一色いろはです。
ついにやって来ました、地獄の一丁目ショートランド前進鎮守府。鬼が出ようが姫が居ようが、恋する乙女は止められないのです!
せんぱいが提督になったと知り、私は直ぐに行動を開始しました。先ずは防衛省艦娘課にネット出願。続いて両親を説き伏せて、あとは艦娘適性検査に合格するだけ、と思っていたら・・・
まさかの「適性なし」判定。応募条件に頭脳明晰、容姿端麗って書いてあったのに、Why Imperial Japanese Navy?!
ヒロインを不合格にするなんて、いったいどんな二次小説?とぶりぶり怒っていたら、准艦娘に補欠合格。あ、これせんぱいには内緒です。
准艦は希望者が少ないそうで、せんぱいの名前を出したらあっさりここ、ショートランドに配属されました。こらそこ!ご都合主義とか言わないで!お話が進まなくなっちゃうから!
で、実際着任してみたら、女の子のレベル高!ロリ巨乳に黒髪パッツン少女、正統派和風美人に隻眼爆乳娘、つるぺたツインテールに果てはスク水姿で歩き回る変態娘まで・・・
それに、なんであのクリスマスイベントに出てた子までいるんですか?選り取り見取り、つまみ食いし放題の最悪な環境じゃないですか!最初につまむのは私にしてもらいます!せんぱい!
あ・・・オホン
そこで私は、せんぱいの私室を占拠・・・じゃなくて間借りして、いまはこうして机を並べて執務中なのです。それにしても、
どうしてこうなった?
俺は何度目か知れないため息をつき、部屋を見渡した。秘書艦席には加賀さん。准艦席には一色いろは。ここまでは、まぁいい。
で、膝の上には夕立、右手には時雨、左手には鹿島。執務机の前には金剛型四姉妹や長門、不幸姉妹などが並び、その後ろにも空母娘や巡洋艦、駆逐艦がひしめいている。何なのこれ?とにかく近すぎ!
ソロモンの狼によるスクープ(通称青葉砲)があって以降、なぜだか俺に対する艦娘たちの好感度は爆上がり。結果、朝から彼女たちが大挙執務室へ押し掛けてくる異常事態に。ここ、ホントに最前線なのか?
ボッチのプロとしては、即まわれ右をして私室に帰りたいところだったのだが、
「た、大変です!」
カオスが頂点に達しようとしていたその時、工作艦娘の明石が飛び込んできた。
「どうした?人生でそんなに慌てる必要がある出来事なんて、そうそう無いぞ」
どっかで聞いた言いまわしを丸パクリしながら、余裕を見せ、有能な提督を演じる。しかし、事態はそれどころではない、かなり深刻なものだった。
「備蓄が消えた??」
空っぽの倉庫を前に、俺は呻いた。燃料、弾薬、鋼材、ボーキ、全てが一晩でゼロになるなんて、あり得ない。
「提督、実はですね・・・」
明石がおずおずと開いた工厰の扉の向こうには・・・うず高く積まれたペンギンさんの山と、その前に整列した艦娘たちの姿。
「戦艦大和、推して参ります!」
「フッ、随分待たせたようだな・・・大和型戦艦二番艦、武蔵。参る!」
「そう・・・私が大鳳。出迎え、ありがとうございます」
「Guten Tag」
「自分、あきつ丸であります」
「提督、ごきげんよう。潜特型二番艦伊401です。しおいって呼んでね」
順番に着任の挨拶を述べる新規艦娘たち。ほぅ・・・随分変わった趣向の着任式だな。また新入りさんが増えたのか・・・ってこの顔触れ、熔鉱炉レシピの激レアさんばっかじゃねぇか?!どっから来たんだよ?
すると、申し訳なさそうに真実を語り始める明石・・・
「新規着任した妖精さんたちが、大型艦建造ボタンを押しまくった?!」
「はい・・・ペンギンさんが出て来るのが楽しかったらしくて・・・
ってペンギンがメインかよ!
「まことに申し訳なし・・・」
「許してちょんまげ・・・」
「今回の件、水に流してやろう・・・」
項垂れる妖精さんたちに強く当たる訳にもいかず・・・若干1名、反省していないのがいるようだが。
「大本営に支援要請は出せないのか」
「手続きが煩雑で、実際に補給物資が届くのは来月になります」
いざと言うときに使えんな・・・
食糧はあるから、日常生活には支障がない。だが、艦娘としては行動不能ということだ。補給も整備も修理もNG。ショートランドは基地機能を失い、単なるリゾート地に成り果てた。つまり、南方の最前線に男子高校生がひとりと、小学生から女子大生までの乙女が数十人。十五少年漂流記かよ?
「こうなれば、遠征任務で資材を確保するしかありません」
大淀が提案するが、そもそも遠征に行くための燃料も足りない。それに、このピンチを一気に解消できる程の報酬が得られる遠征なんて、ない。
すると一色が、
「あ、そう言えば11周年記念とか意味不明な理由で、がっぽり物資をGETできる特別遠征任務の通知が来てましたよ」
少しは言葉を選んでね、いろはさん。
執務室に戻り、通信端末で確認する。手際良くキーボードを操り、メールソフトを立ち上げる一色。こうしたスペックは高いんだけどなぁ・・・
件名:軍事機密!
From:大本営@gmail.com
To:ショートランド@yahoo.co.jp
添付ファイル:タニベzip
本文:11周年記念任務「東京急行(参)」開始!南方への鼠輸送作戦を大成功させよう!誰にでもできる簡単な任務なのです!ドラム缶も忘れないでね♪獲得ボーナスは、燃料・弾薬・鋼材・ボーキ各30万だよ。(≧∇≦)
なぜか、キリンとカワウソの画像ファイルが添えられていた。確かに意味不明だ。ってか、機密文書ってフリーメールにこんなノリでいいのか?
「燃料、弾薬、鋼材、ボーキ各30万・・・」
「これだけあれば・・・ショートランドはあと10年は戦えます・・・」
「東京急行なら・・・行けます!直ちに燃費のいい高練度の水雷戦隊を編成しましょう!」
俄然みんなが活気付く中、一色が水を差す。
「あ、でも備考欄に何か書いてありますよ」
追伸:この遠征任務に参加出来るのは、新規着任の低練度な艦娘だけです。
オワタ・・・
「どんな任務なんでしょう?」
「うん、楽しみだね」
初めての出撃任務に、私たちは興奮していた。招集されたのは、私と睦月さん、夕立さん、電さん、曙さん、そして神通さんの6人。私以外はまだ第1次改装も終わっていないから、たぶん簡単な任務なんだろうなぁ・・・
・・・と思っていた時期もありました。
揃って提督執務室に出頭すると、はちまんや加賀さんたちが待っていた。一色さんもいる・・・そして大淀さんが口にした命令は、
「い号作戦を発動します。旗艦神通以下、臨時第3水雷戦隊はドラム缶を満載して
そう、無理ゲーの始まりでした。
今回の作戦、ちょっと名前に無理がないかしら?(加賀さん)
私の頭文字から取りましたー。(いろはす)
次回予告:初めての遠征先は、アイアンボトムサウンド・・・艦娘たちはそれを『くそげえ』と呼ぶ。
第14話:嵐の前