『次のニュースです、殺人及び殺人未遂、及び傷害、暴行の罪で死刑判決を下されていた土谷満死刑囚35歳先日、収監されていた拘置所から脱走したことが、警察関係者の取材で分かりました』
『警察によると、土谷満死刑囚は先日深夜、収監されていた個室の窓を破り、拘置所内から逃走』
『今朝、収監者の点呼を行おうとした刑務官が部屋の鍵を開けた時、個室内に土谷容疑者がいなかったことから事態が発覚したとのことです』
『警察は脱走した土谷容疑者の行方を追うと共に、拘置所内の管理をより一層厳重にすると明らかにしました』
『次のニュースです、話題になっているガールズバンド『Roselia』が先日、新曲を発表…』
「銘、待ってたよ」
「…」
校門前でそう声をかけてくるレイ
私の学校が終わったら迎えに行くから、と連絡はしてくれていたから、校門前で私を待っているのは不思議ではない
…ただ問題なのは、周りの視線だ
私なんかと違って、レイは綺麗だ
それに、かっこいい
本人曰く、同性にも告白されたことがあると言っていたけど、まぁ納得できる
レイが迎えに来るたびに、こういう視線を向けられるのは慣れている
「銘さん?」
何も言わない私に、心配そうに顔を覗き込んでくる六花ちゃん
何でもないよと言いつつ、そう言えば六花ちゃんも人気があったなと思う
普段の姿と、ライブでの姿のギャップが凄まじいんだとか
…私には、よく分からない
六花ちゃんは、RASの『ロック』であるけど、それ以前に六花ちゃんは六花ちゃんでしかないと思う
「銘、どうかしたの?」
そんなふうに考えていると、いつの間にかレイが近くに来ていた
周りの声が、なんか大きくなった気がする
「…いいや、何でもないよ…チュチュのマンション?」
「そうだよ、それじゃ、行こっか」
そう言ってごく自然に私の手を掴んで歩き出すレイ
その後ろをついてくる六花ちゃん
…周りのひそひそ声が、多くなった気がする
大方、レイの近くにいるあの女は一体誰だという声だろう
…私は、レイと六花ちゃんの
…いや、私によく構ってくれる皆にとって、何なんだろうか
私には、何もできることなんてないのに
部屋に入ると、何時ものようにジャーキーを頬張りながら何かの作業をしているチュチュと、一足先に来ていたのだろう、パレオちゃんとますきが練習の準備をしている
「遅い!」
「ごめんごめん」
そう言いながらスタジオに入るレイと、その後に続く六花ちゃん
私はというと、チュチュの後ろにあるソファーで眺めているだけだ
音楽には詳しくないから、ただ見てるだけ
…そんな私に、ここにいる資格はあるのだろうか
「…ねぇ、レイ」
「うん?どうかしたの?」
「いや…自分で洗えるから」
「だーめ、銘に任せたら大変なことになるでしょ」
そう言って私の頭を洗うレイ
あの後、レイ達の練習が終わってレイと一緒に家に帰った
練習の時に汗かいてたのは見えてたから、先に風呂にすることになって今に至る
「それにリサさんから聞いたよ、『冷水で体洗ってる』って、最初聞いた時はびっくりしたよ」
風邪ひいちゃうよ、と言いながら頭を洗ってくれるレイ
…確かに、最初はただの冷水で洗っていた
お金を払ってくれているのは親戚さんだから、余計な負担をかけたくなかったから
…それに、こうしないと、私が自分勝手な人間だって事を、忘れそうになったから
けれど、最初に泊まり来たリサに、冷水で洗っているところを見られて
根掘り葉掘り聞いてきたリサによって、全部バレた
あの時のリサは正直怖かった、顔は笑ってたし口調も優しかったけど…怖かった
それ以来、毎日のように誰かが洗うようになっている
「…はい、終わり、次は体ね」
「…ん」
そう言って体を洗い始めるレイ
私はそれに、為すがままだった
レイ
「銘、美味しい?」
「…うん、美味しいよ」
そう言って再びご飯を頬張る銘
口調は普通だけど、本当に美味しいというが伝わってくる
中学の頃から、料理をしてきておいて正解だったなと思う
表情や口調には出さないけど
そんな銘の様子を見て口元が緩んでいるのを自覚しながら、銘と再会した時のことを思い出す
あの時、ますきが手を引いていなかったら、車に轢かれてた
それに、倒れこんだ時に支えた銘の体が、想像以上に軽かった
完全にぐったりしている銘を、慌ててチュチュのマンションまで連れて行った
本来なら病院とかに連れていくべきだったんだろうけど
銘の目が覚めた時は、いろんな感情がごちゃ混ぜになって思わず抱き着いてしまった
未だにその時の事をますきにはからかわれる
その後、何でこんなに体が細いのか、何でこんなに体が軽いのか、何で目の下にそんな深い隈が出来ているのか、今はどんな生活をしているのかと、全部聞いた
ますきやチュチュ達が、『あの時のレイは怖かった』と言ってたけど、気のせいじゃないかなと思う
…まぁ、若干平常心をなくしてた事は、認めるけど
今思えば、病院ではなくチュチュのマンションに連れて行ったのは、正解だったと思う
だって、再会してからも、銘は私と極力会わないようにしていた
病院なんかに連れて行ってた時には、二度と会えなかったかもしれない
そんな銘の姿勢が、私が嫌われてるんじゃいかと不安になって
理由が知りたかったから、ある日、何時ものように逃げようとする銘を捕まえて、理由を聞いた
『だって…自分が辛い思いをしたくないって理由でレイを遠ざけたんだし…合わせる顔がない…それに、私なんかと一緒にいたら…レイにも迷惑が』
…それ以上は聞きたくなかった
まるで、銘が悪いみたいな、そんな考え
悪いのは、銘を助けることが出来なかった、私なのに
…だから、私は決めたんだ
「あ、銘、ほっぺたについてるよ」
「ん…ありがと…」
もう、絶対に離さない
必ず、幸せにして見せる
「…そう言えば銘、朝のニュースって見た?」
「ん…?いや、見てないけど…なんかあったの?」
「いや、何でもないよ…お替りいる?」
「…お願い」
「ふふ、ちょっと待っててね」
…あのニュースについては、見られていないようで安心した
蘭ちゃん達と、相談しなくちゃね
「…ねぇ、レイ」
「ん?」
銘から声をかけられて、視界を少し下に移す
その表情から、困惑しているというのがわかる
「いや…私の髪なんか弄って楽しいかなって…」
「楽しいよ、それとも…嫌だった?」
「…嫌じゃ、ない」
そう言って顔を俯ける銘が可愛くて、おでこにキスをする
さっきまで、これよりもっと恥ずかしいことしたのになぁと思いながら、腕の中にいる銘を抱きしめる
そうすると、恥ずかしがりながらも私の胸元に顔をうずめる銘
そんな銘も可愛くて、口元が綻ぶ
「…レイ」
「ん?どうかした?」
「…眠い」
そう言いながら目を閉じまいとする銘
まぁさっきまで疲れることやってたからなぁと思いながら、頭を撫でる
「いいよ、疲れたでしょ?」
「うん…お休み…」
「おやすみ、いい夢を」
私がそう言った後に、目を閉じる銘
そのすぐ後に寝息が聞こえて来たから、本当に疲れてたんだろう
…ふと、銘の体を見る
さっきまでやってた事の最中に、私があちこちにつけた痕が目に入る
恥ずかしがりながらも欲しがる銘を見て、ついがっついてしまったなという反省をする
まぁ、反省したところでまたやるんだろうけど
だってしょうがない、一緒に買った下着を着て銘が物欲しそうに服の袖を掴んでくるんだから
無理をさせないように、堪えるのに必死だった
銘は私だけの物じゃないから、大切にしないと
…私たちの、物だからね
「…ふぁ」
そう考えていると、眠気が襲ってくる
明日も講義があるから、私も寝ないと
そう思いながら、銘が風邪をひかないように、布団を被せる
静かな寝息を立てている銘の顔が、視界に入る
「…大好きだよ、銘」
そう言って銘の頬にキスをして、意識を手放した
最後の方はちょっとだけ未来のお話
ちょっと暗めかな、知らんけど
感想宜しく