やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第24話:やはり彼女が俺の提督なのはまちがっている。

沖ノ島前進鎮守府は、予想通りの急造基地だった。出迎えは定番の大淀、ではなく、吹雪と夕立のふたり。しかも制服からして、まだ改二にすらなっていない。こりゃ相当無理ゲーっぽい?

 

 

「か、回航お疲れ様です!特型駆逐艦一番艦、吹雪です!」

 

 

「お疲れっぽい?」

 

 

「加賀よ。司令官に会わせてもらえるかしら」

 

 

うわ、何か塩対応!八幡泣いちゃいそう。喋ってるの俺だけど。

 

 

さて、いざ提督とご対面。頼むからブラック鎮守府だけはやめて!セクハラオヤジとかだったら、速攻で爆撃するまである。あぁ、それは瑞鶴の専売特許だったな。てか、そもそも瑞鶴まだ居ないだろ。途中ですれ違った子たちも、みんなコモン艦ばっかだったし。

 

 

「失礼します、提督!加賀さんをお連れしました!」

 

 

「ご苦労さま。入って頂戴」

 

 

執務室の中から答える提督さん。ん?この声、まさか()()()()

 

 

入室した俺の視線の先には、どえらい美少女がいた。長い黒髪が純白の第二種軍装に良く映える。思わず、海軍式の敬礼をしながら見惚れてしまった。外見が加賀さんじゃなかったら確実に通報案件だ。

 

 

「萌え〜!!」

 

 

「え?!」

 

 

い、いかん!つい声に・・・

 

 

「コホン!失礼致しました。攻撃隊発艦時の発声練習です。常在戦場ですので」

 

 

こういう時は、加賀さんが凛としたキャラで助かるぜ。適当言っときゃ取り敢えず何とかなるからな。ふぅ。

 

 

「そ、そうなの・・・?流石は歴戦の改二娘と言うわけね」

 

 

若干引きながら、言葉を継ぐ姫提督さん。あれ?て言うかお嬢さん、いまさらだけど貴女まさか??

 

 

「私の顔に、何かついていて?」

 

 

俺の視線に気付いたのか、小首を傾げる仕草もまた絵になる。てかその台詞、加賀さんの十八番でしょ?

 

 

「いえ、何も」

 

 

素っ気ない加賀さん。

 

 

「そう・・・じゃあ、改めて自己紹介するわね。はじめまして。沖ノ島前進鎮守府を預かる海軍少佐、雪ノ下雪乃よ。歓迎するわ、正規空母加賀さん」

 

 

そう、横須賀から飛ばされた(加賀さん)を待っていたのは、ゆきのん(提督さん)だったのである。まじですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うちはまだ新設拠点だから、まずはここの雰囲気や運営方針に慣れて。貴女の経歴なら、実戦に関しては問題ないと思うけど・・・」

 

 

ゆきのん提督が話し始める。いや、そもそもその経歴とやらが自分でも不明なんですが。

 

 

「貴女が連れて来てくれた航空隊を見せて貰ったわ。さすが熟練妖精さん揃いなのね。此処ではまだ、開発でも報酬でも入手出来ないものばかりよ」

 

 

「みんな、優秀な子たちですから」

 

 

クールな加賀さん。

 

 

「特に対潜回転翼機なんかは気になるわ。飛行甲板や格納庫を見てもいい?」

 

 

「!・・・飛行甲板はその・・・デリケートだから、あまり触らないで頂けますか」

 

 

あっけなく崩れる加賀さん。しかし、この後の百合展開に固唾を飲む俺を置き去りに、話は進む。べ、別に残念なんかじゃないからね?

 

 

「堅い話はここまでにしましょう。横須賀からの長旅で疲れたでしょ?冷たい飲み物があるのだけれど、何がいいかしら」

 

 

そう言うと、雪ノ下は背後の小型冷蔵庫を開けた。随分と人当たりが良いことで。正直、らしくなくて違和感が仕事をしているが、コミュ力抜群のゆきのんとは新鮮過ぎてまたまた萌え〜!っと、危ない危ない、また叫ぶとこだったわ。

 

 

「いえ、どうかお構いなく。私たちは提督の兵器ですので」

 

 

ここで加賀さんの衝撃発言。どうやら本気らしい。いや、ダメでしょそれ。俺が言ったんじゃないからな。案の定、雪ノ下の表情に翳が差す。

 

 

「ひとつだけ言っておくわ。私は貴女たち艦娘を兵器だなんて思っていない」

 

 

綺麗な瞳で真っ直ぐ見詰められ、僅かに顔の火照りを感じる。あらやだ、ゆきのん美人だし、もう沖ノ島改め百合鎮守府でいいんじゃね?通称ゆりちん。捗ります。

 

 

「ゆ、ゆきのんって、貴女まさか?」

 

 

しまった!また心の声がだだ漏れ。

 

 

「申し訳ありません。提督のお姿を見て、ふとそんなお名前が浮かびましたもので。お気に障ったようでしたら、お詫び致します」

 

 

テンプレの謝罪を口にする加賀さん。

 

 

「い、いえ、いいのよ、有り難う。その名前で呼ばれると、何だか懐かしいわ」

 

 

なぜか感謝された。解せぬ。

 

 

「で、改めて何がいいかしら?フレンチショコラドゥフラペチーノとミラノロマネスクラテ、それにクラシカルイタリアンオレもあるわ」

 

 

って何それ美味しいの?だいたいどんな飲み物なのか見当もつかん。女子って何で長ったらしい名前のドリンクが好きなのかしらん?

 

 

話題を戻した雪ノ下に合わせ、何気なく冷蔵庫へ視線を投げると・・・な、何だと?!

 

 

「MAXコーヒーを」

 

 

あくまでも、冷静な加賀さん口調でオーダーする。まさかマッカンを常備しているとは。やりますねぇ、ゆきのん提督!

 

 

「か、加賀さん、それ激甘なんですけど・・・」

 

 

「こ、これを選んだの、貴女が初めてよ・・・?」

 

 

なんでか狼狽える吹雪とゆきのん。失礼な奴らだ。そもそも、そんなにディスるくらいなら置くなよ!

 

 

結局、加賀さんになってもマッカンを飲みたいだけの転生だった。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

「ところで提督、海域攻略は何処まで進んでいるのでしょうか」

 

 

マッカンを呷りながら切り出す。もちろん今の俺は加賀さんなので、実際にはハンカチで包んだ缶を両手で捧げ持ちながら、少しずつ上品に飲んでいるのだが。

 

 

「現在、鋭意艦隊を育成しつつ、カムラン半島海域の攻略を進めている最中よ」

 

 

答える雪ノ下が手にしているのは、ナントカペチーノだ。ってかそれ、普通のコーヒー牛乳じゃね?ツッコミを入れながら、マッカンの暴力的なまでの甘さを楽しんでいた俺は、頭をフル回転させてゲーム知識を思い出す。おいおい、カムラン半島ってまだ序盤戦じゃねえか。ってことは加賀さんなんて運用できる訳ないだろ?微かな違和感を覚えつつ、分かりきった質問を投げかける。

 

 

「提督、失礼ですが私を養う余裕はお有りなのでしょうか」

 

 

専業主夫希望として、ここは譲れません!あ、加賀さんだから専業主婦か。施しを受ける積もりは無いが、養ってもらう気は満々。

 

 

「んくっ!さすが痛いところを突いてくるわね・・・」

 

 

言葉に詰まるゆきのんが、何となくエロい。ゲフンゲフン!

 

 

「正直、今の備蓄量だと貴女に存分に働いてもらうのは難しいわ。特にボーキサイトが・・・」

 

 

まぁ、新米少佐の時点でそんなものだろう。むしろここまで攻略出来てることが凄ぇよ。と、つらつら考えていた俺は、ようやく違和感の正体に気付いた。カムラン半島だって?貴女いま何と?まさかまだ第1期なの?!いや待てよ。これはむしろチャンスなのでは・・・試してみる価値はある。

 

 

「提督、出撃の許可を頂きたいのですが」

 

 

「そんなに焦らないで。まずはひと休みするべきだわ」

 

 

「いいえ、ご心配には及びません。それよりも確かめたいことがあるのです」

 

 

俺の口調に何かを感じたのか、雪ノ下の表情が変わる。やはりコイツは優秀だ。

 

 

「どこの海域に出たいの?」

 

 

「カムラン半島です」

 

 

「な?!それは無謀だわ。半月前から毎日艦隊を送っているのだけれど、大破撤退か羅針盤の異常で、ボスマスに辿り着くことすら出来ていないのよ」

 

 

「問題ありません。私を編成に入れて下されば、必ずや暁の水平線に勝利を!」

 

 

あそこは確か、空母系を混ぜると羅針盤が安定するんだったよな。ボス固定条件を知っている俺は、この世界線ではとんでもないチート持ちだ。ふっ!もらったぁ!(アズレン瑞鶴)

 

 

「待って!自信と慢心は紙一重よ。貴女がうちで最高練度なのは認めるけど、今は無理だわ」

 

 

雪ノ下はきっと、充分な下調べをしてしっかり準備するタイプなのだろう。だが、これはゲームじゃないのだ。相手は待ってくれやしない。

 

 

「では、いつまで先送りするお積もりですか」

 

 

「くっ!」

 

 

過去の自分を棚に上げて雪ノ下を論破しにかかる。先手必勝。空母加賀、押して参ります!あ、台詞まちがえた・・・

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

そこからは破竹の快進撃だった。なんせ、予め答えを知ってる後出しジャンケンだからな。何なら俺自身が攻略サイトなまである。ふっ・・・真面目にプレイしていた甲斐があったぜ。

 

 

「提督、補給艦狩りはバシー海峡で行いましょう」

 

 

「わ、分かったわ」

 

 

「提督、今後はオリョクルで備蓄を増やすべきかと」

 

 

「おりょくる?何のことかしら」

 

 

「東部オリョール海の敵艦隊は対潜能力が劣っていますので、潜水艦娘による資源回収が可能です。これをオリョールクルージング、略してオリョクルと呼んでいます」

 

 

「これは備蓄が捗るわね」

 

 

「提督、沖ノ島海域のルート固定にはドラム缶を活用すべきです」

 

 

「貴女の言う通りだったわ、加賀さん。ストレートで海域突破成功よ」

 

 

そして全海域制覇も見えてきたある日、ゆきのん提督が俺の私室に飛び込んで来たのである。

 

 

「た、大変よ!加賀さん!」

 

 

「あら提督、どうしたのかしら」

 

 

「全ての海域がその・・・り、リセットされているわ!」

 

 

「・・・頭にきました」

 

 

てか今日から第2期だったのね 。(ノД`)

 

 

やはり俺の海域攻略はまちがっていた。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「・・・とく・・・ていとく!」

 

 

名前を呼ばれて目覚める。いかん、寝落ちしてたわ。なんか夢の中で加賀さん化してたが、またも黒歴史更新か。てか提督呼びされて反応しちゃうなんて、俺もずいぶんチョロくなっちまったもんだ。

 

 

顔を上げるとそこに居たのはルミ潮、じゃなかった、本日の秘書艦を務める朝潮。

 

 

「あらルミ潮さん、貴女ここで何をしているのかしら」

 

 

ちょっと艶のある落ち着いた声で応える俺。って俺?!この声と口調、まんま加賀さんじゃん!まだ夢の中なの?いきなり喋りだけ加賀さんになった俺に、固まるルミ潮。そりゃそうだわな。まぁ待て、話せばわかる。

 

 

しかし彼女の背後には、何やら痛々しいモノを見るような表情で佇む一色と加賀改二戊(ゆきのん)の姿が。あ、これオワタ。

 

 

「さすがにこれはもうアレ過ぎて、私的にもポイントの付けようがないんですけど」

 

 

「はぁ・・・美少女だらけの環境に耐えきれず、ついに・・・でもまさかそっちに逝ってしまうなんて、やはり期待した私が間違っていたようね、変態提督」

 

 

待て待て!()()()ってどっちよ?てか違うし!それにもはや名前を捩る手間すら省かれてね?

 

 

そして雪ノ下たちから罵倒されつつ、何故か安心感をも覚えた俺は思うのだった。やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている、と。




次回予告:ゆきのん提督の憂鬱(仮)
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