やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第19話:艦娘 vs 艦娘(後編)

「敵艦上偵察機の発艦を確認しました」

 

 

脇に控える大淀の報告を皮切りに、艦隊演習が始まる。定石通り、葉山はまず偵察機を繰り出してきた。やけに足が速い機体だ。

 

 

「彩雲改二東カロリン空(熟練度MAX)か・・・やっぱ横須賀は装備もえげつねぇな・・・」

 

 

双眼鏡でヤツの艦載機を確かめながら、先行させていた零戦隊を向かわせるが、あっさり振り切られてしまう。

 

 

「・・・加賀4号機より艦隊司令部へ。我に追いつく零戦なし!」

 

 

混線した敵の通信が入ってくる。あちらさんは平文で打電しているようだ。余裕綽々ってわけか。まあ、その余裕が後々命取りになるんだがな。

 

 

「こちら加賀。敵艦偵に捕捉されたわ」

 

 

「赤城より司令部へ。12時の方向に不明機多数。敵の雷爆連合と思われます」

 

 

「提督!こちら飛龍!友永隊、発進させちゃってもいいかな?」

 

 

味方からも、状況を告げる通信が入り始める。

 

 

しかし横須賀の連中、さすがに手強い。提督は坊ちゃん(葉山)でも、指揮下の艦娘が箱入り娘ばかりとは限らない。高速艦偵と同時に攻撃隊を差し向けてくるとは、かなりの手練れがいると見ていいだろう。

 

 

やがて水平線の向こうから大編隊が現れた。その数からして、おそらくあっちの加賀さんの全力。烈風改二岩本隊、流星改二村田隊、彗星改二江草隊・・・ネームドレア航空隊の揃い踏みだ。教則本通りの、理想的な雷爆同時攻撃用の編成で迫って来る。

 

 

「制空権喪失!形勢不利!」

 

 

手にしたタブレットには、リアルタイムで戦況が表示されていた。てか、この現代技術をもってしても深海棲艦隊には手も足も出ないとか、何でよ?まぁ、艦これはそう言う「縛り」の設定だけど・・・最近のアニメも、1クール12話の縛りが出来てから、何だかつまらなくなった気がするわ・・・

 

 

ふと視線を感じて横を見ると、葉山がヘッドセットをしたまま口角を上げて嗤っていた。既に勝利を確信してるんだろうが、やはり甘いな。傍らの秘書艦が、その横顔にぼーっと見惚れている。仕事しろよ。

 

 

て言うか演習中にニヤつくなんて、俺がやったら確実に変態認定だが、ヤツだとなぜかニヒルな提督に見えるから不思議だ。解せぬ。

 

 

さしずめこれがアニメなら「葉山提督の憂鬱」の見せ場ってところか。んで俺は1話限定のモブキャラ提督。あっさりやられて「比企谷提督の消失」ってか、さっそく退場しちゃったよ、俺・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

突然の轟音で、我に返る。敵艦隊の方から何かがすっ飛んで来て、あっという間に味方の方角へ消えて行く。What's that?

 

 

「敵の噴進機です!橘花改二6機、我が機動部隊へ向けて進攻中!」

 

 

・・・大淀さん、眼鏡っ娘で今のが見えるって、あなたどういう動体視力してんだよ?しかしまぁ、ジェット機とはこれまたご苦労なこった・・・

 

 

一瞬遅れて、通信が入る。

 

 

「我が方に損害なし!」

 

 

・・・まあ、そうなるな。あれって、速くて燃費最悪なだけで、攻撃当たらないんだよなぁ・・・(しみじみ)

 

 

しかし、今のでこちらの編成はバレた。そろそろだな・・・ここまでは、後手にまわって制空権を失い、味方は劣勢に陥りつつある。ここまでは、な・・・

 

 

「提督、準備万端です」

 

 

加賀さんの言葉に、俺は本日()()()命令を出した。

 

 

「よし、全軍突撃せよ!」

 

 

「了解!」

 

 

次の瞬間、味方のいる水平線の彼方から、雲が湧き上がってきた。いや、正確には()()()()()()()の艦上戦闘機の群れだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

今度は葉山が呻く番だ。驚愕のあまりイケメンが崩れるが、間抜け面もイケてるってどういうこと?あっちの秘書艦がまた睨んで来るし。もうヤダ!やっぱ泣けるわ。

 

 

「比企谷!き、君は・・・!!」

 

 

そう、俺は今日の演習に、加賀さん以下正規空母6隻という編成で臨んでいたのだ。売られた演習なんぞに、手間暇かける必要などない。初手で葬るに限る。負けるのは嫌なので攻撃力に極振りしたいと思ったまでだ。

 

 

目の前では、我がショートランドの飛行妖精さんたちが、横須賀鎮守府の攻撃隊を数の力で押し潰していた。いかにあちらさんが精鋭なれど、6対1の戦力差では始めから勝負にならない。しかもあちらの半数は、空戦能力の無い艦攻と艦爆だ。悲しいけどこれ(時雨たんを懸けた)戦争なのよね。

 

 

「制空権確保!形勢、我が方に有利!」

 

 

短くも激しい空中戦の末、横須賀の攻撃隊は全滅した。こちらもかなり墜とされたが、充分許容範囲内。さあ、いざカウンターアタックの時だ。

 

 

「艦戦隊はそのまま進撃して、敵艦隊の上空直掩機を排除!艦攻、艦爆隊は順次発艦し、雷爆同時攻撃を敢行すべし!」

 

 

冷静な加賀さんの指示に、味方が呼応する。あ、やっぱ俺、要らん子だわ・・・

 

 

「1航戦赤城、了解!!」

 

 

「2航戦及び5航戦了解!!」

 

 

空を埋め尽くす攻撃隊が、翼を並べて敵の方角へと飛んでゆく。やがて対空カットインらしい閃光が煌めいた後、水平線に水煙が上がった。タブレットに結果が表示される。

 

 

「やったか?!」(註:フラグじゃありません)

 

 

「榛名改二甲、摩耶改二乙、阿武隈改二雷、秋月改二戊、時雨改二丁大破、轟沈判定!加賀改二戊、中破!」

 

 

聞いたことがない改装レベルの艦娘ばかりだが、横須賀には優先的に先行実装でもされてんのか?それにしても、いかにも葉山らしい攻守に優れた艦隊編成だが、制空権を失えばその末路や哀れ・・・

 

 

てか葉山のヤツ、やはり時雨たんを・・・許すまじ!

 

 

俺は状況を確かめようと双眼鏡を構えた。え?いや別に、時雨たんのあられもない姿を見たいとかじゃないからね?まぁ、さすがにこれだけ叩けば横須賀の艦娘たちも諦めるだろう・・・

 

 

「なにっ?!」

 

 

半ば勝利を確信した俺だったが、視界の先に映った光景に思わず息を呑んだ。立ち込める水煙の中から、ひとりの艦娘が飛び出して来たのだ。黒い胸当てに青の短袴。模擬弾のペイントを浴びてはいたが、それは横須賀の旗艦「加賀改二戊」だった。

 

 

いまだ戦意を失わず弓を構えるその姿に、敵ながら敬意を覚える。だが次の瞬間、俺は我が目を疑った。おそらく至近弾を受けて髪留めが外れたのだろう。特徴的なサイドテールが(ほど)けて髪を下ろした状態の彼女は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はるか遠く、千葉の母校で生徒会長をしているはずの、雪ノ下雪乃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大破した時雨たん、見てぇ・・・(はちまん)

 

 

私で良ければ今すぐにでも・・・!(いろはす)

 

 

攻撃隊、全機発艦!!(加賀さん)




次回予告:戦い済んで日が暮れて・・・やはり彼の艦隊ラブコメはまちがい続ける・・・

第20話:加賀さんがふたり
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