ネタを考える時間が減ってきたので更新がより遅くなっていくかも。
最終編のあのシーンで惚れた
「そろそろ局長の誕生日だね」
ヴァルキューレ警察学校、公安局の休憩スペースで1人がそんな事を呟いた。
話題の人物は自分達の上司である尾刃カンナ。
公安局の局長であり、多くの部下をまとめ街の治安維持のために日々努力を重ねている真面目な少女。
だがその真面目さゆえにどんなに忙しくても自身の仕事の手を抜かず、妥協せずに働き続けてしまう。
その上休むのも最低限で、傍で見ているこちらが心配になるほど。
そんな局長の誕生日がもうすぐやってくる。
だが肝心のその内容に彼女達は頭を悩ませていた。
「去年は失敗しちゃったから……今年こそは成功させないと」
「どういう感じが良いんだろう、中々思いつかないや……」
去年、彼女達含む同僚達全員で局長を祝った事があった。
それぞれがプレゼントを持ち寄って軽いパーティーで局長をもてなそうとしたのだが…
『お前達の気持ちは嬉しいし感謝している。だがまだやらなければいけない仕事が残っているんだ。 だから後は私の事は気にせずお前達だけで楽しんでくれ』
そう言って局長は仕事に戻ってしまった。
去年はろくに祝う事ができなかった。
だからこそ、今年は局長にも楽しんでもらいたい。
普段張り詰めっぱなしの気持ちを緩めて、その日くらいは楽しく過ごしてほしい。
「うーん…ただのお祝いだと去年と同じだし、また断られちゃうかもしれないし……」
「せめてその日に局長が自由になれる時間ができれば良いんだけど…………」
「それだ!」
突然1人がそう言って立ち上がる。
「私達で局長にお休みの日をプレゼントすれば良いんだよ!」
「た、確かにそれなら局長も自由に動けるだろうけど……」
「でも丸1日何もしなくていい日なんて作れるの?」
局長が満足に休めている様子なんてこれまで見た事ない。
多少仕事が少ない日などはあったが、それでも完全に休息をとれるわけじゃない。
「…………さっき局長を見た時、目元にクマがあったの。多分ここ最近寝れてないんだと思う…だからたせめて、局長の誕生日くらいは仕事も悩みも全部忘れて過ごしてほしい」
そう話す少女に賛同するように他の同僚も頷き。
「じゃあ局長の誕生日までに色々頑張らないと」
「他のみんなにも話さないとね、全員でやればなんとかなるかも」
そう決意した少女達は休憩室を後にした。
――――――――――――――――――――
最近、部下達がおかしい。
仕事を片付けるスピードが異様に早いし、その上休んでる姿もあまり見かけなくなっていた。
一度気になって何かあったのかと尋ねてみたが、全員首を横に振るばかり。
こちらとしては公安局の仕事が片付くだけで悪いことではないのだが、急な変わりようにどうしても気になってしまう。
さらに今日の朝に先生から呼び出され、現在私はシャーレのソファで待機していた。
「…………先生、呼び出されてしばらく経ちますが一体何の要件だったのですか?」
「えぇと、な、何だったかなー」
しかもシャーレにやって来たはいいものの特に仕事を与えられるわけでもなく、ソファで待っていて欲しいと言われたのみ。
「何もないようでしたら公安局へと戻らせていただきたいのですが」
「も、もうちょっとだけ待ってて欲しいんだけど……」
「先生、流石に悪ふざけはよろしくないかと。私にも仕事がありますので」
「ああカンナ!待っ……!」
ソファから立ち上がり部屋を出ていこうとした時、
不意に先生の机から電話の音が鳴った。
「…うん………うん、わかったよ。カンナごめんね、もう公安局に戻っても大丈夫だよ」
電話を終えた先生はこちらを向いて、あんなに引き留めていた私をあっさりと解放した。
その行動に少しばかり疑問を覚えながらも公安局へと急いで戻る。
そして入り口の扉を開けた瞬間。
パーン!パパーン!
「お誕生日おめでとうございます!カンナ局長!」
突然クラッカーの音が響いたかと思えば、私を祝う部下達の言葉が聞こえる。
「……………………?」
いきなりの出来事に固まってしまった私だったが、冷静に辺りを見渡す。
飾り付けられた天井や壁、さらにテーブルに用意された料理、そして大きい紙に書かれた私へのメッセージ。
「…………誕生日、そうか…私の誕生日か」
毎日の仕事でそんな事は気にもしてなかった。
「そうです局長!さあ、どうぞ!」
部下達は私をテーブル前に誘導しようとしているが、素直に向かうわけにはいかない。
「ここまでしてくれるとは思っていなかった、だがゆっくりする暇は……」
用意してくれた部活達には申し訳ないが、残っている仕事を片付けなければならない。
そう言って断ろうとしたが。
「ご安心を局長。今日1日、局長はお休みです!」
「……は?」
「局長がやる仕事はもう終わらせておきました!」
「街の見回りも強化して、何が起きてもいいように他の人員を総動員させて巡回しています!」
そんな事を言われ再び固まってしまう。
「……勝手にこのような事をしてすみません。
でも、局長はいつも私達を引っ張ってくれました。だからどうしてもその感謝を伝えたかったんです」
「今日だけは、私達の気持ちを受け入れてくれませんか?」
「お前達……」
……どうやら私は随分と部下に心配をかけてしまっていたらしい。
ならばその部下を安心させてやるのも上司の役目だろう。
「…………久々に甘いものを食べるよ」
「!はい!あのケーキは有名な……」
――――――――――――――――――――
公安局での騒がしかった時間があっという間に過ぎ去り、辺りが静まり返り街灯も点き始めた頃、
私は1人である場所へと向かっていた。
「やあカンナ」
「先生」
そこは以前、先生とも一緒に食べた事のある屋台。
あの後先生に呼び出されてやって来たのだが、呑気な顔でこちらに挨拶してくる先生を見てため息が出る。
私はそのまま先生の隣りに座り、注文をしながら先生に話しかける。
「…………知ってたんですよね」
「えっな、何のことかな?」
「とぼけなくても結構ですよ」
「…少し前にあの子達から話を聞いてね。それで少し協力しただけだよ」
「どうやら何度も徹夜や無理な作業をしていたそうですが」
図星なのか、横に座る先生は苦笑いで誤魔化している。
「それでも、大切な生徒のために頑張りたいって思ったからね。私が自分でしたくてやった事だよ」
「……………………はぁ、そこまで言われればこちらとしてはもう何も言えません」
「……楽しめたみたいでよかった」
「ええ、久しぶりに心から楽しめた時間でした」
先程の公安局での思い出を振り返って自然と口元が緩む。
「なら、私も今からお祝いさせてもらって良いかな?」
「今日はもう帰って寝るだけでしたので……構いませんよ」
「そっか、じゃあ早速………………カンナ、誕生日おめでとう」
「……ありがとうございます」
そうして2人がグラスを打ち合わせた音が静かに響いた。