ほのぼの(嘘であり嘘ではない)生活   作:狼黒

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再会(2)

「はぁ…」

 

入学式が終わり、クラスのホームルームが終わって、溜息をつく

周りでは早速、仲の良いグループでどこに行こうか話し合ったり、もうすでに行こうとして教室を出ている者もいる

これから一年過ごすことになるだろう教室の中で、私一人が浮いている

こんな外見だし当然と言えば当然なのだろうが

ちらりと窓に視線を巡らせれば、入学式だというのに曇り、何だったら雨が降りそうではある

…頭が痛む、雨の日と雪の日にいい思い出はない

びしょびしょになって震えながら、ただ丸まって時間を過ごしていた時のことを思い出すから

雪の日の時は寒さを通り越して、もはや痛いとまで思ってたっけ

そんなことを思い出しながら、カバンを肩にかけて廊下に出る

教室と比べて若干は静かなものの、仲の良いグループが何組か存在している

友希那とリサは学年が違うから、今日は私の学年とは時間割が違うらしい

…私があの二人と同じ学校だったと知った時は、目を見開いてたっけ

 

 

ドサッ

 

 

そんなことを考えていると、横で何かを落としたような音がする

とはいえ、それが私に関係あることではない

今日の朝にわざわざ私が住んでいる家に来て、朝飯を作ってくれたリサのことを思い出している

友希那も一緒に来てたのは、正直驚いたが

だけど、久々に誰かと一緒に食べたご飯は、何かわからないけど余計に美味しく感じた

何時も家族と一緒に食べている二人はこんなご飯を食べているのかと嫉妬したし、そんな下らないことで嫉妬する自分が醜く感じて嫌いだ

そんな自己嫌悪に陥りながら帰ろうと歩きだすと

 

「ま、待って!」

 

そんな声が聞こえる

なんか切羽詰まっているが、私には関係ない

大方、何処かへ行こうと約束してたところに急な用事が入って、それが終わったところで慌てて追いつこうと居ているのだろう

そんなことを考えていると、後ろから走る音がする

どうやらよほど慌てているらしい

廊下を走るなと先生がいたら怒られそうだなと思っていると、いきなり腕を掴まれる

誰だと思って掴まれた腕の方を向けば、腕を掴んだまま息をつく生徒…恐らく同級生

黒髪の中に一筋だけ、赤いメッシュが入っている…誰だ

何処かで見たような記憶があるようでないような

 

「ま、待ってって…言ってるでしょ…!」

 

全力疾走したのか、息を絶え絶えにしながらそういう誰か

…私に一体何の用だろうか、なんかしたっけ

 

「…何の用?」

 

「何の用って…!」

 

そう言うと両肩をがしりと掴んでくる誰か

 

「あんた、今まで何処で何してたの!?私たちがどれだけ心配したと思って…!」

 

「…心配?何で?」

 

少なくとも面識はないはずなのだが

そう思っていると、肩をプルプル震わせる目の前の誰か

口を開こうとしたら、後ろから誰かに羽交い絞めにされていた

 

「蘭!気持ちは分かるけど落ち着けって!」

 

「これが落ち着いてられるわけないでしょ!?巴だって…!」

 

「あたしだって同じ気持ちだよ!けどまずは落ち着けって!」

 

「蘭…巴…?」

 

…聞いたことがある

けど、それが何だったかを思い出せない

そんなことを考えていると、後ろからさらに人が来る

 

「どうしたの蘭、そんなに取り乱し…っ!?」

 

ピンク色の髪をした生徒が、私を見て絶句している

隣にいる茶色の髪の生徒は、両手を口に当てて驚いているし、銀色の髪の生徒はその眠たそうな目をこれでもかと見開いていた

…何だろうか、揃いも揃って私を見ているが

 

「…めーちゃん?」

 

そんな中、銀色の髪の生徒が呟いた言葉が耳に入る

…思い出した

蘭、巴、ひまり、つぐみ、モカ…小学の時の同級生

…会うのも当たり前か、引っ越しでもしてない限り五人がここを選ぶのは必定

だけど

 

「…悪いけどたぶん人違い、じゃあね」

 

そう言って足早にその場から去る私

騒ぎを聞きつけたのか、周りからの視線が凄かったけど無視して去る

 

「ちょっと!待ちなさいよ!」「蘭!落ち着け!」

 

後ろからそんな声が聞こえたけど、聞こえないふりをする

…私と関わったら、また迷惑をかけるだけだし

何より、私は邪魔者なんだから

 

 

 

 

翌日、スマホのアラームで目が覚める

今日は学校は休み、だからアラームを遅めに設定した

髪を掻きながら身を起こすと、腹から音が出る

 

「腹減った…」

 

…昔は、それが当たり前だったから慣れてた筈なんだけどな

とはいえ冷蔵庫を覗いてみても何もない

かといって何も食べてないと、リサ達に怒られる

一回三食ぬいたことがある、だけど何でかわからないが、私が食べてないことが一発でわかるらしい、怖い

どうしようかと悩んでいると、帰り道にパン屋を見かけたことを思い出す

 

「…しゃあなしか」

 

財布を掴んで玄関を出る

…外は晴れていた

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

パン屋に入ると元気な声が、私を出迎える

視線を向ければ、私と同年代らしきの女子が働いていた

バイトでもしてるのだろうか、大変だなぁ

まぁ私には関係ないか、と思いながらトングでパンを取る

…そういえば、モカもパンが好きだったな

あいつのパン好きはもはや恐怖すら覚えたことがある

しかも大食いだったし、今もなのだろうか

…何を今更、思い出しているのだろうか

もう終わったことではないか…そう思っていても、過去の思い出を思い出す自分が嫌いだ

 

「いらっしゃいませー!」

 

そんなことを考えていると、どうやら新しい客が来たらしい

邪魔になるだろうし、さっさと選んで会計済まそう

 

「お~、メロンパンじゃないですか~」

 

後ろから聞こえる声に思わず固まる

…迂闊だった、恐怖すら感じたパン好きのこいつが、ここに来る可能性を見落としていた

少し考えれば、ほぼ100%だというのに

とにかく早く去ろうとしたけど、その前に肩を掴まれる

 

「まーまー、そんなに急がなくてもいいじゃ~ん」

 

「…離してください、初対面ですよね?」

 

「何でそんなに他人行儀なのかな~、めーちゃん?」

 

…絶対に逃がさないという意思を感じる

減に肩を掴んでいる力が緩まない、むしろ強くなっている気がする

 

「…人違いです」

 

「人違いか~…じゃあこの後、付き合ってくれる~?」

 

その言葉に断ろうとした矢先、パンを乗せていたプレートを取られる

あっという間に、私の分と自分の分の会計を済ませていた

なんという早業なのだろうか

 

「これで付き合ってくれるよね~?」

 

「…」

 

断る選択肢は、潰されていた

 

 

 

 

 

 

「…あの、何時までここにいればいいんでしょうか」

 

「ん~、ちょっと待っててね~、もう少しで来るはずだから~」

 

対面に座るモカはそう言って、パンを頬張る

あの後、モカに腕を掴まれてファミレスに連行された

逃げようにも、私が買ったパンはモカが持っていたから為すがままにされるしかなかった

…連れてこられる途中、スマホを弄っていたから、多分蘭達も来るんだろう

 

「それと~、敬語禁止~、幼馴染でしょ~?」

 

「…人違いです」

 

「へぇ、随分とそっくりな人違いもあるもんだね」

 

明らかにモカの声ではない声が聞こえた方向を向けば、私のことをジトっとした目で見ている蘭

後ろには巴、ひまり、つぐみもいる

…予想より早かった、適当に誤魔化して帰るつもりだったのに

蘭、そしてその隣にひまりが座ってきたことで、完全に逃げ道を失った

対面には巴、モカ、つぐみ

 

「声、容姿、怪我の痕…最後のは知らないのもあるけど、私たちの記憶とすべて一致してる」

 

何より、と区切って

 

「嘘をつく時、首を触る癖が変わってない…覚えてないふりしても無駄だよ、銘」

 

…凄いなぁ、蘭は

昔の事なのに、全部覚えてる

私なんて、名前を聞かないと思い出せなかったクズなのに

 

「…凄いね、もう何年も前なのに覚えてるなんて」

 

「当たり前でしょ、幼馴染なんだから」

 

私の方から一方的に縁を切ったのに、まだ幼馴染と言ってくれる

 

「…ちょ!何で泣くの!?」

 

「蘭が圧かけるからだろ」

 

「そーだよ、蘭少し落ち着いて」

 

「み、皆、周りの人が見てるから…」

 

「めーちゃん、これ使って~」

 

思わず泣いてしまった私に驚いて、それぞれ騒ぎ出す五人組

それが懐かしくて、また嬉しかった

 

 

 

 

 

「はいめーちゃん、あーん」

 

「…いや、もうお腹一杯」

 

「あーん」

 

「…あ、あーん」

 

そう言ってモカの差し出してきたパンを食べる

モカの圧が怖い、笑ってるのに

モカに限らず、蘭達はこうやって私にしょっちゅう何かを食べさせてくる

というのも、あの後刺された後何をしてたのかを説明してた時、服を捲って体を見せた

その時、驚愕していたのは体に残る傷跡かと思っていたけど、私の体があまりに細すぎたことがさらに驚きだったらしい

それ以来、こうやって食べさせられている

モカに差し出されたパンを食べながら、ふと医者の言っていたことを思い出す

 

『いいですか土谷さん、貴女は長い間碌なものを食べていなかった為、少し食べただけでお腹一杯と感じることがあるかもしれませんがそれは脳の伝達機能がおかしくなってるだけです、なので吐くまでとは言いませんが無理にでも食べてください、じゃないと貴女本当に死にますよ』

 

…死ぬ、は大袈裟だと思うけど

でもあの時の医者の顔は真剣そのものだったな

 

「めーちゃん?」

 

そんなことを考えている私を疑問に思ったのか、顔を覗き込んでくるモカ

何でもないよ、と言いながらモカに貰ったパンを食べる

…たくさんあるから、まだまだ食べさせられるんだろうな

 

「あ、そうだ、今日練習の後ラーメン行くって蘭が言ってたよ~?」

 

「…ラーメンって巴のところ?」

 

「またあの時みたいに逃げないでね~?逃げたら…」

 

「分かってる、もう逃げないから」

 

ならいいけどさ~、と言いながらパンを頬張るモカ

…そういえば、ひまりは体重とか大丈夫なのだろうか

大分前に嘆いてた時、『一か月ぐらい水と虫だけ食べたらすぐに痩せるよ』とアドバイスして、どういうわけか私が怒られて以来、そういう嘆き聞かなくなったけど




一番やばいのは実はモカ

感想だけでも残していってくれると嬉しい



次回は学校繋がりでパスパレ
その次がRAS、ひょっとしたら次回になるかもしれん
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