「…」
ヘッドフォンをして、音楽を聴く
ロックやジャズ、クラシックにポップス、ラテン、邦楽…
順番はグチャグチャに、音楽なら何でも
けど、特にこれと言ったものはない
寝れないから、ただの時間潰し
「…はぁ」
溜息を吐いてヘッドフォンを外す
何で、生きてるんだろう
あのまま、死んでおけばよかった
そんなどうにもならない気持ちを抱えつつ、カーテンをチラリと捲れば、見えるのは暗くなっている空
そんな時間なのかと時計を見てみれば、既に時計の針は11時を指していた
別にお腹が空いている…のかどうか分からないけど、医者から1食も食べない日を無くしてくださいと言われてるのを思い出して、部屋から出て階段を降りる
降りた先にあるリビングの机には、晩御飯だったのだろう料理がラップを掛けて置かれていた
その近くには何かが書かれている手紙が置かれている
何が書かれているのかは大体予想がつくけど、一応手に取る
『銘ちゃんへ 温めて食べてね お替りは冷蔵庫の中にあります』
やはり予想通りの事が書いてある
こんな犯罪者の子供なんかにご飯なんて用意しなくても誰も責めないだろうにと思う
取り敢えず食べるかと思っていると、続きに何かが書いてあるのに気付く
『それと3日後に家に親戚が集まります、銘ちゃんさえ良かったら参加とまではいかなくても挨拶はして欲しいです』
はて3日後にそんな集まりをする必要があるのかとカレンダーを見れば、1月1日、つまり新しい年の幕開けの日だった
そういえば世間ではそういう日には親戚とかが集まるらしいということを、蘭達から聞いたことがある
…何でそんなことを思い出すのだろう、そもそも蘭達の名前を口に出すことどころか、思い出す資格さえ私には無いというのに
自分がこれ以上の暴力を振るわれたくないという自分勝手極まりない理由で、自分から距離を置いたくせに
頭を振ってそんな考えを追い払いながら、目の前のことについて考える
そんな集まりに、全くの赤の他人である私が参加する資格どころか、そもそも挨拶すらする資格があるのだろうか
ましてや、犯罪者の子供なのに
『ご馳走様でした、美味しかったです、いつもありがとうございます』
近くにあった紙にいつも書いている文言を書く
それから少し考えて、最後にこう書く
『親戚の方々が不快に感じないのであれば、挨拶はさせて頂きます』
…烏滸がましいのかも、しれないけど
「…疲れた」
たった一言、挨拶を交わしただけなのに疲労を感じる
話は聞いていたのか、視線というのは同情とかが殆どだった
…別にいらないのに、同情するぐらいなら助けて欲しかった
そんな事を考える自分が嫌になる、考えてもしょうがないのに
溜息をついてヘッドフォンを着けようとすると、部屋の扉がノックされる
誰だろうと思って出れば、そこには私より年下であろうの女子が立っていた
集まっていた親戚の中で、唯一同情の視線を送ってこなかった
名前は…えっと
「椎名立希、宜しく」
「…教えてくれてどうも…えっと…」
「土谷銘、でしょ?自己紹介で聞いた」
なんというか、ぶっきらぼうというのか、そんな感じがする
歳は上の筈なのに、私のほうが年下に感じる
そのまま何を言うわけでもなくじーっと私を見てくる椎名さん
気まずさを感じて声をかけようとすると、椎名さんが口を開く
「音楽、好きなの?」
「あ、うん…好きだけど…何で?」
「首にヘッドフォンかけてるし、奥で音楽サイト開いてるの見えたから」
そう言われて、自分の首にヘッドフォンをかけたままのことに気付く
「ご、ごめん…気に触ったよね…」
慌てて首から外して謝る
たった一言だけの挨拶ですぐに部屋に引き籠もっている奴が、音楽を聴いているなんて烏滸がましいだろう
何を言われても仕方ないと思っていたけど、椎名さんは何を言っているのか分からないと言う表情をしている
何でそんな表情なのか分からない
「?何で謝るの?」
…何で文句を言わないんだろう、言っても誰も責めやしないのに
そんな事を思っている私を他所に、更に話しかけてくる椎名さん
「それより、どんな音楽聴いてんの?」
「…色々かな、どれが好きなのか私も分かんないし」
何が好きなのか、自分の事なのに分からない
…自分の事なのに、何で分からないんだろう
まぁ、誰か教えてくれるわけでもないけど
「ふーん…じゃあ、これとかは?」
私の言葉を聞いてスマホを操作したかと思うと、そんな事を言って私に画面を見せてくる椎名さん
「…聞いたことない、かな」
仮にあるとしても、ただ適当に流してるだけだから覚えてないだけだし
「そう…じゃあ一緒に聞こ、ヘッドフォンある?」
「あるよ…一緒に?」
「私がよく聞いてる曲教えてあげる」
困惑する私にそう言う椎名さん
…何で、私にこうも構うのだろうか
けど、ここで断ったら失礼だろうし
「じゃあ…どうぞ」
そう言って部屋に招いた
「知らない人には?」
「ついて行かない」
「危ない目にあったら?」
「ぼ、防犯ブザー…」
「それだけ?」
「ひゃ、110番する…」
宜しい、と言って頭を撫でてくる立希
…私の方が年上のはずなんだけどな
「リッキー、いくら何でも心配しすぎじゃない?」
「銘姉さんにはこれくらいしないと駄目なの」
立希と同じバンド…『MyGO!!!!』のメンバーでギター担当の愛音にそう返す立希
「ん〜」
「うおっとっとと…」
複雑な気持ちでいると、背中に軽い衝撃が走る
前のめりになりかけた体を支えつつ、後ろに目を向けると、同じく『MyGO!!!』のメンバーで愛音と同じギター担当の楽奈が私の腰に顔を埋めていた
「どうしたの楽奈、何かあった?」
「ん…頭撫でて…」
はいはい、と言いながら体の向きを変えて頭を撫でる
ゴロゴロと言いながら気持ちよさそうにしてるのを見て、立希が『野良猫』と言っている理由が何となくわかる
というより何でこんなにも懐いているのだろうか、ましろちゃんもそうだけどよく分からない
「…良いなぁ」
「ともりーん、声に出てるよー」
「え!?いや、その…!」
愛音の言葉に慌てふためく『MyGo!!!』のボーカリストの燈
何を言っていたのかは聞こえなかったけど、何を言っていたのだろうか
「ん、手が止まってる」
そう言って私の手を取ると、自分の顔に押し付けてくる楽奈
ゴロゴロと顎を鳴らすその姿は、まるで猫のようだ
「この野良猫、義姉さんから離れなさいっ…!ち、力強っ!」
「ん、撫でて」
立希が私から楽奈を引き剥がそうとしているけど、私の服を掴んで決して離れようとしない楽奈
「立奈ちゃん、楽奈ちゃんが銘ちゃんに撫でられてて羨ましいんだよね〜?」
「なっ!?そんなわけないでしょ!?」
『MyGo!!!』のベース担当のそよの言葉に、顔を真っ赤にしながら反論する立希
立希の反応からして、撫でて欲しかったのかと気付く
「立希、撫でてほしかったの?」
「い、いや!そ、そんなわけ…ないわけじゃないけど…」
なんかもごもごしながらそう言う立希
恥ずかしいのかなと思っていると、撫でていた手が止まっていた事に不満だったのか、楽奈が頭をグリグリと押し付けてくる
そしてそれを引き剥がそうとする立希、その光景を見て笑っている愛音とそよ、おろおろする燈
あぁ、本当に眩しい
本当に
私には眩しすぎるなぁ
私みたいなゴミには、似合わないや
「糞、なんであいつだけ…」
「あんなゴミに…絶対に許さねぇ…」
「ねぇ、ちょっと良いかな」
「あ、誰だテm」
ゴッ!!
「な、何しやg」
ガンッ!!
「う、が…て、テメェら…」
「へぇ、まだ生きてるんだ…銘にあんなことしたくせに」
「逆恨みしてるぐらいですからね、自分が何やったのか分かってないんですよ…私達の銘に…」
「あ、あの糞女の…『ゴンッ!!』うぐぅ!?」
「あ?口に気をつけなよこの(ピー音)」
「…蘭達が聞いたらびっくりだろうね、というか私達より殺意高い物持ってない?」
「友希那さん達やますき達もこんな奴見たら同じ反応するんじゃないですかね〜?」
「それもそうかもね、で、こいつどうしよっか」
「弦巻さん達の方で話つけてますから、多分もうすぐ来る筈ですよ」
「あ、やっと来た…それにしても仕事早いね〜」
「義姉さんの為ですから、手段は選んではいられません」
「そっか…バイバイ(ピー音)、もう二度と会うこともないだろうけどね」
「く、くそ…」
「「「「銘(義姉さん)は…私達だけの物なんだから」」」」
次回は日常(仮)にするよ
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