学校の購買で手に入れたカレーパンを食べていた俺、比企谷八幡は提督に抜擢され、迎えの加賀さんに連れられて自宅へと向かう。(自分でも何を言ってるのか意味不明)
たまたま家に居た両親と小町は、加賀さんを連れて早退して来た愚息の姿に泣いて喜んだ。解せぬ。
「あらやだ、私もうお婆ちゃんになっちゃうの?」
「八幡、養われるのもまた、男の甲斐性だぞ!」
「ゴミいちゃんがとうとう・・・こんな上玉を・・・」
待て待て待て!未来の専業主夫を標榜する息子が、生活力のあるお相手をGETして来たとか盛大に勘違いしてませんか?いや、実際加賀さん頼もしいし、それもアリかも。
あ、向こうからお断りですかそうですか。それより小町ちゃん、上玉なんて言葉、何処で覚えたのかな?お兄ちゃん、色々と心配になっちゃうからね。
そんな俺の隣で、加賀さんが手短かに事情を説明すると、さすがに家族たちの表情が改まる。暢気な青春ラブコメの日々に忘れがちだが、今は戦時下なのだ。
「加賀さん、だったかしら?八幡を宜しく頼むわね」
やけに嬉しそうな様子の母が言う。我が親ながら、もうちょっとその、しんみりした感じには出来ませんかね?
「はい。私にとって大切な方です。健やかなる時も、病める時も、全力で彼を支えてゆく所存です」
加賀さんは、どうも天然で誤解を生む言い回しをするのが癖らしい。これじゃ明らかに、俺がお婿に行く展開だ。このままだと今に「息子さんを下さい」とか言い出しかねない。
「うむ、貴女になら安心して息子を任せられそうだ。頼みましたぞ・・・」
自らを納得させるように何度も頷きながら、涙と鼻水を堪え切れない様子の父。これはこれで、何と言うか・・・
「は!この身に代えましても!」
凛々しい敬礼を見せる彼女の姿はやはり、最前線に立つ艦娘そのものだった。
「加賀さんを泣かせるなよ、八幡!」
「気をつけてね。夜もしっかり励むのよ!」
「な・・・?!」(俺+加賀さん)
玄関で見送りを受けたが、どうにも調子が狂う。まぁ、これも両親なりの気遣いなのは分かっていたが。何しろ、息子が戦場に行くのだから。
急な話でまだ現実感はないものの、漠然とした不安を抱いていた俺は、努めていつも通りに振る舞った。だが、小町だけは最後まで伏し目がちなままだった・・・
で、慌ただしい挨拶と準備を済ませ、俺は空を飛んでいた。加賀さんと一緒に。あ、別に中2病を拗らせた訳じゃない。現実だ。あれから二式飛行艇に乗せられて、任地の鎮守府に向かって絶賛フライト中。ストライクウィッチーズで、宮藤軍曹が欧州行きに使っていたあれだ。
広い機内にいるのは、俺たちふたりだけ。あとはぎっしり並んだコンテナの数々。中身は知らん。どうやらこの飛行艇は、補給品を運ぶ定期航空便らしい。んじゃ、俺も補給品扱いなのね。で、操縦は妖精さんが担当しているとか。やはり解せぬ。
手元には、急いで詰め込んだ私物で膨れたキャリングケースがひとつ。予備のマックスコーヒー足りるかな。まぁ、荷物の大半は、後で送ってもらえるらしいけど。
「それで、何処に行くんですか?」
さっきからずっと気になっていた本題に入る。そう、俺はまだ任地の場所すら聞いていなかったのだ。
「南方ソロモン海域の最前線、ショートランド前進鎮守府です。あと、私たちに対して敬語は必要ありません」
は?あなた今なんと?
目が点になるとは、まさしくこのことだ。ど素人の俺を、いきなりどこに送り込もうとしてるんだよ?アイアンボトムサウンドのお隣さんだろ、あそこ。危険度三つ星鎮守府じゃん。大丈夫か、大本営・・・
が、目下のところ、それよりも気になっていたのは、隅っこにあるトイレだ。目隠しと呼ぶにはお粗末過ぎるカーテンがぶら下がってはいるが、ほぼ丸見えなんですけど。まさかあれで用を足せと?
今ごろになって、離水前にマックスコーヒーをがぶ飲みしたのを思い出す。そろそろまずいかも知れない。モジモジしていたら、不意に加賀さんが立ち上がった。自然な足取りで向かう先は・・・
反射的に首の骨が鳴る勢いで後ろを向き、全神経を集中させて外界の音をシャットアウトする。そう、即座に俺は耳の穴を閉じたのだ。(宇宙人ジョーンズ)何も聞こえない。聞こえたりはしない。なんせ俺は紳士だからな。そしてアイドルと艦娘はトイレなんて行かない。(世の真理)
まぁ、元々四つもある発動機がうるさくて、聞こえるはずはないんだが。え?何がだって?そりゃ奥さん・・・
「報告!敵戦闘機、我が方に急速接近中!」
馬鹿げた思考は、緊張した飛行妖精さんの声に破られる。否応なしに、俺の提督業が始まった瞬間だった。
【次回予告】任地への赴任途中に、深海戦闘機の襲撃を受けた八幡と加賀さん。反撃手段はない。だが、絶望的な状況の中に見えた一筋の光。そして窮地を乗り越えるため、ふたりは空の上で『合体』するのであった・・・
第5話:初めての共同作業