やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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※このお話には、八幡も艦娘も出てきません。


第27話:いろはすの追憶(前編)

「次に、各種資材の損耗状況並びに海域突破報酬についてですが・・・」

 

 

広い講堂に大淀さんの声が響いています。横に座る提督さん(せんぱい)はかなり眠そうです。あ、これはいつものことですね。

 

 

いま、ここショートランド前進鎮守府では非番の艦娘たちが集められ、期間限定イベントの総括が行われているところです。今回の地中海作戦もまた、酷い戦いでした。(/_;) 大破艦娘の山に、モリモリ?消えてゆく資源とバケツ。最後はあの冷静な加賀さんが、お札とルートギミックの多さにブチ切れて敵ボス艦隊を鎧袖一触にしたとか。て言うかそれで突破出来ちゃうなんて、連日の作戦会議はいったい何だったんでしょうか。

 

 

「ここまでくると、もはや風物詩だな」

 

 

徹夜明けでも、目の腐りようだけはいつも通りの彼が呟いたひとことが忘れられません。

 

 

このイベントでも、私の出番はありませんでした。後方支援を担う准艦娘なので、出撃任務が無いのは当たり前なんですが、傷付きながらも戦い抜くみんなを見ていたら、やっぱりちょっと複雑な気持ちです・・・はじめは後先考えず、ただ提督さん(せんぱい)を追って飛び込んだだけの戦場だったはずなのに・・・

 

 

気付けば、最前線に居ながら戦うことが出来ない自分のことが、少しだけ嫌いになりそうな今日この頃です。

 

 

MVPとして表彰されるみんなを見ていたら、自然と昔のことが思い出されてきました。まだ艦娘も深海棲艦も遥か彼方の存在で、私が純粋無垢な女学生だった頃のことが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?いま私、なんか変なこと言いました?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜1年前 千葉県千葉市 〜

 

 

おはようございます。一色いろはです。一年生にして総武高校の生徒会長を務める、純情可憐な美少女です。え?自分で言うな!とかツッコまれても事実なんですから仕方ありません。まあ、他にも華の女子高生としては不都合な真実があるんですけど、取り敢えずそれは置いておきましょう。

 

 

世の中、深海ナントカとの戦争が続いて大変みたいですが、正直いまは恋とオシャレの方が大事です。あ、私急いでるんでもういいですか?

 

 

てか思いっきり遅刻しそうなんです、はい。最近気になってるせんぱいのことを考えてたら、ついつい夜の日課が長引いて・・・わあぁ!いまの無し!とにかく!学校史上初の一年生会長として、遅刻なんて絶対に許されないのです。で、お気に入りのはちみつトーストを咥えて、朝の千葉駅前商店街を絶賛疾走中。

 

 

ふぅ、これなら何とか間に合いそう・・・ちらりとスマホの時計を確かめ余計なフラグを立てた瞬間、しくじりました。

 

 

「きゃ?!」

 

 

「ぐぇ?!」

 

 

曲がり角で出会い頭に誰かと衝突!哀れ、はちみつトーストは尊い犠牲となりました。いつもの私ならあり得ない失態。やはり何処かに焦りがあったのでしょう。はっ!?鉄板過ぎる展開ですが、もしかしたら相手はイケメンの転校生かも知れません。ここは可愛く行くことにしましょう。

 

 

「いった〜い!」

 

 

咄嗟に判断した私は、目いっぱい可愛らしさをアピールしながら尻もちをつき、見えるかどうか絶妙な角度でスカートを乱して両膝を立てます。我ながら完璧です。

 

 

「な、なんだぁ?」

 

 

「だ、大丈夫ですかアニキ?」

 

 

あ、大ハズレでしたねごめんなさい。お相手は、やけにオヤジ臭くて柄の悪いアニキさんとその取り巻きくんたちでした。あんたら、お呼びじゃねぇ・・・

 

 

「あ、大丈夫ですか大丈夫ですね。ではでは!」

 

 

モブに用は無いので、あざとく敬礼してからすぐさま走り出そうとした私でしたが・・・

 

 

「あ?待てやコラ」

 

 

「舐めとんのかワレ?」

 

 

めんどくさ・・・ってか、たったいま貴方たち標準語喋ってましたよね?

 

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

 

このままだとガチで始業時間に間に合わないので、私はいきなり奥義のひとつを繰り出しました。上目遣いの涙目です。さ、これで・・・

 

 

だがしかし。

 

 

「うぉ?このスケ超マブいじゃんかよ!」

 

 

は?こいつら昭和からの転生者か何かなんですか?

 

 

歴史的死語の連発に思わず固まってしまった私は、不覚にも彼らに付け入る隙を与えてしまいました。

 

 

「ぐぁ!い、痛てえよぉ〜骨が折〜れ〜た〜」

 

 

「あ、アニキ?うわ、こりゃひでぇ・・・」

 

 

唐突に猿芝居を始めるお猿さんたち。だからそういうのもういいんで。あと標準語に戻っちゃってますけど?

 

 

「よ、よくもアニキを・・・」

 

 

「ちょっと付き合ってもらうぜ、かわい子ちゃんよぉ」

 

 

冗談はよしこちゃん。あ、やば!私にも伝染っちゃった。

 

 

「折れたところをナデナデしてくれたら、許してやるぜ?」

 

 

「折れてないところもナデナデしてくれたりして。グヘヘ・・・」

 

 

・・・そろそろ限界です。この爽やかな朝の風を穢した罪は重いです。

 

 

「あ!アニキ、この娘の制服、あの総武じゃないすか?」

 

 

言われて初めて気付きました。お猿さんたちも制服らしき物を着ています。え?まさか・・・

 

 

「ふははっ、海浜総合高校の狂犬とは俺たちのことよ!」

 

 

「おまえらのような高校生がいるか!!」

 

 

あ!声に出ちゃいました。てへ♫

 

 

「こ、このアマ!可愛がってやるぜ!」

 

 

言うが早いか、お猿さん大将はなんと私の胸元に手を伸ばしてきました。激怒。٩(๑`^´๑)۶

 

 

「ほわたぁ!あたたたたたたたた!終わったぁ!」

 

 

・・・やってしまいました。ごめんなさいお母さん。年頃の娘が出す声じゃないですよね。か弱い私の不都合な真実。そうです、我が家は代々・・・

 

 

「へっ・・・効かねぇなあ?つーか、くすぐったくて死にそうだぜ」

 

 

はぁ、ここは何も分かっていない彼に説明してあげましょう。

 

 

「いま、君の経絡秘孔を突いちゃった。経絡とはいわば血の流れ、神経の流れ。秘孔とはその要髄だよ!!」

 

 

「は?何を言って・・・い、いい気持ちだ〜ちにゃ?」

 

 

「あ、アニキ・・・?」

 

 

天国を感じているアニキさんの顔に、子分の皆さんも若干引いてますね。自分でやっておいてなんですが、私もキモくて失神しそうですごめんなさい。もう、さっさと終わらせちゃっていいですよね、これ。

 

 

「確実な死は5秒後!念仏でも唱えてね」

 

 

「ち、ちょっと待ってくれ・・・た、たのむ」

 

 

効果てきめん。雑魚です。

 

 

私は敢えて無言を貫き、目元に翳が差すように小首を傾げました。ここは非情に行きましょう。

 

 

「う、うわあ!! い、いやだ、お、俺はまだ死にたくねぇ、DTのまま死にたくねえ~っ!!死に!たわっ?!」

 

 

聞きたくもない真実を叫ぶボス猿君。少しだけかわいそうになってきたので、フォローしておきますね。

 

 

「痛い?」

 

 

「痛い痛い!」

 

 

「助かりたい?」

 

 

「助かりたい!助かりたい!」

 

 

「う〜ん、どうしようっかなぁ」

 

 

私はほっぺたに右手の人差し指を当てて、少し考え込む仕草をします。まあ、いずれにしろ結論は変わらないんですけど。

 

 

「やっぱり、ダ〜メ♪」

 

 

「い、いろはっ!」 

 

 

バゴワッ!!

 

 

きゃ!汚〜い!なんか飛んで来た!信じられない!汚物は消毒だよ!

 

 

体液を撒き散らしながら悶絶する大将くんは無視して、スマホの時計を再度確認。そして私は通学カバンを拾うと駆け出しました。生徒会長の誇り、こんなところで失う訳には・・・

 

 

あとは校門まで全力です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、思い出したぞ。総武には一年女子に伝説の使い手がいるって・・・」

 

 

たちまち小さくなってゆく華奢な後ろ姿を見送りながら、海浜総合の狂犬は呻きます。爆裂の秘孔を突かれた筈の彼は、なぜか無事でした。去り際にわたしが、秘孔の効果を無効化する奥義『秘孔封じ』を施していたからです。優秀な生徒会長さんは、アフターケアもまた万全なのでした。(自賛)

 

 

「マジっすか。はっ!?ま、まさかいまのが・・・」

 

 

「ああ、七つの顔を持つ、亜麻色の髪をしたあざとい乙女らしい。流派の名前は確か・・・」

 

 

恐怖に慄きながら、その名を口にします。

 

 

「いろは神拳・・・」

 

 

「あわびゅ!」

 

 

「あろ!」

 

 

「ぱっびぶっぺっぽおっ!」

 

 

そして、聞くに堪えない断末魔が、爽やかな朝の商店街に響くのでした。




次回予告:いろはすの追憶(後編)
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