やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第8話:特別演習(中編)

「止まって!!」

 

 

初めて聞く声に、私は主機を逆回転させた。取舵を切りながら、下半身を使って急制動の衝撃を吸収する。とても私がやったとは思えない、滑らかな身のこなし。自分が艦娘になったことを実感させられた瞬間だった。これはきっと、私の中にいる「彼女」の経験と記憶が成せる技なんだろう。

 

 

そして、急停止した私の目の前では・・・

 

 

「なにっ?!」

 

 

直撃を受けた天龍さんが驚愕の声を残して吹き飛んだ。神通さんも炎に包まれる。え?ま、まさか、これって・・・

 

 

「じ、実弾・・・?」

 

 

「う、嘘でしょ・・・?」

 

 

一瞬で足が竦んで動けなくなった私たちを狙って、敵弾が大きな水柱を立てる。耳もとを何かの破片が掠めた。周りでは、仲間が悲鳴と共に次々と倒れてゆく。

 

 

「ぽ・・・!?」

 

 

「にゃし!?」

 

 

「い、痛いのです!」

 

 

「よ、夜になったら見てなさいよ!ぐはっ!」

 

 

制服が破れ、艤装は砕け散り、赤色の飛沫が海を染める。なんで・・・どうして・・・あまりの出来事に、思考がついていかない。この演習が実際には「共食い」と呼ばれる苛酷な実戦であることを、新入りの私たちが知っているはずもなかった。

 

 

ど、どうしよう。でも、このまま沈められるなんて・・・嫌だ!

 

 

「安全第一で俺のところに戻ってこい、ルミルミ」

 

 

その時、凍りついた私の意識の中で、はちまんの声がした。

 

 

そう、そうだ!彼が待っている。クラス中が敵に回ったあの頃に比べたら、こんなの!相手の姿が見えているだけでも、まだましだ。

 

 

不意に甦る、苦い記憶・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に漂う不快な空気。ある日突然、私はクラスの全員から無視され始めた。なんで私が標的にされたのか、今でも全然分からない。もしかしたら、初めから理由なんてなかったのかも知れない。

 

 

昨日まで友達と思っていた子たちも、みんな離れていった。誰がいじめの首謀者なのかは一目瞭然だったけれど、証拠はないし、話しかけても無視されてしまうから、問い質すことすら出来なかった。一瞬で、学校から私の居場所は消え失せて、ひとりぼっちの毎日が始まった・・・

 

 

でも!いまの私には帰る場所がある。はちまんが待ってくれている。そうだ、あそこに帰るんだ!

 

 

我ながら、ポジティブな考えが浮かんで驚く。いつもネガティブ思考で暗闇に嵌まっていた私が・・・今なら、いじめを仕掛けてきたあの子たちにだって、言い返せるかも知れない。艦娘になったから?それともはちまんに逢えたから?

 

 

「ねぇ!これは演習なんかじゃない!あいつら、本気だわ!」

 

 

すぐ横にいた曙さんが叫んでいるけれど、辺りに響く砲撃の音でよく聞き取れない。相手の攻撃は私たちふたりに集中し始めている。

 

 

「止まると狙われます!突破しましょう!」

 

 

「え?で、でも・・・!」

 

 

「ついてきて下さい!」

 

 

私は主機を全開にすると、敵に向かって舵を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝潮、やけに動きがイイですネ~!」

 

 

「曙さんもくっ付いて来ます、お姉さま!」

 

 

「私の計算では、あと10秒以内にCritical hit!が得られるはずです」

 

 

急速に縮まる相手との距離。目の前に立ち塞がる巫女服の艦娘たち。その姿に、いじめをリードしていたあの子たちの顔が重なる。私は躊躇わず12.7cm主砲を連射した。怯んだ敵の間に道が開ける。

 

 

「やった!」

 

 

そう思った瞬間、至近弾に煽られてバランスが崩れる。ここで転んだら、集中砲火を浴びて間違いなく轟沈だ。でも私は、私たちは、こんなところで終われない、終わりたくない!今度こそ生き抜くんだ!!

 

 

「朝潮、改・・・!」

 

 

スッと身体が軽くなる。誰かが私を包み込む感覚と同時に右手が無意識に引き金を絞り、海面に主砲を撃ち込む。その反動で上手く体勢を立て直した私は、最大戦速で敵艦隊の中を駆け抜けた。

 

 

「ひえ~い!お、お姉さま、ブースタンドです!」

 

 

「Shit!私たち四姉妹も舐められたものデスネ~!」

 

 

振り返ると、尚も追いすがろうとする敵の背後に、曙さんが回り込むのが見えた。

 

 

「こっちも忘れて貰っちゃ困るわ!」

 

 

容赦ない砲撃に、敵の髪飾りが破片となって宙を舞う。今頃になって、私たちの主砲にも実弾が装填されていたことに気付く。けれど、初めての実戦に痺れた頭では、その意味合いを充分に考える余裕はなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉さま、あのふたりは・・・」

 

 

「Yes!Excellentな子たちが入って来ましたネ・・・!」

 

 

なぜか砲撃を止めて立ち尽くす敵を避けて大きく舵を切り、鎮守府へと針路を取る。結局、突破出来たのは、私と曙さんだけだった・・・




次回予告:共食いの果てに覚醒した朝潮ことルミルミ。そして八幡も遂に本領を発揮する・・・?

第9話:特別演習(後編)
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