やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第32話:遥かなる南十字星

「世話になったな、比企谷」

 

 

さすがに疲れた様子で、別れの挨拶をする葉山少将。それもまた絵になるのが気に食わないが。

 

 

「それと、さっきは済まなかった。部下の失態は俺の責任だ。謝罪させて欲しい」

 

 

律儀に頭を下げるやつの後ろでは、秘書艦殿が縮こまっていた。さすがに、ことの重大さは分かっているようだ。

 

 

「やめてくれ。少なくとも俺に関しちゃ三浦の言う通りだしな。教室の日陰者が提督さんとか、なんなら自分がいちばん驚いているまである」

 

 

「それでも筋は通させてもらうよ。これは優美子・・・いや、俺のためでもあるんだ」

 

 

ふっ・・・やっと認めたか。この捻デレさんめ。

 

 

さて・・・

 

 

「その、申し訳ありませんでした、()()()()()・・・」

 

 

この期に及んでなお、提督呼びしないところがあーしさんらしい。やっぱこいつら似た者夫婦(ベストバカップル)だわ。

 

 

頭を上げ、今度は雪ノ下へと向き直る三浦。恐らく、罵詈雑言の雨が降り注ぐことだろう。さあ、見せてもらおうか!ブチ切れした加賀さん(ゆきのん)の性能とやらを!(他人事)

 

 

「加賀さん・・・度重なる無礼、お詫びします。ごめんなさい」

 

 

「いいえ、気にしないで。あの状況なら思い違いをしても仕方ないわ。それに・・・」

 

 

へ?

 

 

一度目を閉じてから、柔らかい微笑を浮かべるゆきのん。まさか貴女、壊れちゃった?

 

 

「三浦さんの物言いは辛辣だったけど、嘘偽りのない『本物』だと思ったから」

 

 

その言葉に、信じられないものを見たような間抜け面を浮かべるイケメン。対照的に冷静な表情を崩さない俺だったが、まあ、ぶっちゃけ驚きすぎて反応出来てないだけだったりする。

 

 

「雪乃ちゃん、君は・・・」

 

 

暫しの驚愕のあと、複雑な表情で雪ノ下を見詰める葉山。三浦は言葉もなく立ち尽くすばかりだ。あれ?なんか俺だけ蚊帳の外?

 

 

「そうか・・・彼女を変えたのは、やっぱり君なんだな?」

 

 

そう呟きながら、何故だが俺へと意味有りげな視線を向ける葉山閣下。その眼差しに妙な圧を感じ、思わず後退りする。はっ?!まさかガチで()()×()()()とか絶対ムリですキモいです出直して来ないで下さいお互いホモダチ・・・じゃなくてトモダチのままで居ましょうごめんなさい。

 

 

ふはははは!どうだ!この比企谷八幡、人生で初めて振ってやったぜ!(ゲシュタルト崩壊)

 

 

「これが君の言う『本物』・・・」

 

 

そして勝手に納得したらしいやつは、さっぱりした顔付きになって続けた。自己完結かよ。

 

 

「改めて言わせてくれ、比企谷。君がいなければ俺の命はなかった。有難う」

 

 

「俺は何もしちゃいない。礼なら伊良湖に言ってやれ」

 

 

本音で返せば、ため息混じりの苦笑いを浮かべる葉山。

 

 

「君は相変わらずというか・・・芯が通っているな」

 

 

「は?俺がか?冗談だろ?最近はキャラがブレまくりで、自分でも把握出来なくなってきてるわ」

 

 

「ふっ・・・そういうことにしておくよ。まあ、おかげで色々と印象深いリアルイベントになったしね」

 

 

「確かに、本物のヲ級に襲われる経験なんて、なかなか出来ないからな」

 

 

もう少しで爆発するリア充も見れたんだけど。

 

 

言葉の後半は飲み込んで、敬礼する。ん?要するに、早く帰れってことさ。

 

 

「ところで比企谷・・・もしあの時、うちの伊良湖が飛び出さなかったら、君はどんな指示を出すつもりだったんだ?」

 

 

だが、こちらの意図を汲まず、なおも会話を続ける横須賀のイケメン。やれやれ、引き際を弁えないKY野郎には、トドメの一発が必要らしい・・・

 

 

「決まってんだろ。もちろん『撃て!』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして葉山たちを乗せた輸送船団を見送り、鎮守府冬祭りは終わった。で、いまさらだけど、俺の挨拶って結局どうなったんですかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、あなたのやり方・・・はぁ、もういいわ」

 

 

呆れたようにため息を漏らす加賀改二戊(ゆきのん)

 

 

「いいえ、私はもっと詳しくお聞きしたいわ。出来ればふたりきりで」

 

 

なぜか食い気味に話すのは、加賀改二。

 

 

祭りのあと、妖精さんたちも動員した撤収作業も終わり、静寂を取り戻したショートランド基地。満天の星空の下、俺はふたりの加賀さんを連れて執務室へと歩いていた。これぞ両手に花ならぬ、両手に加賀。

 

 

「まあ・・・善処する」

 

 

完全先送りの受け答えをしてから、話を変える。ふたりもその辺りは分かっているんだろうし。

 

 

「それにしても、まさかあの間宮さんだったとはな」

 

 

やはり話題はそこに行き着かざるを得ない。

 

 

「ええ、初めは何が起こったのか分からなかったわ。緊急電を聞いて飛んで行ったら、横須賀の提督がヲ級に捕まっていたんですもの」

 

 

加賀改二の言葉は、あの場に駆け付けた艦娘たちの驚きを代弁していた。まぁ、そうなるな。

 

 

「そして、提督の()()()()()()ですが・・・なぜあんなやり方を?」

 

 

うぐっ!一瞬で話題が元に戻っちゃったよ。てか何も言えねぇ。作り上げてきた歴戦提督キャラも完全崩壊しちまったし、明日からどんなキャラ付けで行けと言うのです?

 

 

キョドりながら口ごもる俺に、雪ノ下からまさかのフォローが。

 

 

「でも、結果的にひとりの、いいえ、ふたりの艦娘を救ったのだから、今回ばかりは貴方の行動が正しかったと思うわ。甚だ遺憾ではあるけれど」

 

 

こいつ(ゆきのん)がこんなことを言うようになる日が来るとは・・・頑なだったあの頃が、嘘みたいだぜ。

 

 

「今回・・・?まさかこれまでにも?」

 

 

やけに拘りを見せる加賀改二。やっぱこの話題、もう終わりにしません?

 

 

「ええ、何度も。でもこれ以上は守秘義務があるから言えないわ、ふふっ」

 

 

優越感に満ちたドヤ顔を見せるゆきのん。だからもう止めましょうって!

 

 

「くっ!ショートランドで比企谷提督といちばん付き合いが長い艦娘は私です。だから彼のことは全て知っておく必要があるわ」 

 

 

「あら、なにを焦っているのかしら?別にそんなこと(黒歴史)なんて知らなくても、艦娘は務まるのではなくて?」

 

 

だから喧嘩を止めて!ふたり(加賀さん×2)を止めて!わたし(提督さん)の為に、争わないで!心の中で熱唱すれど、事態は悪化の一途を辿り・・・

 

 

「いいわ。こうなったら空母艦娘らしく、正々堂々と艦載機で勝負しましょう」

 

 

高らかに宣言する加賀改二。いや、そういうの決めるのは俺なんですけど。

 

 

「分かったわ。じゃあ早速始めましょう?ただし、貴女に夜戦能力が有れば、の話だけれど」

 

 

負けず嫌いの加賀改二戊(雪ノ下)が応じる。因みに夜間艦載機運用能力を持っている加賀さんは、改二戊だけだったりする。てことは始めから勝負にならないだろ・・・泣ける。

 

 

「ぐっ!貴女も元戦艦なら正々堂々と砲撃戦で勝負なさい!」

 

 

つかあなた(加賀改二)、さっきと言ってること真逆になってない?

 

 

ふたりの加賀さんの同士討ちにげんなりしつつ、今日の騒ぎを振り返る。そう、もうお分かりだろう。あのヲ級さんの正体は、行方不明になっていた横須賀鎮守府の間宮さんだったのだ。そしてそれをひと目で看破した伊良湖ちゃん。例のヲでんを試食した瞬間、確信したそうだ。これは先輩の味だ、と。ほぅ、間宮さんの味か。ちょっと卑猥に思う俺ガイル。ゲフンゲフン。

 

 

で、あのヲ級間宮さん。聞いたところでは、通信傍受で横須賀の艦隊が来場することを知り、懐かしさのあまり屋台を準備して、お祭りに潜入したんだとか・・・

 

 

いやでもちょっと待って。それって確実にこっちの暗号破られてるよね?あと、うちの警備もザルだったってこと?(責任問題)

 

 

「貴女は先輩・・・間宮先輩、ですよね?」

 

 

あの時、抗う間もなく伊良湖に抱き締められたヲ級は、淡い光りに包まれて艦娘化した。ふたりの間には、同じ給糧艦娘として浅からぬ縁が有ったらしい。この8年間、先輩(間宮さん)の無事を願い続けていた健気な後輩(伊良湖ちゃん)。まさに絆が生んだ奇跡だった。

 

 

あれもまた『本物』なのだろうか・・・

 

 

え?葉山?あぁ、腰を抜かしてひっくり返ってたよ。実に漢らしかったぜ。(嘲笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本土に戻った間宮さんにどんな未来が待っているのか、それは誰にも分からない。でもあの絆がある限り、きっと・・・

 

 

夜空に輝く南十字星を見上げながら、俺はそっと彼女の幸せを願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(南の島の冬祭り)

 

 

  〜おわり〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずいぶんと月並みなラストね。学年3位の国語力は何処へ行ったのかしら」(ゆきのん)

 

 

「碌にセリフも無いままこれで終わりとは、さすがに頭にきました」(加賀改二)

 

 

がはっ!

 

 

え?給糧艦が空母になるって艦種的におかしいんじゃないかって?そこは二次創作だから。(開き直り)あと、生まれたままの姿で艦娘化した間宮さんだったけど、直ぐに横須賀の子たちが周りをブロックしちゃったから、ハチマン何も見てナイヨ?べ、別に全然残念だったなんて思ってないからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短い回想は終わり、沈黙が辺りを支配する。いつしか会話も途切れ、そろそろ執務棟に着こうかという時、ふと俺は気付いた。椰子の木陰に佇む人影に。見慣れぬ空母艦娘だが、はて?頭には大きな猫耳・・・って猫耳?ま、まさかっ?!

 

 

「KAN-SEN?」

 

 

呻く俺。

 

 

「NĒ-SAN?」

 

 

呻くゆきのん。ってかなんでこっちまでローマ字表記なの?

 

 

「姉さん?」

 

 

首を傾げて訝しむ加賀改二。

 

 

「久し振りね、加賀。いえ、雪乃ちゃん?」

 

 

優雅な仕草でこちらを向いた謎の彼女は、そっと猫耳を外し・・・てか外れんのかよ、それ。

 

 

空母加賀(はるのん)、参りました。指揮官、そんなに見つめたら、お前をつい食べたくなっちゃうぞ?」(隠喩)

 

 

まさかの加賀さん三人目ならぬ、妖しく微笑む雪ノ下陽乃(千葉の大魔王)。怖い。てか、やっぱルビ(ふりがな)おかしいだろ。あとそのセリフ、アズールレーンの方じゃね?(大爆発)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっているらしい。




次回予告:名前で呼んで
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