やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第33話:名前で呼んで

「おはようございます、提督」

 

 

「ん・・・あぁ、おはよぉ・・・おうっ?!」

 

 

爽やかな朝の光に包まれた枕元。そこに正座していたのは、本日の秘書艦である加賀改二。あまりにナチュラルなその態度に、一瞬受け入れそうになった俺ガイル。

 

 

「寝苦しそうにしておられましたが、怖い夢でも見たのですか?」

 

 

確かに昨夜はちょっと眠りが浅かったな。なんだか常に見られてる気がして・・・ってか、なんでそれを知っている?

 

 

「一晩中、妖精さんを通して覗き・・・ケホケホ!見守っておりましたので」

 

 

「ひ、一晩中?」

 

 

「はい、一晩中です。みんな優秀な子たちですから」

 

 

てか怖いよマジでっ!しかもいま君、()()ってはっきり言ったよね?あとそれ、妖精さんの使い方完全にまちがってるから!

 

 

「し、しかしものすごい集中力だな。心身への負担は相当なものだろう」

 

 

「いえ、問題ありません。眼福・・・ケホン!鎧袖一触でしたから」

 

 

・・・ってことは夜の演習もばっちり見られちゃったんですね分かります。(;´д`)トホホ

 

 

「・・・念のため聞くが、何を見た?」

 

 

「第一級軍機です」

 

 

もう殆ど答え言っちゃってるじゃん。何してくれてんのよ貴女?

 

 

「心外だわ。全力で夜のご奉仕をしたというのに、まだご満足頂けないのですね」

 

 

だから天然で誤解を招く言い方しないで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日の深海間宮さん事件を受け、ここショートランドでは提督()に対する警備体制が強化された。執務時間中は常に、護衛の艦娘が張り付くことになったのだ。名付けて『提督さん守り隊』だとか。まぁ、それは良いんだが・・・

 

 

「ほぅ、いかにも駆逐艦娘あたりが思いつきそうな、安直なネーミングだ」

 

 

場を和ませるつもりで口にした感想は、だが最悪の結果をもたらした。

 

 

「名付けたのは私です」

 

 

抑揚の無い声で告げ、じっとこちらを見詰める加賀さん。日頃から表情の変化に乏しい彼女だが、実は結構、喜怒哀楽がはっきりしていたりする。

 

 

「・・・」

 

 

激おこぷんぷん加賀さん丸。劇場版で吹雪に精神攻撃(主観)を加えていた時の顔だ。敢えて言おう。やはり俺の対人スキルはまちがっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう何個目か分からない黒歴史の記憶を振り払うと、俺は現実に向き合った。つまり、起床することにしたのだ。さらば二度寝よ、また会う日まで。

 

 

「と、とにかくご苦労だったな。見守り感謝する」

 

 

あ、言い忘れてたけど、歴戦提督キャラは継続中だからね。だって他にレパートリー無いし。ふははははっ!(空虚な高笑い)

 

 

いつもどおり、泣ける。

 

 

さて、加賀さんへ暗に退室を促した俺は、寝間着代わりのジャージから提督服へ着替えようとしたのだが・・・

 

 

(。゚ω゚) ハッ!

 

 

凛とした空気を纏い、背筋を伸ばして正座したままの加賀さん。動く気は無いらしい。思わず見惚れてしまう美しい姿だけど、やってることは不審者同然。

 

 

「どうした、まだ何か用か?」

 

 

「いえ、お気になさらず」

 

 

お気になさるわ!だって君、目が据わってるし、こっちをガン見してるじゃん!何なの、変態さんなの?(大正解)さすがのハチマンでも勘違いしないで告らず振られないまである。(激レアケース)

 

 

「秘書艦とは常に、提督のお側に仕えるものです」

 

 

「確かにな。だが、いまはまだ執務時間外だぞ?」

 

 

「分かりました。では些か不本意ですが目を閉じます」

 

 

いやそれ全然答えになってないから!些か不本意ですが!あと澄まし顔で薄目開けてるの超怖いしホントに寝れなくなっちゃいそうだから止めて下さいごめんなさい。

 

 

最近毎日、朝からこんな感じの日々が続いている。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

〜鎮守府食堂〜

 

 

「あーその、か、加賀・・・さん?」

 

 

遅めの朝ごはんを食べ終わると、俺は呼びかけた。

 

 

「何でしょう?」「何かしら?」「な〜に?」

 

 

一斉に揺れる、みっつのサイドテールと三者三様の返事。どれが誰なのかは察してほしい。いま、俺の前には3人の加賀さんが座っている。向かって左から順に、加賀改、加賀改二、そして夜戦仕様の加賀改二戊だ。つまり同型艦が3隻在籍しているのだが、うち2隻は実の姉妹艦でもある。自分でも何を言ってるのかよく分からない。詳細は本人たちに聞いてくれ。

 

 

で、どうしてこうなった?

 

 

壁のスケジュール表に目を遣れば、本日の護衛兼秘書艦の欄には『加賀』のプレート。つまり、この3人は互いに我こそは、と牽制し合っているのだ。小学生かよ?

 

 

新入り(姉さん)は遠慮するべきだわ」

 

 

「あら?そう言う古株さん(雪乃ちゃん)こそ」

 

 

「ふたりとも控えなさい。提督の迷惑になるわ」

 

 

いや、君ら全員迷惑だから!

 

 

そして俺が話を切り出す前に、初弾が放たれた。

 

 

「ところで提督、寝言で仰っていた『ゆきのん』とは、どなたのことなのでしょうか?」

 

 

「ぶっ!!」

 

 

「ケホケホ!」

 

 

どストレートな加賀改二の問いに、仲良く同時に噎せる俺と夜戦加賀(ゆきのん)。なぜこのタイミングで言うかな?君、絶対わざとだよね?

 

 

「どうしたのだ?藪から棒に」

 

 

しかし提督さんスイッチは切れない。中2病もここまで拗れると、もはやデフォルト設定である。

 

 

「いえ、単なる雑談です」

 

 

いや、雑談って雰囲気じゃないよね?完全に激おこじゃ・・・

 

 

「ざ・つ・だ・ん、です」

 

 

今にも第一次攻撃隊を発艦させそうな加賀さんへの対応を考えていると、先に第二次攻撃隊が現れた。てか順番おかしくない?!

 

 

「ふーん、提督(比企谷君)はやっぱり雪乃ちゃんが本命なんだ」

 

 

ガタッ!

 

 

[加賀改(はるのん)のひとことで、空気が一変する鎮守府食堂。もうやめて!!朝から俺の耐久値は輪廻の零よ?!

 

 

「うちにそんな名前の艦娘は居ないが?」

 

 

それでも、外見上は僅かな綻びすら見せない迷将、比企谷提督。かなり以前、葉山にかましたセリフで逃走を図るも・・・

 

 

「ええ、ですから艦名ではないのでしょう」

 

 

ん?どゆこと?

 

 

「正規空母加賀改二戊。彼女の名前が雪乃だと聞きました。そしてあなた(提督)は彼女をゆきのんと呼んでいる。他にも駆逐艦の朝潮さんを、本名が留美だからルミルミ呼ばわりしているらしい、という報告も上がっています」

 

 

なにそれやっぱ怖いんですけど。(,,゚Д゚) どうやって調べたの?俺のプライバシーは何処?

 

 

「ほぅ・・・大した情報収集能力だな。彩雲でも使ったのか」

 

 

まさか・・・な。もしそんなことしてたら、ガチでヤバいぞこの鎮守府。我に追い付く八幡無し!(あたりまえ)

 

 

「いえ、瑞鶴から取り上げ・・・召し上げた試製景雲(艦偵型)です」

 

 

それ、言い直しても全然意味変わってないからね?そもそも後輩から艦載機取り上げるとか、もっとダメだし。

 

 

「なるほど、さすがは抜群の索敵値を誇る高速艦上偵察機ということか」

 

 

※覗きに索敵値は必要ないです。

 

 

「提督のプライバシーを暴く任務だと言ったら、瑞鶴も喜んで協力してくれました」

 

 

こらそこ!喜ぶところじゃないから!て言うか瑞鶴、お前もか!?

 

 

「いいえ、私は違うわ。五航戦の子なんかと一緒にしないで」

 

 

なにしれっと自分だけ無関係なふりしてるのかな?首謀者は確か君だったよね?

 

 

「先日の冬祭り、図らずもあなた(提督)を危険に曝してしまったことは痛恨の極み。その償いは、引き続きこの身体で支払ってゆく覚悟です」

 

 

だから誤解を生む言い方やめろって!どこぞの姉妹艦娘が深海化しちゃうでしょ!

 

 

「変態谷提督、加賀さんに何を支払わせているのかしら?」

 

 

「提督?お姉さん、その話をもっと詳しく聞きたいかな〜」

 

 

「身体で何を支払うっぽい?」

 

 

ほらほらほら、やっぱこうなっちゃうじゃん!(ノД`) あと夕立はオトナの会話にカットインしちゃダメだからね?!

 

 

「何をって・・・改めて言うまでもないでしょう?(艦娘として)私のすべてを捧げているだけよ」

 

 

俺が頭の中でぽいぽいを叱っている隙に、サラリと答える加賀さん改二。あ、これヲワタ。(・.・;)

 

 

しかし、残りのふたり(雪ノ下姉妹)が大爆発するよりも早く・・・

 

 

「偵察機からの報告を精査した結果、比企谷提督は一部の艦娘だけを特別な愛称で呼んでいる、という結論に達しました」

 

 

にわかに圧を強める加賀さん改二。まだ話の筋は読めないが、なんとなく面倒な方向へ向かっているのだけは分かる。(ぼっちの羅針盤)

 

 

「ならば当然、私も本名呼びして頂けるのですよね?ちなみに私の名前は深雪よ」

 

 

はい?なにをいきなり個人情報暴露してんですかこの娘。まさか名字は司波とか言わないよね。さすおに。

 

 

「あと、赤城さんの名前は咲です」

 

 

そりゃ中の人では?

 

 

意味不明なツッコミを入れようとした時、新手が現れた。

 

 

「さっきからおもろいこと言うとるやないか。ならウチも頼むわ」

 

 

りゅ、龍驤?!てか、いつの間にか艦娘たちに全周包囲されてるんですけど。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル みんな、朝ごはんはきちんと座って食べようね?

 

 

「加賀さんだけっちゅうのは、いかにも不公平や。ならこっちも本名呼びしてもらわなあかん。あ、ウチの名前は皐月やで」

 

 

わいの名前は八幡や。(エセ関西弁)

 

 

「じゃあ、僕もお願いしたいかな」

 

 

どさくさ紛れに上目遣いを炸裂させる時雨。くっ・・・駆逐艦如きにそんな顔されたって、八幡の誇り、こんなところで失うわけには・・・へにゃあ〜(制空権喪失)

 

 

「君と僕の仲じゃないか。いまさら躊躇うなんておかしいよ。あ、はじめまして。僕の名前は弥生だよ」

 

 

やはり艦娘を本名で呼ぶのはまちがっている・・・よな?(錯乱)

 

 

「あ~提督、ならあたしもお願いしようかな~。あ、あたしの下の名前は五十鈴って言うんだ。宜しく~」

 

 

いつもどおりの緩い感じで参戦して来る北上。いつの間にやら本名の暴露合戦みたいになってるけど、俺はなにも知らないからね?(責任逃れ)

 

 

「なっ?!き、北上さん?そんな軽々しく本名を・・・ってか、なんて可憐なお名前!まるで春に咲く花のよう・・・そう、これは萌え、萌えなのよ・・・い、五十鈴さん・・・って、きゃー!!わたくしったら何を?!」

 

 

勝手に轟沈する大井っち。

 

 

「あ~じゃあさ、大井っちも頼んでみたら?数の論理っていうかさ、今なら提督も断り辛いんじゃない?」

 

 

それは数の暴力とも言います。(経験者は語る)

 

 

「わ、わたくしが?あんな腐り目提督に・・・まあ、北上さんがそう仰るなら・・・ち、因みにわたくしの名前はメイ、ですわ」

 

 

「へえ〜可愛らしい名前だね〜」

 

 

「か、可愛らしい?!き、北上しゃんっ!!」

 

 

片舷20門、両舷合わせて40門の酸素魚雷を誘爆させる大井。あ、もちろん比喩ね。ホントに爆発したら、食堂どころか鎮守府が吹っ飛んじゃうから。

 

 

「およ、提督?睦月、呼んだ?」

 

 

またうるさいのが来たな。

 

 

「ひどいにゃしい!睦月だけ扱いが雑じゃない?ん?ほぅ、私を本名で呼びたい?良かろう、苦しゅうないぞ、さあ呼んでみるがよいにゃしい~」

 

 

うざいにゃしい。てか、お前の名前知らんし。

 

 

「そうでした!テヘペロ。ななんとなんと、睦月の名字は如月なのです。運命なのです!」

 

 

「あら、やだわ睦月ちゃん」

 

 

で、如月の名字が睦月なんですね分かります。

 

 

「ぽい?夕立も名前呼びしてもらえるの?じゃあユミって呼んでほしいっぽい」

 

 

名字はタニベさんっぽい?

 

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー!!特別に教えてあげちゃうんだからね!私の本名は〜」

 

 

「はぁ・・・綾音、だろ?」

 

 

「はっ!?ま、まさか那珂ちゃんのプロフチェックしまくりとかアイドルのプライベートとかそういうのは事務所を通してくれなきゃNGだよごめんなさい」

 

 

そういうのいいから。あとキャラ混じってるぞ。

 

 

付け加えると、川内姉さんの本名は摩耶、神通さんは榛名というらしい。みんな、お父さんお母さんが艦これ提督だったのかな?(失神)

 

 

つか待て待て待て!まさか軍艦っぽい名前の子しか、艦娘になれないとか?書類による1次審査ってそういうことだったの??(大井っちは除く)

 

 

艦娘候補者の経歴は海軍省が一括管理しており、提督といえど容易にはアクセス出来ないはずなんだが・・・本人からの自己申告なら、大丈夫だよね、ね?(由良さん)

 

 

 

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

 

 

 

「そんな読み方の日本語は無いわよ、比企谷提督。学年3位の国語力も、いまや哀れなものね」

 

 

夜戦加賀(雪ノ下)からの容赦ないツッコミ。最近界隈でよく見かけるので、ついやってしまいました。泣ける。

 

 

話題転換(ところで)

 

 

「あなた、まさか確信犯(わざとやってる)?」

 

 

「ふたりとも、夫婦漫才はそこまでにしなさい。あと確信犯は誤用よ」

 

 

相変わらず手厳しいはるのん。

 

 

「「「「夫婦(めおと)?!?」」」」

 

 

って反応するのはやっぱそこかよ!つかなんで全員読み方知ってんの??

 

 

「ひ、比企谷提督はケッコン済みのジゴロウなのです!」

 

 

「「「「なんだとっ?!」」」

 

 

再びどよめく艦娘たち。だからなんで君たちそれで意味通じてるの?あとジゴロウって誰よ?電ちゃん、それ正しくはジゴロ()()()()

 

 

・・・って俺は養っては貰いたいが、施しを受けるつもりは無いからな!( ー`дー´)キリッ

 

 

「ケッコンだなんて、あ、有り得ないわ!昨夜もずっと覗いていたのだけれど、そんな様子は全く・・・だって彼はひとりで・・・はっ!?」

 

 

迂闊に口を滑らせ、固まる加賀改二こと深雪さん。だが時既に遅く・・・いやそれよりも君、いまとんでもないこと口走ろうとしたよね?

 

 

「加賀ちゃん?それ、もう少し詳しく聞かせて貰いたいかな〜?」

 

 

「誰をおかzにしていたのかしら、自家発電谷提督?」

 

 

深海化した加賀さん改(はるのん)加賀さん改二戊(ゆきのん)の前で青くなる、加賀さん改二(深雪さん)。もう完全に、自分でも誰が誰だか分からなくなってきました。(作者独白)

 

 

「か、加賀ちゃん・・・?」

 

 

そして、加賀さん改(はるのん)の言葉に絶句する赤城さん。そりゃそうだわな。なんせ、着任したての後入りが、大先輩(栄光の一航戦)を加賀ちゃん呼ばわりしてるんだから。そして事態はさらなるカオスへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、比企谷提督!」

 

 

食堂の混乱が極致に達したその時、書類の束を手に駆け込んで来たのは筆頭秘書艦の大淀だった。うっすら汗ばんで喘ぐその様子は、どことなく()()のそれを思わせる・・・ってなにを書いてるんですかあなた(作者)?!変態さんなんですか?!彼女たちに聞こえたら、即座に爆散待ったなし。(歓喜)

 

 

「朝からどうしたのだ。人生でそれほど慌てるべきことなど、ありはしないぞ」

 

 

だがしかし、変態疑惑など何処吹く風。使い回しのセリフを繰り出しつつ、頼りがいのある歴戦提督さん(いつもの)を自演乙。最近明らかに語彙力落ちてるわ、俺。やっぱ泣ける。(ノД`)シクシク

 

 

と、いきなりガバっと頭を下げる連合艦隊旗艦。その動きで長い黒髪が乱れる。やっぱ、なんかエロい・・・ゲフンゲフン!

 

 

「も、申し訳ありません!!私としたことが、大本営からの緊急電を見落としていたのです!期間限定イベント開始に関するお知らせメールを!」

 

 

がはっ!!そう言えば春イベの日程、確認するの忘れてたわ。全部大淀に丸投げだったしな。ん?春・・・確かそろそろ七夕だよね?

 

 

「うむ・・・どうしてそのような事態になったのだ?」

 

 

優れた上司はむやみに部下を責めない。先ずは状況確認から。これ大事。

 

 

「は、はい、どうやら迷惑メールフォルダに自動振り分けされていたようで・・・既にイベントは終盤戦に差し掛かっているようです。いまから参加しても、完走出来るかどうか・・・」

 

 

いや、これから友軍艦隊の来援が見込めるんで、攻略開始が遅れたのはむしろ僥倖かも知れない。(こじつけ)

 

 

「気にするな。軍人たるもの常在戦場。無茶振りもまた、任務の内だ」

 

 

なおも狼狽える大淀から、分厚い作戦マップを受け取る。さてと、今回はどんな○○マップなのかな?

 

 

『血戦!異聞坊ノ岬沖海戦』

 

 

表紙には、無駄に達筆で記されたタイトルロゴ。

 

 

「ほぅ・・・ようやく多少は歯ごたえのある戦い(いくさ)が出来そうだな」(フラグ)

 

 

・・・ってなにその大激戦必至な作戦名?最初っからイヤな予感しかしないんですけど。つかこの資料、完全にぜかましねっとのスクショだろ!!(手抜き)

 

 

脳内で盛大にツッコミを入れながら、先を読み進むこと暫し・・・ひゃいん?!!

 

 

・・・絡まったスパゲティみたいな進撃ルートに、山盛り特盛り具だくさんのギミック。そしてずらりと色分けされた御札制限。もはや安定の風物詩。思わず変な声が出ちまったよ・・・

 

 

・・・とか感心してる場合じゃねぇ!!これってもうほとんど迷路じゃね?これ以上、私にどうしろと言うのですか・・・?つーかおかしいだろ!同じ血戦でも1文字違いの『決戦!鉄底海峡を抜けて!』(2013年夏イベント)は、ほとんど1本道のルートだったぜ?(事実)

 

 

「ふむ・・・それで、特効艦娘は誰なのだ?」

 

 

呆然とする心の中の妙高さんを宥めながら、敢えて平然を装う。司令官は、そんな簡単に取り乱しちゃダメ!絶対!

 

 

「はい、大和改二 / 改二重が指定されています・・・」

 

 

ん?よく聞こえなかったんだけど、お決まりの難聴系主人公かな?

 

 

「提督、お腹が空きました・・・」

 

 

やっぱ君だったのね。(;´д`)トホホノホ…

 

 

すぐ横で顔を赤らめる最終兵器彼女(超弩級戦艦娘)の姿に、思わず引き攣った苦笑いが浮かぶ。つい先日、第二次・第三次改装を終えたばかりの大和撫子(戦艦大和)は、我がショートランド泊地の台所事情を一変させた立役者(張本人)だ。破格の性能と引き換えの、桁外れな燃費の悪さ。演習に出すだけで、備蓄が飛ぶように消えてゆく。て言うか、かすり傷だけで入渠時間60時間超えとか、どゆこと?(✽ ゚д゚ ✽)?

 

 

「提督・・・わ、わたくしも本名で呼んで頂けるのでしたら、ご飯をテラ盛りからギガ盛りに減らして下さっても構いません」

 

 

たぶんテラがギガになったところで、大した変わりは無いよね?それ。。゚(゚´Д`゚)゚。

 

 

俺が大和の食事量にダメージを受けていると、大淀がトドメの一撃を放ってきた。

 

 

「イベント運営本部発表によれば、姉妹艦の武蔵改二と同時出撃させると極めて強力な特殊攻撃が発動するそうです」

 

 

は??( ゚д゚)ポカーン

 

 

大和と武蔵。まさかウソだよね?あのふたりを同時投入とか、深海棲艦を壊滅させる前に味方の備蓄が壊滅するまである・・・うん、絶対ダメなやつだわ、これ。迷惑メールフォルダ行き決定ね。カチッ(クリック音)

 

 

「朝からご苦労だったな、大淀。今回のイベントは不参加だ。その旨、大本営に打電しておいてくれ」(提督の決断)

 

 

ただでさえ、大和の改装とそれに伴う新規任務群のため、我がショートランドは自転車操業状態なのだ。それに加えて九州近海でのイベントともなれば、往復の燃料費だけでも馬鹿にならない。悲しい(情けない)けどこれ、戦争(現実)なのよね・・・

 

 

「えぇっ?!よ、宜しいのですか?それですと、イベント報酬も全て失うことになりますが・・・」

 

 

眼鏡を直しつつ問う大淀。

 

 

「構わん。責任は私が負う」

 

 

言うは易く、行うは難し。ずいぶんと軽い口約束だが、提督ってのはこういう時のために、日頃はふんぞり返っているのだ。(自己弁護)

 

 

「では朝食が済み次第、各自日課を開始してくれ。以上だ」

 

 

食器をカウンターに返却し、意味もなく敬礼すると、その流れで食堂を後にs・・・

 

 

「それで提督、名前呼びについては?」

 

 

ぐはっ!理詰めで迫る一航戦の青い方。上手く誤魔化せたと思ったのに・・・

 

 

「うむ、前向きに検討しよう」

 

 

物は言いようである。

 

 

「要するに、やる気なしってことやな?」

 

 

むぅ・・・加賀の次は龍驤か。このままじゃ収拾がつかねぇ。忖度なしの言葉をぶつけてくる軽空母に、俺も正論を返すことにする。

 

 

「皆の要望は承知した。だが、いまの君らは誇り高き日本海軍の艦娘だ。ならば当然、それに相応しい名前(艦名)で呼ばれるべきだろう」

 

 

ふっ・・・勝ったな。

 

 

「ぐぅ・・・残念やけど正論やな」

 

 

「そういうことだ。艦娘の呼称に例外は存在しない」

 

 

ふぅ・・・ようやく終わったぜ。あとは執務室で食後のマッ缶をば1本・・・

 

 

「いいえ、ひとりだけ例外が居るわ」

 

 

そう言いながら加賀さん改二が視線を向けた先には、ドヤ顔でピースマークを決めるいろはす。ファ?!やめて!やっと話が纏まったんだからこれ以上煽らないでっ!!

 

 

「い、一色さんだけは、いつも名前呼びされているのです!」

 

 

「ひとりだけズルいっぽい!」

 

 

「これは捨て置けません」

 

 

またもや燃え上がる艦娘の皆さん。ホント朝から元気なことで・・・

 

 

「改装を受けずに着任する准艦娘には、戸籍上の名前がそのまま適用される。皆もそれは知っているはずだが?」

 

 

俺の指摘に、今度こそショートランド基地限定ローカルイベント『名前で呼んで』は終了したのだった。(大本営非公認イベ)

 

 

「ぶぅ~」

 

 

つか、なんできみ(一色さん)が不満げなんです?

 

 

「はぁ・・・分かりました。一層精進して、あなたに名前呼びして頂けるような存在になってみせます。その時は・・・それなりに期待しているわ」

 

 

すべての発端になった深雪さん・・・じゃなくて加賀さん改二は、決意を込めた言葉とともに、その白く繊細な手で俺の腕をとった。そう言えば、もともと事の始まりは、加賀さんとの出会いだったな・・・

 

 

「さぁ提督、始めましょう。私達の戦い・・・を?」

 

 

そんな加賀さんの短袴を掴む、ふたりの加賀さん。

 

 

「メインヒロイン気取りのところ悪いんだけど、貴女にはちょっとお話があるかな、深雪ちゃん?」

 

 

「ええ、甚だ遺憾だけれど姉さんの言う通りよ。色々と確かめたいことがたくさんあるわ、変態加賀さん?」

 

 

「そ、それは・・・」

 

 

最強の姉妹艦に捕えられ、冷や汗を浮かべる加賀さん改二・・・ご愁傷様です。

 

 

「あの・・・お姉さん、というのは?」

 

 

相棒の危機を見かねてか、おずおずと尋ねる赤城さん。うむ、なかなかいい質問です。みんな、そこは気になってたよね?

 

 

「あぁ、私と雪乃ちゃんは実の姉妹なの。妹ともども宜しくね」

 

 

「なっ?!ね、姉さん!」

 

 

「「「「なんとっ?!」」」

 

 

はるのんの言葉に、本日何回目かの大合唱。

 

 

「か、加賀さんのお姉さんは加賀さんなのです!」

 

 

「へぇ〜これって結構レアケース?」

 

 

「じ、実の姉妹艦?っちゅうのはウチも初めてだわ」

 

 

そんな様子を見ながら、ふと思う。

 

 

艦娘。それは在りし日の軍船の魂を宿した少女たち。彼女らが何者なのか、いまだに俺の中ではっきりとした答えは得られていない。だが、柔らかなその身体に秘められた、一途で純粋な想いを知れば知るほど、その姿は一層眩しく映るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかのセリフが『ぶぅ〜』だけ?!」(いろはす)

 

 

「まさかの出番すら無し?!」(ルミルミ)

 

 

「で、今日の秘書艦、結局誰になるんですかね?」(八幡)




次回予告:電は見たのです!
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