やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第14話:嵐の前

「無茶振りなのです・・・」

 

 

「いきなり鉄底海峡って、無理ゲーっぽい・・・」

 

 

「格好いい・・・じゃなくて、まともなヤツかと思ってたのに、やっぱりクソ提督だったわ!」

 

 

その日の午後、私たち臨時第3水雷戦隊はソロモン海を進んでいた。このまま何事もなければ、今夜遅くには鉄底海峡へ突入できるだろう。

 

 

もしこの遠征が失敗したら、ショートランドの艦娘は全員動けなくなってしまう。実戦経験もない寄せ集めの私たちに、基地の命運がかかっていた。それにしても、着任後初めての遠征先が、私でも知ってるあの海峡だなんて・・・いくらなんでも、めちゃくちゃだ。

 

 

実弾演習、加賀さんの言葉、そして一色さん・・・せっかくはちまんの側にいるのに、彼との距離はどんどん広がっていくばかり。着任式でも、なんであんな質問しちゃったんだろう・・・

 

 

日が傾き始めた海を進みながら、私は最近の出来事を思い返していた。

 

 

「予定より遅れています!先を急ぎましょう!」

 

 

「は、はい・・・うわぁ!」

 

 

神通さんの指示で速力を上げようとした瞬間・・・脚部艤装から火花が散り、派手にひっくり返る。

 

 

「朝潮ちゃん!!」

 

 

こちらに手を伸ばす睦月さんの姿が、波の向こうに霞んで消えていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(完)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・んな訳ないでしょ!

 

 

そして私たちはいま、応急修理のため遠征ルート半ばにあるコロンバンガラ島にいる。さっきの騒ぎの原因は・・・

 

 

推進器(スクリュー)に海藻が・・・」

 

 

ただでさえ予定より遅れ気味なのに、よりによってこんな時に・・・とにかく艤装のことは、妖精さんにお願いするしかない。

 

 

「皆さん、突貫工事でお願いします」

 

 

私は深々と頭を下げる。

 

 

「よーし!野郎ども、かかれ!もたもたしてるとケツに51㌢徹甲弾をぶちこむぞ!」(妖精隊長さん)

 

 

「喜んで!!」(残りの妖精さん一同)

 

 

砂浜に上がって艤装を解き、装備妖精さんたちがスクリューユニットに群がるのを見ていたら、神通さんがやって来た。他のみんなは、ドラム缶を片付けている。その()()は・・・

 

 

「朝潮さん、どうですか?」

 

 

「はい、もう少しで終わりそうです。済みません、私のせいで・・・」

 

 

「いいえ、気にしないで下さい。私たちは仲間なんですから。それよりも・・・」

 

 

そう言って、夕暮れ間近の海を眺める神通さん。

 

 

「こうしていると、思い出します・・・」

 

 

彼女はかつてこの海域で戦い、沈んだ。その記憶は、艦娘となったいまでも脳裡に焼き付いているそうだ。私も、この先に待ち構える()()()のことを思うと、内心穏やかじゃいられなくなる。これがきっと、艦娘としての記憶なんだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修理完了(みっしょんこんぷりーと)!」

 

 

夕闇迫る砂浜に響く、妖精隊長さんの誇らしげな声。私がお礼を言おうとしたその時、対空警戒を続けていた電さんが叫んだ。

 

 

「16時の方向、敵機なのです!」

 

 

「そ、総員退避!!」

 

 

みんな慌てて椰子の木陰に身を隠す。私も咄嗟に逃げ惑う妖精さんたちをスカートのポケットにねじ込み、艤装を抱えて茂みに飛び込んだ。

 

 

「むぎゅ!」「ひでぶ!」「はろは!」「たわば!」

 

 

ポケットの中から何か聞こえたけれど、今は構っている暇はない。間一髪、息を潜める私たちの頭上を、大きな影が横切って行った。

 

 

深海重爆撃機(B-17空飛ぶ要塞)・・・」

 

 

神通さんが呟く。あんなに大きな飛行機が・・・改めて、ここが戦場なんだと思い知らされる。

 

 

「あの方角・・・どうやら深海棲地へ帰る途中だったようですね・・・」

 

 

「でも、朝潮ちゃんのおかげで助かったね」

 

 

「え?私の・・・?」

 

 

睦月さんの言葉に戸惑っていると、

 

 

「もし予定通りに進んでいたら、間違いなく見つかってたわよ」

 

 

曙さんが言う。

 

 

「ええ、この島に立ち寄ったのが幸いしました」

 

 

神通さんも微笑みを浮かべた。そっか、私の失敗で寄り道したのが・・・

 

 

「やっぱりあんたやるじゃない!運も実力のうちって言うし!」

 

 

思わぬ形で敵の哨戒網を潜り抜けた私たちは、再び進撃を開始する。鉄底海峡へと続く海は暗く、不気味に静まり返っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女たちのことが、ご心配ですか」

 

 

沈み行く夕陽を眺めていたら、隣に立つ加賀さんが口を開いた。朝潮たちを送り出した後、俺はずっと執務室に詰めている。無線封鎖してるから、彼女らの状況は全く分からない。もし連絡が入るとすれば、作戦成功の知らせか、玉砕電か・・・

 

 

今頃になって俺は、こんな馬鹿げた遠征任務に許可を出したことを後悔し始めていた。これでもし、あいつらのうち誰かが帰って来なかったら・・・いや、あんな練度では全滅する可能性だって充分あり得る。

 

 

「提督、時には轟沈を受け入れるご覚悟も必要です」

 

 

「なっ!?まだそんなことを・・・!」

 

 

俺のひとり言に反応した加賀さんの言葉に、思わず語気が強くなる。

 

 

「絶対に沈まないなんてことは、あり得ません。これは戦争なのですから」

 

 

いつもの調子で淡々と話す、一航戦の青い方。

 

 

「じゃあ・・・俺って何なんだよ。艦娘の帰りをただ待っているしか出来ない俺は・・・」

 

 

思わず、情けない本音が零れる。

 

 

「信じて下さい、私たちを」

 

 

気付くと加賀さんが俺の手を握っていた。微かな甘い香りが全身を包み込んでゆく。

 

 

「艦娘は入渠ドックと補給物資があれば戦えます。兵器としては。でも・・・」

 

 

彼女の瞳が真剣な光を宿す。

 

 

「心の拠りどころ、つまり帰る場所(提督さん)も必要なんです。だって」

 

 

真っ直ぐな瞳が俺を捉えて離さない。

 

 

「私たちは人間(乙女)なんですから」

 

 

「・・・!」

 

 

「必ず無事に任務を果たして帰ってきます。私を人間だと言って下さる貴方の元に・・・」

 

 

「か、加賀しゃん・・・」

 

 

潤んだ瞳に、間抜けな提督が映っている。

 

 

・・・いや、これは勘違いだ。この気持ちは本物なんかじゃない。やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。そして、見つめ合うふたりの距離は自然と近付いてゆき・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お茶いかがすかー?」ガンッ!

 

 

無粋な棒読みの台詞と共に、一色が湯飲みを執務机に置く。そんなに叩きつけたらお湯呑み砕けちゃう!てか、ち、ちょっと一色さん?!

 

 

「休憩入りまーす(怒)」

 

 

振り返った先で執務室から出て行く後ろ姿。小柄な背中から姫級深海オーラが溢れていた・・・((( ;゚Д゚)))ゴウチン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もお茶なんて頼んでいなかったのだけれど?(加賀さん)

 

 

中身は熱湯なんで気をつけて下さいねー。(いろはす)




次回予告:ソロモン戦線が風雲急を告げる頃、はるか遠く千葉県立総武高校でも、物語が動き始めようとしていた・・・

第15話:生徒会長さんの抜錨
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