やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第22話:やはりせんぱいが私の提督なのはまちがっていない。

校門を抜けて立ち止まり、ゆっくりと辺りを見回す。最前線で地獄を見てきた俺にとって、半年振りの母校は眩し過ぎた。乾いた心の中を、平和なチャイムの音が通り過ぎてゆく。ふっ、戦いは・・・

 

 

「あ、そういうのもういいんで」

 

 

ばっさり一色に斬り捨てられ、足早に校舎へと向かう。あの日、ベストプレイスから加賀さんにドナドナされて以来の我が母校。ふっ、時の流れは早いものだ。あっという間の半年間だったぜ。え?艦これがもう11周年?うそだろ?(愕然)

 

 

ちょうど午後の授業が始まったタイミングらしく、辺りに人影は無い。

 

 

「やあ、元気にしていたかね」

 

 

ふと見れば、来客用出入口の前に立ち、何やら感慨深げな表情を浮かべる平塚先生の姿が目に入った。恩師兼奉仕部顧問の登場に、こちらも海軍式の敬礼を返す。咄嗟に提督モードに入っちゃうあたり、もはや完璧な社畜棲姫(壊)へと成り下がった俺。誰か、自堕落だったハチマンを返して!

 

 

「まさか、あの比企谷が提督になるとはな。まあ、君のことだから上手くやれているとは思うが」

 

 

あのってどの比企谷を指しているんでしょうか。にしても、変わらず艷やかな黒髪に、スラリとした立ち姿、そして風に靡く白衣。文句なしの美人だ。なんで貰い手が居ないんだろう。素朴な疑問を抱く俺ガイル。

 

 

「ひょ?!」

 

 

「まさか提督になってまで失礼なことを考えていなかったよな?」

 

 

掠める拳もどこか懐かしい。(調教済み)

 

 

恒例の鉄拳制裁を浴びつつ、それとなく彼女の様子を伺った。最近は年頃の女子を見ると、つい条件反射で艦娘に見立ててしまう。完全に職業病だ。べ、別に個人的な趣味嗜好なんかじゃないからね!

 

 

ふむ、平塚静教諭、国語科担当。年齢的には空母系艦娘だな。赤城のお姉さんてとこだろう。となると天城、とか?いやそもそも、この人もうお年頃ってカテゴリーには入らんだろ。あ、いやうそですごめn・・・

 

 

ぐふっ!!

 

 

「雪ノ下も艦娘になってしまったし、奉仕部も実質休止状態だ。顧問としては寂しい限りだよ」

 

 

俺の腹に見事なボディーブローを決め、爽やかに笑顔で話す平塚先生。ぐぅ・・・こ、この人、艤装無しでアイアンボトムサウンドに送り込んでも絶対帰還するタイプだよね。も、もう、制海権奪還、任せちゃってもいい?

 

 

悶絶しながら、なおも馬鹿げたことを考えていた俺は、視線を感じて顔を上げた。

 

 

「で、雪ノ下には会ったのかい?」

 

 

・・・本題はこれか。

 

 

「君が提督になった後、彼女はどこか思い詰めた感じでね。まるで何かに突き動かされるように、生徒会長の座を放り出して艦娘養成学校を志願してしまったんだ」

 

 

この辺りの経緯(いきさつ)は俺も、例の演習で葉山から聞いてはいたが、平塚先生も雪ノ下には何か危ういものを感じていたのだろう。

 

 

「ああ、あいつなら今・・・」

 

 

俺の指揮下に居るんですよ、と言いかけて口ごもる。作戦上の機密事項に当たるからだ。この第二種軍装を着た以上、たとえ敬服する恩師が相手と言えど、もう以前のように気兼ねなく接することは出来ない。艦娘たちの存在にほっこりしがちだが、深海棲艦との戦いはいまも続いているのだ。

 

 

そしてあの雪ノ下雪乃、いや加賀改二戊が抱える何かとは。艦娘としてのスペックは概ね把握している積もりだが、その心の内など分かるはずもない。提督たる俺が掌握しているのは、あくまでも「艦」の部分だけだ。「娘」の方は容易く触れていい場所じゃない。もしそれをしてしまったら、文字通り彼女たちを兵器扱いすることになる。

 

 

不自然に言葉を濁した俺を見て、平塚先生も何かを察したのか会話が途切れる。そしてその場の微妙な空気を変えたのは、それまで慎ましく俺の後ろに控えていた一色だった。

 

 

「ご無沙汰しています、先生。その節は色々とお世話になりました」

 

 

半ば強引な話題転換ではあったが、俺はその気遣いに甘えることにした。平塚先生も自然な口調で流れに乗ってくる。ほう、これが大人の対応というやつか。

 

 

「うん、一色も見違えたよ。すっかり今をときめく艦娘だなあ」

 

 

さすがの先生も、艦娘と准艦娘の区別はつかなかったらしい。ま、ぶっちゃけ俺も未だによく分からんし。(激白)

 

 

「ありがとうございます。先生もお変わりないようで何よりです」

 

 

完璧に有能な護衛艦役を演じるいろはす。さっきまでとは大違い、健気なまでのしおらしさだ。ぶぅー!なんか貴艦(あなた)、俺に対してだけ態度雑じゃないですか?

 

 

「はは、ありがたい言葉だな。じゃあ時間も限られている事だし、行くか」

 

 

そう言って踵を返し、歩き出す我が顧問。

 

 

「あの、どこに・・・?」

 

 

一抹の不安を覚え、尋ねてみる。今日、万年ぼっちの俺が此処に来たのは、表敬訪問とか言う意味不明な要件のためだ。まさかとは思うが、このまま全校生徒の待つ体育館でスピーチすべし、とか言われた日には、ハチマン挙動不審で深海化待ったなし・・・

 

 

「安心したまえ。校長室で退屈な話に付き合わされるだけだよ。全校集会でスピーチして貰おうかってプランも有ったんだが、私の一存で潰しておいた。君はそういうタイプではないからな」

 

 

・・・やっぱそうだったのかよ。てかやだ平塚先生マジイケメン。イベント終盤に登場する友軍艦隊並みの活躍だわ、ホント。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

制帽の鍔に手を添え、心からの謝意を口にする。柄でも無いのは自分でも分かっちゃいるが、なんせ、ぼっちの爆死確定イベントを回避出来たんだからな。いくら感謝しても、感謝し過ぎることはあるまい。

 

 

「ふふっ、何だか私の知っている比企谷とは別人みたいだな。君は本当に、例の作文を書いたあの比企谷なのか」

 

 

あ、はい、その比企谷ですが何か?

 

 

俺が答えに窮していると、更に投げかけられる問い。

 

 

「そこまで君を変えたものは、何なのだい?」

 

 

いや、だからこれがデフォルトなんですが。

 

 

だがしかし、先生は全てを見透かしたような表情で、こちらの返事を待っている。

 

 

「・・・艦娘、ですかね?」

 

 

仕方なく、思ったままを口にした。何だか意図的に誘導された気がしないでもないが、事実なのだから良しとしよう。

 

 

「ふっ・・・ふははっ!君ってヤツは本当に・・・」

 

 

いや、ナチュラルに『ふははっ!』って笑えるとか、やっぱ平塚先生男前だわ。勘違いして告白して振られるまで・・・無いな。

 

 

失礼なことを考えているうちに、いつしか俺たちは校長室へ到着していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校長先生との面会。それは一方的な賛辞を浴び続けるという、精神攻撃マップだった。何でも、生徒から提督を輩出することは、学校側にとってかなりのステータスになるらしいとか。そして来年度の学校パンフレットに俺と葉山のツーショット写真を使いたい、という黒歴史確定クエストを全力で固辞し、ようやく表敬訪問という名の限定イベントは終了した、はずだった。

 

 

て言うか俺なんか出したら生徒募集に逆効果じゃありませんか。あ、葉山の引き立て役ですかそうですか最初から分かってました。(半泣き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあな、比企谷、一色。いずれまた再会出来ることを願っている。死ぬなよ」

 

 

どこぞの同盟軍老将みたいな台詞を残し、颯爽と去ってゆく平塚先生。敬礼しながらその背中を見送っていた俺たちは、小さく言葉を交わす。

 

 

「さっきはフォロー、サンキューな・・・」

 

 

「・・・いえ、あれも護衛任務のうちですから」

 

 

可愛らしい仕草で敬礼をしたまま、目線だけ動かして答える一色。今回の休暇は、こいつの優秀さを再認識させられた旅だったな。ま、いずれにしろ本人には絶対言わんけど。

 

 

そして俺の思考は、とある少女へと向かう。結局、会えずじまいか・・・俺たち(奉仕部)の状況を知る平塚先生が敢えて彼女に触れなかったのは、つまりそういうことなのだろう。が、脳裏に浮かぶ面影を振り払おうとした時、その声は聞こえてきた。

 

 

「ヒッキー・・・?」

 

 

敢えてゆっくりと振り返る。そこにはもうひとりの奉仕部員、由比ヶ浜結衣が立っていたのだった。

 

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

 

全力で走ってきたのか、由比ヶ浜は肩で息をしていた。真っ直ぐこちらに向けられた視線に気圧されるものを感じ、堪らず目を逸らす。修学旅行に端を発したすれ違いの日々が頭に浮かび、一瞬言葉に詰まった俺は間抜けなひと言を発した。

 

 

「授業中だったんじゃないのか」

 

 

半年振りの再会で、第一声がこれかよ・・・自分のコミュ力不足に、内心で天を仰ぐ。

 

 

「うん、だけど平塚先生がラインくれたから・・・」

 

 

ホント、あの人には敵わねぇな。既に見えなくなった後ろ姿に、心の中で手を合わせる。て言うかいつの間にかライン交換してたのね、貴女たち。そのコミュ力、少し分けて貰えませんか。(切実)

 

 

「てかヒッキー!いきなり居なくなったりして、あたしとっても心配してたんだからね!」

 

 

「お、おぅ・・・」

 

 

両手を腰に当て、いかにもプンスカな態度を見せる彼女に、返す言葉が見つからない。が、そんなのお構い無しに距離を詰めてくるガハマさん。あぁ、非常識なまでの胸部装甲。超弩級戦艦たゆんたゆん号。意外と打たれ強そうな名前だな。容姿だけなら主力艦級だが、こいつ運動神経悪いから非戦闘艦っぽい?てか近い近い近い!むぎゅ?!(悦楽)

 

 

豊かな双丘に弾き飛ばされた俺が仰け反ると、彼女は慌てて飛び退き両手をわたわたさせた。

 

 

「あ、ご、ごめん・・・いきなり嫌だったよね」

 

 

「い、いや、そんなことはないぞ?」

 

 

いまのは不可抗力だ。アニメでブッキーもアタゴンと同じことやってたし、ギリギリセーフだよね、憲兵さん?

 

 

「えっ?!あ、そうなんだ、良かったぁ。えへ、えへへ・・・」

 

 

ふにゃっとした笑顔を浮かべ、なぜか全身で喜びを表す由比ヶ浜に思わず胸が高鳴る。いや、俺はもう勘違いなどせん!勘違いなどせん!勘違いなどせんぞ!!(ドズル提督)

 

 

「いろはちゃんも、やっはろー!」

 

 

そんな俺の断末魔など知らぬがごとく、あっさり平常運転に戻る由比ヶ浜。

 

 

「お久し振りです、結衣先輩」

 

 

完璧艦娘いろは。でも君ら、互いに目が笑ってませんよね。ナニコレやっぱ女子って怖い。

 

 

「て言うかいろはちゃん、その制服超かわいい!それって艦娘の艤装なんでしょ?」

 

 

そんな漂う緊張感を(ほぐ)すように、明るい声で続けるガハマさんこと結衣先輩。あぁもう、こいつの呼び方が分からなくなってきたわ。

 

 

「あ!そうだ!あたし、艦娘適性検査の一次書類審査に通ったんだよ!こんど横須賀鎮守府で二次審査受けるんだっ!」

 

 

ドヤ顔で胸を張るガハマ先輩。はち切れんばかりのブラウスが、完全に目の毒だ。

 

 

「ちっ!また邪魔者が・・・そ、そうだったんですね!それで先輩、どんな艦種に適性が有ったんですか?!」

 

 

やけに食い付き気味な一色の問いかけに返ってきたのは、衝撃の事実だった。何なら日本中が泣くまである。

 

 

「え?うんとね、確かマミヤとか、キューリョーカン?とかだったかな」

 

 

え?(゚д゚)!!

 

 

いや、お、落ち着け。結論を出すのはまだ早い。人は誰しも成長する。こいつだって、この半年間でパティシエ並みになってる可能性も・・・

 

 

「ゆ、由比ケ浜、ひとつ聞きたいんだが、その後、料理の腕前はどうだ?」

 

 

「へ?それはえっと・・・て言うかなんでいま料理の話が出てくるしっ!!」

 

 

確実に鎮守府がひとつ壊滅する案件だわ、これ。ガハマみやさんの甘味処。お品書きに鎮座する、あの木炭クッキー。うっ頭が・・・

 

 

敢えて言おう。やはり由比ヶ浜が間宮さんなのはまちがっている。

 

 

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

 

 

「まだ授業中だから・・・」

 

 

そう呟き、名残惜しそうに走り去ってゆく由比ヶ浜。一度振り返り、小さく手を振ると、彼女は階段を上って行った。大した話は出来なかったが、何処か心が軽くなったのを感じた俺は踵を返そうとして・・・

 

 

「ぐぇ!」

 

 

出会い頭に廊下の角から出て来た人物と衝突した。つかこれ何てエロゲー?ときめき艦これメモリアル?これで相手が転校生の美少女艦娘だったりしたら、ハチマン的に超ポイント高いんですけど。

 

 

脳内お花畑で尻もちをついた俺を庇うように、割って入った一色が拳銃を構える。いやだからそれ、毎回どっから出してんのよ。イリュージョンか何かなの?

 

 

「ひぃ!」

 

 

そんないろはすの射線に捉えられ、情けない悲鳴を漏らしたのは、棒立ちの眼鏡ロングコート。俺のヒロインがこんなに太いわけがない。さっきのときめきを返せ!

 

 

「は、八幡、俺死んじゃうの?」

 

 

「お前、素に戻ってるぞ」

 

 

材木座義輝。もともとは、体育でペアを組むだけの間柄でしかなかったのだが、艦これリアイベで遭遇したのが運の尽き。

 

 

いざ、回想シーンスタート!

 

 

 

 

「ざ、材木座君、すか?」

 

 

隠れ艦これファンである事実が露見しかねない緊急事態に、思わず敬語でキョドる俺へ、やつは斜め上を行くトンデモ対応を見せたのだ。

 

 

「ふふふ、お主、こんな所まで我を追いかけてくるとは、そんなに友達が居ないのか」

 

 

「・・・はい?」

 

 

「ふむ、よろしい!お主がそこまで望むなら、我が盟友として認めてやろう」

 

 

「済みません人違いでした失礼します」

 

 

「うわーん!うそです待って!はちえも〜ん!」

 

 

それ以来、誠に遺憾ながら唯一のリアル艦これ仲間だ。泣ける。(回想シーン終了)

 

 

 

 

「なんだ、中2先輩ですか」

 

 

気が抜けたように構えを解く一色。それを見て俄然勢いを取り戻した材木座は、俺に肉迫して来た。

 

 

「はちえもん、お前もか?!」

 

 

だから近い近い暑いうざい!!

 

 

自称剣豪将軍こと材木座は俺以上の中2病だが、こと艦これに関する二次元知識は職業軍人並みだった。そして当然のごとく本人は提督着任を熱望していたのだが、悲しいかな、こいつには提督適性が無かった。まあ、そうなるな。

 

 

「くっ!この非常時に我の知識、経験を活かす場を得られぬこと、提督業を営む身として実に口惜しい限り・・・!」

 

 

指抜きグローブをはめた拳を握り締め、やるせなさを滲ませる剣豪将軍義輝。

 

 

「で、本音は?」

 

 

「いいなぁ、我も艦娘とイチャラブしたい・・・」(小声)

 

 

完全に放置された一色は拳銃を仕舞うのも忘れ、若干引き気味に俺たちを眺めている。そして生艦娘を前に興奮した材木座は、眼鏡のフレームに指を当て、滔々と語り始めた。あ、これ絶対長くなるやつだわ。(経験済み)

 

 

「可憐なる一色殿ッ!貴官はそのスタイルから軽巡洋艦クラスの艦娘とお見受け致す!されど制服のデザインは鈴谷型航空巡洋艦に酷似ッ!さらにさらに!斜め掛けにて装着したる砲塔式雑嚢は、甲型駆逐艦向けの連装砲ちゃんD型改二を模したワンオフ品!もしやそなたは、新規実装の准か・・・」

 

 

ん?急に止まった薀蓄を不審に思ってやつの方を見ると、目を見開いたままフリーズしている。何だ、もう電池切れか?そして何気なくその目線の先を追った俺も、次の瞬間同じ運命を辿った。

 

 

 

 

 

( ゚д゚) ポカーン アレハナニ ?

 

 

 

 

 

視線の先では、一色いろはが膝丈のスカートをほぼ完全に捲り上げていた。そう、膝丈のスカートをほぼ完全に捲り上げていたのである。ここ、明日の小テストに出るとこだから2回言ったぜ。

 

 

つまりは艦娘のバイタルパートが剥き出しに・・・これ以上間違いが起これば、俺の弾火薬庫が誘爆待ったなし。いやだからそういうことじゃなくて。憲兵さんこいつです!!(錯乱)

 

 

フッ、見えなければどうと言うことはない。彼女はただ、左手でスカートを上げ、右手で例の拳銃を腿に付けたホルスターへ収めようとしていただけなのだ。材木座の話が長過ぎて、ついつい素に戻ってしまったのだろう。てか貴女、そんなとこにピストル仕舞ってたのね。三次元では初めて見たわ。

 

 

すると食い入るようなふたつの熱い視線を感じたのか、ふと一色が顔を上げた。そのままの姿勢で小首を傾げる。完全に無意識の仕草だ。露わになった白い太腿。いい加減もう、誘爆しちゃっていいよね?(ダメ、絶対!)

 

 

とその時、ようやく状況を理解したらしい一色がサッと顔を赤らめ、スカートを押さえた。

 

 

「ふぇえ?うそ?や、やだ!って、こっち見んな!このクソ提督!」

 

 

「い、一色殿がぼのたんにっっ?!」

 

 

真っ赤になってしゃがみ込んでしまったいろはすの傍らで、仲良くキュン死する小太りな男子高校生。因みにあいつの嫁艦は曙だったりする。知りたくなかったぜ。

 

 

「は、八幡よ。我、新米少佐からやり直して来る・・・」

 

 

生ぼのたん(偽)(いろはす)の衝撃に、ふらふらと廊下の向こうへ消えてゆく材木座義輝。こうしてやっと、俺の母校訪問は終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、一般ギャラリーの猛攻を退け、道中ボスはるのんを破り、平塚先生、校長を連破して由比ヶ浜の胸に顔を埋め、一色の大破グラに材木座と揃って仲良く誘爆轟沈。あれ、なんかこれ海域攻略失敗してる?

 

 

その後、俺の家に立ち寄って小町にガチ泣きされたりする一幕もあったのだが、紙面の都合上割愛させて頂きました。まぁ、CMの間に場面が転換したとでも思ってくれ。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「これで予定は全て終了ですね。あとは1800(ヒトハチマルマル)に大艇ちゃんで横須賀を発つだけです」

 

 

タブレット端末を操作しながら一色が纏める。さすがにもう、機嫌は直ったようだ。

 

 

「あぁ、ちょっと寄り道いいか?」

 

 

「はい、どちらに?」

 

 

「ん、まぁな」

 

 

はっきりとは答えず、俺は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、二駅ほど総武線に揺られ、やって来たのはとある住宅街。

 

 

「ここですか?って、えっと、ほぇ?私のお家?」

 

 

わけが分からない、といった表情の一色。俺が事情を説明するより早く、予想通り()()()()が炸裂する。

 

 

「はっ?!ま、まさか手順を全部すっ飛ばしていきなりウチの両親に挨拶とか嬉しさ通り越して色々漏れて轟沈しちゃいそうなんですけどさすがにこれはまだ心の準備が出来てないのでまずは許嫁でお願いしますごめんなさい」

 

 

しっかし、毎度毎度よく噛まずに言えるよな、それ。

 

 

「ま、せっかく本土まで帰って来たんだ。元気な顔見せて安心させてあげたらいいんじゃね、みたいな?」

 

 

「え?それって・・・」

 

 

絶句するいろはす。

 

 

「一応、事前連絡は入れといた。お前の母ちゃ・・・ママはすさん、居るってよ」

 

 

照れ隠しで早口になっているのを自覚しつつ、俺は続けた。

 

 

「ま、なんつーか、ずっと護衛任務で緊張しっぱなしだったんだ。これ位の役得があっても罰は当たらんだろ。知らんけど」

 

 

敢えてそっぽを向きながら補足する。最後が言い訳口調になるのはご愛嬌。が、いまだ驚きからさめやらぬ様子の一色は、黙って俺を見つめるばかりだ。てかいろはさん、何か言って!ハチマンもう耐えられない。

 

 

「せんぱい・・・」

 

 

ようやくひと言零すと、みるみる潤み始めるその瞳。ほえ?いまの流れに泣く要素有った?これじゃまるで俺が泣かせたみたいじゃねーか。憲兵さんまたこいつです!

 

 

「じ、じゃ、また後でな。俺、そこら辺で時間潰してるから」

 

 

単艦退避を試みるも、一瞬で再起動したいろはすに袖を掴まれる。てか貴女、立ち直り早過ぎるでしょ。

 

 

「は?何言ってるんですか。現職提督が本屋でコンプティーク艦これ特大号立ち読みとか、絵面的に完全アウトですよね」

 

 

うっ!?な、なぜ分かった?こいつエスパーとか?エスパーなの?

 

 

「ということなので、しっかりお家の中まで送って下さいね」

 

 

いやいやいやお嬢さん、さすがにそりゃ無理ゲーです。

 

 

「母娘感動の再会に部外者が交ざるとか、どんな罰ゲームだよ・・・」

 

 

「いえ、いずれ身内になってもらう積もりですし問題有りません」ボソッ

 

 

はい?さすがに小声過ぎてよく聞こえんのですが。

 

 

「だめ、ですか」

 

 

で、いつもの上目遣いカットインが発動・・・しなかった。不意に右手を耳に当てた一色が、表情を引き締める。そして発せられた言葉は、俺の意識を一気に提督モードへと引き戻した。

 

 

「大淀さんから緊急入電!読み上げます!鼠輸送に従事せる我が第二水雷戦隊、ソロモン諸島ルンガ沖にて敵深海巡洋艦隊と遭遇せり!期間限定イベント作戦の開始です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一色いろはです。

 

 

楽しい休暇は終わりました。最後に提督(せんぱい)からのサプライズを貰い損ねたのは残念でしたけれど、いまは帰ろう、私の居場所へ。帰ればまた来れるから。

 

 

駆け出すちょっと猫背な後ろ姿を追いながら、改めて私は確信するのでした。やはりせんぱいが私の提督なのはまちがっていない、と。




次回第23話:やはり俺が加賀さんなのはまちがっている。
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