「知ってる天井だ・・・」
ふと目覚め、ゆっくりと周囲を見回す。間違いない。あの時の病室だ。両足は、ご丁寧にギプスで固められている。ってことは、また始業式当日にやらかしたのか・・・相変わらず学習能力ねぇな、俺。
修学旅行の一件以来、あいつらとは疎遠になり、部室へ足を運ぶことも少なくなった。最近は精神的なストレスから、毎晩わずか8時間くらいしか眠れない日々が続いている。あれ?それってむしろ快眠?で、昨夜も悶々と悩んでいたら、いつしか朝になり・・・寝落ちしたと思ったら過去でおはようとか、
どうやら俺は、どっかのスバル君ばりにリゼロしたらしい。まぁ、二度目なら上手くやれるだろう。なにせ、記憶は全て残っているのだから。言うなれば、あと出しじゃんけんだ。やはり俺の青春ラブコメはまちがっていなかった。これこそが、俺の求めていた本物・・・勝ったな。(確信)
・・・などと安易な喜びに浸っていたこともありました。
人の気配に目を遣ると、ちょうど美人看護師のお姉さんが入って来るところだった。まずい、緊張してキョドる未来しか見えん。ところで『看護師』の前に『美人』と付けるだけで、なぜ卑猥になるんでしょうか。(唐突)
「あ!あら、起きてたのね。ぐ、具合はどう?」
視線が交われば、急に顔を赤らめて挙動不審になる
が、脳内劇場で暴走する俺をよそに、なんと彼女は更に話しかけて来た。
「えっと、先ほど伝言を頼まれたの。ご両親はお仕事で、お見舞いには来られないそうですよ」
まだわちゃわちゃしながら、どこか恥ずかしそうに続ける美人看護師さん。ん?恥ずかしそう?まぁ有り得んだろ。
それよりも気になったことを尋ねる。
「有難うございます。あと、妹については、なにか言ってませんでしたか?」
爽やかなイケボで問うと、またもやサァッと頬を染めて身を捩る白衣の天使。は?なにそれ?この病院って、こういう患者対応をする方針なの?文字通りエンジェルナースさん?つかこのままだと、ハチマン勘違いして告白して振られて退院しちゃうよ?
しかし、返ってきた反応は予想外なもので。
「え?君に妹さんは居ないでしょう?」
なん・・・だと?マイスイートエンジェル小町の存在を否定するとはいい度胸だ!今すぐ院長を出せ!!
「っと・・・ごめんなさい。緊急の呼び出しだわ。じゃあ、大人しく寝てなさいね」
最後は医療従事者の顔になり、足早に出て行く美人看護師さん。てか、さっきから何回美人看護師さんが出てきてるんだよ?(3回)
しかし・・・俺に妹がいない?小町だけがいない街、略して小街。あいつの名前微妙に変わっちゃったし。夢オチにしても冗談がキツすぎる。ってことは・・・
「失礼するわね」
そんな俺の思考を遮って、控えめなノックと共に現れた新たな訪問者。その綺麗な顔立ちに、なぜかほっとする自分がいた。
「具合はどうかしら?」
心配げな表情でこちらを窺う、雪ノ下雪乃。彼女が居るってことは、やはり・・・でも俺の記憶じゃ、確かコイツが見舞いに来たことは無かったと思うが・・・
「あ、あぁ・・・ぼちぼちだな」
その言葉に目を見開く雪ノ下。ん?いまの会話に、何かびっくりするような要素あった?
「らしくない口振りね・・・いえ、なんでもないわ。それより、今回は本当にごめんなさい」
そう言って、深々とお辞儀する我が部長さん。これではっきりした。こっちの世界線でも、俺はサブレを助けて雪ノ下の車にジェットストリームアタックを仕掛けたのだろう・・・っと危ない危ない。いまはまだ、コイツと個人的な接点はないはず。あくまでも初対面を装う必要がある。
「まぁ、なんだ。そんなに恐縮しないでくれ、雪ノ下」
・・・しまったぁ!!初対面を装うはずが、いきなり名前呼びしちゃったよ。変態か!これは罵倒の連撃待ったなしですわ。ところが・・・
「あなたにそう呼ばれると、その、妙な感じね・・・いつも雪乃ちゃん呼びは止めて、とは言ってきたけれど、いざ名字で呼ばれると違和感しかないわ」
コイツはさっきから何を言ってるんだ?病室間違えてんじゃねえの?ようこそ間違いだらけの病室へ。なんか、R指定の香りが漂うタイトルだぜ・・・
「じゃあ、もう行くわ。お大事にね、葉山君」
来たときと同じく、品のある所作で去って行くゆきのん。てか、やっぱ貴女、病室間違えてるじゃん。そもそもハヤマ君って誰よ?
・・・ハヤマ君?(嫌な予感)
あれから暫し。いま俺は、サイドボードに置いてあった手鏡を前に、途方に暮れていた。そう、そこに映っていたのは、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ようやく退院の日がやって来た。この2ヶ月間、とんでもない罰ゲームの連続に、俺のHPはもはや全損寸前だ。こちらが笑えばコロリと即堕ち、不満げにそっぽを向けばご機嫌取り、寂しげに俯けば慰めの嵐。周囲の過剰反応に、気が休まる暇もなかったのである。
そしていま、俺は葉山の家に居る。まぁ、この状況だと此処しか帰る場所無いしな・・・どでかい一軒家のワンフロアを占めるヤツの部屋は、よく分からんサッカーのユニフォームや、試合映像を収めたDVD、有名選手のサイン色紙等々で埋め尽くされ、ヲタク臭の欠片もない。リア充は部屋までイケメンなのかよ。
でも、スマホの待ち受けが半裸で吠えてるクリスティアーノ・ロナウドってどうなのさ、日向。アイツなんなの?ホモなの?キマシタワ~!もちろん、速攻でプリキュアスーパー戦隊の壁紙に変えてやったぜ。ふはははは!ざまあみろ!
さて、やはり小町やカマクラも一緒に転生・・・ってなことはなく、いまの俺は正真正銘ひとりっ子の葉山隼人らしい。では、いざ持ち物検査と行きますか。他人の部屋を漁るような行為は些か気が引けるが、取り敢えずヤツとして生活してゆくためには致し方ない。先ずは定番の、ベッドの下から・・・
は?なにも無い、だと?!いや・・・何かずっしりと重たいものが・・・こ、これは!?
『艦娘型録 壱・弐・参』デデン!!
あの野郎・・・こんな本を隠匿していたとは、お仲間じゃねぇか! だから提督に・・・外じゃイケメンスマイル振り撒いといて、裏ではホモ疑惑と二次元ヲタク確定かい!え?俺は違うよ?制海権を取り戻すためにプレイしてただけだから。(真顔)大破グラフィック?水着mode?はて?何のことやらさっぱり。ハチマンウソツカナイ。(カタコト深海棲艦)
待てよ?!ていうことは・・・
振り向けば、立派な学習机の上に鎮座する、大画面の最新型デスクトップパソコン。試してみると、起動も速い。やっぱ金持ちは違うな。俺なんて、型落ちの中古ノートだぜ?しかも、なぜだか常に冷却ファンが回り続けてるオンボロだ。いつぞやの期間限定イベントでは、ボス戦の最中にいきなりシャットダウンしちまったし・・・(攻略リセット)
いかんいかん、話が逸れたな。では、いざ艦これ起動・・・あかんこれ、自動ログイン成功しちゃったよ。フッ!やっぱりな。甘いぜ葉山。セキュリティ、ガバガバじゃん・・・
ぷぷっ!プレイヤー名『隼人元帥』とか痛すぎるわ。で、司令部Lvは・・・なっ?!コ、コイツ、ガチ勢だったのか?!うぉ?!か、海防艦の練度が高過ぎる!しかも全員ケッコン済みだと?!(狂喜)済まん葉山、お前は
はい?だから俺は違うって言ってるだろ!だって鳳翔さんから鵜来ちゃんまで、全部守備範囲なんだから!(特大カミングアウト)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ヤツの鎮守府を覗き見・・・ゲホゲホ!代理プレイした翌日。新たな学生生活が始まった。事故の影響で出遅れはしたものの、そこはさすが、みんなの葉山君。直ぐにクラスへ溶け込み、あっさりカーストトップに座りやがった。俺としては、いままで通りにしているだけなのだが、何しろガワがあの葉山なのだ。ゆえに、周りが勝手に勘違いして持ち上げてくれるのである。やっぱ人間、見てくれが全てなんですねわかります。そして・・・
今日も今日とて、戸部やら三浦やらに囲まれた
本人はイヤホンをして外界をシャットアウトしてるつもりらしいけど、だいたい誰もあんなヤツ相手にしとらんし。自意識過剰なモブなんて、背景画にもならない。空気と化す
やっぱ泣ける。。゚(゚´Д`゚)゚。
つか、まさか
と、にわかに立ち上がり、コソコソと教室を出て行くもうひとりの俺。ほぅ・・・これがあの有名な、令和コソコソ噂話か。(違う)なんとなく気になったので、後を追うことにした。いや、別にストーカーとかじゃないからね。
「ん?隼人君、どこ行くっしょ?」
「あ、隼人?!あたしも行く!」
だからうぜぇよ、お前ら。いちいち何なのよ?ここでトイレに行くとでも答えたら、三浦は連れションでもしてくれんの?(オナシャス!)
「ははは・・・済まない。まぁ、ちょっとひとりで行きたいところがあるんだ」
「そ、そっか・・・」ポッ
「っべー!やっぱ隼人君、マジぱないわ~」
「おひとりさま、キマシタワ~!」
イケメンスマイルで言えば、何を思ったか顔を赤らめて俯く三浦と、解析不能な日本語で応える戸部っち。もし、この意味不明な遣り取りが、いわゆるお友達同士の会話だというのなら、俺はもう一生ぼっちで構わないまである。あと、海老名さんのは完全スルーで。
偽りのリア充フレンドどもを振り切り、腐り目谷君を追跡すること数分。やはりと言うべきか、ヤツはベストプレイスでおひとりさまを始めた。しょぼくれてカレーパンを齧るその姿。ほんと、我ながらひでぇ・・・
ん?いつの間にか横に居る、すらりとした後ろ姿は誰だ?・・・って、か、加賀さん?!まさかこれ、俺が提督にスカウトされたあの日なのか?(第2話)
思わず身を乗り出してしまい・・・き、気付かれた?!
「見られたからには・・・鎧袖一触ね。問題ないわ」
言うが早いか、真っ直ぐこちらに向けて弓を構える加賀さん。うむ、いつ見てもお手本のような正射必中だ・・・とか言ってる場合じゃねぇ!問題ありまくりだから!それ!
「攻撃隊、全機発艦!」
凛とした声と共に発射される艦載機。炎を曳きながら散開した彗星艦爆が、真っ直ぐ迫って来る。つか、深海棲艦視点だと、こう見えるのね・・・毎日、キラ付けのために吹っ飛ばされる、はぐれイ級たんに敬礼!(*`・ω・)ゞ
直後、凄まじい衝撃と共に、俺の意識は暗転した。
「どひゃあ!?」
ごいんっ!Σ(>Д<)(>o<")
「きゃん!?」
目覚めと同時に聞こえた鈍い音。夢の中で加賀さんの攻撃をもろに喰らった俺は、みっともない悲鳴を上げて飛び起きた。でも赤城さん、貴女が無事なら良いの・・・先に逝って、待っているわね・・・(キャラ崩壊)
じんじん痛む額をさすりながら見れば、艦娘がひとり、同じようにおでこを押さえて悶絶している。しかも、なぜか顔が真っ赤だ。てか貴女、寝落ちしてた俺と頭が
「お、おはよう比企谷君。朝から元気ね」
一瞬で回復し、何食わぬ顔で枕元に正座したのは
「ちぇ、つまんないなぁ。(寝顔があんまりかわいいから、ちょっとキスしちゃおうかなって思っただけなのに・・・)もっと驚いてよ、比企谷く・・・提督」
貴女、わざわざ
聞き捨てならない彼女の言葉に、ようやく意識が完全覚醒する。危ういところで
「加賀よ。ここは最前線だ。僅かな気の緩みが、取り返しのつかない結果をもたらすこともある。だから色々弁えてくれ」
本音も織り交ぜつつ、自省を促す。ふぅ、毎日提督業なんざ続けていると、否応なしに保護者目線になっちまうぜ。
「はーい♪」
全く緊張感の無い返事をする、はるのん。俺の話、ホントに伝わってるよね?
「では提督、本日のスケジュール確認をお願いします。まず0930より南瓜収集イベントを開始、続いてハロウィンの準備と秋刀魚ミニイベントをクリア後、昼食を挟んで午後からは『艦これアニメいつかあの海で1944』先行配信版のオンライン試聴会を・・・」
瞬時にお仕事モードへ切り替わる
そんなことをつらつら考えていた俺は、迂闊にも全く気付かなかった。少しだけ開いた入り口の陰で揺れる、セーラー服のスカートに。
「はわわわ・・・い、電は見たのです!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
~side 電改二~
おはようございます。最近のショートランド基地は、主要メンバーが南瓜収集イベントとアニメ『いつ海』の準備に駆り出されて閑散としていますが、今日も電は本気で頑張るのです。時雨さんや西村艦隊の皆さんは、インタビューやプロモーションビデオの撮影に引っ張りだこなのですが、果たして私たち第六駆逐隊に出番はあるのでしょうか・・・
とにかく、いまはハロウィンの飾り付けを頑張りましょう。その前に、まず提督さんを起こしに行くのです。
あれ?どうして加賀さんが提督さんの寝室に?はわわわわ?!は、ハロウィンに
(中略)
「あら、ずいぶん早いのですね、電さん」
「ぴゃ?!」
忍び足で執務室を出ようとしていた本日の秘書艦、電改二は、びっくりして振り返った。そこに居たのは・・・
「お、大淀さん!?ひ、比企谷提督が大変なのです!」
「?先ずは落ち着いて下さい。何があったのですか?どんな時でも、状況報告は正確さを心掛けて下さいね」
あくまでも冷静沈着に、年下の駆逐艦娘を諭す鎮守府の頭脳。彼女が取り乱すことなど、まず有り得ないのである。
「て、提督さんのお部屋に加賀さんが居て、おふたりが激しく
言われた通り、正確な状況報告をしようと本気を見せた電改二。だが、その頑張りが大好きな提督さんにトドメを刺す結果となることを、彼女はまだ知らない。
「・・・電さん。そのお話、もっと詳しくお願いできますか?」ニコッ
「ひっ?!」
目が据わった笑顔を向けられて、ワンパン大破する電さん。そしてその日、第六駆逐隊の末っ子は、大淀さんの本気を見たのであった。(以下略)
お、大淀さんの本気は、怖かったのです・・・(電改二)
提督。実は私、ずっと見ていたんですよ。気付いていました?って、提督?提督?聞いていらっしゃいます?ねぇ・・・ドヨーン(大淀改二甲)
タイトルの割に、艦これ要素と電ちゃんの出番少なすぎじゃない?(
取り敢えず、みんなで仲良く艦これアニメ第2期を見ません?(
次回予告:いつかあの海で?