やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第26話:ゆきのん提督の憂鬱(後編)

ショートランド前進鎮守府 提督私室。

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと意識が浮かび上がる。心地よい気怠さを感じながら、俺はため息をついた。てか、ゆきのん提督としてブラック鎮守府に着任早々ひとりで昇天してたら瑞鶴に見られて爆撃されてまた昇天。(悦楽)我ながらなんて夢だ。フロイトさんなら何て言うのかしらん?

 

 

「提督、ペデスタル作戦の艦載機特効についてなのだけれど」

 

 

と、書類を手に入って来たのは本日の秘書艦、加賀改二戊(雪ノ下)だった。そう言えばいま、地中海イベントが泥沼化してたんだっけな・・・(他人事)

 

 

何気なしに起き上がり、対応しようとした俺だったのだが、

 

 

「な!ひ、ひきがにゃくん?」

 

 

いきなり大破するゆきのん。ちょっと貴女、通常業務でワンパンとか入渠にかかる資材量半端ないんで、マジ勘弁して。ただでさえ、支援艦隊と基地航空隊の併用で備蓄がピンチなんだから!(泣)

 

 

「ほぅ、加賀が噛むとは珍しい。明日はショートランドに雪が降りそうだな」

 

 

が、そんな本音はおくびにも出さず、何故かあたふたする雪ノ下を生温かい目で眺めながら、懐の深い提督さんキャラを演じる。しかし、そんな余裕は3秒で崩れ去った。

 

 

「あ、貴方、それ・・・」

 

 

なおもアワアワしながら指摘する雪ノ下の視線を追った俺は・・・

 

 

「はぅ!」

 

 

艦息轟沈!!

LOST!!

 

 

自らの姿を見下ろして、ようやく状況を理解する。夜のデイリー演習を完全S勝利で終えて、暫し忘我の境地に浸ったまま寝落ちしてたらしい。試製51センチ単装砲さん、こんにちは。(誇大表現)

 

 

そして加賀改二戊(ゆきのん)は、両手で顔を覆って絶賛悶絶中。いやでも貴女、指の間からしっかり見てるでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くお待ち下さい・・・m(_ _;)m(自主規制中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・部下もとい同級生に、提督(男の子)の秘密を全部見られました。これもう、俺辞めちゃっていい事案だよね?提督が自慰(辞意)を表明しました。これより艦隊の指揮を放棄します。(誤字)

 

 

と、一転、急に慈愛に満ちた表情を浮かべるゆきのん。いや、だからなんで貴女、思春期の息子の決定的瞬間を目撃した母ちゃんみたいになってんの?

 

 

「ふふ、仕方ないわね。ま、まさか私を・・・?」

 

 

それ以上はやめて!なんでもしますから!

 

 

「ち、違えよ!お前に転生しちまったから仕方なく・・・」

 

 

「え?私に?」

 

 

「あ、いや、それはアレがアレでつまり・・・」

 

 

あ、危ない危ない。明らかに失言だったが、いくら雪ノ下でも、いまの一言だけで真実に辿り着けはしないだろう。(楽観)

 

 

「はっ!ま、まさか()()()()とか流石に気分が高揚するのだけれど出来ればやっぱりふたり過ごす朝もひとりきりの夜も共に参りましょうというか甲板胸でごめんなさい」(息継ぎ無し)

 

 

・・・辿り着いちゃったよ。さすがは学年首席だわ。てか一色どころか二羽鶴まで入ってるが大丈夫か?

 

 

「せ、責任はとって貰うわよ」

 

 

まだ息を弾ませながら、何やら複写用紙を差し出す雪ノ下。それどっから出した?

 

 

「け、結婚してあげるわ。感謝なさい」

 

 

日本語表現おかしいだろ。でもまぁ、艦娘ならそうなるな。この際だ、ケッコンも仕方あるまい。

 

 

そう考えながら目の前に置かれた書類にサインしつつ、ふと気付く。あれ?確かカッコカリって、書面じゃなくて指輪形式じゃなかったっけ?

 

 

・・・って、こ、コンイントドケ?これカッコガチの方じゃねぇか!!?

 

 

愕然とする俺の手元から書類が消える。

 

 

「やりました」

 

 

「なっ!」

 

 

勝ち誇ったように、手にしたそれをヒラヒラさせるゆきのん。慌てて取り返そうと手を伸ばした俺は、避けようと身を反らした彼女を床に押し倒してしまった。

 

 

「あんっ!」

 

 

小さくエッチな悲鳴を漏らす雪ノ下。そして仰向けに横たわる彼女の上に、四つん這いで覆い被さる提督(ハチマン)の図。背景が花園に転換し、プラス微かに良い匂いも。

 

 

「す、済まん雪ノ下。つい自分を抑えきれず・・・その、い、痛かったか」

 

 

「え、えぇ、少し・・・」

 

 

暫し見つめ合うふたり。倒れた弾みで彼女の髪留めが外れ、床に広がる豊かな黒髪。こうなるともう、どっから見ても加賀さんコスのゆきのんである。(あたりまえ)

 

 

と、その時、

 

 

「う、うそ・・・!?」

 

 

夜の静寂(しじま)に響く呟き。入り口に差す人影。デジャヴュ。ってか、それこそまさかこのタイミングでうそだよね?ちゃんと鍵かけたはずだぜ?これ以上、どうしろと言うのです?

 

 

てかあれ?じゃあそもそも、ゆきのんはどうやって入って来たのん?あ、そう言えばここに俺のプライバシーなんてものは無かったわ。なんなら一色から私室取り戻せたのも、つい最近だし。

 

 

「翔鶴姉たちが地中海で頑張ってるっていうのに・・・」

 

 

衝撃から立ち直り、ぷるぷると震えるグレーのツインテ。てかおい、なんでアイツ艤装持ってるんだ?確かにいつでもウェルカムとは言ってるけど、よもやこの体勢で艦娘の奇襲を受けるとは。この八幡、慢心しました。もはや言い逃れ不能(インポテンツ)。(ルビ誤植)

 

 

「「わ、私の顔に、何かついていて?」」

 

 

なぜか仲良く雪ノ下とハモる。しかし、もちろんそんな苦し紛れの一言で輪廻の零が解き放たれるはずもなく。

 

 

最期に俺が見たのはやはり、和弓を構えたツインテールの空母娘と、真っ直ぐ落ちて来る250kg爆弾だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜 side雪ノ下雪乃 〜

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

入渠ドックに身を沈め、私は小さくため息をついた。まさかこの私が戦場以外の場所で、しかも瑞鶴に一撃大破させられてしまうなんて・・・慢心したわ。でも、あの状況で私だけに当ててくるとは、なかなかに侮れない練度ね。爆撃癖の方は大概にしてほしいものだけれど。

 

 

それよりも、ただでさえ地中海イベントで備蓄が心許ないのに、結局私のせいでまた資材を大量消費させてしまった。このままではみんなに対して申し訳が立たない。来たる秋刀魚イベントでは必ずや・・・

 

 

というか、それもこれも全部、彼のせいよ。だって、まさか私をオカz・・・けほっ!妄想するだけでは飽き足らず、()()()()堪能しようだなんて、ズルい・・・じゃなくって許せない!次は絶対私も交ぜてもらうわ。でも、狼狽える彼もなかなかに可愛らしかったわね。あとちょっとでカッコガチできたのに・・・

 

 

それにしても、やっぱり全てを擲ってここショートランドに来たのは正解だった。この基地には、深海棲艦よりも危険な泥棒猫(艦娘)たちが跋扈している。なんとかしなければ。守りたいあの腐り目。

 

 

「彼にとっての本物は、私だけで充分よ」

 

 

慎ましやかな胸元で、決意と共に拳を握ったその時、

 

 

「誰が本物ですって?」

 

 

「うひゃん!?」

 

 

急に間近で囁かれ、湯船の中で飛び上がる。慌てて振り向くと、私に瓜二つの艦娘(加賀改二)が澄まし顔でお湯に浸かっていた。ごく一部分(胸部装甲)を除けば、まるで自分自身を見ているかのような外見と雰囲気。彼の目にも、私はこんな風に見えているのだろうか。

 

 

「あ、貴女、いつからそこに・・・?」

 

 

「たった今、来たところよ」

 

 

危なかった。どうやら肝心の部分は聞かれなかったらしい。ちなみに彼女は泥棒猫(艦娘)の筆頭格だ。彼の秘密を知られてはならない。絶対に。これは早急に対策を立てる必要があるわね・・・

 

 

「ところで提督のオカズについてなのだけれど」

 

 

「ごふっ!」

 

 

敵ながら見事な不意打ち。

 

 

「そ、そんなの、夢の中だけの話に決まっているでしょう!?」

 

 

そして動揺のあまり、思わず余計なひと言を漏らしてしまったのが運の尽き。

 

 

「そこをもっと詳しく!」

 

 

「あんっ!」

 

 

目が据わった加賀改二に迫られ、たちまち壁際へと追い詰められる。豊かな双丘が私の甲板に密着し、遠退く意識。ああ、これがいわゆる加賀丼・・・(独自解釈)くっ!それにしても同型艦の筈なのに、圧倒的なこの差は何?

 

 

「う、うそ・・・!?」

 

 

とその時、微かな呟きと共に湯船の脇に立ち尽くす艦娘の影。何処とは言わないがやはり私と瓜二つのその子は、特徴的なツインテールを怒りに震わせている。

 

 

「一航戦・・・懲りないどころか、よりにもよって・・・」

 

 

はぁ、この状況、もはや下手な言い逃れはできないようね。お風呂で抱き合うふたりの加賀さん。自分でも何を言っているのかよくわからないのだけれど、遺憾ながら間が悪いことは認めざるを得ないわ。でもあの子、どうしてわざわざ艤装を持っているのかしら?

 

 

漠然と疑問を感じつつ身を離そうとした私を、不意にもうひとりの私が押さえつけた。そのままドックの壁に押し付けられ、身動きできなくなる。

 

 

「えっと・・・まさかとは思うのだけれど、なんの冗談かしら?」

 

 

「貴女は此処で沈むの」ボソッ

 

 

「!?」

 

 

私とそっくりな彼女が、暗い瞳で微笑む。背後に立つ後輩もまた・・・次の瞬間、私は全てを悟った。

 

 

「は、謀ったわね、加賀!?」

 

 

私の言葉に冷たい視線で応える、加賀改二。

 

 

「貴女はいい艦娘だったわ。でも、提督がいけなかったのよ。私たちを蔑ろにして、後入りの貴女ばかり見ているんですもの」

 

 

寧ろ楽しげにさえ聞こえる口調とは裏腹に、間近で揺れるその表情は闇に包まれている。彼の為なら、いつでも沈む覚悟はできていた。でも、こんな最期なんて・・・

 

 

「あ、貴女も巻き添えを喰うのではなくて?」

 

 

「忘れたのかしら。あの子の腕前を」

 

 

くっ!そ、そうだったわ。さっき彼女(瑞鶴)は、提督にはかすり傷ひとつ負わせず、私だけをワンパン大破させて見せたのだった。

 

 

「分かったようね。さぁ、ひとり寂しく沈むがいいわ」

 

 

体力に勝る相手に捕えられ、諦念と共に目を閉じた私の耳に、凛とした指示が聞こえる。

 

 

「全機爆装!準備出来次第発艦!目標、入渠ドックの一航戦(変態艦娘)、やっちゃって!」

 

 

着弾までの僅かな時間、私はぼんやりと考えていた。沈めば深海棲艦となって、また戻って来られるのだろうか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん・・・

 

 

ゆっくりと浮かび上がる意識。身体がふわふわと漂う感覚に、混乱した記憶。あぁ、やはり私は深海棲艦になってしまったのね。もう二度と、比企谷君には会えない。こんな事になるなら、あの時素直に気持ちを伝えておくべきだった・・・

 

 

「お風呂で誰に告白するつもり?」

 

 

「ふにゃん!?」

 

 

急に間近で囁かれ、湯船の中で飛び上がる。慌てて振り向くと、私に瓜二つの艦娘(加賀改二)が、澄まし顔でお湯に浸かっていた。

 

 

「あ、貴女、いつからそこに・・・?」

 

 

「たった今、来たところよ。マルタ島輸送作戦で大破してしまったの。今回のイベントはさすがに頭にきたわ」

 

 

ふぅ、どうやらさっきの夢とは違う展開のようだ。そしてほっとひと息ついたその時、

 

 

「ところでこれは何かしら?」

 

 

「げふっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が手にしていたのは、ラミネート加工されたあの婚姻届だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり私の艦隊ラブコメもまちがっている。   




次回予告:いろはすの追憶(前編)
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