「敬礼!」
筆頭秘書艦大淀の指示に、並んだ艦娘たちが一斉に応じる。キャラ作りに苦労しながら、様にならない敬礼を返す俺。今日は新人艦娘の着任式だ。
聞けば昨日の実弾演習では、結局吹雪と曙が突破に成功したらしい。俺が知る限り、吹雪こと留美はインドア文化系のはずだったから、この結果は意外だった。
で、曙の方は・・・初対面でいきなり罵倒されたんで、正直よく分からん。あの言動にまともに応じていたら、俺のお豆腐メンタルが持たない。まぁ、突破したってことは、それなりにできるヤツなんだろう、たぶん・・・(適当)
あと昨日の黒歴史・・・もうその話はやめてくれ。ふぅ・・・加賀さんと大淀が大人の対応をしてくれて助かったぜ・・・
「貴女たちはこれで、正式にショートランド前進鎮守府の一員となりました。日々鍛錬を欠かさず、任務を遂行して下さい」
この基地でいちばんキャリアの長い加賀さんが、新しい仲間へ訓示を垂れる。これはもう、彼女が提督でいいんじゃ・・・やっぱ俺、要らん子じゃん!
「では提督、お願いします」
「うぃ?」
いきなり話を振られて、おかしな声が漏れる。お願いしますって、もう貴女が纏めちゃったでしょ。いまさら何を言えと?罰ゲームなの?これ。
(ただいまマイクの調整中・・・)
で、着任式は滞りなく終了。さてと、本日の執務はこれにてfinish!・・・んな訳ないでしょ!え?何か忘れてないかだって?ああ、噛みまくりだった俺の訓示は紙面の都合上、省略しました。(事後承諾)
「では最後に、何か質問がある者は挙手を」
大淀が促したが、単なる形式的な問い掛けだ。真に受けて質問するヤツなんていない・・・はずが、真に受けた子がひとり。
「は、はい!」
はい?って何してんだよアイツ・・・
朝潮が手を挙げていた。みんなの視線が集中する。
「提督に質問があります!」
え?俺?
「き、昨日の実弾演習は、提督が命じたものだったんですか?」
「なっ!?」
瞬時に自らの甘さを思い知る。俺は艦娘が実弾で傷つくことばかりを恐れ、彼女たちの気持ちなど、まるで考えていなかった。しかし、着任早々あんな目に遭わされたら、指揮官に疑念や反感を抱くのは、むしろ当然だろう。
「朝潮。提督はあの演習について、何もご存知ではなかったの。それを前以てしっかりお伝えしていなかったのは、私の責任です」
加賀さんがナイスフォローを入れる。その横顔は俺に対して、暗に何も喋るなと言っていた。確かに、事実関係だけ言えばその通りだ。黙っていればこの場は凌げる。でもそれじゃ、問題の解決にはならない。単なる先送りだ。俺はもう、まちがえたくない。
「あの演習を命じたのは、俺だ」
執務室の空気が固まる。
「提督?!貴方は何も・・・」
更に助け舟を出して来た大淀も遮って、俺は続ける。たとえ素人同然だろうと、目が腐ったボッチだろうと、ここショートランドの責任者は他の誰でもない、この比企谷八幡だ。
「加賀さんの言うことも本当だ。でも、最終的に許可を出したのは俺だ。だから、責めるなら俺を責めてくれ」
静まり返る室内。やだ、無反応とか怖い。
艦娘たちの視線が、見えない刃となって切りつけてくる。すると口を開いたのは、ビッグセブンのひとり。着任式を見学していた長門だ。
「ほぅ・・・さすがは艦娘兵器論を否定して、加賀と大淀を轟沈させただけのことはあるな」
「ど、どうしてそれをっ?!」(混声三部合唱)
壁際に居たひとりの艦娘が不自然に目を逸らすのを、俺は見逃さなかった。くっ!やっぱりお前か!
壁に耳あり障子に青葉(詠み人知らず)
「提督。そのお話、詳しく伺わせて頂きましょう」ニコッ
笑顔で臨戦態勢をとる赤城さん。他の艦娘たちも、軒並み目が据わっている。もともと着任時のゴタゴタで、セクハラ提督の称号を賜っている俺だ。もはや爆散させられる未来しか見えねぇ・・・((( ;゚Д゚)))
「失礼しま~す♥️」
と、その時、場違いな声と共に開く入り口。ん?何か聞き覚えが・・・
「どうもです!昨日付けでショートランド前進鎮守府に着任した
「・・・」(全員)
敢えて言おう。一色、やはりお前の入ってくるタイミングはまちがっている。
次回予告:そして今日もまた、ショートランドに着任した迷える艦娘がひとり。彼女がもたらすものは、新たな希望か、それとも内部崩壊か。
第12話:東京急行いろはす