一方通行六歳転生(呪術廻戦)   作:木原レイリ

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第13話 ターニングポイント1

「天元は俺が殺した」

 

 

光が収束し消える。

山だったはずの場所の跡には巨大な穴だけが残った。

 

一瞬のアイコンタクトののちに夏油は天内と黒井を呪霊に乗せたまま校舎の方角へ飛び去った。

 

五条はバッと両手を構える。

 

「虚式『(むらさき)』」

 

「チッ」

 

直前まで白い怪物がいた場所を紫の光が通り抜ける。

少女は数十メートル先を高速で、後ろ向きに滑るように飛んでいた。

 

領域展開――は使わないほうがいい。

 

天元の補助を前提に構成した結界の外殻がどうなるかわからないが、安定せず崩壊した場合に無下限呪術が焼き切れるという結果しか残らない。

 

それは博打すぎる。

 

全身を呪力で強化し高速で追い縋る。

 

「オマエと戦うつもりはねェよ」

 

「冗談!」

 

目の前で天元殺害を自白されて戦わない選択肢があるだろうか。

千秋の大望なのだ。

水を差すことを言わないでほしい。

 

避けたということは『(むらさき)』は有効だったのか。

 

六眼に見える情報によれば向量操術には高度な推論と演算が必要なので、未知の技は避けざるを得なかったのかもしれない。

 

拳を振るう。

 

殴った衝撃と等しいエネルギーが返るが無下限に阻まれ破裂音を立てる。

 

百合華がベクトルを操作し地面に降り立った。

 

某フィジカルギフテッドは『物質が触れてから術式が発動するまでのタイムラグの間に、拳の方向を反転させれば誤認させられる』などと言っていたが無理難題にも程がある。

 

『赫』も使ったことはないがダメだろう。

『蒼』が全く通じない相手に効果があるとは思えない。

 

ならば、百合華の足を止められるのは『(むらさき)』以外にない。

 

「九綱、偏光、烏と声明」

 

複数の『茈』の同時制御。

二つの紫の光球が現れる。

 

「表裏の間」

 

 

 

――ミサカネットワーク; 接続: 'おりひめ1号' 認証:禪院百合華

 

領域展開。

それは生得領域を術式に大量の呪力をぶち込み暴発させることで自身の術式効果を展開する技術。

異界(位相)を現象として出力するのではなく、異界(位相)そのものを現実世界(科学の位相)に再現してしまうという技術。

それを禪院百合華は赤道上空の静止衛星に搭載したスーパーコンピュータの演算能力を借りて、術式を焼き切ることなく手動で構築する。

 

 

code = '001'  位相――

 

限りなく本物に近い推論を導く演算装置(アクセラレイター)

 

向量操術の術式効果が拡散する。

 

 

 

 

――領域ッ!

 

五条は虚式を放つ寸前、術式効果が付与された呪力が広がるのを六眼で視認した。

相手が領域を展開するなら、不完全だろうと領域で押し合わないのは悪手だ。

咄嗟に発動中の虚式の制御を放棄した。

 

領域展開 無量空処

 

一拍遅れて五条の呪力が噴出する。

天元の補助を失ったため本来あるはずの外殻が存在しない、不完全な領域が現出した。

 

互いに外殻はなく、術式効果同士が衝突。

その特性から無下限呪術がやや押し勝ちかける。

 

さらにもう一拍遅れ、制御を失った虚式が崩壊し暴発。

領域が崩壊する。

 

 

「領域展延」

 

虚式の崩壊による純粋な物理的爆風を呪力強化で防ぎ、追撃に備えて展延を展開する。

そして、領域を構成していた呪力が霧散し視界が戻ってみれば、

 

そこには誰もおらず、ただ、地面にぽっかりと空いた焼け焦げた大穴だけが残っていた。

 

五条は一瞬惚けた顔をした後、悔しげに顔を歪めた。

 

 

「……逃げやがったあいつッッ!」

 

 

 * * *

 

呪術総監部より通達

 

一、天元殺害の実行犯として、禪院百合華を死罪に認定する

 

二、禪院直毘人、禪院直哉、禪院明日香、禪院翠、禪院喜愛も共同正犯と認定し、同様に死罪に認定する

 

三、死刑執行人として特級術師五条悟を任命する

 

四、禪院家を御三家から除名とする

 

五、新たな禪院家当主及びアスカハイテクノロジーズ社CEOには総監部が認めた人物が就任するとする。

 

 * * *

 

呪術総監部改革指令

 

発令者: 宮内庁総務局長 三輪高光

発令日: 平成十八年五月十三日

 

前文:

 

 我が国、日本は、長きにわたり平和と繁栄を築いてきました。これは、法の支配、基本的人権の尊重、そして自由と公正の原則に基づく統治の結果であります。これらの原理原則は、日本国憲法に明記された理念として、国民一人ひとりの生活を支えています。さらに、呪術界の安定と管理は、天皇の国事行為の一環として、国家の秩序と安寧を維持する上で極めて重要な役割を果たしてきました。

 

 しかし、呪術総監部における近年の無法ぶりは、これらの原理原則を逸脱し、関係者の信頼を著しく損なう結果を招いております。これにより、呪術界の安定が揺らぎ、天皇陛下の御心にも多大な影響を与えております。全ての呪術師はその職務を遂行するにあたり、現代の法秩序と倫理観を再確認し、天皇陛下の国事行為の一環としての役割を再認識する必要があります。

 

 このような背景から、呪術総監部及びその直下に位置する東京及び京都の呪術高専に対する全面的な改革を行い、我が国の未来と国民の安全を守るために、新たな体制を整える必要があります。本指令は、その第一歩として発せられます。

 

指令:

 

第一条 呪術総監部の組織再編成

 

現在の呪術総監部は、本日をもって解散とし、その権限および業務は新たに設置される「呪術執行局」へと移管する。この新組織は、法の支配と人権の尊重を柱とし、現代の日本社会に適応した呪術の運用を目指す。

 

第二条 呪術高専の再編:

 

呪術総監部直下に存在する東京および京都の呪術高専は、呪術執行局の指揮下に置かれる。これにより、術師の教育および実戦指導が、法と倫理の枠組みの中で統制され、青少年の健全な育成に配慮し、社会に貢献する人材の育成が強化される。各高専は、局の監督のもと、引き続き呪術師の司令塔としての役割を果たす。その運営においては、法令遵守と人権尊重が徹底される。

 

第三条 新たな実務実行者の指名

 

呪術執行局の初代局長として、特別一級術師禪院百合華氏を任命する。彼女の経験と知識、並びに呪術界における卓越した実績をもって、新たな局の業務を遂行するにふさわしいと判断した。

 

第四条 新体制の目的と任務:

 

呪術執行局は、現代の法秩序と倫理観に基づき、呪術の運用と実務の改革を推進する。アスカハイテクノロジーズ社を筆頭としたすべての外部協力機関と緊密に連携し、皇室の古来よりの伝統を尊重しつつ、実務における効率性と透明性を重視し、国民の安全と幸福を最優先に据えた活動が行われる。

 

備考:

 

今後、呪術執行局の設立に伴い、必要な法的手続きや規則の改定を迅速に行い、局の活動が円滑に進行するよう各関係機関に協力を要請いたします。また、この改革に敵対的な個人・組織は適切な処理のもと呪詛師および反社会的勢力と認定されます。

 

結び:

 

本指令は、天皇陛下の国事行為としての役割を担う呪術界の安定を確保し、日本国の未来を守るために、最善の判断であり、全ての関係者におかれましては、これを遵守し、速やかに実行に移すことを強く求めます。

 

 

 * * *

 

内閣官房長官による声明

 

発表者: 内閣官房長官

発表日: 平成十八年五月十四日

 

声明:

 

国民の皆様、そして世界中の皆様にお知らせいたします。本日、日本国政府はこれまで極秘とされてきた我が国固有の災害現象に関する重要な発表を行います。この現象は、最先端の物理学的解析により解明された現象であり、その名称を「火花」といたします。

 

「火花」とは、大気中に存在する新発見の素粒子「アスカン」と、日本列島の特異な地質構造、地下水脈、さらには磁気異常帯との複合的相互作用によって極低確率で引き起こされる自然災害の一種です。この現象は、日本列島を中心に発現するもので、我が国の国土に根ざした自然現象として位置付けられます。

 

このエネルギーは、過去数千年にわたり、局所的な自然災害の一因となっていたことが、今回の研究により明らかになりました。特に、日本列島で記録されている特異な失踪事件、怪死事件、さらには異常気象の一部が、この「火花」の影響によるものであると考えられます。

 

政府は、この現象を研究し、その予防と、その知識の安全利用を推進するため、鈴科明日香氏およびアスカハイテクノロジーズ社との協力のもと、つくば市に「特定異常災害研究所」を設立することを決定しました。この研究機関は、筑波大学との連携を通じて、「火花」の性質解明と安全な管理手法の開発を進め、国土の安定維持に寄与する新たな技術を探求していきます。

 

また、アスカハイテクノロジーズとの共同研究により、巷では「Xsystem」と噂されている安全かつ高度な装置を用い、空気中の「アスカン」を誘引•除去する防災塔「エアロタワー」の建設を各自治体で行いました。この塔は、大気への「アスカン」の蓄積を防ぎ、日本列島における「火花」による災害リスクを最小限に抑えるための重要なインフラとなります。これにより国民が「火花」に遭遇する確率は、専門家の試算によれば、落雷により死亡する確率と同程度に抑えることに成功しました。

 

「火花」は、その成因から、従来の科学技術では説明が難しい現象を引き起こす可能性があります。鈴科氏によれば。この新粒子には、時空や物質•力の存在という物理学の究極の謎を解き明かす重大な手がかりが隠されています。政府と研究機関は一丸となり、この新たな科学知識の安全な利用方法を確立し、国際的な基準を順守しながら、新たな理論の発見と持続可能な未来の構築に寄与するための研究開発を進めてまいります。

 

結びに、この「火花」及び素粒子「アスカン」が持つ可能性を、日本の未来、そして国際社会の平和と安定のために安全に配慮し最大限に管理•活用することをここに誓います。皆様のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

 

 * * *

 

呪術総監部より通達

 

一、現職宮内庁総務局長 三輪高光および現職内閣総理大臣 岸枝明嗣を呪術規定8条の違反として死罪と認定する

 

二、禪院明日香を呪術規定8条の違反として改めて死刑を宣告する。同氏には「Xsystem」と称し呪具を販売した疑いも持たれているため、執行人は死刑執行前に製法を聴取すること

 

 * * *

 

呪術執行局への緊急指令

 

発令者: 宮内庁総務局長 三輪高光

発令日: 平成十八年五月十四日

 

旧呪術総監部による命令違反及び敵対行為が確認されたため、同組織を反社会的勢力として正式に認定する。該当組織の幹部は「呪詛師」として指定される。執行局は、即刻彼らの拘束を実行せよ。

 

 * * *

 

【画像あり】深夜、京都市内で謎の爆発音?広がる不安

 

2006年 5月15日

 

この記事は現在削除されています。

 

 * * *

 

New York Timesより

 

鈴科明日香、筑波先進工業大学を設立し、転入生を受け入れ開始

 

May 18 / 2006

 

東京発 — AHT社のCEOである鈴科明日香氏が、革新的な教育機関「筑波先進工業大学」を設立したことを発表しました。この新しい大学は、最先端の理論物理学•工業技術の研究を推進することを目的としており、すでに転入生の受け入れを開始しています。

 鈴科氏は、設立の背景について「世界の科学技術を次のレベルに引き上げるためには、優れた教育と研究環境が必要です。筑波先進工業大学は、そのためのプラットフォームを提供します」と述べました。

 大学は、AHTの全面的なバックアップのもと最新の設備を揃え著名な教授陣を招聘し、学生たちに実践的なスキルと理論的な知識を提供することを目指しています。また、企業との連携を強化し、学生が卒業後すぐに実社会で活躍できるようなカリキュラムを構築しています。

 鈴科氏は自身も類稀なる科学者であり発明家であり、実業家でもあります。また、先日発表された新素粒子アスカンに関する論文は大統一理論•M理論の完成への大きな手がかりになると考えられています。

 初年度の入学者数は約500名を予定しており、国内外からの優秀な学生が集まることが期待されています。鈴科氏は「多様なバックグラウンドを持つ学生たちが集まり、互いに刺激し合うことで、新しいアイデアや技術が生まれることを期待しています」と語りました。

 

 * * *

 

呪術執行部内部資料より

 

禪院家呪術学研究会は筑波先進工業大学理学部物理学科素粒子研究所へと引き継がれる。この研究所は執行部局長および大学学長の管理下に置かれ、非術師の研究者の獲得につとめる。局の認可を受けた者以外には呪術及び呪力の名称は秘匿され、呪力•呪力場•黒閃に関する研究は必要に応じて仮想理論「アスカン機構」の研究として公開される。

現在は呪術及び呪霊についていかなる形においても公表する予定はない。

 

 

 


 

 

 

2006年5月13日 15時過ぎ 岩手県北上市

 

「あぁ、すごい!素晴らしい!天元は死んだのかな?」

 

「かぁちゃん?」

 

「待って、待って悠仁、今考えてるから」

 

日本を覆っていた天元の結界が崩壊し、一変する世界を見上げながら。

黒髪の女性は笑う。

心底楽しそうに。

 

「やはり彼らは期待した通りだった。いや期待以上だ!ああ待って良かった。特に禪院百合華だ。彼女は因果の影響下にありながら因果を超えてみせた。

世界を変えるほどの逸材、ヒーローとも呼べるほどの強引で絶対的な『わがままさ』!

それだけであの生き汚い千年の引き篭もりを下して見せた!

私の勘では彼女はあんなものじゃない、もっと、もっとだ。

全てが手遅れなまでに追い詰められた、絶望的な理不尽をぶつけてみたい!その時彼らは何を魅せてくれる?

計画を考え直さなくては。思えば私はなぜ天元を前提としたプランを組み立てていた、これほどあいつを嫌っている私ですらも天元の不死性に加担していた?思い返すほど忌々しい。いや、今はいい。

私は知りたい、人間の可能性を。人間の可能性はこんなもんじゃないはずだ!」

 

そうして、目を見開き、面白いことを思いついたとばかりに微笑んだ。

 

「敵は世界と過去だ、禪院百合華。期待しているよ」

 

そして彼女はやっと自身の子供の方を振り向いた。

 

「どうしたの?」

 

「封印もしていない呪物が幼児に受肉した例は無いが私の最高傑作なら?流石に持たないか?いや、彼らが可能性を魅せてくれたんだ。こっちも限界に挑戦しなくちゃね」

 

「?」

 

「悠仁、父ちゃんはどこにいる?」

 

「とぉちゃんならかいものだよ」

 

「そっか。ねえ悠仁。」

 

「なぁに?」

 

「あーん」

 

 


 

 

あとがき

 

三輪ちゃんのパパが宮内庁の大物になってしまった・・・

正史だと三輪家は貧乏なので多分出世前に呪術界の暗部関係でお亡くなりになっていらっしゃるはずの一般家庭出身の人。(存在しないキャラの救済に成功)

お嬢様な三輪ちゃん、見たいよね。

Q. たとえ長官に出世する前でも宮内庁の高官だろうし遺産とか保険とかないの?

A. 呪術師な叔父に巻き上げられてるとかじゃない?知らんけど。

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