VRMMO経済をぶっ壊します!〜だめだよお姉ちゃん金卵をそんな使い方しちゃ〜   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第4話「頼れる仲間は小悪党」

「どうしようね、これ……」

 

 

 ぼろぼろになったクランハウス内の、エコ猫の執務室。

 ゴールデンエッグでぽむぽむとお手玉しながら、エコ猫は眉根を寄せる。

 時価1億ディールのお手玉は楽しいかい?

 

 

「お姉ちゃんの好きにしたらいーよ。いつも通り自由に売ってもいいし、武器強化の素材にしてもいいし」

 

 

 ゴールデンエッグを産んだドンちゃんにもたれかかって頭を撫でてやりながら、カズハはのんびりと応えた。

 カズハは基本的にテイムモンスターを愛でることさえできれば何でもいいと思っている。副産物のアイテムは全部姉の好きなようにさせているし、どこでさばいているかも興味はない。

 テイムモンスターに食わせる餌の分のお金は必要だが、姉が代金代わりに買ってきてくれるので、別に困ったこともない。

 

 

「好きにしていいって金額でもないんだけどね……」

 

「だってボクじゃ有効活用できないもん。人と話すのやだし、テイマークラスに武器強化はいらないし。だから全部お姉ちゃんの好きにしていいんだよ」

 

「そういうことならお言葉に甘えちゃおっかな」

 

 

 頭上に放り投げたゴールデンエッグをぱしっとキャッチして、エコ猫はアイテムボックスに放り込む。

 そして代わりに、アイテムボックスから手鏡を取り出してカズハに渡した。

 

 

「? なにこれ」

 

「“姿映しの鏡”。キャラメイクをやり直すアイテムだよん。カズハちゃん、これ使ってアバター変更して」

 

「えっ、なんで! このアバター気に入ってるのに!」

 

 

 自分の少年ボディをぎゅっと抱きしめ、眼を丸くしたカズハが反論する。

 そんな妹に、エコ猫は淡々と告げた。

 

 

「多分テイムに成功したところ、スクショ撮られてるよ。いつも通り【ステルスネーム】は使ってるからダイレクトチャットしてくる人はいないだろうけど、今のままだとそのアバターから身元を突き留めて凸ってくる奴いると思うの」

 

「えっ!?」

 

「取り囲まれてずーっとどこまでも付きまとわれて、どうやってテイムしたんだーとかゴールデンエッグはこれから全部俺に売れーとか、ログインしてる間ずーっと付きまとわれるの。そんなのやでしょ?」

 

「い、嫌!!」

 

 

 真っ青な顔で、カズハはぶるぶると震える。

 対人恐怖症というよりも人間が大嫌いなカズハは、その光景を想像しただけで震えが止まらない。

 それはMMOの中であっても変わらない。例外として獣人アバター(ケモノ)相手には比較的態度が柔らかいが、それでも積極的にコミュニケーションしようとはしない。

 そんな彼女にとって、もはや今のアバターはデメリットしかなかった。

 

 

「だからそのアバターは捨てて、別のアバター作り直しなさい。そうね、性別も別がいいわ。今度は女の子でいきましょ」

 

「でもせっかく性別を選べるのに、現実と同じだとつまんないよ」

 

「性別も変えた方が、正体を見破られにくくなるでしょ?」

 

「そっか、じゃあそうするね」

 

 

 姉から理詰めで説得されたら素直に聞くカズハは、アイテムを使ってキャラメイク画面に入った。

 

 

「うんうん。あ、どうせならとびっきり可愛くしよう! お姫様みたいなの!」

 

「あんまり目立つのやだなあ……地味でいいよお」

 

 

 

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 そんなこんなでしばしの時間が流れ……。

 クランハウスの執務室には、銀髪のロングヘアが印象的な可憐な少女が立っていた。

 黒を基調に白いフリルが設けられたゴシックドレスを身に纏い、ドレスの裾の部分に取り付けられたポーションケースには色とりどりのポーション瓶が刺さっている。足元は革のブーツを装備して、アクティブさもプラス。

 

 エコ猫はそんなアバターを見て、うんうんと満足そうに頷く。

 

 

「よし、良い感じに没個性にできたわね!」

 

「……思い切り派手じゃない?」

 

「清楚系黒ゴス銀髪お嬢様なんて、この界隈じゃコテコテのテンプレでしょ。個性的っていうのは、私みたいなガチ寄りのケモキャラを言うのよ」

 

「まあ、確かに黒ゴス銀髪キャラはMMOだと良く見るけども」

 

 

 誰もがやりたい黒ゴス銀髪が一周回ってテンプレ没個性になる不思議!

 それはそれとしてエコ猫的にはクリーンヒットの容姿なので、可愛い妹を見られてお姉ちゃんとしても大満足であった。

 

 

「といっても、カズハちゃんはいつも通りクランハウスの中で好きに過ごしててくれればいいからね。今回の狩りはメンバーが捕まらなかったから一緒に来てもらったけど、あくまでも例外だから。せっかくアバターまで変えたのに、人目に触れさせたら意味ないしね」

 

「ほんと? よかったあ!」

 

 

 カズハはほっと安堵の息を吐いて、ドンちゃんの頭を撫でる。

 

 

「ふふふー。ずっとここで遊んでようね、ドンちゃん」

 

「ぐるるー」

 

 

 目を細めてぐるぐると喉を鳴らすドンちゃんである。

 

 この子を連れて高レベルの狩場を周回しようと思っていたエコ猫だが、ゴールデンエッグを産むとなれば話は違う。なんとしてもカズハは人目にさらさずに秘匿しなくてはならない。ドンちゃんを連れて狩場を歩いてるところを見られるなんて言語道断だ。

 

 ……さて、このゴールデンエッグはどうさばこうかな。

 匿名で市場に流すのが一番安全だとは思うが……。

 

 

「単に市場に売っても、1億ディールが手に入るだけ。それじゃつまんないよね」

 

 

 エコ猫は商人クラスである。

 商人というのは、1を10にも100にもしてこそ商人と呼べるのではないかとエコ猫は常々思っている。

 ただ単にゴールデンエッグを市場に流しても、そこに何の付加価値もついていない。それでは商人が介在する意味がない。

 

 そして、何よりもエコ猫は面白いことがしたい。

 せっかくゲームをしているんだから、そのプレイ内容はできるだけスリリングで愉快であってほしい。

 だからこそ商人プレイでビッグマネーを掴み、何か大きなことをするために一獲千金のレアアイテム狩りをしていたのだ。

 

 そこにレアアイテムを産むドラゴンというとびっきりの面白いネタが飛び込んできたのだ、これを活かさない手はない。

 

 

「何かいい手はないかなぁ?」

 

 

 そう呟いたとき、執務室に1人の女性が入ってきた。

 

 

「ただいま、エコ猫! いい儲け話を持ってきたわよ!」

 

「うん、お帰りレッカ」

 

 

 傭兵のレッカは、赤い髪をショートカットにした剣士クラスのプレイヤーだ。頬には傷塞ぎ用の白いテープ(型のアクセサリ)を貼っており、全体的にボーイッシュな印象を受ける。

 

 

「実はね、戦闘クランの<シャイニングゼロ>っていうところがあるんだけど、そこが今回のテイムについての情報を買いたいらしいの!」

 

「ほう」

 

「さらにゴールデンエッグがもし生産できるようなら、これから定期的に買い取ってくれるって! なんとお値段10%増しの1億1千万ディール! いい話でしょ?」

 

「へえ」

 

「こんないい話を持ってくるなんて、私って親切だと思わない? 感謝していいからね!」

 

「うん、レッカ」

 

 

 エコ猫は猫目を細めてにっこりと微笑んだ。

 

 

「カズハの情報売ったでしょ?」

 

「…………」

 

 

 ぴたりと動きを止めたレッカに、エコ猫は続ける。

 

 

「<シャイニングゼロ>って、テイムした後に寄ってきた連中の中にいたよね? どうせあいつらにお小遣いもらって、こっちの情報ぺらぺら話しちゃったんでしょ。で、あんま大した情報持ってないなと思った向こうの連中のメッセンジャーとしてこの話を持ってきたと。そうだよね?」

 

「ええと……」

 

 

 あからさまに目を泳がせるレッカに、エコ猫ははぁと溜息を吐いた。

 

 

「ま、別にこのゲームの傭兵契約に守秘義務とかないしね。別に法に問えるわけじゃないけど」

 

「だ、だよね? そんな約束してないもんね。だから別に問題……」

 

「でも友達の妹の情報を勝手に売ったことは個人的に許せないかなあ」

 

 

 ギロリと猫目をきらめかせるエコ猫に、レッカがたじっと後ずさった。

 

 

「ご、ごめん。それくらいならいいかなーって思ったんだけど……お、怒った?」

 

「割とね」

 

「ほ、ホントごめん。反省してるから。許して」

 

「本当に悪いと思っているなら、謝罪は私じゃなくて勝手に情報売られた本人にすべきじゃない?」

 

 

 エコ猫が目配せすると、レッカは所在なげに佇んでいた銀髪の少女と金色のドラゴンを見て目を丸くした。

 

 

「え、超かわいい! もしかしてカズハちゃん!? それに金丼さんもいるじゃん! なんか戦ったときより小さいね!! へえー! 本当にテイムできたんだ!」

 

「あ、あの……」

 

「そうそう謝罪ね謝罪! ごめんね! 許して!! 」

 

「あ、はい」

 

「ようしこれで仲直り! いえーい!!」

 

「……」

 

「いえーい!?(圧)」

 

「い、いえーい……」

 

 

 カズハの手を取ってぶんぶん上下に振り回すレッカ。

 そんな彼女を見て、エコ猫は心中でやれやれと溜息を吐いた。

 

 エコ猫は口で言うほど怒っているわけではない。

 最初から傭兵なんて裏切るものと割り切っているから腹も立たない。

 だが、そう気安く裏切られては困るから、怒った演技で圧を掛けた。

 

 所詮ゲームなのだから、裏切りのハードルもリアルよりゆるっゆるである。

 むしろこのゲームの場合、マネーゲームをテーマにしているのだ。いつ他人を裏切るのか、あるいは裏切らせないために何をするのか。そこもまた醍醐味と言える。

 登場人物全員悪人、あるいは超巨大規模の人狼ゲーム。それくらいの気持ちでいた方がいい。

 

 

(無条件で信頼できるのはカズハちゃんだけね……)

 

 

 それにカズハは常時【ステルスネーム】を発動しているから、その存在やアバターの情報は漏れたとしてもキャラ名が伝わることはないだろう。キャラ名を知られたらちょっとキレてたかもしれない。

 

 

 そこに、もう1人のクランメンバーが姿を現わした。

 

 

「やあ、ただいまエコ猫! いい儲け話があるんだが!!」

 

「お前もかよ!」

 

 

 片眼鏡を掛けてシルクハットを被った、胡散臭い紳士風の魔導士・クロードに、エコ猫は半目を向けた。

 

 

 

 

「ぐるるるる~」

 

「今度勝手に情報を流してご主人に迷惑を掛けたら、リスポーン地点に陣取ってブレスで何度でも丸焼きにするぞって言ってるよ」

 

『ヒエッ……』

 

 

 抱き合ってぷるぷる震えるレッカとクロードにドンちゃんが脅しをかけるのを見ながら、さてここからどうしようかなとエコ猫は考える。

 

 レッカが<シャイニングゼロ>からの話を持ってきた一方で、クロードは<レッドクロス団>という戦闘クランからの話を持ち込んできた。

 条件はどちらも同じ、テイムに関する情報が欲しいというのと、定期的にゴールデンエッグを買い上げたいという話。

 

 

「2つのクランに値段を競らせて、高値を付けた方に売るという手もあるか」

 

「あーいいね! 私に任せて、どっちのクランにも交渉して、ちゃんといい値段を付けてきてあげる!」

 

「いやいや、俺に任せたまえよ。レッカよりもいい値段で収める自信がある!」

 

「うーん」

 

 

 なるほど手数料ピンハネしたいんだろうな、と思いながらエコ猫は2人の仲間を見る。まあそれくらい手間賃として認めてもいいが。

 

 

「なんかつまんないな。それじゃ気が乗らない」

 

「つまんないって言われても」

 

「それに、あの場にいたってことは<シャイニングゼロ>も<レッドクロス団>もどうせPK連中でしょ? 名前の色はどうなってた?」

 

「まあ、うん。オレンジカラーで表示されていたな……」

 

 

 エコ猫は椅子の上で脚を組むと、ポンポンと自分の肩を叩いた。

 

 

「私、あんまPKする人って信用してないんだよね。商人っていうのは信用第一、他人を殺して金品を盗むような奴とは商売できないかな。あんたたち、こいつらが約束をずっと守ってくれると思うわけ?」

 

「そう言われると……」

 

「確かに、信用はできんかもな……」

 

「でしょ。それに競らせるとしても、参加者が2人ってのもダメね。セリっていうのは参加者が多いほどいいの。2人しかいないんじゃ、水面下で簡単に談合して安い値段で決めちゃえるでしょ? だからセリにかけるとしても、もっと多数のプレイヤーを引き込んだ方が……」

 

 

 そこまで口にしてから、エコ猫はパチンと指を鳴らす。

 ニッと猫目を細めながら、彼女はほくそ笑んだ。

 

 

「面白いこと思いついちゃった」

 




仲間たちを簡単に覚える小技

〇レッカ

最初の印象から劣化するから


〇クロード

クラウドファンディング詐欺→クラウド→クロード

※※※

お友達の丁さんがAIで主人公姉妹の支援絵を作ってくれました!

エコ猫

【挿絵表示】


カズハ

【挿絵表示】


エコ猫2
こちらの右側の子のケモ耳を除いたらリアルの銀華

【挿絵表示】


めちゃめちゃかわいい支援絵ありがとうございます!!

ちなみにこれ、私の文章をそのまま入力したら出てきたそうです。
技術の進歩はすごいですね……。
3年前に七慾書いてたときはまさかこんなすぐ追い付かれるとは思いませんでした。
未読の方はよかったら
VRメスガキロボアクション『七慾のシュバリエ』
AI純愛ラブコメ『催眠アプリで純愛して何が悪い!』も読んでやってください。
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