「───。相変わらず君の歌は希望を見せてくれるね」
黒い服を着た人が私を撫でながら褒めてくれる。それが嬉しくて、私は彼が来ると何時も歌っていたんだ。
「ねぇ、───!わたしもいつか貴方みたいに皆を救えるかな!」
「あぁ、救えるよ。君の歌は暗い現実を明るくしてくれるから」
「ほんと?じゃあ、───。わたし、もっともっと歌えるようになってみんなの為になる!楽しみにしてて!」
「……うん、楽しみにしてるね」
少し俯いてから話す彼は私が未来の話をするといつも辛そうでその辛さを癒せるように私は続けて歌った。
でも彼と話せる時間はそうなくて直ぐに居なくなってしまう。
でも、あの日は違ったんだ。
「ねぇ、───?何処に行くの?」
「…少し、遠くのところだよ。君に見せたいものがあるんだ」
急に部屋に入ってきた彼が私の腕を掴み、施設のなかを歩いていく。
突拍子もない行動を不思議に思いながら彼を信じてついていき、たどり着いたところは外だった。
「ここ、外?どうして…」
初めて見る外は薄暗く何もなかった。少し怖くなって彼を見ようと振り替えると…そこには何時もより辛そうな顔の彼が居た。
「君に見て欲しいものがあったんだ。だから連れ出した。でも少し早かったかな」
辛そうな顔を無理やり笑顔に変えながら、私のとなりで座る。私も彼の隣で座って、痛々しい彼を救えるように心を込めていつも歌っている歌を歌う。
そして、何時も通り彼は歌い終わった私の頭を撫で、外を指差した。
それに導かれ目を向けてみると、其処には薄暗くなにもない外を一心不乱に照らす太陽があった。
初めて見る光と光景に目を焼かれながら、私は美しいと感じた。
「ふふっ、綺麗だよね。この光景を君に見せたかったんだ。ごめんね、急に連れ出してしまって。でも私にとっては、あの太陽が君なんだって伝えたくて」
私が、彼の太陽…。こんなに綺麗なものになれているんだ。…嬉しい。
「そっか、そっか!そうだ、───は、私にとってこの熊さんだよ!一緒にいると心が落ち着いて、嬉しくて…大好きなの!」
見せつける熊の人形はある研究者さんから貰ったもので何時も持ち歩いている程、大切で大好きなもので例えるならこの子が一番いいと思った。でも、彼は少し悲しそう?
「そんな、大切なものになれたのか。ありがとう、──。それじゃあそろそろ戻らないと」
また、彼に連れられ歩いていく。目の前では背にある太陽の光で出来た影が不気味に蠢いていた。
部屋へ近づく程、彼の足はゆっくりになっていって部屋の目の前にたどり着いた頃には彼から涙が流れ出そうだった。なんで悲しいのか、分からなくて励ますために私は彼の前に立つ。
「───。なにかあったの?大丈夫、泣きたいなら泣いていいんだよ?」
「大丈夫…大丈夫だよ。ありがとう、──。」
絶対大丈夫じゃないのに、彼はそう言って私を部屋へと戻す。モヤモヤする、なんで私は彼の太陽なのに彼を照らせないんだろう。
「それじゃあ、また後でね」
彼は直ぐに部屋から立ち去った。外から彼の嗚咽と他の人の声が聞こえて、私も泣き出してしまった。何故か、もう彼とは会えない気がしたからだ。
そして、次の日の朝…私は何かの注射をされた。身体中が痛くて苦しくて泣き叫んで、でも私は生きていた。其処に居た人たちは嬉しそうに記録をしていく。それを見て、私は人の役に立つって痛いことなんだと知った。
その日を境に彼は来なくなり、注射は増えていった。
一人で寂しく歌う。いつの日か彼が来て私の歌を聞いて貰えるように。でも、何時まで立っても彼は来ない。
注射されたものの副作用で苦しみもがいても、貴方に会えなくて悲しいと泣いても。
何処にも彼は居ない。
私は───
目が覚める、痛く苦しい思いを抱いて。何かの、過去の思い出が私の心を黒く蝕む。でも、お姉ちゃんが頭を撫でてくれていて声をかけてくれる。
「大丈夫、落ち着いて。此処には貴方を苦しめるものはないわ」
お姉ちゃんの声で乱れた呼吸を整える。
「あり、がとうございます。テレジアお姉ちゃん」
お姉ちゃんが撫でられるほど、苦しみが引き黒い何かは消えていく。
「いいのよ。今の私は貴方のお姉ちゃんなんだから」
優しく諭しながら抱き締めてくれた。暖かい体温が私の心を癒してくれる。でも、悪夢のせいで血の気が引いている顔を見られるのが少し恥ずかしくて顔を埋める。
「ふふっ、甘えん坊ね。よし…よし」
「テレジア、君たちは何をしているんだ…?」
だけど、ちょうどその時、ケルシーさんが部屋に入ってきたみたいで私は急いでお姉ちゃんから離れた。
「なっ、何にもしてないです!ねぇ、テレジアお姉ちゃん!」
「あら、そんなに慌てなくてもいいのに。それとケルシー今のは悪夢を見てたミューズを落ち着かせてただけよ?」
「はぁ、そうか。テレジア、君に伝えるべき情報がある。少し来てくれ」
「…分かったわ。ミューズ、私達戻るのが遅かったら一人でご飯食べていていいからね?」
一人、その言葉を聞くと嫌な気持ちが出てくる。でも、二人は忙しいからしょうがない。
「─、分かりました。行ってらっしゃい、テレジアお姉ちゃん、ケルシーさん」
二人は部屋から出ていった。とりあえず、私は汗で濡れた服を脱ぎシャワーを浴びてから着替えた。
「寂しいな…。」
前の作品だから設定がうっすらしか覚えてない!!