「鎮守府冬祭り?」
どこかで聞いた言葉に、俺は大淀を見上げた。
「はい!大本営主催の公式任務群です♪」
眼鏡に手を添えて、いつになくハイテンションで答える筆頭秘書艦、大淀さん。裏でショートランド基地の全てを統べる、影の提督とも言うべき艦娘だ。つか、いつも思うんだが、それならもう彼女が提督で良いんじゃね?(ちゃぶ台返し)
そして、そんな大淀をここまで浮つかせている原因とは・・・
【冬祭り任務群:冬の一日に大規模なお祭りを開催し、艦隊の士気を高めよう。ここは譲れませんね、加賀さん?】
大本営から送られてきた1通の指令書。これから本格的な冬を迎える、南半球ならではの任務だ。文面からして、食べる気満々である・・・
・・・ってちょい待て待て待て!この展開、確か前にもやったよね?まさか毎年、同じネタを使い回すつもりなのかな?読者とビッグセブンの力、侮るなよ?(第29話参照)
「なるほど、もう1年か。早いな・・・」
初めての鎮守府冬祭りだった去年は、深海間宮さん事件で大騒ぎとなった。あともう少しで、みんなの葉山提督が吹き飛ぶところを見られると思ったのだが、あいにく・・・ゲホゲホ!幸いにして、愛と絆の力で九死に一生を得やがった。しぶといやつだぜ。(残念)
「それで、今年の予定は?」
半ば答えは予想がついたが、敢えて俺は尋ねた。まあ、これも様式美というやつだ。(意味不明)
「はい、昨年に引き続き、横須賀鎮守府が船団を仕立ててやって来るそうです」
・・・で、ですよね~♪ていうかあいつら、ショートランド鎮守府をそこらへんのリゾート地と勘違いしてない?いや、実際平時ならバカンスにピッタリの立地ではあるんだけど・・・
「そうか。戦時中だと言うのに、遥々ご苦労なことだな。そこまでの危険を冒す価値があるとも思えんが」
伊達や酔狂で最前線に来られても邪魔なだけだ。それに横須賀のメンバーはみな、練度は高いが実戦経験が圧倒的に不足している傾向がある。残念ながら間宮さん事件でも、それは歴然だったしな・・・
「ですが比企谷提督のご活躍で、制海権は我が方の手中にあります。昨年よりは格段に安全かと」
妙に信頼のこもった眼差しで答える大淀。まあ、確かに・・・ん?ちょっと待って。じゃあ俺ってまさか、ずっとお祭り会場を確保するために戦ってたの?(白目)
「久し振りだね、比企谷君」
1年前と全く変わらぬ笑顔で葉山は現れた。しかも外見は一層イケメンになって。
すでに祭りは順調に進行している。二度目ともなれば、運営は艦娘たちに丸投げ・・・ゲホゲホ!任せておけば問題ない。何しろ去年の失敗に懲りて、今年は主なメンバーを私服警備員ならぬ浴衣mode警備員として会場に配置しているのだ。ふむ、眼福眼福。万にひとつも抜かりはない・・・はず。たぶん。それゆえ、いまの俺は珍しくひとりだった。あれ?以前はこれがデフォルトだったような・・・?隠れリア充爆発しろ!(自爆)
ちなみに爽やかスマイルで佇む葉山の階級は、いつの間にか海軍中将である。こちとら最前線で日々艦隊ラブコメしてるのに、いまだ海軍中佐なんですが何か?楽してる後方のお坊ちゃんが順調に昇進とか、ダメな組織の典型例じゃん。やっぱ社畜なんて最悪だわ。専業主夫万歳!
「内地で定期昇進か。結構なご身分だな」
どうせ忖度して誰も言っちゃくれないんだろうから、敢えて厳しい言葉を投げつけてやる。え?負け惜しみ?なにそれおいしいの?
「ははは・・・その通りだから、返す言葉もないよ」
やだー!返しもイケメンとか、隼人君的にポイント高・・・くねえよ。こいつのすかした顔を前にすると、なぜだか心が波立つ。理由はまあ、分かっちゃいるんだが、素直に認められない俺ガイル。(小物感)
だが、これ以上私情を差し挟むのは愚か者のすることだ。もしいま、俺と葉山の間に何らかの軋轢が生じれば、祭りに参加する民間人や互いの艦娘たちを危険に曝すことになる。そんな個人的感情なんて、深海棲艦にでも食わせておけばいい。本当に食べてくれるかどうかは知らんけど。
要は俺が、大人の対応をすれば良いだけのこと。やつがこの1年で(外見だけは)イケメンになったように、俺だって(内面的には)イケメンになっているはず。ソースは俺。(信憑性ゼロ)
「では、あとは大淀と一色に任せてあるから、詳しくは彼女たちに聞いてくれ」
ちょうどふたりが近付いて来るのが見えたので、俺は即座にモードを切り換えた。元クラスメートに劣等感丸出しで噛み付く姿なんて、他人に見せられるようなものじゃないし。(いまさら)
「了解した。こちらは三浦が責任者だから、その旨伝えておくよ」
そして、そんな俺のコンプレックスなど全部お見通しだと言わんばかりに、完璧な言動を見せる葉山。やっぱりあなたのこと、嫌いだわ。(ゆきのん風)て言うかいまさらだけど、三浦 × 一色って原作的に大丈夫なんですかね?
「葉山提督、総員配置完了しました。次のご指示をお願いします」
そんな漠然とした不安感に襲われていたら、葉山の背後に新たな人影が現れた。噂をすればなんとやら。こちらも1年振りのあーしさんである。去年は出会い頭に罵倒されたし、彼女に対してはどうにも苦手意識が拭えない。部下の前でヒキオ呼ばわりでもされた日には、ショックと屈辱のあまり寝酒代わりのマックスコーヒーが1本から2本に増えるまである。つかその程度で済むのかよ?
が・・・
「比企谷提督、ご無沙汰しております。昨年は大変失礼致しました」
なん・・・だと?
直立不動で見事な敬礼を決める、金髪の准艦娘。制服の着こなしも完璧で、どこから見ても完璧な金髪の准艦娘である。大事なことでもないのに、2回言っちゃったよ。(錯乱)てか、いったいどうしたあーしさん?はっ?!まさかあなた、中身は深海棲艦だとか?いやだからそのネタは去年、間宮さんで逆バージョンをやったって言ったでしょ?
だが、ツッコむと同時に俺は見てしまった。彼女の左手薬指に光るモノを。
「カッコカリ、か・・・」
「・・・全く、目敏いな、君は」
思わず漏れた呟きに、すかさずやつが反応する。それだけ目立ちゃ、誰でも気付くだろ。
「ははは・・・まぁ、そう言うことだよ」
柄にもなく照れるイケメンの横で、そっと愛おしそうに指輪を撫でる三浦。いますぐ爆発しろ!つか俺はいま、何を見せられているのです??
「しかし・・・大丈夫だったのか?」
別に、葉山が誰とケッコンしようが興味は無いが、横須賀鎮守府でやつを慕う艦娘は多かったはずだ。すんなりとひとりに指輪を渡すことなど、とても出来るとは思えない。現に俺も、その辺りがネックでなかなか次の1歩が踏み出せずにいる。いったいどうやって、皆を納得させたのだろうか。それに『みんなで仲良く』がモットーのこいつが、あっさり三浦を選んだのも解せない。彼女を選ぶということはつまり、他の艦娘たちを切り捨てるということでもあるのだから。
ごちゃごちゃと纏まらない思考の果て、言葉足らずの問い掛けをしてしまったが、意味は伝わったらしい。返事の代わりにやつは、自らの背後に視線を向けた。そこにはいつの間にか、横須賀の艦娘たちが並んでいたのだが、その左手には・・・
「重婚・・・だと?」
なんと羨まs・・・ゲホゲホ!けしからん!憲兵さんガチでコイツです!はい嫉妬です!いえ劣等感です!うん負け惜しみです!(敗者の3段活用)
「その様子だと、君は
訳知り顔で頷く葉山。だから勝手に自己完結するなって。
「比企谷の言わんとすることは分かるよ。だからこそ、俺は積極的にカッコカリしたのさ」
あっさり告げる、イケメン提督改め艦娘の敵。そう、居並ぶ横須賀の子たちは皆、光る指輪を嵌めていたのだ。しかもなんと、その大半が駆逐艦娘である。葉山ロリ人提督ばんざーい!俺もまぜて下さいお願いします!(ダメ!絶対!)
言葉を失う俺へ、やつはさらに言い募る。
「もちろん、最初の指輪は優美子・・・三浦に渡したよ。あとは不公平感が出ないように、みんなで仲良く練度を上げて順次カッコカリさ。実に効率的なやり方だとは思わないかい?」
「お前・・・本気で言ってるのか?」
周囲の空気が微かに揺らぎ、三浦をはじめ、横須賀の子たちの表情に翳が差す。プロぼっちの俺だからこそ気付いた、僅かな変化。やはりこいつは、全然成長なんてしていない。いやむしろ、退化してるまである。なのにこのぼんくら坊ちゃんは、マジで上手くやったつもりでいるらしい。一度、ぼのたんにでもクソ提督呼ばわりされなきゃ、目が覚めないだろう。
確かにカッコカリの指輪は、艦娘の練度上限を開放するための単なるアイテムだ。大本営に申請すれば、いくつでも予備が支給される代物である。だが・・・
「時雨」
俺は葉山の背後に声をかけた。相手は横須賀鎮守府所属の駆逐艦時雨。つまり、元クラスメートの戸塚彩加(♀)だ。え?あまりに久し振りの登場だから、この設定忘れちゃった?
「葉山のケッコン事情について、知っていることを教えてくれないか?」
「え?あの・・・僕・・・」
見るからに狼狽えて、俺と葉山を交互に見る時雨たん。制服からして第二次改装は終えているようだが、なぜかその左手に指輪は無い。
「なんのつもりかな?彼女はうちの所属だよ。公私混同は止めて貰いたいね」
笑顔は崩さず、僅かに語気を強める葉山。だがそんなもの、俺は意に介さない。ここは譲れません。
「越権行為なのは承知している。だがいまは、所属や指揮系統以前に、ひとりの提督として尋ねているのだ。それに、どうして彼女だけが
「はちまん・・・」
消え入りそうな戸塚・・・じゃなくて時雨改二の声。その呟きに、集まり始めていたショートランドの艦娘たちがざわめく。視界の端で、三浦と一色が頭を抱えるのが見えた・・・せっかく上手く誤魔化して誘導しようとしたのに、バレちまったぜ。
「おい、なんで横須賀の時雨がうちの提督を呼び捨てにしてんだよ?」
「お返事次第では、ちょっと見過ごせないかな~」
危険なオーラを放つ
「下がりたまえ。いまは私と
本音を隠して建前を口にする、歴戦提督比企谷八幡。(がっかり)
「し、時雨たん・・・?ちっ・・・わかったよ、提督。命拾いしたな、お前」
「ふ~ん、残念だわぁ」
しぶしぶながら、指示通りに引き下がる天龍と龍田。俺の失言も、見事にスルーしてくれた。さすが世界水準姉妹(?)である。そして、そんな俺たちのやり取りを見ていた
「・・・いま提督が言った通り、はじめは三浦さんだったよ。次は筆頭秘書艦に。そのあとは、各部隊の旗艦を務める子にも・・・指輪を拒んだりしたら居場所が無くなっちゃうから、誰も断れなかったんだ。同調圧力って言うのかな・・・先週は一気に6人がカッコカリしたよ。みんな嬉しそうだった。でも僕は、僕は・・・」
途中からは涙目になって、言葉を振り絞る時雨たん。居並ぶ横須賀の子たちも、微妙に視線を泳がすばかり。その様子に、俺は全てを察した。この野郎、ホワイトマシマシな外面しておきながら、内情は思いっきりブラックハーレム鎮守府じゃねえか?!許すまじ、葉山隼人。あんただけは、堕とす!じゃなくて、墜とす!(バナージ・リンクス風)
正義の怒りにかられた俺は(妄想の中で)葉山をぶちのめすことにした。(内弁慶)
~ 脳内劇場開始 ~
八幡は激怒した。必ず、かの邪智暴虐ロリコン変態の葉山を除かなければならぬと決意した。八幡には男女の機微がわからぬ。八幡は、文科系のヲタクである。ぼっちを貫き、2次元キャラと遊んで暮らして来た。けれども
「呆れた提督だ。生かして置けぬ」
だが行動を起こす前に、彼は葉山の艦娘たちに捕らえられてしまった。
「君は俺に何をするつもりだったんだい?」
目の前に引き出された八幡を、みんなの葉山提督は静かに、けれども威厳を以って問いつめた。その顔にはいつも通りの微笑みが浮かんでいる。
「横須賀の艦娘たちを
と八幡は悪びれずに答えた。
「君が?」
葉山は憫笑した。
「仕方の無いやつだな。君には、俺の気持ちなんて分からないだろうね」
「言うな!」
と八幡は、いきり立って反駁した。
「効率優先で指輪を乱発するなんて、提督として最も恥ずべき悪徳だ。お前は彼女たちの気持ちを何だと思っているんだ?!」
「気持ち?みんな喜んでいるに決まってるだろう?」
今度は八幡が嘲笑した。
「やはりお前は、救いようのないボンボンだな」
「だまれ!下賤の捻デレぼっち」
葉山は、さっと顔を挙げて報いた。
「口では、どんな清らかな事でも言えるさ。俺には、人のはらわたの奥底が見え透いてならないんだ。君だって、いまに
「ああ、お前はイケメンのリア充だ。せいぜいうぬぼれているがいい。俺は、ちゃんと覚悟は出来ている。命乞いなど決してしない。ただ・・・」
と言いかけて八幡は足もとに視線を落とし、瞬時躊躇ってから言った。
「ただ、俺に情けをかけたいのなら、猶予を与えてくれないか。
「ばかな」
と暴君は、嗄がれた声で低く笑った。
「とんでもない嘘を言うね。逃がした
「そうだ。帰って来るんだ」
八幡は必死で言い張った。
「俺は約束を守る。艦これが、俺の帰りを待っているんだ。そんなに信じられないのならば・・・よし、材木座という中2病患者がいる。俺にとって無二のヲタ友だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。俺が逃げてしまって、期限までに帰って来なかったら、あのキモデブを身代わりにしてくれ」
「君は鬼畜だね」
「否定はしない」
それを聞いて葉山は、残虐な気持ちでそっとほくそ笑んだ。生意気なことを言うやつだ。どうせ帰って来ないに決まっている。この嘘つきに騙された振りをして、放してやるのも面白い。そうして身代りのキモデブとやらを
「分かった。願いを聞こう。その身代りを呼んでくれ。ちょっと遅れて帰って来たら、君の罪は永遠に許してやるよ」
「な、何を言うか?!」ギクゥ?!(図星)
「はは。命が大事だったら遅れて来い。君の心は、わかっているぞ」
自宅に帰り着くと、八幡は直ぐに艦これを起動した。しかし・・・
【通信エラーが発生しました】
11周年を迎えても、相変わらず空気が読めない本格艦隊シミュレーションゲームである。しかもエラー猫の頻発に加え、あまつんを改二にするための改装設計図も足りず、ようやく全てを終えた時には約束の刻限が近付きつつあった。名残惜しいが、出発の時である。
「お兄ちゃん」
「葉山に用事がある。俺は行かなければならないんだ」
心配げな様子の妹に、優しい目を向ける八幡。やはり小町が天使なのは間違っていない。
「お義兄さん、小町ちゃんのことは任せて下さい」
「ナチュラルに、ケッコンカッコガチしようとしてんじゃねえよ。そもそも、なんでお前がうちに居る?」
そして、どさくさ紛れで既成事実を作ろうとする大志に、腐った目を向ける八幡。やはりこいつが悪い虫なのも間違っていない。
さて、八幡はぶるんと両腕を大きく振って、矢の如く走り出した。約束の刻限までには何とか間に合うだろう・・・だが、そろそろ全行程の半ばに到達した頃。八幡の足は、はたと止まった。見よ、前方を。そこには緑の看板があった。そう、サイゼリヤである。ドリンクバーだけなら、いいよね・・・?(ダメ!)
はっ?!・・・気付けば彼は、貴重な時間を消費していた。しまった!あんまり美味しいんで、ついランチセットまで頼んじまったぜ。(汗)
八幡は馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先を急いだ。もはや一刻たりとも無駄には出来ない。陽は既に、西へ傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら先を急いでいると、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。
「待つべ」
・・・てか、思いっきり戸部である。
「さては葉山の命令で、ここで俺を待ち伏せしていたな?」
「とべ × はち、キマシタワ~!」
山賊たち・・・というか葉山グループの面々は、妙な叫びと共に襲いかかってきた。文科系の八幡に、躱す術などない。が・・・
「憲兵さんこいつらです!」
「なっ?!」
戸部っち以下が怯む隙に、さっさと逃げる八幡。手段は関係ない。最後に勝っていれば良いのだ。あとはひたすら進むのみ。走れ八幡!
しかしここで、彼の心に悪魔が囁いた。いまからUターンすれば、まだ艦これの夏イベント開始には間に合う。最近、さすがに甲作戦はしんどくなってきたが、ぜかましねっとをコピペすれば何とかなるはず。家にはマイスイートエンジェル小町が居るし、まさか俺を追い出すような事はしないだろう。え?材木座?誰すかそれ?
次回予告:剣豪将軍の運命や、いかに?そして、葉山から勝負を挑まれた八幡は・・・
「は、謀ったな?!はちえも~ん!!」(材木座)
最終話:そして俺の艦隊ラブコメはまちがい続ける。