顔を真っ赤にした父親に当たる何かに灰皿を、母親にあたる何かに酒瓶を投げつけられる
今日はよほど機嫌が悪いらしい、またパチンコか競馬で大負けでもしたのか、はたまた浮気していた相手に何か言われたのか
まだ完全には消えていない煙草が当たって熱いし、何より頭に灰皿や酒瓶が当たったから血が出ている
けど、そんなこと知ったことじゃない父親に当たる何かは、そのまま私の髪を掴むと浴室に連れて行って、水が張った浴槽に顔を突っ込んでくる
母親にあたる何かは、面白がってただ笑うだけで
助けを求めても、誰も助けてくれなくて
呼吸が出来なくて苦しくて
そのまま目の前が真っ暗になって、けどその前に引き上げられて
髪を掴まれたまま引き摺られて、床に叩きつけられたかと思うと、父親にあたる何かは下半身を露出していて
抵抗しようと思ったら近くにあった灰皿で頭を殴られて
痛みで朦朧とする視界に見えたのは、父親にあたる何かが私の中に突き立てた
「…糞」
朝から最悪な夢を見た
流れている汗が気持ち悪い
死人と塀の中にいる奴が何故夢に出てくるのか
…そう言えば、あの父親にあたる何かはどんな刑罰を受けたのだろうか
調べたら、最高は死刑になるらしいが
だが、もう会うこともないから考えるだけ無駄なのかもしれない
「はぁ…」
のろのろと起き上がって、リビングに向かう
時間はまだ3時、だけどもう一度寝る気にはならない
冷蔵庫から水を取り出して飲む、気持ち悪い汗を流してたお陰で渇いていた喉が潤っていく
ふと腕を見れば、押し当てられた煙草の跡が無数に残っている
きっとこの街に住んでいる他の人には、こんな跡はないんだろう
何で私だけ、こんな跡をつけられなければならなかったのか
「…糞」
そんなことを考えている自分が嫌になって、また悪態をつく
体に纏わりついている汗がすごく気持ち悪くて、そのまま浴室に入るとシャワーの栓をひねる
服が濡れるのも構わずに、頭からシャワーを浴びる
最近は、ずっとこんなことの繰り返し
寝てもあいつらが夢に出てきて、二時か三時に目が覚める
そのまま二度寝をしようとしても、次はまるで目の前にいるかのように迫ってくるから、怖い
鏡を見れば、目の下にくっきりと刻まれているクマ、そしてあの両親にあたる何かとその親戚によってつけられた遺物が見える顔、そしてシャワーによって透けた服から見える、過去の遺物
それを見た瞬間、胃からせり上がってくるものを感じる
「うぉぇ…」
消化?されているからか、さっき食べた物は出てこなくて、胃液だけが口から出てくる
そのまま床に落ちると、シャワーから出ている水に沿って流れていく
「はぁー…はぁー…」
せり上がってきた胃液を全て出し切った後、痛む頭を抑えつつこのことについて考える
身体の方は今更として、顔の方をどうするべきか
今のところはフードを深く被る事で対処したり、伸びている前髪で誤魔化しているが、もうそろそろ限界かもしれない、友希那やリサ、蘭達は聡いから
特にモカは、聡いというレベルを超えている
「…はぁ…」
濡れた髪、濡れた服から落ちる水滴が、床に落ちる
真っ青になった顔が、鏡に映る
頭が、痛い
ふらふらとしながら道を歩く
あれから頑張って寝ようと思ったけど寝れなくて、でも眠たくて
今も視界が若干怪しい、けどどうすればいいのか分からない
取り敢えず今は誰にも会いたくない
スマホの電源も落としてる、まぁ連絡なんか来るわけないけど
「…!…!」
後ろで叫んでいる声がする
けど何を言っているのか分からない
そう思った瞬間、後ろから誰かが私の服を掴んで、歩道に引き戻された
「っおい!危ないだろ!」
誰だろうと思いながら振り返れば、金髪の少女
歳は私と同じか一つ下だろうか、そんな気がする
「おい、大丈夫か?顔色が何か悪いけど…」
そう言って私の顔を覗き込んでくる少女
過去の遺物がことさらに残ってる顔を見られたくなくて、フードをさらに深くかぶると共にふいと顔を逸らす
「ますき、どうしたの?…え」
そんな時、聞いたことがある声が耳に入る
というより、間違えるはずがない…早く去らなければ
そう思って頭を下げて立ち去ろうとするけど、次の瞬間足に力が入らなくなって、その場に倒れこみそうになるところを、横から伸びてきた腕が支えてくれる
誰だろうと視線を横に向ければ、凄く焦った顔をしている黒髪の少女
背中にはベースが入っているであろうケースを背負っている、そのケースは、あの時よく見ていたものと同じ
やっぱり、そうか
「れ、い」
そう言った瞬間、視界が暗転した
「…がさいから」
何か聞こえたけど、よく分からなかった
「…う」
目が覚めて、最初に飛び込んできたのは知らない天井
見たところ病院ではないのは分かったが、ここは何処なのだろうか
そんなことを考えていると、扉が開く音がする
誰だと思ってその方向を見てみれば、なんか髪色が凄い事になっている少女がいた
「あ、良かった!目が覚めたんですね」
レイヤさーん、と叫んで走り去っていくその少女
一体何をどうやったらあんな髪色になるんだろうか
そう思っていると、外からすごいスピードで走ってくる音がする
何事だと思っていると次の瞬間閉じかけていた扉が勢い良く開く
ベットから起き上がっている私を見て、おぼつかない足取りで近づいて来て、そのまま私を抱きしめる少女…レイ
「やっと会えた…!銘…!」
肩越しで泣いているのが分かる
なんで泣いてるのかは、分からないけど
後ろにいるレイの知り合いであろう人らが、驚いた表情をしていた
「…レイ、近くない?」
「近くない、それにこうしないとまた銘がどこかに行っちゃうでしょ?」
そう言ってさらに密着してくるレイ
目の前で座っている中学生くらいの子が、若干目を見開いている
まぁ私もたったの二年間か三年間くらい?の関係だけど、レイこんな感じじゃなかった
「それより何で急に居なくなったの?銘の家に警察が入って銘が保護されたってのは聞いたけどその後の足取りも分かんないし私一生懸命銘の事探したんだよなのに見つからなくて心配したしやっと会えたかと思ったら赤信号で横断しようとしてたしますきが止めてなきゃ轢かれてたんだよそれに何なのこの体の細さ最後に見た時より1㎝は細いよちゃんと食べてないでしょそれに目の下のクマどうしたのあの時より更に濃くなってるじゃんちゃんと寝れてないんでしょそれで今何してるのまさかまた虐めとか暴力ふるわれたりしてないよねどうなのちゃんと教えて」
…少なくともこうして目のハイライト消して全く息継ぎもせずにつらつらと述べるような感じじゃなかった
目の前にいたレイの知り合いらしき人らに助けを求めるも、悉く視線を逸らされる
「何処見てるの?」
…まぁ、普段のレイからは考えられないんだろうな
だから至近距離からハイライトのない目で見つめるのやめて
「銘さん」
廊下を歩いていると、私を呼び止める声がする
聞き覚えがある声の正体へと顔を向ければ、同じ制服を着た子…ロックちゃんがいる
いや、ここでは六花ちゃんと読んだ方がいいのか?
「ん、どうしたの?」
「あ、あの、今日弁当作ってきたんで…良かったら食べてもらえませんか?」
そう言って布で包んだ手作り弁当を差し出してくるロックちゃん
味は本当に美味しい、けどちょっと大きすぎな気がしなくもない
わざわざ三年の教室に出向いてまで持ってくるなんてすごいなぁ
それにしても六花ちゃんが同じ学校だったことは驚いたけども
「ありがとね、本当なら洗って返すべきなんだけど…本当に洗わなくていいの?」
「はい、大丈夫です!」
そう言って頷く六花ちゃん
まぁ本人がそう言うなら、ということで甘えてる私も駄目なんだろうけど
「えへへ…愛妻弁当みたいですね…」
…たまに妄想に耽ること以外はまともなんだけどなぁ
というか今思ったけどRASのメンバーって、私に対してだけおかしくなる、特にレイは
あの後、金髪の子はますき、髪色が凄かった子はパレオちゃん、猫耳が生えているように見えたのはチュチュと聞いた
あの猫耳みたいなのはヘッドホンらしい、あと飛び級して今は高校一年らしい、凄い
それにしても14歳か…父親にあたる何かにぶち込まれたのは確か9歳だったかね
まぁそれを思わず零したらすごく重い空気になってたけど
あと、あの時スマホの電源を入れたら、友希那やリサ、蘭達からすごい量の不在着信と通知が来てたっけ
それで電話してチュチュのマンションまで来て、怒られながら思いっきり抱き締められたっけ
「六花ちゃん、そろそろ授業始まるよ」
「…はっ!そうでした!では銘さん、また帰りで!」
「はーい」
そう言って教室から出ていく六花ちゃん
取り合えず六花ちゃんから貰った弁当をカバンの中に入れると、スマホが震えているのに気づく
誰からだろうと思って画面を開けば、レイを始めとしたRASのメンバーからの連絡の通知
文面は違えども、内容はレイとますきが学校まで迎えに来るという事だった
別に迎えに来なくてもと思うけど
『この前道に迷ってたの忘れてる?』
という文面を見ると何も言えなくなる
あの時本当に何処にいるか分からなかったけど、レイが見つけてくれたから何とかなった
レイはなんであの時、始めてきたであろう場所にも関わらずに見つけられたのだろうか
というより、なんで皆、私が何処にいてもすぐに見つけられるんだろうか
因みに父親は死刑判決が下ってる
けどオリ主には配慮して誰も伝えていない
あとレイは普段は原作通りだけど、オリ主が絡むと豹変するよ
次回は日常編、ひょっとしたら他のバンドの出会いとか書くかも
感想宜しく