。

 

面白い事が始まると思っていた周りの客達は男達に向かって一斉にブーイングし始める。イツキは皮袋を拾い、これみよがしに皮袋を見せつけながら周りの客に喋り出す。

 

「お騒がせしました皆さん!お詫びと言ってはなんですが、次の一杯おれの奢りということで♡」

 

イツキの言葉に周りの客達は叫んだり口笛を吹き始める。すっかり出来上がった場の雰囲気に、ナマリはイツキの背中を叩く。尚痛みはほぼ無い。

 

「イツキ!お前そういうことするタイプだったんだな!」

 

「せっかくの宴会が台無しですよ全く…」

 

イツキはため息をつきながら席に戻る。そして手に持ったチキンに思い切りかぶりついた。

 

「うぅん!美味い!ほらほら皆もっと食べて呑みましょうよ!宴会は始まったばかりなんですから!」

 

イツキの号令に全員再びグラスを持って乾杯する。そこからは酔っ払い共のパーティーだ。

 

「イツキ、次やるときは外でやれよ」

「すみません。マスター」

 

酒場のマスターとイツキは親しいようで、軽い挨拶だけで済んだ。

 

「そこで!ウチの剣士はシーサーペントを一刀両断!魔法剣士はこう叫んで2頭目のシーサーペントを焼き殺した!ゴホンゴホン!…… 緋炎衝・開!!!」

「はっはっは!やったやった俺もガキのころそういうの!」

「やめてくれますそういう方向の揶い方!?グレますよ!?」

 

酔っ払ったナマリはイツキとシュローの武勇伝を周りの客に話しだしたり。

 

「ねぇねぇお姉さん、あの子貴方のこれ?そうじゃないなら私にくれたりしない?」

「イツキは私の弟なのでダメ。絶対ダメ。怒るよ」

 

派手な見た目の女性客にファリンが絡まれたり。

 

「ったく…こりゃもうちょっと本格的に説教した方がよさそうだな」

 

1周回って頭が冷静になったチルチャックは後で危ない事をしたイツキを叱ろうと決意し。

 

「ねぇーお兄さん今夜空いてるー?私とかどう?」

「えぇーずるい私もー」

「い、いや、俺はそういうのは…!」

 

女性客に延々絡まれていたシュロー。そんな女性客を射殺す勢いで影から見つめていたマイヅルをなんとか宥めるヒエンとベニチドリだったり。

 

「みんな楽しそうだなぁ…うんうん、いい事だ」

 

何故か傍観者気分のライオスだったり。

 

そんな楽しい宴だがイツキは流石に疲れ、場酔いしたので酒場の外に出てテラス席に座った。満点の星空と心地よい涼しい風が熱くなったイツキの身体を程よく冷ます。

 

「隣、いいですか?」

「え?あぁ、どうぞ」

 

そんなイツキの隣に、1人の青年が座った。褐色肌のくせっ毛が特徴の美青年だった。

 

「俺はカブルーって言います。イツキさんですよね?さっきの大立ち回り、スカッとしました」

「ははは…お恥ずかしいところを」

 

イツキは気恥しそうに頭を搔く。そんなイツキにカブルーは畳み掛ける。

 

「俺より年下なのにあんな堂々と…尊敬します。冒険者になる前、どこかで鍛えていたんですか?」

「いや、俺なんてまだまだですよ。現に今までの迷宮攻略でファリンさんとかチルチャックさんにも迷惑かけましたし…」

 

「ご謙遜を。話によればシーサーペントを単独でしかも一撃で倒したというじゃないですか。えっと… 緋炎衝でしたっけ?」

「やめてください段々恥ずかしくなってきたんで」

 

カブルーはそんなイツキに笑いだす。その笑いには嫌味は一切感じず、むしろイツキも釣られて笑いだした。

 

そんなカブルーの横を、複数人の男女が通りかかる。

 

「カブルー?なにやってんの、次行こうよ」

 

ハーフフットの男性はカブルーに親しげに話しかける。同じパーティなのだろうか。イツキはその後ろにいるコボルトに目を奪われていた。

 

「あぁ、もうそんな時間か…すみませんイツキさん。失礼します」

「いえ、お気になさらず」

「ありがとうございます。また会いましょう」

 

そう言って、カブルー達は酒場を後にした。

 

また静寂が訪れる。その静寂を破ったのは、意外にもシュローだった。

 

「イツキ、大丈夫か?」

「あぁシュローさん。大丈夫ですよ」

「そうか…」

 

シュローはイツキの隣に座る。その表情は真剣そのものだ。

 

「…シュローさん?」

「イツキ、遅くなったが、迷宮では助かった。ありがとう」

 

シュローはイツキに深く頭を下げる。そんなシュローにイツキはたじろぐ。

 

「いや、大丈夫ですよシュローさん!迷宮じゃ一蓮托生。仲間じゃないですか」

「…君は優しいな」

 

シュローは頭を上げ、再びイツキに向き合う。

 

「紹介したい子達がいるんだ」

 

「……紹介?」





ダンジョン飯冒険者バイブルおまけ漫画で判明した金剥ぎの件についてモヤってたので解決させました。

カブルー動かすのムズすぎワロタ。なんだコイツ。好き。
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