やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第30話:南の島の冬祭り(中編)

さて、雪ノ下に部屋から引き摺り出された俺は、途中で大淀とも合流して地獄(お祭り)へと向かっていた。会場を提供した側の責任者として、挨拶をしなければならないのだ。俺なんかが顔を出したところで、盛り下がる未来しか見えないんだが。

 

 

「はぁ・・・カッコよくなっても、自己評価だけは変わらないのね・・・」

 

 

語尾を濁した雪ノ下の台詞は、近付いて来た祭囃しにかき消された。まだ宵の口だが、辺りにはすでに焼きそばやらお好み焼きやら、美味しそうな香りが漂っている。おそらく、かなり本格的な屋台が出ているのだろう。

 

 

「そう言えば、横須賀からは護衛部隊以外に給糧艦娘も来ていたのだったな」

 

 

安定の提督さんモードで会話を繋ぐ。このキャラなら普通に喋れるんだよなぁ。もう、四六時中これで行くか。(ムリ!絶対!)

 

 

「ええ、確か伊良湖さんが参加していたはずよ」

 

 

「え?伊良湖ちゃん?間宮さんじゃないの?」

 

 

「て、提督?」

 

 

戸惑いの表情を浮かべる大淀。

 

 

はっ!?い、いかん!驚きのあまり提督さんスイッチが切れ、思わずいつもの口調で聞き返してしまった!だが営々と積み重ねてきたこのキャラ設定、こんなところで失うわけには・・・

 

 

「ゲフンゲフン!う、うむ。ち、鎮守府の台所を預かる艦娘と言えば、やはり甘味処を切り盛りする間宮が代表格だろう。こんな食の大規模イベントには不可欠だと思うが?」

 

 

危ういところで歴戦の提督さんモードに復帰する。ほぅ、これが轟沈ストッパーというヤツか。(違う)

 

 

「言われてみれば確かにそうね」

 

 

いつもの俺を知るがゆえ、大して反応を見せずに相槌を打つ雪ノ下。お前は俺の母ちゃんか?

 

 

「ふむ・・・やはり妙だ。敢えて間宮さんを外す理由が見当たらんな」

 

 

全てを超越して自らを演出し続ける乙作戦常連提督の図。自演乙。

 

 

と、なぜか躊躇いがちに大淀が口を開いた。

 

 

「提督はご存知ないのでしょうか。横須賀鎮守府の間宮さんのことを」

 

 

「ん?何をだ?」

 

 

「その・・・深海間宮についてです」

 

 

「深海間宮?」

 

 

はて?ブラウザ版にはそんなキャラ居なかったぞ?まさかアーケード版限定実装ってやつ?

 

 

「はい。第一級軍機扱いですので、あまり知られてはいないようですが・・・」

 

 

もちろんハチマンご存知ない。

 

 

「彼女は、放棄された友軍基地に誤って出向させられ、そのまま現地で行方不明になってしまったのです」

 

 

「なっ・・・!?」

 

 

いきなり重い話が来たな・・・

 

 

その後大淀から聞いたところでは、間宮さんを送り届けた大艇ちゃんはそのまま引き揚げてしまい、彼女はひとり、無人の基地に取り残されたという。呆然と立ち尽くす間宮さんの後ろ姿が目に浮かぶようだ。

 

 

やっぱ泣けるわ。

 

 

「大本営が事態に気付いた時は、すでに手遅れで・・・基地の周辺海域は深海棲艦によって封鎖されており、救助活動は早々に打ち切られました」

 

 

司令部のミスで貴重な艦娘を・・・許せん。

 

 

「そんなことが・・・」

 

 

暗い表情で呟く雪ノ下。同じ艦娘として、感じるところがあるのだろう。

 

 

「大本営では、近年最大の黒歴史と呼ばれているそうです」

 

 

微妙に黒歴史の意味合いが違うような気もするが、いま大事なのはそこじゃない。

 

 

「それはつまり・・・その間宮さんが深海化した、ということか」

 

 

「はい、おそらく・・・深い怨みや強い後悔の念が、艦娘の深海化を促す要因として考えられる以上、その可能性は高いかと」

 

 

確かに、たとえ手違いとは言え、置き去りにされた上に見捨てられたとなれば、彼女が抱えた負の感情は相当なものだろう。深海棲艦へ闇堕ちするには充分すぎる理由だ。もし俺だったら、怨みのあまり眼が腐ってしまうまである。あれ?それって結局どこも変わってない?

 

 

「海軍上層部は、いずれ深海間宮として出現するのではないか、と戦々恐々なようです」

 

 

まさかここに現れたりはしない、よね・・・?

 

 

自分で盛大にフラグを立てつつ、思考を巡らす。深海化した艦娘の成れの果て・・・深海間宮棲姫壊とか、深海魚でフルコース料理作ってそうだわ。雑味処間宮。お味の方は比叡カレーといい勝負だろ。(極論)

 

 

つか、確か深海如月ちゃんは、すっぽんぽんで浮かんできたんだったよな。てことは、あの間宮さんも裸エプロンならぬ裸割烹着で・・・うっ!い、いかん!!想像したら俺の12.7cm単装高角砲がっ・・・?!対空戦闘よぉーい!

 

 

「提督?」

 

 

不意に前屈みで停止した俺へ、不審げな視線を向けるふたりの艦娘。ここで真実が明らかになれば俺の耐久値はゼロとなり、晴れて深海提督が爆誕する。(予定調和)

 

 

「し、しかし、そもそもなぜそんな手違いが起こったのだ?」

 

 

幸いにも苦し紛れのひとことは、話題から逸れることなく着地した。ふぅ・・・大淀は、単に俺が長考でもしているように思ったらしい。日頃の提督さんキャラ作りが功を奏したな。(完全S勝利)

 

 

「あ、はい・・・当時は第二期移行措置(戦力再展開)の最中で、大本営も各地の拠点も混乱していました。何しろ、そのせいで解放済みの海域をほぼ全て奪還されてしまったくらいでしたから」

 

 

えぇ?!あれ(第二期移行)ってゲームの中だけじゃなかったの?リアルでも全海域失陥とか洒落にならんだろ。て言うか、全マップリセット許すまじ。(いまさら)

 

 

「そのため、出向命令書のミスに誰も気付かず、救出部隊の派遣も遅きに失する結果となってしまったのです」

 

 

そりゃ海外からのサーバー攻撃どころじゃない騒ぎだ。最終シークエンスに入る以前の問題だろ。

 

 

「そうか・・・で、それはいつ頃の話なのだ?」

 

 

「8年ほど前になります」

 

 

8年・・・ちょうど俺が総武小学校で本格的なボッチデビューを果たした頃か・・・う!い、いかん!これ以上の黒歴史発掘は、泣ける以前にハチマンがまた深海化してしまう・・・

 

 

『艦これアニメ第2期:深海提督の憂鬱1944 いつかあの海の底で』

 

 

イ級の群れに囲まれた腐り目司令官とか誰得よ?それどころか、タイトル自体がフラグを立てて自ら回収しているまである。

 

 

そう言や、ルミ潮たちのアイアンボトムサウンド攻略作戦を舞台にしたアニメの企画はどうなった?いい加減、そろそろ本編PVくらい一般公開してくれても良いのよ?(第19話参照)

 

 

「あ、それに関しては内容の一部改変が行われたようです」

 

 

「なん・・・だと?」

 

 

俺の独り言に反応した大淀の言葉に、自然と語気が強くなる。

 

 

「いえ、で、ですからキャストの変更等が・・・」

 

 

「そこをもっと詳しくっ!!」

 

 

「ひゃ?!」

 

 

若干引き気味の大淀が、眼鏡を押さえながら話し始めた。

 

 

「は、はい。えっと・・・主人公は新米少将の葉谷間(はやま)提督。ヒロイン枠には秘書艦の時雨さんが内定しています」

 

 

動く時雨たんはもう見たけど、キャラデザがちょっと変わったっぽい?それより、はじめからいきなり少将とか階級おかしくね?どこぞのラインハルト様かよ?あと主人公さんのお名前が立派な胸部装甲を連想させますけど、女性提督と時雨たんの百合鎮守府ものって認識でOK?

 

 

「ストーリーは、このふたりが生まれ故郷の千葉県を深海棲艦の攻撃から守り抜くというものです」

 

 

全面改変じゃねぇか?!もう、爆死確定じゃん!それにずいぶんとまた思い切った世界観設定だな。まさかふなっしーとか出てこないよね?

 

 

「激しい戦いのさなか、主人公を庇った時雨さんは轟沈して深海化。彼女を救い、輪廻のゼロを解き放つべく、葉谷間提督は宿敵深海提督と対決します」

 

 

うーん。なかなかのあらすじだけど、もう一捻り欲しいよね、KADOKAWAさん?

 

 

「葉谷間提督は無自覚なまま次々と艦娘たちを堕としつつ、敵の本拠地に迫ります」(誤字)

 

 

陥とすもの間違ってない?無自覚系主人公とかいちばん面倒なタイプだし。あとそれ、映像化して大丈夫?

 

 

「そして聞いて驚くなかれ。なんと深海提督の正体は、主人公の元クラスメートだったのです」

 

 

「だいたい見えてきたからもういいわ」

 

 

「あぁ、お待ち下さい深海提t・・・じゃなかった比企谷提督!まだ続きが・・・!」

 

 

もう答え言っちゃってるじゃん、それ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ。やって来ました鎮守府冬祭り。

 

 

椰子の木に囲まれた会場は、ショートランド所属の艦娘に本土からの民間人、さらには横須賀鎮守府のメンバーも加わり、賑わいを見せていた。て言うか提督さんコス多すぎない?しかもみんな様になってて、いちばんコスプレっぽいのが俺とか、もう帰っちゃってもいいよね?(劣等感)

 

 

で、あちらには大根足の金剛型四姉妹と背が高すぎる第六駆逐隊。そちらには銀髪とツインテ()()はそっくりの五航戦に、ぜかましの出で立ちをしたガタイの良いお兄さん。(憲兵さんコイツです!)

 

 

そしてこちらには・・・

 

 

「ひょっ!?」

 

 

間近に迫る戦艦ル級。再現度が高すぎて変な声出ちゃっただろ!紛らわしいとこに立つなよ!てかよく見たら眼鏡掛けたおじさんだし。んでその隣には、着ぐるみほっぽちゃんとハリボテの尻尾を付けたレ級モドキ。いずれもレイヤーさん会心の作品なんだろう。

 

 

しかしこれ、かなりヤバいんじゃないか・・・

 

 

盛り上がる面々を眺めながら、冷たい汗が背中を伝う。もしもこの中に『本物』が混じっていたなら、ショートランドは一瞬で陥落する。それでも俺は本物が欲しい・・・(錯乱)

 

 

「ご心配には及びません。私たちは艦娘です。提督と深海棲艦は絶対逃がしませんから」

 

 

「ええ、逃がさないわ、絶対に」

 

 

「そ、そうか。頼りにしているぞ」

 

 

俺の懸念を払拭するように、力強く宣言する大淀と加賀。つまり彼女たちが居る限り、深海棲艦が紛れ込む隙など無い、ということだ。やれやれ、ひと安心だなぁ・・・(棒読み)

 

 

いやでも君等いま、サラッととんでもない事実をぶち込んできたよね?提督絶対逃さないガールとか、もはやツンデレ通り越してヤンデレでしょ。ハイライトオフの神通さんや川内姉さん相手じゃ、暁の水平線に勝利を刻む前に俺が刻まれちゃうまである。先に逝って、待っているわね・・・(誰を?)

 

 

「みんなー!艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ〜!」

 

 

と、恐怖に慄く俺の耳に、あの独特なボイスが聞こえてきた。良くも悪くもアイツはぶれない。そこは素直に評価すべきだな、うん。

 

 

それにしても、さっきから一色の姿が見当たらなかった理由はこれだったのか。さすがに一人二役同時出演は辛いよね。(意味不明)

 

 

「じゃあ次はお待ちかね。この楽曲にしようかな♪『シズメシズメ』聞いてね〜!」

 

 

は? What are you saying , Naka-chan?

 

 

ち、ちょっと想像してみてくれ。那珂ちゃんが歌うあの名曲を。耐えられる者などひとりも居るまい。また君を沈めろと言うのか?言うのね?

 

 

やはり那珂ちゃんの選曲はまちがっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?那珂ちゃんの歌唱シーン?まあ察してくれ。(著作権)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア、アレはさすがに気分が高揚・・・しなかったわ」

 

 

こめかみを押さえながら立ち上がる雪ノ下。

 

 

「はわわわ・・・な、なにがあったのです?電は記憶が飛んでいるのです」

 

 

「歌は、いつか止むさ」

 

 

「頭の中で那珂さんが、那珂さんが囁くのです・・・」

 

 

周りでも、危うくシズミかけた艦娘たちが再起動している。あれだけシズメシズメ連呼されたら、まぁ、そうなるな・・・

 

 

破壊力満点のステージから立ち直った俺たちは、冬祭りの会場を見回す。いつの間にか、すっかり夜の帳が下りたショートランド基地。夜間照明に浮かび上がった執務棟や入渠ドックは綺麗に飾り付けられ、いつもと違った印象を見る者に与えていた。いかにもリア充が好みそうな非日常感ってやつだ。さっさと爆発しろ。

 

 

そんな中、ひときわ目立っていたのは、ずらりと並んだ屋台コーナーだ。運営しているのは、艦娘や深海棲艦の格好をしたレイヤーさんたちのようだが・・・

 

 

「お?そこのイケメンな提督さん!タコ焼きなんてどうだい?」

 

 

川内姉さん(仮)が、威勢よく声を掛けてくる。制服や艤装の再現度、キャラ作りも素晴らしく、本物と見分けがつかない。レベル高過ぎるだろ、あれ。

 

 

ん?

 

 

「くっ・・・!一般人だと思って油断していたわ。攻撃隊、発艦準備!」

 

 

いやだからなんでまた艤装を展開しているのかな、ゆきのん?

 

 

コスプレ川内に謎の対抗心を燃やしている雪ノ下を諭そうとした俺は、ふと異変に気付いた。人で溢れる屋台コーナーの一角に、まったくお客の姿がない暗がり。そしてそこにはポツンとひとつ、忘れ去られたような屋台があった。店先にはなぜか『警備』の腕章を付けた川内と神通が。ぼっちとしての直感が、何かを察知する。

 

 

「ちょっと、様子を見てみるか・・・」

 

 

らしくないことをしている自覚はあるが、万が一という可能性もある。ここは地獄の南方海域最前線なのだ。

 

 

慎重に近付いてみると、

 

 

【ヲでんはじめました】

 

 

無駄に流麗な崩し字で書かれた幟が立っている。店番の姿はなく、夜風に揺れるお品書き。

 

 

・・・なかなか個性的かつ本格的な品揃えだが、鎮守府に深海ネタを持ち込む時点で、かなり残念かつナンセンスな屋台であることも確かだ。

 

 

「ヲでんか・・・」

 

 

「「うひゃん?!」」

 

 

湯気をたてるおでんの保温器を覗き込むと、川内と神通が仲良く飛び上がった。さすが姉妹。息もぴったりだ。

 

 

「な、なんだ、提督かぁ・・・でも私の電探に反応しないなんて・・・」

 

 

ステルスヒッキー舐めんなよ。まさしく才能の無駄遣い。

 

 

「で、ふたりはどうしたのだ?」

 

 

「はい、なぜかこの屋台が気になりまして・・・」

 

 

神通が答えようとした瞬間、屋台の裏から声がした。

 

 

「ヲでん、いかがですか」

 

 

「「「「ひゃうわぁ!?」」」」

 

 

いきなり登場した店番。現れたのは細身の碧眼美少女だったのだが・・・青白い肌、はためくマント、そして頭のバカでかい艤装。

 

 

「空母ヲ級のレイヤーさん・・・」

 

 

近くで見ると、もはやそれはヲ級以上にヲ級である。この技術、何かもっと使い道ない?

 

 

「あは!面白いコスプレじゃん!良く出来てるよ!」

 

 

大笑いしながら、ヲ級の頭部艤装をぺちぺちと叩く川内姉さん。自由すぎる。しかし。

 

 

「は、離れて姉さん!その子、ヲ級です!」

 

 

「はぁ?なに言ってるんだよ神・・・」

 

 

言いかけた夜戦バカの表情が凍る。え?まさか本物?

 

 

瞬時に艤装を展開する軽巡姉妹。加賀は素早く弓を構えた。この距離なら艦載機化させるより、直接攻撃した方が効果的だと判断したようだ。てか痛そう。

 

 

「動かないで!両手を頭の上で組みなさい!」

 

 

俺を守るように前へ出た大淀の声。いや、あのデカい頭でそれは無理だろ。

 

 

いきなり半包囲され、困惑した様子の空母ヲ級(仮)。何がどうなっているのかさっぱりだが、要するに眼の前のヲでん屋台は深海棲艦が出店していたものらしい。(理解不能)イベントのお札制限よりも複雑怪奇だ。て言うかあれってもう、素直に丁作戦一択で良くね?(真理)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだい?」

 

 

と、不意に近くから発せられたイケボ。突然の事態に狼狽えながら、意味もなく左右に視線を走らせた俺は・・・歩み寄ってくる人影に気付いた。

 

 

純白の第二種軍装に長めの金髪。嫌味なまでに整った顔。艦娘たちの理想を具現化したようなイケメン司令官さん。

 

 

そう、視線の先に居たのは、再会したくないランキング2位のアイツだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ちなみにランキング1位は()()()です)ボソッ




次回予告:南の島の冬祭り(後編)
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