やはり俺の艦隊ラブコメはまちがっている。   作:いろはす@

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第9話:特別演習(後編)

「お、始まったな」

 

 

俺は執務室の窓から、特別演習とやらの様子を眺めていた。双眼鏡の向こうでは砲撃音と共に水柱が上がり、新米艦娘が次々と吹き飛ばされてゆく。予想外にリアルだ。ちょっとばかり生々しすぎるが、まぁ、こんなものなんだろう・・・って、えっ?!

 

 

双眼鏡の視界に飛び散った赤いモノ。う、嘘だろ・・・

 

 

「天龍大破、神通大破、夕立大破、睦月機能停止、電航行不能、川内艤装全壊」

 

 

思わず振り返った俺のすぐ横で、淡々と読み上げる大淀の声。

 

 

「あ、あれは何だ?!」

 

 

「特別演習です。先ほど、ご説明しましたが」

 

 

それがどうした?とでも言うように、眼鏡へ手を添えて答える大淀。

 

 

「そんなことを聞いてるんじゃない!彼女たちは・・・」

 

 

「ええ、実弾演習よ。当たれば普通に大破するわ」

 

 

「なっ・・・!」

 

 

大淀に代わって答えた加賀さんが、冷静な顔でこちらを向く。

 

 

「炸薬の量は減らしてありますから、直撃しても沈むことはありません」

 

 

「Excellent!・・・じゃなくて!み、みんな怪我してるじゃねえか!」

 

 

狼狽える俺に、加賀さんは続けた。

 

 

「ここは最前線です。新入りに実戦の厳しさを分からせるには、これが一番なの」

 

 

「だ、だからってこんなの・・・!」

 

 

絶句する俺を、加賀さんと大淀は不思議そうな表情で見詰めてくる。

 

 

「始めに被弾する痛みや恐怖を知っておけば、後々生き延びる確率が上がります。この演習方法はむしろ、彼女たちの為なのです」

 

 

淀みなく話す大淀。(註:ギャグではない)

 

 

「この鎮守府に配属された以上、少しでも長く戦い続けられるようにと、前任の提督が考案した画期的なシステムです」

 

 

加賀さんも口を添える。コイツらは、自分が何を言ってるか分かってんのか?

 

 

「どこが画期的なんだ!?一方的に新入りを袋だたきにしてるだけだろ!」

 

 

「いいえ、一方的ではありません。新人たちにも、ちゃんと実弾を与えてあります。反撃できるかどうかは、本人次第。言うなればこれは、艦娘同士の共食いです」

 

 

「と、共食い・・・だと?」

 

 

「それに私たちは艦娘。深海棲艦と戦う兵器です。ご心配には及びません」

 

 

その間にも、砲声は絶え間なく響いている。

 

 

「と、とにかく演習は即刻中止!みんなにそう連絡するんだ!」

 

 

「なぜです?新人の鍛練を邪魔するおつもりなのかしら」

 

 

通信機のインカムを持つ加賀さんに命じたが、彼女は取り合おうとしない。くそっ、こうなったら・・・

 

 

「艦娘は兵器なんかじゃない、人間だ!だからあんな演習は認めない!俺が自分で指示するから、それ(インカム)を貸してくれ!」

 

 

思わず掴んでしまった華奢な肩に、はっとする。

 

 

「す、すまん・・・大丈夫か・・・」

 

 

「え?ええ・・・」

 

 

そしてなぜか顔を赤らめた加賀さんが、ぽつりと漏らした言葉。

 

 

あなた(提督)は・・・私たちを人間だと言って下さるの?」

 

 

いつもの凛とした雰囲気はどこへやら、弱々しい上目遣いで迷子の仔猫ちゃんみたいだ。(何それ可愛い過ぎ)

 

 

そんな彼女の様子を見て、言いようのない腹立たしさがこみ上げてきた。人としての自分自身を否定してしまうなんて、そんなのダメだ。敢えて言おう、やはり加賀さんたちの自己評価はまちがっている、と。

 

 

「あ、当たり前だろ!そんなの、分かりきったことじゃねぇか!何度でも言ってやる!だから・・・」

 

 

熱くなった頭を冷やそうと、一度言葉を切る。

 

 

「だから、自分たちが兵器だなんて言わないでくれ・・・」

 

 

「!!」

 

 

俺の答えに、加賀さんと大淀は驚いたように目を見開いた。胸の前で握り合わせた両手が、微かに震えている。一瞬、ふたりの纏う空気が変わったように感じたが、気のせいだったか・・・

 

 

それよりも・・・またやっちまった・・・

 

 

あの日、部室で「本物が欲しい」とかやらかして以来の黒歴史。って言うか、わざわざ南の島で黒歴史伝説更新してどうすんだよ・・・

 

 

まぁ、あれだ。お互い、今日のことは胸の中にしまっておこう。異議なし!これでめでたく秘密は封印された。ふぅ・・・

 

 

照れ隠しに制帽を被り直す新人提督の姿に、そっと拳を握るふたり。きゅんきゅんしながら、囁くように言葉を交わす。

 

 

「提督のことは、私にお任せください・・・」

 

 

「いいえ、ここは譲れません・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、演習は終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てか俺、ただの一人相撲じゃん!!(衝撃)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがこの時、俺たちはだれひとり気付いていなかった。窓の外に張り付いた、不審な影に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青葉、見ちゃいました・・・」




次回予告:自分の気持ちに気付いてしまった艦娘たちは、敢然と行動を開始する。その先に待ち受けるのは、鎮守府という名のハーレムか、それとも修羅場か・・・

第10話:提督は誰のもの?
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